念願だったScrum Allianceの「認定スクラムマスター(CSM)」に合格したので、研修の申し込みから試験合格までの流れを紹介しようと思う。
これから「認定スクラムマスター(CSM)」を受講・受験しようと考えている人の参考になれば幸いだ。
スクラムの認定制度の種類
日本において、スクラムの認定制度は以下の二種類がある。
認定の名前 | 認定機関 | 日本における主な研修主催者 | 受講料 |
---|---|---|---|
Certified Scrum Master(CSM) | Scrum Alliance | Odd-e Japan | 約30万円 |
Licensed Scrum Master(LSM) | Scrum Inc. | Scrum Inc. | 約20万円 |
なぜスクラムの認定制度が二つあるのか経緯はわからないが、どちらもスクラムの考案者の一人であるJeff Sutherland氏が関わっているので、どちらが上とか偽物とかいうことは無いようだ。
ただ、Scrum AllianceのCertified Scrum Master(CSM)の方が歴史が長いため、日本においてはこっちの方が知名度が高いと思う。
Scrum Inc.のFAQには以下のような記載があるので、今後認定の相互乗り入れがあるかもしれない。
CSM・CSPOの資格保有者の方には、Scrum Inc.認定試験を受けることで、LSM/LSPOの資格を授与する仕組みをScrum Inc.で検討中です。
今回私が受講したのはScrum AllianceのCertified Scrum Master(CSM)である。
以下に続く情報はScrum AllianceのCertified Scrum Master(CSM)についての情報なので、Scrum Inc.の提供するLicensed Scrum Master(LSM)の情報とは一致しないので念のため。
申し込み
日本でCertified Scrum Master(CSM)の研修を受講する場合、Odd-e JapanのWebサイトの公式トレーニング申し込みページから申し込みを行うのが現状では一般的だと思う。
ただ、ここに載っている以外でも認定スクラムトレーナーという人がScrum Alliance公認という形で研修を行うことがあるようで、私はそちらの形式で参加させていただいた。
ただ、日本語で講義をできる日本人の認定スクラムトレーナーは一人しかおらず、その人の研修は基本的に東京でしか行われていないので、日本語でみっちりスクラム研修を受けたい場合は東京の回を選択したほうが良いと思う。
私の場合は地方都市である札幌在住で東京への渡航費も馬鹿にならないため、札幌でCSM研修を開催してくれたのはとても助かった。
Scrum Alliance認定研修の探し方
Scrum Allianceの公式ページではScrum Allianceの認定研修が全て検索できるので、地方在住者やOdd-eで日程が合わない・満席の場合は一度検索してみると良いと思う。
Scrum Alliance - Course Search
ただ、主催者によって研修内容の質や同時翻訳の質にバラつきがあると思う。単に認定資格を取るだけなら一番安いところで受講すればよいと思うが、せっかくお金を払うのだから学ぶことが多いところで受講するのがよいのではないだろうか。
個人的に信用できそうな主催者は以下の3つだと思っている。
- Odd-e Japan → 日本人のスクラムトレーナーが講師なので同時翻訳が不要
- Attractor → アジャイル・スクラム関係の本の著者が日本語同時翻訳&メンターに付いてくれる
- agilergo consulting corp → 古くからScrum Alliance認定研修の日本語同時翻訳で提供している、RSGTのスポンサー
Certified Scrum Master(CSM)の研修と試験について
研修の概要
開催日程と研修時間
週末の土日二日間にわたって研修を受講した。
どちらも開始時間は10時、終了時間は18時。
休憩時間は13時ごろに45分程度で、結構ハードである。
平日お仕事をしている人は、月曜に有給を取っておいたほうがよい。(ここ大事)
お昼ご飯
どの回もそうなのかはわからないが、私が参加した研修では土日どちらも昼食のお弁当が支給された。
お昼ご飯を買っていくと無駄になるかもしれないので、お昼御飯が支給されるのかは確認しておいたほうがいいと思う。
会場について
私が受講した札幌の会場は貸し会議室だった。
トイレや飲み物の自動販売機は研修会場のすぐ近くにあるので、研修時間中(10:00~18:00)は基本的に会場のある建物からは出ないと思ってよい。
会場の設備
私が受けた回では、研修会場内でテーブルが4つに分けられていて、5~6人ごとに4グループで着席するようになっていた。
グループ分けはランダムで行われるので、ほぼ初めて会う人同士でグループを組むことになると思う。
ちなみに、これは会場によって異なるとは思うが、5~6人で着席するにしてはテーブルは少し小さい。テキストとノートを広げるとほとんどスペースがなくなるため、ノートPCなど余計なものは広げないほうがいいと思う。
(実際、ノートPCが活躍しそうな場面は無かった)
講師について
Scrum Allianceの認定スクラムトレーナーが講師を務めてくれる。
私が参加した回は中国系アメリカ人の方が講師を務めたため、講義内容は英語で行われた。
ただ、スクラムに精通したプロが通訳をしてくれたため、会話の内容を日本語に訳してくれるだけでなく補足までしてくれたのでほぼほぼ言葉による不便はなかった。
ただ、一部の演習教材が英語で作られていたのは正直参ったが…
テキストについて
研修の講師である認定スクラムトレーナーが用意してくれるテキストに沿って講義と演習は行われる。
テキストの内容は英語で書かれている個所もあるが、予めほとんどを日本語訳してくれているので、テキストの内容が読めないという心配はしなくてよい。
演習について
研修の二日間のうち、半分以上はグループによる演習の時間だと思ってよい。
演習はグループで協力して進める内容がほとんどで、スクラムの知識というよりはグループで作業をするコミュニケーション能力が求められる。(コミュ障には辛い…)
演習を行うにあたって最初はスクラムの知識が無くても問題ないが、だんだんと以下のような学習したことを活用することを求められていく。
- 最初にプランニングをする
- タイムボックスを意識する
- 途中でレビューを受けて補正する
- 最初から100点を目指さない(80点でもいいから見せられる状態にする)
- 完成させる(中途半端な状態でタイムオーバーにさせない)
このような演習が二日間で10回程度はあるので、なかなか精神的にも体力的にもハードだ。
ただ、このような実戦形式の演習をこなすことで、これまでにスクラムのプロジェクトを経験したことがない人にも小さな・短期的なスクラムのプロジェクトを繰り返し体感してもらうことができる。
この辺りはスクラムが「経験主義」であることとも一致していると思う。
二日目の最後の演習を行う頃には、グループが成熟して「チーム」になっていると思う。
つまり、誰がどのようなことが得意なのか・進め方はどうすればよいのかなど、わざわざ文章に書き起こさなくても呼吸が合った状態になっている。
こういうところも、スクラムの目指す自己組織化を肌で感じてもらおうという取り組みなのだと感じた。
認定試験
Scrum Allianceへのアカウント登録
無事に研修を受け終えたら、認定スクラムトレーナーによってScrum Allianceに受講者のアカウントが仮登録される。
よって、研修を途中で離脱したり、講師からCSMにふさわしくないと判断されてしまうとこの時点で認定を受けることはできなくなる。(そんな人がいるのかは知らないが)
Scrum Allianceからアカウントの正式登録を求めるメールが英語で届くので、英語が得意ではない人はGoogle翻訳を駆使して読み解いてアカウントの正式登録を行う。
当然というか、Scrum AllianceのWebサイトも英語なので、ここもGoogle翻訳を駆使することになる。
認定試験の受験準備
CSMの認定試験は2週間以内に受講するように研修で伝えられるが、Scrum Allianceから届いた英文のメールによると受験は90日間有効であると書かれている。
ただし、Scrum Allianceのアカウント登録リンクの有効期限が14日間と書かれているので、2週間以内にはアカウントの正式登録だけは済ませておいたほうがよい。また、研修で受講したことを忘れてしまうので、試験自体も2週間以内には受験したほうがいいと思う。
受験勉強について
まずは、研修の中で「ここは大事!」というポイントを教えてもらえる機会があるので、それを見逃さないこと。
あとは、そのポイントをもとに最新のスクラムガイドを読み込んで整理しておくのがいよい。
また、スクラムのイベントにはどのようなものがあるか・どのタイミングで行うか・参加者は誰か・目的は何かといった設問もあるので、一覧表にしておくなど準備をしておく。
認定試験ではテキストや整理した資料を見てはいけないという制限はないので、すぐに調べられるように準備をしておいたほうがよい。
試験について
試験の概要
Scrum AllianceのWebサイトで受験する。よってインターネット環境とPC環境必須。
設問に対して4つの選択肢から答えを一つ選択する形式。
講師からは時間制限あり(60分)、50問出題、37問正解で合格と聞いていたが、実際に受験した内容は異なってた。
特に時間制限のような表示はなく、35問出題、何問正解すれば合格なのかは特に書かれていなかったが、事前情報が正しければ正答率75%くらいで合格なのだと思う。
ちなみに私の場合は32問正解で合格だった。
試験に不合格だった場合も、2回目の受験までは無料であるとScrum Allianceからのメールには書かれている。
もし2回目の受験でも不合格だった場合は講師に相談してほしいと研修中にアナウンスがあったので、補習とか?対応があるのだと思う。(認定スクラムトレーナーの評価にも関わるらしい)
試験の注意点
受験言語について
試験の受験言語は受験開始時に選択できるので、英語が得意ではない人は必ずJapaneseを選択する。
最初に選択した受験言語は、後から変えることはできないらしいので、英語に自信がある人以外はJapaneseを選択しておいたほうがよいと思う。
ブラウザの設定について
受験開始前に英文で警告が出ているのだが、試験開始までに2回ほどブラウザのポップアップで画面遷移するタイミングがある。
このときにブラウザがポップアップを阻止すると結構焦る。(時間制限ありって聞いてたし)
なので、予めブラウザのポップアップブロックを解除しておいたほうがよい。
試験の日本語について
正直言って、?と思うような日本語訳も散見される。ものによっては、設問と回答がちぐはぐで一致してないのでは?と思うような問題もあり。
このような設問については、選択肢の中から消去法で答えるしかない。
試験で出てくる問題の内容
スクラムガイドに沿った内容の問題が出題されるかと思ったが、スクラムガイドで答えらえる設問は5割程度だった。
残りはスクラムガイドにも明記されていないような「こういう時にどうする?」といった問題で、スクラムの考え方や行動指針が理解できていないと厳しそう。
逆に言うと、スクラムをこれまで実践してきた人であれば、さらっとスクラムガイドを読み返すだけで試験は問題なくパスできると思う。
認定証の発行
無事に試験に合格すると、正答率と間違った個所の正解について教えてくれるページが表示される。
(このページが不合格の場合にも表示されるかは不明)
その後、Scrum Allianceの自身のProfileページにアクセスし、使用許諾に同意するボタンを押すと晴れて認定スクラムマスター(CSM)としてScrum Allianceから認定されることになる。
その後、自身のProfileページで[Print Certificate(s)]のリンクを押せばCSMの認定証が発行される。
(認定証を発行するときにGoogle翻訳でページを日本語訳にしているとうまく認定証が出力できないので注意)
認定書
無事認定証が発行されたら、晴れて認定スクラムマスター(CSM)ということになる。
CSMのバッチは名刺にも使えるらしいので、名刺で「私はスクラムマスターを務める知識があります」と明示してみてもいいだろう。
感想
正直、受講してみるまでは受講料がなかなか高額なこともあり、某データベース大手O社の研修のようなお布施色が強い研修かと思っていたが、内容はスクラムの実戦に即した内容で良い意味で期待を裏切られた。
これまで一応はスクラムを業務で実践し、スクラムの本(スクラムガイドやスクラム・ブートキャンプ)を読んできた私でもなかなかハードな内容の研修と試験だなと思ったので、スクラム未経験・未学習の場合は気合を入れて研修の受講と復習をする必要があると思う。
そして、研修の最後に認定スクラムトレーナーの方が以下のようなことをおっしゃっていたのがとても印象的だった。
認定スクラムマスターはスクラムの知識があることを証明するだけです。
あなた方は今、スクラム実践のスタートラインに立ちました。
ここからが本当の戦いなのです。
認定証やバッチは、あくまで最低限の知識があることを証明しているだけだ。
良いチームを築き、良い仕事を達成できるよう、この知識を生かしながら精進しようと思う。