はじめに
みなさま、こんにちは。
株式会社LITALICOの@itoken1013です。
普段はプロダクト開発組織のプロダクトや組織横断の課題解決を担うチームで働かせていただいています。
今回は先日受講してきましたユニバーサルマナー検定について紹介します。
ユニバーサルマナー検定とは
上記の公式サイトによると、ユニバーサルマナー検定とは『ユニバーサルマナーの実践に必要な「マインド」と「アクション」を体系的に学び、身につけるための検定』と紹介されています。
まずユニバーサルマナーという言葉を聞き慣れない方も多いのではと思いますが、私はユニバーサルマナーとは「障害の有無に関わらず、自分とは異なる多様な方々へ向き合うための心遣い」と解釈しています。
ここで「障害の有無に関わらず」と前置きをしたのは、一般的に障害と呼ばれている特性以外にも日常生活に不便を感じている方がおり(例えばベビーカーの親子、日本語を話せない外国人)、そのような方々も含めた配慮についても学んでいくことの意義が高まっているためです。
なお今回私はユニバーサルマナー検定3級を受講してきましたが、障害の種別である身体・精神・知的障害のうち、特に身体障害がある方にフォーカスした内容でした。
1級・2級については精神障害・知的障害がある方にも触れる内容と伺っています。
また、1〜3級以外にも派生したカリキュラムがあるようですので、ご興味のある方はぜひ上記のリンクからご覧いただければと思います。
受講のきっかけ
私はゆるく読書が趣味なのですが、1ヶ月ほど前に本屋さんで見かけたミライロ株式会社の垣内 俊哉さんのご著書「バリアバリューの経営: 障害を価値に変え、新しいビジネスを創造する」を読ませていただいたことがきっかけです。
書籍では垣内さんがご自身の経験からユニバーサルマナーの必要性を発見し、検定を展開していく中での苦難が語られており、垣内さんのお考えとユニバーサルマナーのコンセプトにとても共感できました。
また偶然ほぼ同じタイミングでミライロ社が展開されているデジタル障害者手帳アプリ「ミライロID」のユーザにも遭遇する機会がありました。
国内の障害者手帳は自治体によって300種類近くのフォーマットがあるのですが、ミライロIDはこれらをアプリとしてスマートフォン上で管理できるようにしました。
私も過去関わったプロダクトで自治体ごとに異なる仕様を開発していく大変さを経験しましたが、上述の書籍でも開発からリリース後に各事業者へ展開するまでのエピソードが語られており、障害者手帳を利用する方へ大きな恩恵をもたらしたミライロIDをとてもリスペクトしています。
あとは私のLITALICOへの入社時期がコロナ禍だったこともあり、なかなか障害がある当事者に対面する機会を持ちにくく、その点においてもあらためて解像度を高めてみたかった点が起因しているのかなと感じています。
ということで、関心度が高いうちに勢いで検定に応募してみたという経緯になります。
当日の様子
私が受講した3級については、90分の講座(と講座中のグループワーク)を受講することで認定されます。
受講方法には会場またはオンライン受講があり、私はミライロ社内にあります会場で受講しました。
当日の受講者は30名ほど(おそらく満員)、中には同日開催の2級の講座も併せて受講される方もいらっしゃいました。
参加者の属性は様々だった印象ですが、私と同グループだった方には障害者雇用を検討中の経営者の方や、市役所のバリアフリー化を考えている職員の方がいらっしゃいました。
どなたも東京以外から来られたとのことで、ユニバーサルマナー検定への関心の高さを感じた瞬間でした。
余談ですが、こちらのシールは検定中に催されるグループワークで一位を獲得すると貰えます。
せっかくなのでここに載せたくなり、頑張って一位を目指しました…!
受講してみて学んだこと
私はこれまで数年ほどLITALICOで障害福祉の領域に関わらせていただいているため、ある程度の基礎知識はある方なのかなくらいの認識でいたのですが、新たな発見が多く学びになりました。
中にはこれまで親切心でやっていたはずが、実は当人に心理的な負担となっていたかもしれない行動もあり、より多様な立場からの考え方を学ぶ重要性を痛感しました。
例として検定内容のコアに触れない範囲で紹介させていただくと…
- 視覚障害がある方で、点字が読める方は全体の10%程度(大半の方は読むことができない)
- (飲食店などで)車椅子に乗っている方のためにお店の椅子を移動し、スペースを作るのは実はNG行動
などです。
あとは配慮事項を示すマークの普及が進んでいる点が印象的でした。
ほじょ犬マークなど、理解しておくだけでも日常生活での配慮を実践できそうです。
LITALICOでの仕事に活かせそうな学びとしては、以下の2点です。
多様性を尊重したコミュニケーション環境
1点目はチームで仕事をしていく中でのコミュニケーションについてです。
LITALICOは基本的にリモートワークが中心であり、私が所属する部ではバーチャルオフィスツールを活用して打ち合わせや相談が行われています。
このバーチャルオフィスツールは元々私が入社後に導入提案したことによって運用が始まったのですが、当時はリモートワークで損なわれがちなコミュニケーションや、チームでの一体感やモメンタムを醸成したい点が目的でした。
それから数年で部全体に広がったバーチャルオフィスツールですが、大半の方には好意的に受け入れてもらえている一方、今年とある社員から「監視されているような感覚が合わない(だけどコミュニケーションに必要だから使っている)」という意見をいただきました。
意外に感じる意見だったのですが、思えば導入当時からコミュニケーションは活発な方がよい・そのためには距離感は近い方がよい、という先入観に囚われていた気がしています。
LITALICOは個々人の多様性を最大限尊重する文化がある場所です。
現在は大きな問題なく運用できているバーチャルオフィスツールですが、今後新たに入社してくる方の価値観や特性次第では、新たな手段を模索していく必要があるかもしれません。
このため一般論に囚われることなく、個々人の特性に応じた職場作りを実践していく視点が求められると考えています。
今回の検定を通じ、多様な個々人が最も働きやすくパフォーマンスを出せる環境・距離感とは何なのかを考え続ける重要性を再認識できました。
ユニバーサルな視点で考えるアクセシビリティ
今回の検定での学びを一言で表すと「日常生活におけるバイアス(偏見)の排除」だと理解しているのですが、この考え方はソフトウェア開発でも同様であり、特にWebアクセシビリティの分野においてはユニバーサルマナーの概念が根底に必要であると学習しました。
特に今年度の障害者差別解消法の改正により、民間事業者による合理的配慮の提供が努力義務から法的義務へと引き上げられました。
法的義務化に関わらず本来アクセシビリティは全てのユーザに対して意識すべきものでありますが、あらためて自分たちのプロダクトも多様なユーザに使っていただくものであり、今後の開発においても変わらずアクセシビリティを考えていく重要性を再認識しました。
また多様な立場を意識したアクセシビリティは当事者だけでなく、より多くの方に便益をもたらすとも考えています。
最近ではiOS18で目の動きだけでiPhoneを操作できる視線トラッキング機能が追加されましたが、元々は身体障害があるユーザのための機能が、怪我などで一時的に手が使えない方や子育て中で両手に赤ちゃんを抱いている方にも有益な機能提供となりました。
私は「ウェブ・インクルーシブデザイン Webのアクセシビリティとインクルージョンを実現するための実践ガイド」にある「障害者のためにデザインされたテクノロジーは万人を助ける」という一文がとても好きなのですが、上記のように障害を埋めるためのアクセシビリティが万人に還流されていく事例は今後も増えていくと考えています。
今後こうしたアクセシビリティやインクルーシブデザインに関連する開発に携わる機会が訪れた際には、今回の検定で得た視点を活かしていければと考えています。
おわりに
あらためて何らかの配慮が必要な方の多様性の幅広さ、そして配慮のために必要なマインドとアクションについて学びを得られた検定だったと思います。
中には本日から実践できる内容もあり、実生活でも大いに活用していけそうです。
来年は2級にもチャレンジしてみる予定です。
もしご興味のある方がいらっしゃれば、ぜひユニバーサルマナー検定をご受講いただければと思います。