開発チーム 組織と人の成長戦略
この記事では、4章2節「人事管理の導入」について記載されていることをまとめました。
(一部4章1節、3節の内容にも踏み込んでいます)
太字部分は私個人が特に印象的に感じた点、赤字の部分は私個人の所感・注釈です
フォーマルな人事管理の必要性
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人事管理は、次の3つの領域のマネジメントとは明確に異なる。
- テクニカルマネジメント
- チームが技術的な意思決定を適性に下すよう計らう仕事
- プロジェクトマネジメント
- プロジェクトが計画通りに進行、完遂されるよう管理する仕事
- プロダクトマネジメント
- 顧客の望む製品が構築されるよう管理する仕事
- テクニカルマネジメント
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「共通の目標を達成するための骨格と筋肉をチームに与えてくれるのが、適正な人事管理なのだ」by ジョー・ゼイビアー
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創業フェーズではフォーマルな管理者を設置せず、創業者が直接エンジニアを束ねるケースが多い(アドホックな人事管理)
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アドホックな管理手法の効果は、チームが成長拡大するにつれて薄れてくる
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フォーマルな管理体制への移行が必要なフェーズに来ているのに、恐れや惰性で先延ばしにしているケースが多々ある
- 人事管理にまつわる過去の不快な経験に基づいた先延ばし
- 過去にひどい管理者の下で悲惨な経験をしたことのある幹部が「管理者なんて百害あって一利なしだ」と感じている
- 文化的な抵抗感による先延ばし
- 一般社員であるチームメンバーの職位を上げたほうがよい、との考えが根底にあったりする
- スタートアップの間では**「フラットな組織構造」の良さをほめそやす傾向**があるが、その実「優れた管理者の真価に対する無理解」や」「ひどい管理者を雇ってしまった場合のダメージへの恐れ」「管理者の優劣を見分ける能力に対する自身のなさ」といった素因が隠れていることもある
- 人事管理にまつわる過去の不快な経験に基づいた先延ばし
私を含めてですがフラットな組織信仰を持っているエンジニアは意外と多いと思われます。ただ現実問題としてフラットな組織体制のまま成長を続けられる企業はほとんど存在しないので、やはりどこかのタイミングで管理体制の整備に舵をとるべきでしょう。
自社の希望や目標を把握し、チームの態勢固めを
- 自分たちがどういった人事管理の文化を臨んでいるのかを把握しておく
- 管理者に対してどのようなことを期待するのか
- それがテックリードやプロダクトマネージャーなど既存の関連職位に対するものとどう異なるのか
- 人事管理者は主としてどの領域に焦点を当てるべきなのか
マネージャーの職務・職権がどこからどこまでなのかを定義することはどの組織でも難航しそうですね。テックリードやPMに権限委譲しすぎるとマネージャーの職務がスカスカになりますし、そんな綺麗に分業できるほど人材が豊富な組織は少ないと思われるので。
- キャリアパスの規定は草創期から必要
- 「エンジニアはいわば二流の市民。管理職に『格上げ』してやらなければキャリアアップは望めない」との誤った認識を正す
- 人事管理者のポストは、技術職とはまるで違う資質を要求される、まったく異なる職位
- 「並外れた技術力」を「管理者としての可能性」と混同してはならない
- 「コーディングの腕前がピカイチのエンジニアを管理者に抜擢したいという誘惑に負けてはならない。(中略)管理はコードではなく人を扱う仕事だ」by ティム・ハウズ
後続の節でも同様の話題が出てきますが、**”優秀なエンジニアがマネージャーにされちゃう問題”**は海外でも頻出している模様ですね。エンジニアリングチームのマネージャーは、優秀なエンジニアが務めるべきか、平凡なエンジニアが務めるべきか、はたまた外部から引っ張ってきた赤の他人が務めるべきか、難しい問題です。
変更計画の公表と実施
- 管理体制を当たらに導入するのは気を使う大変な仕事
- 管理体制変更の理由と意図は極力明確に説明するべき
- 好ましくない公表のしかた
みんな: えぇーっ!
- 過去にひどい管理者の下で苦労させられた覚えがあり、管理者の存在を煙たがる者は多い
- 人事管理のポストを創設することで得られると期待される価値や、管理者の勤務成績の評価方法の案を、十分に時間を割いてきちんと説明する必要がある
日本人お得意のネマワシです!!この辺りの進め方の丁寧さは古典的な日本企業に一日の長があることは間違いないと思います。全くの余談ですが、Wikipediaの英語ページにNemawashiの項目がありましたw
新任管理者の紹介はあくまで地味にひっそりと
- エンジニアの管理者への鞍替えは、「職責の大きな変化」であり「昇進」ではない
- あなたが新任管理者に対してどれほど深く感謝の念を抱いているとしても、皆に紹介する場でほめそやしたい気持ちは抑えなければならない
- 「実力を認めたければ管理職になるのが一番」「昇進する上での最良の方法は管理職への転身」との誤った認識を招く恐れがある
- 管理の職務を引き受けたメンバーが、その職務に不適であったり興味を失った場合、元のポジションに戻りにくくなる恐れがある
残念ながら「実力を認めたければ管理職になるのが一番」「昇進する上での最良の方法は管理職への転身」はほとんどの組織で当てはまってしまっていると思われます。エンジニア、管理職の給与を比較した比較的新しいデータがこちらにあります。