注意事項
本記事は「富士通株式会社 デジタルシステムプラットフォーム本部 Advent Calendar 2023」の21日目の記事です。
記事の掲載内容は私自身の見解であり、所属する組織を代表するものではありません(お約束)。
はじめに ~チャットボットの歴史から~
実際に使ってみた、技術的な記事は他の方にお任せして、昔話からさせてください。
2022年11月に登場、2023年に爆発的に利用者が増えたChatGPTにより、現在では「チャットボット」という単語をご存じない方は稀とは思いますが、意外にも(?)歴史は古く、1966年に生まれた「ELIZA(イライザ)」が始まりと言われています。
ある年齢以上にしか、もはや通じないかもしれない、オフィスアシスタントの某イルカも、チャットボットの走りだったと今では思います。即、消していたタイプですが。
大きくブームとなったのは2016年、チャットボット元年と言われ、Facebook、Google、Microsoft社らからチャットボット関連のサービスなどが発表されました。
社内ITサービスチャットボット導入への道
申し遅れました。わたくし、社内IT基盤のサポートデスクを担当しております。
2016年に御多分に漏れず、チャットボット元年、ビックウェーブに乗りたいと思い、2017年から社内ITサービスのチャットボット提供を目指し、PoCを繰り返してまいりました。
日本語における正答率向上、インプットデータクリーニングの効率化も課題でしたが、実現に向けて、もっとも課題だったのは、技術と異なる領域でした。
そう、組織の壁、チャットボットに対する過剰な期待への対応だったのです。
社内ITサービスチャットボット導入の課題
進めるにあたって、特に以下の3つの課題がありました。
- 各サービスオーナー部門がばらばらで、別々のチャットボットにしてほしいと言われる
- チャットボット導入したらスタッフゼロにできるよねと言われる
- 100%に近い正答率でないとダメと言われる
課題における背景
- 各サービスオーナー部門がばらばらで、別々のチャットボットにしてほしいと言われる
各サービスが予算確保をしているため、複数サービスをまとめたチャットボットは予算計上が難しく、コストダウンに繋がったとしても、それらの計測が難しいとのこと。
しかしながら、ユーザー側の視点に立つと、サービス毎に異なるイルカに質問したくありません。
- チャットボット導入したらスタッフゼロにできるよねと言われる
当時、特にチャットボットは夢の技術に見え、コストダウンに過剰な期待がありました。
しかしながら、チャットボットのインプットとなるデータは、人間が準備する必要があります。どこまで準備しなければいけないかは、チャットボットにもよりますが、応答率を向上させるためにも、チューニングの人手は必要です。
- 100%に近い正答率でないとダメと言われる
高い品質が求められる会計や業務システムでは、100%に近い品質は必要です。便利ツールといったものでも、同様の品質を求める傾向がありました。
しかしながら、人間でも間違いはあります。インターネットやSNS、新聞ですら、間違った情報はあります。石橋を叩いているうちに、隣をドローンが飛んで、渡っちゃうような世の中です。慎重にしすぎるより、ツールの目的、適切な品質を見定め、情報の取捨選択、活用頂く必要がどうしても出てきます。
解決に向けた取り組み
製品やアプローチを変えて、繰り返しチャレンジを進めましたが、組織横断や経営層を巻き込んだ取り組みが重要でした。
- 各サービスオーナー部門がばらばらで、別々のチャットボットにしてほしいと言われる
部門を横断してサービス向上に取り組める組織を作り、経営層の理解を得て、ある程度トップダウンで進める。
- チャットボット導入したらスタッフゼロにできるよねと言われる
導入後に必要な作業の明確化、その上でのROIの算出、効率化できた分のスタッフが新たにより付加価値の高い業務に集中できるようになる利点を経営層に示す。
- 100%に近い正答率でないとダメと言われる
チャットボットが回答できない内容、ユーザーが満足できない回答の場合は、有人サポートに適切に連携できるフローにする。
そして改善は続く
これらの取り組みにより、サービスオーナー部門が別、各サービスのナレッジが分散されたままでも、ユーザーには一つのインターフェイス、仮想的な一つの問合せ窓口から問題解決のためのナレッジを得ることができ、適切なサポートデスクにも迷わずに辿り着くことができます。
文字にすると、当たり前な取り組みばかりですが、通常業務の片手間、途中くじけながら、実現に時間を要してしまったものの、その間に技術も進化、ChatGPT4登場により、日本語の揺れへの対応を限りなくコストを抑えた形で、社内ITサポートAIチャットボットをようやく提供できる運びとなりました
技術を活用した新しいツールの提供・定着には、様々なアプローチが必要と改めて感じます。
今後も、技術進化もですし、対象サービスを増やし、利便性向上とコストダウン両立という相反することを無理なく進め、愛されるイルカに育てて参ります
※なお、今回のボットリリースにあたりイメージキャラクターを作りましたが、イルカでなくわんこになりました