1. はじめに
NTT データ数理システムでリサーチャーをしている大槻 (通称、けんちょん) です。
本記事では、基本情報に合格できる地力を持っている段階からスタートして、どうすれば短期間の対策で応用情報を取得できるかについて、個人的見解を述べて行きたいと思います。
2. 最短の対策
個人的に最短だと思う対策方法です:
- 午前は、過去問演習 + 関連トピックを参考書で読み込む
- 午後は、分野を 6 個に絞って問題演習をこなし、関連トピックを参考書で読み込む
- 試験前日にアルファベット 3~4 文字の略語などをひたすら頭に詰め込む
- 圧倒的な得意分野を 1 つ作る (個人差あり)
短時間で合格するために重要なことは、試験に出ないことを暗記する時間をかけないことです。そのため過去問演習が鍵となります。基本情報に合格できる地力のある方なら、いきなり過去問演習からスタートしてよいと思います。過去問を解くことで、なにを暗記するべきかを素早く掴むことができるので、それを前日までにリストアップしておいて、前日にひたすら覚え込みます。
注意点として、ただ過去問を解くだけでなく、過去問でよくわからなかった部分について関連するトピックを参考書で一通りカバーする勉強方法が大変有効です。このとき、脳に負担のかかる暗記事項は前日用に溜めておいて、むしろベースとなる考え方の部分を中心に押さえておきます。ベースとなる考え方を押さえるために以下の参考書はとてもおススメです:
午後対策はこれ一冊で十分と言っても過言ではないでしょう。
3. 試験の構成
応用情報試験は「午前」「午後」にわかれており、午前は記号選択式 (四つの選択肢から選びます)、午後は記述式です。
形式 | 出題数 | 合格基準点 | 時間 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|
午前 | 記号選択式 | 80 問 | 60 % | 150 分 | 概ね 50 問以上正答なら合格 |
午後 | 記述式 | 11 問 (1 問必須で残り 10 問中 4 問選択) | 60 % | 150 分 | 概ね大問 3 問分で合格 |
午後の選択問題が 4 問選択になったのは、私自身が受験した平成 27 年度秋季以降のことです。それまでは 5 問選択でした。
4. 「午前」「午後」それぞれの対策
午前について
午前に関しては、応用情報も基本情報も大きな違いはないです。
多くの方が繰り返し述べているように、本番の問題の半分近くは過去問の使い回しです。仮に 40 % が過去問と同一でそこで 40 % 分得点できたとすると、残りの 60 % 分の問題のうち 1/3 の 20 % 分だけ正解できれば合格です!
過去問を何年分解けばよいかというのは多くの方が気になるところだと思います。私自身は試験本番 (平成 27 年度秋季) の 2 年前周辺 (平成 25 年度周辺) の過去問の 3 回分を解いて本番に臨んだのですが、10 回分を解けばより安心だと思います。なお、3 回分解くときに直近の 3 回分ではなく 2 年前のセットにした理由は、直近 2 回分の問題はあまり使いまわされないからです。万全を期すためには
- 直近 10 回分のうち、最新の 2 回分を除く 8 回分を過去問演習用に使用する
- 試験直前になったら最新の 2 回分で最終調整する
というのが有効だと思います。
午後について
基本情報から応用情報へとステップアップするにあたって、圧倒的に差異があるのは午後の方です。
分野一覧は以下の通りです (公式ページ参照)。この中から情報セキュリティが 1 問、それ以外から 10 問 (うち 4 問選択) が出題されます。
- 情報セキュリティ (必須)
- ストラテジ系
- 経営戦略
- 情報戦略
- 戦略立案・コンサルティング技法
- テクノロジ系
- システムアーキテクチャ
- ネットワーク
- データベース
- 組込みシステム開発
- 情報システム開発
- プログラミング (アルゴリズム)
- マネジメント系
- プロジェクトマネジメント
- サービスマネジメント
- システム監査
情報セキュリティ分野は、「暗記項目は多くない」+「一般常識 (+ α) で解ける問題も多い」という性質があるため、過去問演習が極めて有効です。
そして残り 10 問からたった 4 問選べばよいというのが重要なポイントで、自分が得意な分野に絞ることができます。個人的によいと思う対策方法は以下の通りです:
- 本番に解く分野の候補を 6 分野に絞って対策する
- 本番の該当分野 6 問 (運が悪いと 5 問) のうち、確実に解けそうな 4 問を選んで解く
私自身は、「アルゴリズム」「データベース」「ネットワーク」「組込みシステム開発」「プロジェクトマネジメント」「システム監査」の 6 分野に絞って対策していました。
なお、「午後は同じ問題は出題されないから過去問対策しても仕方ない」という意見も散見されるのですが、午後であっても過去問演習は有効です。むしろほぼ過去問を解くだけでよいです。過去問を解くと午後でも似たような問題が繰り返し出題されていることが実感できると思います。これによって試験前日に暗記する事柄を大きく減らすことができます。
また過去問演習によってケアレスミスを大きく減らすことができます (何気に超重要!!!!!!!)。過去問を初めて解くと、つまらないミスをついつい犯しがちであることをよく実感できると思います。恐らく知識が充実している方でも、初めて過去問を解くときは 10 点分以上ケアレスミスで落としてしまうのではないでしょうか。
なお、どの分野を選択するのがよいかについての tips を下の方でまとめています。
5. さらに楽するための対策
前日にひたすら頭に詰め込む
注意点として、本記事全体もそうなのですが、特にこの節の内容は基本情報に合格できるだけの知識が既にあることを前提としています。
応用情報は確かに基本情報に比べてかなり難しいのですが、その難しさは「より高度な応用力が試される」というところにあります。「試験で問われる暗記事項の分量」に関しては、応用情報と基本情報とでそれほど大きな違いはないです。したがって、基本情報に合格できるだけの知識が既にある方であれば、
脳みそに負担のかかる暗記作業は前日に回してしまい、それまでは応用力の育成に力を注ぐ
という方法が有力です。試験に合格するために暗記すべき事柄の量は、きっちり絞れば前日の詰め込みで十分な範囲で済ませることができます。逆に言うと過去問演習を通して、暗記すべき事柄をリストアップしておくことが重要になります。
圧倒的な得意分野を 1 つ作る (個人差あり)
午後についてです。もしなにか 1 つでも圧倒的な得意分野を作ることができたらとても強いです。
- 確実に 20 点とれる分野をもつと、残りの分野から 80 点中 40 点で合格!
- 「得意分野に近い分野」の底上げにも繋がる
という効果があります。
一例として、アルゴリズム問題で確実に満点がとれる状態にしていると、他の分野で半分とれればよい安心感があるだけでなく、データベース、組込みシステム開発の勉強もスムーズに進みます。他にも
- プログラミングが得意な人にとって、組込みシステム開発は予備知識なしに理詰めで解ける問題も多い
- SQL 系の操作に抵抗感がない人にとって、データベースは楽に解くことができる
- SQL を触ったことがなくても、データベースは実は出題パターンがとても少ないので過去問対策すれば確実に得点できる
- システム監査は時として国語の問題かと思えるような出題 (このセットの問 11 など) もある... が、個人的には国語問題から高得点を獲得することは皆が言うほど簡単ではないと思います
といった事柄が色んなサイトで言及されています。
6. その他の tips
Q1: 午後の選択分野について
得意分野に応じた対策方法を考えてみます:
アルゴリズムが得意な方
迷わず「アルゴリズム」と「データベース」を選ぶとよいと思います。アルゴリズムに習熟している方なら、この 2 分野は練習すれば確実に満点をとることができます。その理由は「理解するのが難しい分、出題パターンがとても少ない」からです。この 2 分野で満点をとれば既に 40 点であり、残り 3 問から合わせて 20 点をもぎとれば合格という計算なので非常に楽になります。「組込みシステム開発」や「ネットワーク」といった分野を押さえて行けば合格は固いと思います。
ハードウェア寄りのプログラミングが得意な方
「組込みシステム開発」が狙い目であることは多くの人が指摘しています。実際、非常に少ない対策で高得点をとることが可能です。しかしながら出題内容が多彩なため、確実に満点をとれるかというと難しいのではないかと思います。「データベース」「ネットワーク」「システムアーキテクチャ」など、同じく高得点を取れる分野を確実に増やしていくのが有効だと思います。
ストラテジ・マネジメント系の問題が得意な方
通称「国語の問題」とも呼ばれており、特に文系出身の方に人気の分野です。実際ほとんど国語の問題だと思われるような出題もありました。しかしこのような問題は確かにとっつきやすいのですが、問題によって難易度の差が激しく、確実に高得点をとることは難しいと思います。ストラテジ・マネジメント系の問題を中心に攻める場合は、なにか 1 つでも高得点がとれるテクノロジ系の分野を作ると安心して試験に臨めるのではないかと思います。そのような戦略として、以下のサイトがとても参考になります:
Q2: 試験当日の時間配分について
応用情報試験は、制限時間に関してはそれほど厳しくはないです。むしろ午前・午後ともにケアレスミスが怖いタイプの試験なので、見直し時間を確実に確保したいです。過去問演習を通して、一巡目を解くスピード感と見直しに残す時間とのバランスを適切に見極めていくことが重要です。
Q3: 勉強時間はどの程度必要か
応用情報といった資格試験の話になると、必ずと言っていいほど「勉強時間」に関する議論が発生します。しかしながら応用情報に限らずこの種の理系の資格に要する勉強時間には圧倒的な個人差があるのが事実だと思います。2000 時間だと言う人もいれば、20 時間だと言う人もいます。そして恐らくどちらも正しいです。この違いはどこから生まれるかについてですが、主に「アルゴリズム」や「数学」にどの程度親しんでいるかに依っています。したがって
「〜時間で合格できる」と語られた目安に振り回されないようにする
ことが非常に大切です。一般的には、基本情報取得後、応用情報取得までの勉強時間は 200 〜 500 時間程度 (1 日 2 時間の勉強で半年前後) と報告している方が多いようです。
7. 参考書
勉強の上で参考になる文献を挙げていきます:
全体的な参考書
まずは定番として
があります。やはり一通りのトピックが網羅されている参考書を一冊は手元に持っておきたいです。この他にも
といった選択肢が考えられます。こうしたトピック網羅型の参考書については、どれを選んでも大きな差異はないです。したがって、書店などで何冊か立ち読みしてみて、肌に合うものを一冊購入するのがよいと思います。
そしてこうした書籍は、最初から通読しようとすると大変時間がかかります。基本情報に合格できる地力があることが前提ですが、いきなり過去問演習から開始して、過去問を解く度に関連のある部分を拾い読みしていく方法が効率良いです。
午後対策演習のための参考書
非常によいです。なにより解答に至るまでの考え方がきちんと丁寧に解説されています。この本で学ぶことで、合格のための確かな地力を身に着けることができます。
その他の演習用
特に午前対策として有効な演習道場サイトです。これが無料で利用できるのは強いです。通勤・通学中などでも気軽にチェックできます。
さらに参考になりそうな資料があれば、随時コメントでお待ちしております!
8. おわりに
基本情報に合格できるだけの知識を持った状態からスタートして最高効率で勉強すれば、応用情報は短時間で取得することができます。個人的に有効だと思う対策法について記しました。もちろん個人差がとても大きいと思いますので、「自分はこのように勉強した」という意見があればコメントを寄せていただければと思います。私自身の勉強方法が誰かのお役に立てればとても嬉しいです。