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Java ジェネリクスのポイント

Last updated at Posted at 2015-07-21

久しぶりにジェネリクスを多用するライブラリを作成していて、忘れていたことやはまりどころがあったので、今更ですが備忘録的にポイントをまとめておきます。

用語

ジェネリクスは似たような用語があって混乱しやすいので、まずは用語をきちんと抑えておく。
以下は、Effective Javaの項目23からの抜粋である。

用語
ジェネリック型(generic type) List<E>
仮型パラメータ(type parameter) E
パラメータ化された型(parameterized type) List<String>
実型パラメータ (actual type parameter) String
原型(raw type) List
境界型パラメータ(bounded type parameter) <E extends Number>
非境界ワイルドカード型(unbounded wildcard type) List<?>
境界ワイルドカード型(bounded wildcard type) List<? extends Number>

変性

ジェネリクス型 X<T> において、型Aが型Bのサブタイプであるとき、X<A>X<B> のサブタイプであれば、Xは型パラメータTについて 共変(covariant) という。逆に、X<B>X<A> のサブタイプとなるなら、反変(contravariant) という。いずれも成り立たない場合、これを**不変(invariant)**という。ジェネリクス型はこれらいずれかの 変性 を持つ。以下に例を示す。

変性
共変   List<Integer>List<Number> のサブタイプとなる
反変 List<Number>List<Integer>のサブタイプとなる
非変 List<Number>List<Integer>の継承関係はない

Javaのジェネリクスは非変である

Javaのジェネリクス型は非変である。このため、IntegerはNumberのサブタイプだが、List<Integer>List<Number> のサブタイプではない。

以下のサンプルコードに例を示す。

	public void hoge() {
		List<Integer> intList = new ArrayList<>();
		List<Number> numList = new ArrayList<>();
		List<Number> anotherNumList = new ArrayList<>();
		
		numList = anotherNumList; //OK
		numList = intList; //コンパイルエラー		
	}

配列は共変

対照的に、Javaの配列は共変である。したがって、以下のような危険なコードが書ける。

	public static void foo() {
		Object[] objects;
		Integer[] integers = new Integer[]{1,2,3};
		objects = integers;
		objects[0] = "error"; //実行時例外 ArrayStoreExceptioin
	}

コンパイル時に型情報は消去される

パラメータ化された型や、型パラメータの持つ型情報はコンパイラによって消去される。これは型消去(type erasure)と呼ばれる。

例えば、以下の型変数Tを持つジェネリック型を考える。
ContainerはIntegerやBigDecimalなどのNumber型のみの値を保持するコンテナクラス。

class Container<T extends Number> {
	private T value;	
	public Container(T value) {
		this.value = value;
	}	
	public T get() {
		return value;
	}
}

コンパイラは、上記のクラスから型情報を消去し、以下のクラスと同等のクラスを生成する。

class Container {
	private Number value;
	public Container(Number value) {
		this.value = value;
	}
	public Number get() {
		return value;
	}
}

型情報といっても実際に消去するわけではなく、型パラメータはその上限境界の型(上の例ではNumber)に置換される。
このように、型情報はコンパイラによって消去されるため、実行時には型情報を取得することはできない

new T() できない

型パラメータは消去されるため、型Tのインスタンスを生成することはできない。

class Illegal<T> {
	public T create() {
		return new T();
	}
}

どうしてもやりたい場合は、以下のようにするしかない。

class Legal<T> {
	public T create(Class<T> clazz) throws Exception {
		return clazz.newInstance();
	}
}

new T[] できない

ジェネリクス型の場合は、以下のように仮型パラメータTを型とするインスタンスを生成でる。

class Sample<T> {
	public List<T> createList(int size) {
		//TのArrayListを生成できる
		return new ArrayList<T>(size);
	}
}

一方、型パラメータTを要素とする配列は生成できない。

class Sample<T> {	
	public T[] createArray(int size) {
		return new T[size];
	}	
}

すでに説明したように、型パラメータTの型情報は実行時に消去される。ジェネリクス型の場合は、型情報を含まない原型を生成するため、実行時に型情報を必要としない。一方、配列の生成には実行時に型情報が必要となるため(正確には配列を生成するバイトコードが型を必要とする)、型パラメータTを要素とする配列は生成できない。

List<?> は任意の要素型をもつListを表す

List<?> は、なんらかの型の要素を持つListを表す。このような型を非境界ワイルドカード型という。List<?>の変数には任意のListを代入できる。したがって、以下のようなコードが記述できる。

	public void wildcardHasAnyType() {
		List<String> stringList = new ArrayList<>();
		List<Integer> integerList = new ArrayList<>();
		
		boolean b1 = contains(stringList, "a"); //List<String>
		boolean b2 = contains(integerList, 3); //List<Integer>
	}
	
	public boolean contains(List<?> list, Object o) {
		return list.contains(o);
	}

これは、共変の性質によりList<Object> の変数には List<String> を代入できなかったことと対照的である。このように、ワイルドカード型を利用すると、ジェネリックの不変の制約を緩めることができる。

List<?> に要素をaddできない

List<?> は、任意の要素を持つListであるが、具体的な要素型については不定である。したがて、null値を除くいかなる値も渡すことはできない。したがって、以下のようなコードはエラーとなる。

	public void foo(List<?> anyList) {
		anyList.add("error"); //コンパイルエラー
	}

より、一般的に言うなら、型パラメータが引数に現れる非境界ワイルドカード型のメソッドを呼び出すことはできない。

interface UnaryFunction<T> {
	public T apply(T value);
}

class Illegal {
	public void foo(UnaryFunction<?> f) {
		f.apply("a"); //コンパイルエラー
	}
}

List<?> からgetした要素はObjectである

非境界ワイルドカード型の要素はどのような型にでもなりえるため、取得した要素型はもっとも汎用的な型であるObjectとなる。

	public void bar(List<?> list) {
		Object o = list.get(0);
		String s = list.get(0); //コンパイルエラー
	}

List<? extends T> は共変性を持つ

List<? extends T>上限付きの境界ワイルドカード型 である。これは、型Tのなんらかのサブタイプを要素とするListを表す。上限付きワイルドカード型を使うと、以下のサンプルコードのように、本来非変であるジェネリクスに共変性を導入することができる。

	public void foo() {
		List<Number> numList = new ArrayList<>();
		List<? extends Number> wildCardNumList = new ArrayList<>();
		List<Integer> intList = new ArrayList<>();
		
		wildCardNumList = intList; //OK
		numList = intList; //コンパイルエラー
	}

List<? super T> は反変性を持つ

List<? super T>下限付きの境界ワイルドカード型 である。これは、型Tのなんらかのスーパータイプを要素とするListを表す。下限付きワイルドカード型を使うと、以下のサンプルコードのように、本来非変であるジェネリクスに反変性を導入することができる。

	public void bar() {
		List<Integer> intList = new ArrayList<>();
		List<? super Integer> wildCardIntList = new ArrayList<>();
		List<Number> numList = new ArrayList<>();
		
		wildCardIntList = numList; //OK
		intList = numList; //コンパイルエラー
	}

Put/Get原則

Effective Javaの項目28では、以下の略語からPECSとも呼ばれる。

PECSは、プロデューサー(producer)-extends, コンシューマー(consumer)-superを表しています。

Put/Get原則あるいはPECSは、以下の2つからなるワイルドカード型の基本原則である。

  • 型変数Tでパラメータ化された型が、プロデューサーであれば、<? extends T> を利用する。
  • 型変数Tでパラメータ化された型が、コンシューマであれば、<? super T> を利用する。

Put/Get原則は柔軟性のあるAPIを実現するためのキーとなる。以下で、サンプルコードを通してPut/Get原則の有用性について示す。

まずは、Put/Get原則を適用していない、以下のようなインターフェースを考える。コードの一部は、ここから引用している。

//型Tの値を消費する関数
interface Consumer<T> {
	void apply(T value);
}

//型Tの値をもつコンテナ
interface Box<T> {
    //保持する値を返す
    T get();
    //値を設定する
    void put(T element);
    //別のコンテナの値を設定する
    void put(Box<T> box);
    //Consumer関数を適用する
    void applyConsumer(Consumer<T> function);
}

ここで、以下のコードはコンパイルエラーとなる。

class InvariantSample {
	public void foo(Box<Number> numBox, Box<Integer> intBox) {
		 numBox.put(1); //OK
		 numBox.put(intBox); //コンパイルエラー		 
	}
}

Box<Number> のputメソッドは Box<Number> を引数として受けとるが、非変性により、Box<Integer>Box<Number>のサブタイプではないため、Box<Integer>の引数を適用するとエラーとなる。

put(1) により、Integer型の要素を設定できるにもかかわらず、Box<Integer> を設定できないのは、APIとして柔軟性に欠けている。

次に、以下のコードを考える。

	public void foo(Box<Integer> intBox, Consumer<Integer> intConsumer, Consumer<Number> numConsumer) {
		intBox.applyConsumer(intConsumer); //OK
		intBox.applyConsumer(numConsumer); //コンパイルエラー
	}

Integer型の要素を消費する Consumer<Integer> 型の関数を適用できるにもかかわらず、Number型の要素を消費するConsumer<Integer> の関数を適用できないのは直感に反している。

上記のインターフェースについて、Put/Get原則を適用してみる。適用できる箇所は以下の2つのメソッドである。

  • void put(Box<T> box) の引数 Box<T> は値のプロデューサーである。
  • void applyConsumer(Consumer<T> function) の引数 Consumer<T> は値のコンシューマーである

よって、これら2つのメソッドにPut/Get原則を適用すると以下のようになる。

//型Tの値をもつコンテナ
interface Box<T> {
	//保持する値を返す
    T get();
    //値を設定する
    void put(T element);
    //別のコンテナの値を設定する
    void put(Box<? extends T> box);
    //Consumer関数を適用する
    void applyConsumer(Consumer<? super T> function);
}

この結果、Put/Get原則の適用前のコンパイルエラーは全て解消される。

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