はじめに
こんにちは。私は広島大学理学部物理学科で物性理論を専攻する者です。私は2024年度に外部院試を経験しました。今回は後輩のために外部院試の体験記を書きます。
この体験記は自分の個人的な体験に少し重きを置いてます。また募集要項を読めば分かることなどは積極的に書いていません。しかし「こんなことが書いてあったら良かったな~」と個人的に思うことを書くので読み応えがあるものになると思ってます。
受験結果
東京大学大学院理学研究科物理学専攻A3サブコース→第二志望研究室に合格
京都大学理学研究科物理学・宇宙物理学専攻物理学第一分野→第一志望研究室に合格
進路について悩んだ末に東京大学の研究室に進学することを決める。
なぜ外部生の合格率は低いのか?
本題に入る前にこんな話をします。
院試の採点は外部生であろうが内部生であろうが、完全に公平に採点されています(まぁ実際に採点の現場を見たことないので断言はできませんが、公平だと信じます)。
合格率が低い要因として次の2つが考えられます。
- 基本的に外部受験者は偏差値が低い大学学部から偏差値が高い大学の院を受験することが多い。
- 院試に関する情報格差。
だと思います。1番目に関しては、もちろん個人単位で優秀な人はいっぱいいますが、傾向としてやはり大学の偏差値とその大学の学生の学力は比例します。外部受験は偏差値が高い大学の院を受験することが多いわけですから、傾向として内部生の方が優秀です。よって外部生の合格率が低いということです。これはあくまで傾向の話なので、頑張って勉強すればいくらでも挽回可能です。
次に2つ目です。院試に関する情報格差です。僕は外部院試を終えてみて、この院試に関する情報を集めることは院試勉強と同じくらい大切だと感じました(凄く優秀な人は院試に関する情報格差についてはどうでも良いですが、私みたいなギリギリの人間にとっては重要なんです)。
ここで院試についての情報とは以下のようなものを指します。
- 過去問の解答(何よりも重要)
- 志望研究室の定員とだいたいの合格ライン
- 口頭試問の内容
これらの情報は何としても手に入れましょう。知り合いの先輩からでも研究室見学で会った院生からでも、一緒に受ける友達からでも。
外部受験のきっかけ
外部の大学院を受験しようと思ったきっかけは、単純に自分がやりたい分野の研究室に行くためです。広島大学の物性理論には4人の先生が居ますが、その先生の専門分野と自分のやりたい分野を考えたとき大学院を変えた方が良いと考えました。
志望研究室の決定
研究室探し
外部受験をするためにはまず志望する研究室を探す必要があります。私は田崎統計のⅡの10章に感動して物性理論を志し、B3の春から物性理論の研究室に居候させてもらってトポロジカル物性などを勉強していました。物性理論の研究室でかつトポロジカルな現象を主に研究している研究室に的を絞り、「○○大学 物理 研究室」のように検索して研究室を調べていきました。先生・研究室によってはHPを綺麗に作成して自分の研究成果を丁寧に説明している所もありますが、HPが無い場合はKAKENで今までと今実際に行っている研究を調べたり,arXivやGoogle Scholarで論文を調べそのタイトルとアブストラクト、イントロから研究分野の雰囲気を感じ取りました。正直、論文の中身を理解することは厳しいので雰囲気を感じるだけで十分だと思います。細かいところは研究室見学で知れれば良いので。
気になる先生が在籍する研究室を見つけたら、その他の情報に目を向けます。院生の数はどうか?、論文は定期的に出しているか?、同じ専攻の他の研究室はどうか?(1つの専攻に1つしか物性理論の研究室がないと活気がないように思えるので)、その大学の立地はどうか?、奨学金などの体制はどうなのか?など。
以上のような過程を経て私は全部で7個の研究室をリストアップしました。内訳としては、東大理物3つ、東大物理工学科2つ、京大理物2つです。そしてこの7個の研究室に研究室見学をしたいという旨のメールを送りました。全ての研究室から良い返事をいただき具体的な日程を調整し研究室見学が決まりました。遠くの大学の研究室に行くのはお金がかかりますが、私は研究室見学は多めに行くことをお勧めします。研究室見学は気になっている先生やその院生と合法的にゆっくりお話しできる貴重な機会だからです。また研究室見学は基本的に歓迎されます。ためらわずにメールを送りましょう。言い忘れてましたが、オンラインでも歓迎してくれます。しかしその時は必ず院生と話したい旨を伝えましょう1。
研究室見学(B3の2,3月)
私は4年の前期はOISTのResearch Internshipに行く予定があり(4/3から8/3)、時間が無かったので春休みに7つの研究室を回りました。また私が行った時期が春休みでかつ卒論・修論・博論シーズンが終わった後なので、ゆっくり研究室見学をすることが出来ました。
まず研究室見学を行く前に、事前に何を質問するか書き出しておきましょう。当日研究室に行ってアドリブで質問を思いつくのは結構難しいです。僕が事前に作った質問リストは以下です。
【主に先生に聞く質問】
- 今までの研究や現在の興味は
- 研究テーマはどのように決めるか
- 学振やTAや他の給付型奨学金の状況
- 旅費などは出してくれるか
- 日々の生活。週何でゼミがあるとか
- 学生の初めての論文の平均的な時期
- 博士の進学率
- 院生は主にどんなテーマをやっているのか
- 院生の進路。D進するかアカデミアに残るかなど
- 他の研究室とのつながり
【先生が居ないときに聞く質問リスト】
- 院生から見た先生の評判
- 研究室の雰囲気。自由なのかみんなで結果を出していこうという感じなのか
- 院生から見てこの研究室はお金を出してくれるのか
- 住んでいる環境。下宿していたら家賃や周囲の生活環境
- 院試は何点だったか、一般的に何点くらい取ればよいとされているか
- TOEIC、TOEFLの点数は何点取るべきとされているか
質問の返答は徹底的にメモしましょう。あとで役に立ちます。
研究室見学で大事なことは、
-
先生・院生からこの研究室の興味や研究内容を詳しく聞く
→研究室のHPなどで研究について説明している所もありますが2、実際に先生・院生から直接聞いた方がどんな研究を行っているのかの理解が深まります。また、志望調書を書くときや口頭試問で役に立ちます。しっかりメモを取りながら先生の話を聞きましょう。 -
研究室のお金の事情など聞きにくいことも聞く
→どの研究室に行くかは今後の人生を左右するので躊躇せずに聞きましょう。 -
院生に先生の評判を聞く
→もしこの研究室に進学する場合、あなたは院生になります。指導教官となる先生が優しそうに見えても院生に対しては厳しいかもしれません。 -
院生から院試の情報を聞く
→最初の方で書きましたが、院試は情報戦です。特に外部生は内部性に比べて情報が圧倒的に不足しているので院生に色々聞きましょう。過去問の解答を持ってない場合にはここで頼み込んでみるのも良いかもしれません。
最後にどうでもいいかもしれないけど、個人的に重要な研究室見学のアドバイスは、研究室見学は午前10時に行くべしです。だいたい研究室見学は最初にボスの先生と話して次に院生と話します。話し終わったらだいたいお昼ごろになって先生・院生とお昼ご飯に行けるイベントが発生することがあります!これは結構楽しかったです。私は3つの研究室に午前10時に見学に行きましたが、そのうちの2つの研究室で一緒にお昼ご飯を食べました。
院試ゼミ
院試を一緒に頑張る仲間は重要です。私は外部院試をしそうな友達に声をかけ、B3の3月の下旬くらいに院試ゼミのdiscordサーバーを立てました。人数は8人くらいです。
院試ゼミを立てたこの選択は非常に良かったです。院試ゼミを立てるアドバイスとしては信頼できる少人数の仲間だけを入れるだと思います。院試に関する話題はデリケートです。受かるか分からず常に不安が付きまとうし、落ちたらニートになるし、友達がいきなりライバルに変身するかもしれないし。しかし、みんなで団結して院試を乗り越える方が圧倒的に効率的です。この2つを両立させるために、信頼している人だけで院試ゼミを立てましょう。
僕が立てた院試ゼミはゼミと書いてありますが、毎週過去問を解くゼミをするとかなく各自過去問を解いたらアップロードしたり、分からないところがあったら質問しあったり、院試に関する情報を共有したりしました(例えば研究室見学で聞いた有益な情報を共有したり。)。
英語外部試験
基本的に物理系の大学院受験ではTOEICかTOEFLスコアの事前提出が必須です。したがって事前にTOEICかTOEFLを受ける必要があります。ここではTOEIC/TOEFLの注意点について書きます。僕の場合は東大理物がTOEICかTOEFL、京大理物がTOEICのみ(←謎。2023年度はTOEFLも可だったのに)なのでTOEICを受験しました。
注意
この章ではTOEICとTOEFLについて書きますが、大学院ごとに提出可能な英語の試験、得点の換算方法、提出方法などが全く異なるので必ず自分が志望する大学院の募集要項を確認してください。
ちなみに東大理物R7(=2024年受験)の場合はこんな感じです。
TOEIC
基本情報と早く申し込め!!!
TOEICを選択する人が多いと思います。
受験料は7,810円で、受験は会場受験のみでオンライン受験はありません(2024年9月現在)。受験地が都会なら1ヵ月に1度程度、田舎なら2ヵ月に1度程度です3。TOEICに関するアドバイスは色々ありますが、最も重要なことは、
年明け前にはTOEICは申し込め!!!
です。理由は時系列を見れば分かります。
- 受験1ヵ月と10日前くらいがTOEIC受験の申し込みの締め切り。
- TOEICを受験。
- 受験から3週間くらいでオンラインでの公式認定証を発行(紙の公式認定証は受験から30日くらいで発送)。
- 英語外部試験のスコア提出(院試の出願と一緒にやるところが多い。だいたい6月下旬)。
これが僕が体験した出願の流れです(英語外部試験のスコア提出は各大学で少し違うので各自調べてください)。つまり、スコア提出をするためにはどんなに遅くても4月にTOEICを申し込まないと間に合いません。
僕の場合、最初にTOEICの申し込みページを訪れたのが3月5日くらいです。その時でさえ院試に間に合うTOEICは2回しかありませんでした。良いスコアを提出するためにはTOEICを2回受ける場合が多いです。また5月とかで院試勉強を差し置いてTOEICの勉強をするのはなかなか大変です。なので「年明け前にはTOEICは申し込め!!!」と書きました。
それ以外に僕はTOEIC受験で色々あったのでそのエピソードを最後に書きます。
形式と勉強法
TOEICは色々な試験がありますが、多くの場合TOEIC Listening & Reading公開テストのスコアを要求してくると思うのでこのテストについて書きます。
TOEICは7つの大問/計200問(←多すぎ)で構成されていて、大問1から4がリスニング、大問5から7がリーディングです。TOEICの対策法は調べれば腐るほど出てくるのでここではあまり書きませんが、実戦形式の模試はやりこみましょう。僕はこんな教材を使って勉強しました。
TOEICを初めて受ける人はその形式とか出てくる話題とかで最初は全然点数が取れないと思いますが、慣れれば点数が一気に上がります。あとTOEICの単語は見慣れないものが多く出てきます。その対策のためにこんなアプリをインストールして勉強しました。
TOEFL
TOEFLを受ける人は少数派かもしれませんが、例えば東大の物理工学科ではTOEFLのみなので意外と周りに受けてる人がいました(僕も1回TOEFLを受けました)。基本的に英語外部試験のTOEFLといったらTOEFL-iBTを指すのでそれについて書いていきたいと思います。
受験料は245米ドルで非常に高いです。僕が受けたときは1ドル151円くらいでクレジットカードの手数料も含めて38,000円くらい持っていかれました。またTOEFLは何かと理由を付け金をむしり取ります。例えば申し込みが受験直前だったり、スコアレポートの送付の申請が受験後だったりとか。一方で受験の形式は現地受験とオンライン受験があります。このオンライン受験は週4日、24時間体制で実施されるので受験する機会が沢山あります。また結果も1週間程度でPDF版のTest Taker Score Report という公式のスコアレポートがもらえます(紙のTest Taker Score Report は標準配送でテスト日から4-6週間かかるらしいです。)。
つまりTOEFLはTOEICより沢山お金を払う必要があるが、好きな時間に受けれて早く結果を貰える試験になります。
出願の流れ
だいたい6月の下旬になると院試の出願がやってきます。僕は東大理物と京大理物の大学院を受験したのでその様子を記していきます。出願は大学院と受験した年度によって大きく異なるので必ず募集要項を確認すること。
出願方法は
- 東大理物→オンライン
- 京大理物→郵送
です。京大は郵送ですが、事前に出願書類を取り寄せる必要はなくWeb上にあるものを印刷して封筒に詰めて送ります。東大理物も京大理物の色々な提出書類がありますが、今回は
- 東大理物→志望調書
- 京大理物→志望調書、レポート
について話していきます。
東大理物
東大理物は志望するサブコース(A0~A8、サブコースという概念は募集要項などを読んで理解しておいてください)ごとにA4用紙1枚分の志望調書を書きます。僕は物性理論しか興味がなかったのでA3のサブコースしか受験せず志望調書も1枚しか書きませんでした。志望調書はまず1回全部書いてみてその後同期とお世話になってる先輩に読んでもらってフィードバックを貰いました。特に就活を経験したした先輩からのアドバイスはかなり参考になりました。
色々試行錯誤した結果、志望調書は「私は○○という理由で××という研究がしたいが、そのためには△△大学の◇◇研究室が日本で一番適している」という主張を軸にして書きました。日本には沢山の研究室があります。例えば僕がやりたいトポロジカル物性(まぁトポロジカル物性という言葉は広すぎるが...)を専門に研究してる研究室も沢山あります。数ある研究室の中からなぜこの研究室を選んだかという問いに対する合理的な理由を答える必要があります。なので上に書いたような主張を軸に志望調書を構成していきました4。
ここで注意して欲しいのが、この主張を書くとき、研究室見学で実際に先生から直接聞いた研究内容のメモが非常に役に立ちます。
僕の志望調書の具体的な流れは
- 物性理論に興味を持った理由。
- 物性理論に興味を持ったので○○ということを勉強してみた。
- ○○という勉強の最中に××という疑問が生まれてきてこれについて研究したいと思うようになった。
- ××を研究するためには△△大学の◇◇研究室が日本で一番。
- 最後に意気込みを一言。
です。
京大理物
京大理物も志望調書は東大理物と同じです。形式がA4の紙2ページ以内なので東大理物より具体的に文章を書きました。京大理物の志望調書でお勧めの書き方は、先生の名前を具体的に書くです。東大理物(A3)は1指導教官/1研究室、京大は1つの研究室に指導教官になれる先生が複数いる場合があります。この場合、「○○先生の下で研究したいので◇◇研究室を志望します」という文章が書けます。
次にレポートについて。京大理物は出願と一緒にレポートを提出しますが、その指示文はこうです:「これまでに勉強したことで物理学宇宙物理学に関して特に関心をもった内容について A4 用紙片面2ページ以内」。このレポートは結構難しいです。なぜならば
- 他の受験者との違いを出すために発展的な内容を書きたい。
- 口頭試問で詰められたら嫌なので非常に理解している話題について書きたい。
という相反する2つの欲求を満たす必要があります。これは正直、私から○○について書け!とは言えません。自分自身とよく相談して決めましょう。僕はトポロジカル絶縁体について書きました。僕が書いたトポロジカル絶縁体は発展的なトピックだと思いますが、学部レベルの内容について書いて合格した人も普通に知ってます。発展的なトピック = 善という考え方は止めて自信のあるものを書きましょう。。
院試において学部レベルの物理の理解 vs 発展的な物理の理解という議論について最後の方に言及してるのでそちらも参照してください。
筆記試験対策(時系列順)
この章では僕が実際にした筆記試験対策を時系列順に書いていきます。1つの例として軽く受け止めてください。当たり前ですが、筆記試験対策は早くから始めるほど良いのです。頑張ってください。またこの節では使った参考書の具体的なレビューはしません。その代わりに参考書のレビューが豊富な院試体験記を参考文献として最後に載せておきます。
B3後期
ちょうど先輩方の院試が終わったタイミングで自分の院試について本気で考え始め、B3の後期から少しずつ勉強し始めました。この時期は自分の中でかなり忘れてしまったものについて勉強しました。具体的には
- 英語全般
- 微分方程式
- 剛体の力学
- 熱力学全般
- 量子力学・統計力学の不安な部分
です。英語とはTOEIC対策ではなく、OISTのリサーチインターンシップのために英文法・リスニング・スピーキング・ライティングなどを全般的に勉強しました。この時期はまだ院試まで時間ある+他のタスク(講義、物理学実験、研究室ゼミ)が沢山あったので、1日平均の院試の勉強時間は少ないですし全くしない日も普通にありました。
B3春休み
B3の春休みには上に書いた勉強+東大理物と京大理物の過去問を1年ずつ解きました。あと3月の下旬にTOEFLを受けたのでその直前にはTOEFLの勉強に力を入れました。
B4の4月
4/3にOISTに飛びました。飛んだ直後は色々な雑務やOISTでのsupervisorとのミーティングがあったり冷却原子の学会があったりと、4月の上旬はあまり勉強の時間が取れませんでした。4月の中旬からは、OISTでの研究と院試勉強と英語の勉強をバランスよくこなす日々が始まりました。
予想はしていましたが、OISTに行っているせいで院試対策に割ける時間がありません。また僕はOISTでの研究に加えて広島大学の研究室のB4ゼミに参加する必要がありました。このような状況で「普通に演習本を解いてるだけで院試に間に合うのか?」と思うようになりました。例えば量子力学の定番の演習書で猪木川合があります。あれは上下合わせて600ページくらいあり私にとってそれをすべて解くのは無理だと早々に悟りました(猪木川合の後半の内容は院試に必要ないですが)。そのうえで院試勉強の核となる戦略を
過去問を解く→解答を読んでどこを理解してないのか分析する→理解してない部分を教科書を使い復習し演習書で類似の問題を解く
とすることにしました。これは結果的に成功だった気がします。大学物理の範囲は広いですが院試に出る問題は各大学傾向があります。過去問を軸に勉強することで頻出問題から順番に潰すことが出来ました。ここで注意するのは直近の過去問は直前まで解かないことです。
また私は院試の解答の重要性を書きましたが、ここで解答が生きてきます。解答が無ければ自分の答えが合っているか分からず復習の効果が半減します。
5月
5月も上に書いた過去問を解いて復習するという戦略を軸にして勉強しました。5月の下旬には2回目の最後のTOEICがあったので直前1週間は1日の研究が終わったらTOEICの勉強という感じで生活してました。
5月に入ったぐらいから平日も夜遅くまで勉強し休日も研究室に行って勉強するという生活を送っており、週7で研究室に行くのがデフォルトになっていました。OISTの人たちは(少なくとも僕のunitのメンバーは)平日の日中しか研究室に来なく、平日の深夜/休日まで研究室に来てる僕のことを彼らは少し怪訝な目で見てました笑(なんでそんなに頑張るの?って聞かれたら院試勉強だよ~って毎回答えてました。)。
このときの精神状態はまだマシな方でした。なぜなら院試までまだ時間がある+研究が上手くいっていたからです。英語が全然できなくて日々落ち込んでいましたが、まだ大丈夫でした。
6月
6月も同じような生活を送っていました。5月の終わりくらいから研究でどうしても分からない問題に直面し始め(この記事を執筆している時点でも解決してない。)ました。色々試行錯誤しますが全く解決せず、またOISTに来て2カ月以上経つのに全く英語が上達しない自分に対して嫌気がさし自分の精神状態が悪くなり始まました。特に出願時期(6月の中旬から下旬)のときは
- 研究はダメ
- 英語もダメ
- 院試も結構近づいてきてる
- 志望調書とレポート作成が大変
という色々な苦悩が重なりこの時の精神状態は最悪でした。
7月
6月の最後にX(旧Twitter)をスマホから消しました。これは普通に良い選択でした。みんなもTwitterを消そう!!!
この時期の生活も特に変わってません。しかし研究の分からない問題をいったん放置して別の問題に取り掛かる、英語の自信がついた出来事があったことなどが影響して精神状態は結構改善されました。1個変わったことは、過去問を解いていく中で量子力学の演習がかなり不足していることにこの時期に!気づいたので、最近出版された大学生の量子力学を急いで解きました。
7/20に駒場の院試があり、院試ゼミのメンバーが駒場を受ける姿を見て元気を貰ったりしました。
7月の下旬からはOISTでの生活も終わりに差し掛かってきたので、研究のまとめや研究室セミナーの発表の準備などがあり勉強時間が少しだけ減りました。
8月
8/2に研究室セミナーで1時間自分の研究について発表して僕のOISTでの研究生活が終了しました。8/3に広島の下宿先に帰りました。8/4以降は過去問を解くことのみに専念しました。特に試験5日前くらいに実際の試験と全く同じ時間帯・制限時間で演習をしました。これは非常に良かったです。合計で過去問は東大理物を13年分、京大理物を10年分解きました。また解いた過去問で自信がある大問以外はもう一度解きました(合計で23×1.5年分くらい解きました。)。
試験本番
東大理物筆記
今年から英語の試験が外部試験のスコア提出になり、試験時間は13:30~になりました。前日奇跡的に早く寝られて朝7時くらいに起床しました。非常に良い睡眠をとれました。自宅で2時間くらい勉強した後、家を出て12:00くらいに東大につきました。それから院試ゼミの仲間とスタバで軽食と☕をキメ、試験に向かいました。
試験直後に残した筆記試験の様子のメモを貼っておきます。
13:30から開始で13:15には着席だった。
席は1つおきで真ん中の人がトイレとか大変そうだなと思った。
最初に計算用紙が配られた。B4サイズで4枚。表裏自由に使える。
次に解答用紙が配られた。B4サイズで受験番号とか氏名のために表面が上1/4、裏が上1/5位使えなかった。解答用紙は意外と小さい。
次に問題用紙が配られた。問題用紙は左上しかホチキスを止めてないので、本みたいに見開きができず、解きにくかった。
問題用紙と解答用紙に受験番号と名前を書いた。特に解答用紙に関しては1枚につき名前1回、受験番号2回、「専門科目」という単語を2回書く必要があるので、かなり時間を取られる。
試験会場には時計はなかったので腕時計は必須。試験中でも申告すれば水分補給ができる。
試験が終わったら解答用紙に、問題用紙、計算用紙の全てが回収される。試験は17:30に終わったが解放されたのは17:50くらいだった
試験の感触としては、悪くはないが良くもない感じ。8割強くらい?去年と比べて少し難化したと思ったので、口頭試問には進めたと思いました。
試験が終わったら院試ゼミの仲間と一緒に本郷のサイゼリヤで夕食を食べました。食事中、サイゼリヤで停電が発生して(ビル全体で停電になったみたい)薄暗い中で食事したのは良い思い出です。
食事が終わり東京駅に向かい東海道新幹線に乗って京都に向かいました。東大の次の日が京大なのでハードな日程です。22時くらいにホテルについて次の日の準備をして寝ました。
京大理物筆記
東大の前日は非常に良い睡眠をとれましたが、京大の前日は4時間くらいしか眠れませんでした。朝食と☕をキメ京大に向かいました。京大も筆記試験直後に書いたメモがあるので貼っておきます。
当日は理学部6号館のピロティに集合だった。
案内のスタッフとか特にいなく紙に書かれた教室に行く感じだった。理学部6号館で受けたが、トイレがめっちゃ少なかった。
15分前に着席する。計算用紙と解答用紙と問題用紙が配られる。計算用紙は大問の数×1枚でA3サイズ。解答用紙もA3で裏面も使えたのでかなり余裕があった(A,Bという印がついてる問題は解答用紙が狭かった)。解答用紙には1枚につき1回受験番号と名前を書いた。
当日まで知らなかったのだが、京大理物は腕時計の持ち込みが禁止だったので教室の時計を使った。後ろの方の人にとっては見えにくいかもしれない。
試験は午前3時間午後3時間で正味の昼休みが1時間5分くらい。
あと椅子が硬かった。
水分補給は水筒やペットボトルを机の上に出して自由に飲める。だけど事前にラベルを剥がす必要がある。
午前中の試験が終わったとき、「落ちたwww」と思いました。問題が難しすぎ。体感は6割から6割5分です。午後の試験はもう少し高いような気がしましたけど、全体的に落ちた感じの方が強かったです。特に実験が意味分からんかった。
どうでもいいですが、京都駅から京大理学部へ行く最短ルートは、京都駅から地下鉄に乗り今出川駅で降り、バスで京大農学部前に行くルートだと思います。
京大理物口頭試問
京大の筆記試験が8/21にあり、筆記の合格者の発表が8/27の15時にありました。15時発表は起きてから長い時間緊張する必要があるのでやめて欲しいです。筆記が終わってからは勉強が全然手につきませんでした。志望調書とレポートの復習はしましたが、筆記の解き直しはどうしてもやる気が湧きませんでした。口頭試問対策のために京大に受かった先輩方に連絡を取り色々聞きました。先輩からの話を聞いて筆記の復習はしなくても大丈夫という結論に至り筆記は復習しませんでした。私が聞いた範囲の京大理物の口頭試問の傾向をまとめます。あくまで参考にしてください。(物一5人、物二2人の情報から総合的に判断)。
- 筆記試験はそこまで深く聞かれない。「手ごたえはどうだっだ?」程度。
- 志望調書に関することは聞かれる。
- 提出したレポートが発展的なものだったらある程度深く聞かれる。学部レベルのものなら軽く聞かれるor聞かれない。
- 全ての質問が事前に決められているわけではない。
事前に聞く質問はある程度決まっていると思いますが、「全ての質問が事前に決められているわけではない」と書いたように口頭試問はその場のノリで進められた感じもしました。なので上に書いた傾向と全然違くなる可能性があるので注意してください。
私の場合は、口頭試問は制限時間が20分ですが、13分くらいで終わり、残りの3分は研究室の志望順位についてや他の大学院の併願についてだったので、実質10分くらいの試験でした。
東大理物口頭試問
東大理物は試験が8/20にあり筆記の合格発表が8/29の17時にありました。筆記受けてから発表まで長いです。また17時発表なのも意地悪です。
東大理物の口頭試問は口外禁止なので書きません。しかし、一般論として口頭試問において提出した書類と基礎的な物理についての質問はしっかり答えられるようになるべきです。
結果発表とその後
京大理物
まず京大の合格発表が9/6の12時ありました。Web上に合格番号が掲載されその横に研究室の名前が書かれていました。合格を貰えてすごく安心しました。
東大理物
東大は9/18の13時に合格発表がありました。既に1つ合格を頂いていたこともあり、東大の合格まで非常に精神が安定した生活を送っていました。まずWebで合格の受験番号が掲示され自分が合格だと確認した後、合格者宛のメールで「出願の個人ページに合格通知があるよ」と書いてあったので、出願の個人ページを見に行きました。合格通知がPDFファイルで置いてあって指導教員の名前から第二志望の研究室に合格したことを確認しました。
研究室の選択
元々東大の第一志望の研究室を全体の第一志望、京大の第一志望の研究室を全体の第二志望と考えていたので、東大の結果を知ったその時は京大に進学しようと考えました。しかし、色々考えるうちに東大の受かった研究室も非常に魅力的だなと思い決められなくなったので、東大と京大の先生にコンタクトを取り、改めてお話しする機会を設けました。そして研究内容や研究室の雰囲気、奨学金などを総合的に考慮して、東大の研究室に進学することを決めました。
全体的なアドバイス
一緒に院試勉強する仲間を作る
院試ゼミの章でも書きましたが、院試は団体戦です。精神的に辛くなっても仲間がいれば乗り越えられます。一緒に勉強する仲間を作りましょう。
基礎的な内容の理解 >> 発展的な内容の理解
X(旧Twitter)をやっているとみんな高度な勉強をしていて感覚がおかしくなるかもしれませんが、院試というのは大学学部程度の物理の理解を測る試験です。先生方も学部4年生程度の私たちに対して大学院や最先端の内容の理解なんて要求してません。印象的な例として、私は研究室見学に行ったとき何回か先生に対して「大学院に入るまでに何を理解しておくべきですか?」と聞きました。その時多くの先生が「学部レベルの物理を理解すること」と答えていました。話を聞く感じ、先取りして発展的なトピックを知っていてもあまりアドバンテージはなく一方で学部レベルの物理をしっかり理解していることは研究を行う上で重要ということらしいです。また、口頭試問を受ける中でも発展的な内容の理解より基礎的な内容の理解の方を重視してるんだなと思う場面がいくつかありました。
したがって、院試で出る学部レベルの物理をしっかり理解して人に説明できるくらいにしましょう。
英語は馬鹿にできない
東大理物に関しては500点中の100点が英語、京大理物に関しては700点中の100点が英語です。
京大は英語の配点が低い+問題が難しい(=平均点がそこまで高くない?)ので逆転可能です。しかし東大理物に関しては英語の配点が大きい+近年は問題が簡単なので高得点が必須なので英語は馬鹿にできません。
僕は英語はTOEICを使い、点数は795点でした。僕の友達を参考にすれば平均点くらい?ですが、実際のところこの点数が高いのか低いのかは分かりません。
とにかく焦らない
僕は東大理物の本番、量子力学の問2がいきなり分からなくなりました。「こんな簡単そうな問題なのに全然分からない...東大理物受かる?」って一瞬考えてしまいましたが、いったん忘れて次の大問に移りました。大問4まで解いた段階でもう一回戻ると普通に解けてその後量子力学は順調に解けました(完答はしてないけど)。東大理物、京大理物の場合は試験時間が沢山あります。1度考えて分からなくても、時間が経ったら分かることもあります。焦らずいきましょう。この「焦り」について、あえてshutaさんの記事(東大筆記の部分)を引用します。実は私は本番の5日前くらいにshutaさんが受けた代の東大理物の過去問を時間を完全に測って解きました。その時、全く同じ逆行列を求める問題で、解けなくてかなり焦りました。最終的に計20分合計5回くらい解き直してようやく解けました。この経験があり、当日は焦らずに済みました。
試験は相対評価
TOEICなどの試験は点数が重要なので絶対的な試験ですが、院試は他の受験生を落とす試験なので相対評価の試験です。これは前節の「焦り」と関係ありますが、仮に問題が大幅に難化して問題が全然解けなくても焦らないでください。なぜならば他の受験生も解けてなく相対評価の世界では何も影響がありません。
院試に関するポスト(ツイート)は百害あって一利なし
院試は情報戦です。特に東大理物(A3)の場合だいたい1研究室2人までなのでシビアな戦いがあります。X上で院試に関して一部隠したポストをしている人がいますが、その人のポストを遡ったり他の情報を繋げたりすれば、その人の志望研究室がだいたい絞り込めることがあります。これは何も良いことがありません。院試に関するストレスから何かポストしたい気持ちがあるのも分かります。私の場合はその時は院試ゼミのdiscordサーバーで呟いてました。ここで呟いても院試ゼミの仲間しか見られないので安心です。
個人的なTOEIC受験エピソード(おまけ)
TOEICの章で書きましたが、私はTOEIC受験と出願に関して2つ苦労したことがあるので、それについて書いていきます。まず前提として
- 初めてTOEICの申し込みページを訪れたのが3/5くらい
- 最低2回はTOEICを受けたい
- 福岡、広島のような都市部では毎月受験機会がある
- 沖縄では2ヵ月に1度の受験機会
- 京大のTOEICのスコア提出は紙の公式認定証を出願書類と一緒の封筒にいれる形式
という状況があります。
福岡弾丸旅行
私は4/3から8/3までOISTのリサーチインターンシップの関係で沖縄に居る予定だったので、沖縄で2回TOEICを受けようと考えてました。その考えの下、3/5にTOEICの申し込みページに訪れたら沖縄で開催される院試に間に合うTOEICは1回しかないという事実に気が付きました。これはヤバいです。TOEICを1回しか受けられないのはなかなかリスクが高いので、福岡で追加で1回受けることにしました。具体的に4月に福岡で受け、5月に沖縄で受けます。こうして私のTOEICを受けるための弾丸福岡旅行が決定しました。
日程としては土曜の午後に福岡に着き、1泊して日曜の午前にTOEICを受け、日曜の午後に沖縄に帰るものです。福岡空港が福岡の中心地にあり非常にありがたかったです。福岡旅行の感想は書きませんが、対策不足か、前日に屋台に行って飲み歩いた結果かは分かりませんが結果は非常に悪かったです。
2回目のTOEICで1回目の反省を生かして795点というまぁまぁの点数を取れたので、結果的にこの福岡弾丸旅行という戦略は成功でした。
京大事務にメール
実は2回目のTOEICは1つ不安を抱えながら受験してました。なぜならばTOEICの結果が京大の出願に間に合うのかという問題があったからです。東大のTOEICのスコアの提出方法はデジタル公式認定証を提出します。デジタル公式認定証は東大の出願に余裕をもって発行させるので特に問題はありませんでした。一方京大は紙での公式認定証が必要だったので、出願に間に合うのか心配でした。具体的な日程として
- 紙での公式認定証は6/25に発送予定
- 京大の出願は6/28の17時に必着
という感じでした。必着と言うのは6/28の17時までに私の出願書類が京都大学に到着しているということです。私はこの状況に対して色々対策しましたが、最終的には京大の事務に連絡して、デジタル公式認定証を印刷したものを提出できるということを確認しました。京大の募集要項を読む限り、TOEICが公式に発行した紙の認定証を提出すると読めます。しかし私はそれでは間に合わないと悟ったので、PDFで貰えるデジタル公式認定証を自分で印刷して提出しました。これなら間に合います。
ここから学べる教訓は、何か気になることがあれば積極的に事務に問い合わせるべきです。私はデジタル公式認定証を印刷して提出しましたが、これを知ることが出来た私は他の受験生より情報戦において有利に立ったと言うことが出来ます。もしかしたらこの情報を知らずに英語の点数が低くなってしまった受験生がいるかもしれません。したがって何か気になることがあったら積極的に問い合わせましょう。
参考にした院試体験記
色々な院試体験記を読みましたが、特に参考にした院試体験記を挙げておきます。
shutaさん、まえかわさんの記事は、外部受験という立場で院試体験記を書かれています。🦉さん、matsumotoさんの記事は東大の内部生という立場から外部生が入手しずらい貴重な情報がいくつも書かれています。特に🦉さんの記事の面接の節は貴重です。なおさんの記事は、彼は私と同期なので私の院試勉強中はこの記事はありませんでしたが、参考書のレビューが充実しているので載せておきます。
最後に
ここまで私の院試体験記を読んでいただいてありがとうございます。
この記事を読んだ人が第一志望の研究室に合格することを心より祈ってます。
-
対面で研究室見学を行う場合でもメールで院生と話したいという旨を伝えた方が良いでしょう。私はメールでは院生と話したいと伝えず当日先生とのお話が終わった段階で、院生とお話ししたいと先生に伝えました。院生と話すことを先生は快諾してくれますが、たまたま院生が全然来てないという心配があるので、事前に連絡した方が安心です。 ↩
-
HPを長らく更新しない影響で、HPに載っている研究内容と実際に行っている研究が全然違うという場合があるので注意しましょう。 ↩
-
研究室見学の章でも書きましたが、大学院は今後の人生を大きく左右すると思われます。なので研究内容のみで研究室を決める必要は全くないと思います。例えば研究内容に加えて、指導教官との相性、院生の様子、大学の立地と周りの住居環境、大学の奨学金の充実具合など。しかし志望調書の中には、研究室の志望理由を研究内容(とその周辺)以外は書くべきでないような気がします。志望調書に「大学の周りの環境が良いので志望します」と書かれても相手方は困りますしね。 ↩