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超伝導モーターについて

Last updated at Posted at 2023-10-30

はじめに

本記事では、超伝導モーターについてできる限り包括的にお話ししたいと思っております。

筆者は、超伝導モーターを電動航空機へ導入したい立場として書いておりますので、若干航空産業よりの話が多くなっておりますのでご了承ください。

超伝導モーターの必要性

本記事の読者の方には不要かと思われますが、念の為簡単におさらいしておきます。
超伝導技術の必要性は以下の4点で演繹できます。

  1. 脱炭素化の潮流
  2. 従来の推進システムを電動化したい
  3. 高出力密度化しよう
  4. 体積を増やさずに強力な磁界を発生させるシステムが欲しい

超伝導モーターのメリット (常伝導との違い)

超伝導モーターのメリットは、以下のように整理できます。

Screen Shot 2023-10-28 at 15.21.13.png
図1 超伝導モーターのメリット

  1. 最大トルクの増大
    抵抗がないことから、発熱がなくなる。すなわち、電流制限がなくなり、それに伴い際限なくトルクを上げることができる(機械的な制約は受ける)
  2. DC/DCコンバーターの削減
    低電圧でもアクチュエータを駆動できるためDC/DCコンバーターによる電圧の印加が小さく済む。これにより信頼性の向上・軽量化・低コスト化が実現
  3. 低速域における冷却性能
    低速域において、常電導モータは回転軸に同軸の冷却ファンの回転数が低くなり、高負荷時において銅損による発熱にモータの冷却能力が追いつかなくなるが、超電導モータでは、大電流を流しても発熱が生じないため、効率よく低速・大トルクを得ることができる
  4. 変速機による伝達ロスのカット
    常電導モータを小型・軽量化するためには、モータの高速回転化が必要であり、変速機を介して減速することで所望のトルクを得るが、超電導モータは大トルクを効率よく得られるので、ダイレクトドライブによる駆動が可能となり、減速機による伝達ロスを無視することができる。また、高速回転化が必要でなくなるため鉄損も小さくすることができる。
  5. 回生エネルギーの獲得効率の向上
    超伝導ワイヤーと永久磁石からのみ構成されていることから原理的にモーターのエネルギー損失の原因である銅損と鉄損が存在しないためエネルギー効率が理想的なものとなると考えられ、このモーターを応用することにより高い効率で回生エネルギーを利用できると考えられる。
  6. トルクの安定性獲得(コアレスの場合限定)
    コイルと磁場が直交しており、コアレス構造であるため誘導起電力の影響による高速回転におけるトルクの低下を抑えることが可能。
  7. 省エネルギー
    電気抵抗がゼロになることから、低損失。すなわち、より少ない巻き数のコイルでも強い磁界を発生させることができるため、体積と重量をそれぞれ1/10位かと大幅な小型軽量化が可能※1

※1
超伝導モーターは抵抗がないため出力重量比を非常に大きくすることができます。
例えば以下のような計算になります。

重量: 0.1[mm] × 4[mm]× 1000[m]× 9[g/cm^3] = 3.6[kg] 
トルク: 100[A] ×0.5[T]×1000[m]×1[m] = 50,000[Nm] 
出力: 2π×50[Hz]×50,000[Nm] \fallingdotseq 15[MW] 
出力重量比: 1.5[MW]/3.6[kg] \fallingdotseq 4200[kW/kg] 

Screen Shot 2023-10-28 at 22.13.07.png
図2 エンジンとモーターの出力密度

想定される用途

高トルク、大出力用途

  • 大型自動車
  • 高速鉄道
  • 高速エレベーター 等
  • 船舶エンジン 等

発電用途

  • 風力、水力発電 等

その他

  • 航空用途
  • ジェットエンジン 等

原理概説

ここからは、技術的な話に入っていきたいと思います。

超伝導について確認

 超伝導モーターの駆動原理は、基本的に一般的な電磁モーターを同じですが、トルクを誘導するための電流の扱い方が少し変わります。そのため念の為超伝導の原理について確認しておきます。

 ざっくりと超伝導の原理は「電気抵抗の素となる要素が、極低温においては実質的に無効になる」というものです。

詳細は、こちらの記事で解説しています。

超伝導モーターの構成

航空機を例に出して紹介します。図3,4に示すのが、ターボファンエンジンの内部を「超伝導モータ」に置き換えた電動推進システムです。

Screen Shot 2023-10-28 at 14.49.24.png
図3:航空機の推進系における超伝導モータの置き換えイメージ1

Screen Shot 2023-10-28 at 22.10.10.png
図4 超電導発電機による電力を超電導モーターへ

モーターの種類

超伝導モータは構造によっていくつかの分類法がありますが,いちばんオーソドックスな分類とされているのは以下の分類です。

1) 界磁超伝導モーター:回転子のみを超伝導磁石に置き換える。固定子側の電機子コイルを銅線のまま。
2) 全超伝導モーター:固定子と回転子に超伝導磁石を使用する

1)
前者は回転子の界磁部分が超伝導線材で構成された界磁コイルの場合、直流電流を通電する際に電気抵抗がゼロのため,銅コイルの場合に発生する銅損(ジュール損失)がなくなりますが、超伝導界磁コイルを冷却するための真空冷却容器が必要になります。この真空冷却容器により回転子の超伝導界磁コイルと固定子の銅線電機子コイル(常温)の機械的なギャップ(空隙)が拡がってモータ直径が径方向に拡大し、結果として重量増加を招く可能性もあるため、設計の際には注意が必要です[1]。

2)
後者の全超伝導モータは超伝導電機子コイルに交流電流を通電し、かつ超伝導電機子コイルへ回転子の界磁の磁極が回転によりN→S→N→S→…と変化することで発生する交流磁界が印加された際に「交流損失」という超伝導体特有の損失が発生するため、これを低減するための技術が要求されます。その一方で2つの超伝導コイル(界磁および電機子)が同一の真空冷却容器に収納可能であり、界磁超伝導モータよりもコンパクト・軽量化が期待できます[1]。

モーターの設計/設計基準

モーターの設計基準や設計方法を知りたい方はこちらの資料を参考にしてみてください。

AC損失を考慮した構造設計など包括的にまとめられています。

課題

要求定義

以下で、技術的な要求をまとめていきます。

出力要求

220人乗りの旅客機の場合 (B-767相当)、以下のモーター出力が必要になります。

  • 離陸時:41000 [kW]
  • 上昇時:32000 [kW]
  • 巡航時:20000 [kW]

出力密度にすると、16 kW/kgほどです。

温度要求

産業応用に際して問題となるのは、超電導コイルを常に超電導状態を維持できる温度、つまり臨界温度以下に維持しなければならないことです。しかしながら、冷却に必要なエネルギーを含めたシステム全体の効率が高くないため広く利用されるまでには至っていません。

冷却システムについてはこちらの資料でまとめてくださっています。

超伝導モーター開発においてクリアすべき課題

(作成中)

研究開発の今 - モーター

研究状況まとめ

超電導モーターの技術動向はこちらの資料の第3章でまとめてくださっています。

要点を書き出すと以下の通りです。

  • 直流・交流両方について完全超電導とすることが有効であると考えられている。よって、交流対応の超電導性に関する研究有無を研究技術の高度さと仮定した上で、「交流対応」研究であるか、「交流対応明記なし」の研究であるかという分類を行う
  • 情報ソースは、日本から東芝・九州大学・産総研、アメリカからNSF・NASA、イギリスからUKIR、フランスからANR
  • 航空機向け超伝導モーターの研究は日米欧で行われているが、特に交流対応を明記している研究は日本でのみ見られた (九州大学/産総研の研究)
  • 超電導モーター関連技術の研究開発情報リストを記載

その他、こちらの記事でも航空機向けの推進用超伝導回転機、およびそれらを含む推進系について世界の研究動向を紹介してくださっています。

電動推進航空機用電導回転機の技術動向

国内の研究動向

航空機用モーター:🛩
冷却システム:🧊

九州大学 / 産総研 🛩

研究テーマ

  • 航空機用超伝導推進システム (全超伝導モータ)

研究目的

  • CO2削減のための航空機の電動化にあたって、燃費がよく出力密度の高い、直流・交流両対応の完全な超伝導モーターを開発する

研究内容

  • 大電流を流すことで鉄心を使わずにコイルだけで大きな磁場を作り出せるモーターの軽量化を可能にした
  • また、直流に対しては電気抵抗ゼロであるが、交流に対しては磁場の向きが変わるごとに僅かに発熱して超伝導状態を壊しやすいという超伝導の欠点について、数μmの厚さの超伝導膜に切り込みを入れることにより、線材のエネルギー損失を従来の数十分の一に減らすことに成功した。

プレスリリース

↑要約すると、
『超電導線の交流損失予測、低減および大電流容量化技術を適用することで、全超電導モータとサブクール液体窒素をポンプで循環させる冷却システムと組み合わせて、世界で初めて回転試験に成功。超電導モーターの巻線には、産総研が独自に開発したイットリウム系超電導線材をレーザースクライビングで細線化する技術を用いており、この細線化により交流損失を防いでいる。』

京都大学 中村武恒教授 / 三菱重工 

テーマ
高温超電導モーターを室温で運転しても焼損を防ぐ技術

研究目的

  • 仮に超伝導状態を維持できなくなっても、焼損などのリスクを回避し連続運転を可能にする

研究内容

  • 高温超伝導誘導同期モータ(High Temperature Superconductor Induction/Synchronous Machine)を対象にして、同モータの巻線を高温超伝導体と常伝導体のハイブリッド構造にすることで、温度上昇に伴って室温になっても出力を低下させた上で連続駆動することに成功。
  • 超電導体と常伝導体のハイブリッド構造で電流を逃がす。冷凍機の故障で超電導状態が解除されてもモーターが壊れない。高温超電導モーターのフェールセーフ(安全な故障)機能として実用化を目指す。

プレスリリース

以下、記事の抜粋。

  • これまで、かご形誘導モーターと同様の構造をしたHTS-ISMの基礎回転理論や設計・制御理論を確立してきた。他の超伝導モーターよりも構造が単純で、コストも低減できるためとのこと。
  • HTS-ISMの巻き線に、高温超伝導体/常伝導体を並列化した「ハイブリッドかご形巻き線」と呼ばれる構造を考案。この巻き線に流れる電流は、高温超伝導体を流れる電流(IS)と、常伝導体を流れる電流(IN)の和となる。これらの電流は各導体における電気抵抗の逆数に比例するという。
  • これによって、高温超伝導体が超伝導状態になれば電気抵抗はゼロとなり、ある限界値までは損失の無いISのみが流れるという。一方、ハイブリッドかご形巻線の温度が上昇し、超伝導状態を維持できなくなると、その抵抗値は常伝導体の値を上回り、ほとんどの電流が常伝導体を流れることになる。この結果、室温で運転を続けても高温超伝導体が焼損するなどのリスクを回避できるという。

その他にもさまざまな研究成果がありますが、そのうちの高温超伝導誘導同期モータの研究開発を行ったALCAプロジェクトの総括を中村教授ご自身で書かれている記事です。

輸送機器応用を目指した高温超伝導誘導同期モータの研究開発-ALCAプロジェクトの統括と今後の展望

東京大学

図5に東京大学で研究を行っている電動推進航空機用全超伝導モータの全体図と断面図を示しました。2種類の超伝導線材を界磁/電機子コイルに使用し、これらを液体水素(−253度,20K)で冷却した全超伝導モータの研究を行っています。特に電機子コイルに多芯線構造のMgB2超伝導体でできた線材を使用することで、上記の交流損失を低減できると期待されています。現在、この超伝導モータに関して色々なシミュレーションなどを行ったところ、設計条件によっては出力密度として5.0MW級で25.6kW/kgが得られるとの見通しが得られています。

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図5:東京大学で研究を行う電動推進航空機用全超伝導モータ

東芝 🛩

テーマ

  • モビリティ向け軽量・小型で大出力の超電導モーター試作機

研究目的

  • 航空機等の大型モビリティ向けの超電導モーターを開発し、計量・高出力密度、高速回転を実現する

研究内容

  • 高速回転機の製造技術と超電導技術を用いて、最高出力2MWの小型高速超電導モーター試作機を開発した。当試作機は一般的な同レベルのモーターと比べて10分の1以下の軽量化と小型化を実現した。

インタビュー記事

北野精機

テーマ
高温超電導同期 電動機&発電機 HTS-MOTOR

研究内容
バルク高温超電導体を回転界磁磁石に応用した、ブラシと鉄心の無いアキシャル・ギャップ型同期電動機を開発した。この同期電動機は、回転界磁磁石であるバルク高温超電導体を冷却した後、電機子コイルを用いてパルス磁界を発生させ効率よく着磁を行い回転と制御を実現する。

プレスリリース

上智大学 高尾智明教授 🧊

テーマ
熱分散の研究

研究目的
何らかの不具合で超伝導電磁石の温度が上がってしまった場合に、生じた熱を素早く周囲に分散させることにより温度を下げて、超伝導の状態を安定的に維持する方法の研究です。

研究内容
熱伝導の良い素材を電磁石の中に挟むことで温度上昇を防ぐわけですが、その素材をどこに、どのような形状にして入れれば効率よく冷却効果を得られるのかが考えどころ。

記事

米国の研究動向

NASA Glenn Research Center  🛩

テーマ

  • 高効率メガワットモーター(HEMM)

研究目的

  • 電動航空機推進のニーズを満たすような4MW高効率メガワットモーター(HEMM)を設計する
  • HEMMの目標性能は、16kW/kg、効率99%であり、現在の航空機モーターや発電機と比べると、損失と重量が1/3になる

研究内容

  • 必要な極低温を維持しつつ、モーターが質量あたりの電力を多く生成できるようにするために、回転音響極低温冷却器、超電導ローターコイル、および高性能ステータの製造およびテストを行う。

Raytheon Technologies (米) 🧊

テーマ

  • 熱管理システムの開発

研究目的

  • 最小限の経済的コストで商用航空旅行に関する増大した環境負荷を軽減することを目的員、モーターを冷却するための熱管理システムを開発する

研究内容

  • ヘリウムを冷凍することで、モーターの固定し、回転し、端子を超伝導状態になる極低音まで冷却する熱管理システムを設計
  • 当プロジェクトが成功すれば完全な超伝導モーターを構築することができるが、極低音の達成と意地のためのクライオクーラーが非常に重いため飛行機に大きな重量を加えることが必要となる。このためチームは超軽量な高度磁気熱量適応クライオクーラーの開発を検討している。

英国の研究動向

University of Bath (英) 

テーマ

  • 完全超電導機向けの高効率高温超電導交流巻線の開発

研究目的

  • 超伝導体が交流電流を流す際にそれだけの熱放散(AC損失)が生じるか正確に推定し、この損失を減らすための戦略を特定する

研究内容

  • 当プロジェクトでは、超伝導機の交流損失を推定するための新しい実験・数値解析ツールの開発を行う
  • 実験データによって検証される新しいFEMモデルを開発し、完全超伝導きの交流損失を効率的に推定する。また、このモデルを用いて、最新の超伝導技術に用いて、完全超伝導きの交流損失を低減し、効率を向上させるための戦略を特定する

University of Cambridge (英)

テーマ

  • 交流励磁超電導コイルのエネルギー損失研究

研究目的

  • 超電導コイルに使用する超電導テープに生じるAC損失は固定子巻線用のACコイルの設計に対し制約を課している
  • 実際のアプリケーションにおける、コイルのAC、DCの磁界、輸送電流がモーターや発電機に与える影響について測定し、研究する

研究内容

  • 特定の実際の磁場と電流の構成でコイルを研究することで、モデリングよりも信頼性の高い研究を行う
  • 液体窒素ボイルオフと電気技術の両方を用いて超電導コイルを実験的に研究し、その結果を利用しコイルを記述する数値モデルを検証する
  • これにより、以下を得る
    • 1,テープの関連パラメータとコイルの特性間の知識
    • 2,コイルのエネルギー損失を測定するための実験技術
    • 3,大規模電気機械の設計と製造のために必要なコイルに関するデータ

University of Cambridge (英)

テーマ

  • 同期電動機用超電導複合永久磁石の開発

研究目的

  • ガスタービンのみを使用した航空機の推力改善は、航空による環境への悪影響を抑制するには十分でないことから、超電導モーターを利用したハイブリッド電気推進システムの構築を行う

研究内容

  • コイルの代わりにローターに磁束超電導複合永久磁石(SCPM)を使用することで、ギャップフィールドが拡大し、高い電力密度が実現する。当プロジェクトでは、これらのSCPMを最新の商用の3mmおよび20mm幅の高温超電導テープの形で開発す、モーターに適した形状の磁場生成について調査を行う。
  • また、ローターに生じる可能性のある振動によるSCPMへの消磁効果を詳細に研究し、開発に許容できるレベルまで低減させる方法を実験的に調査する。

University of Strathclyde (英)

テーマ

  • 完全超電導機向けの高効率高温超電導交流巻線の開発

研究目的

  • 超電導体が交流電流を流す際にそれだけの熱放散(AC損失)
    が生じるか正確に推定し、この損失を減らすための戦略を特定する。

研究内容

  • 当プロジェクトでは、超電導機の交流損失を推定するための新しい実験・数値解析ツールの開発を行う
  • 実験データによって検証される新しいFEMモデルを開発し、完全超電導機の交流損失を効率的に推定する。また、このモデルを用いて最新の超電導技術に用いて、完全超電導機の交流損失を提言し、効率を向上させるための戦略を特定する

University of Strathclyde (英) 🛩

テーマ

  • 大型民間航空機用のモジュール式超電導軸流束電機 (界磁超伝導モータ)

研究目的

  • モジュラー設計が航空機のモーター定格のスケールアップにどのように役立つかを研究する。

研究内容

  • ソフトウェアを使用して、軸流束超電導モーターのローターとステーターディスクの数のシミュレーションを行う。また、高温超電導体を用いて、超電導ローターと超電導ステーターの両方を研究、固定定格モジュラーの設計方法論を開発することで、機械定格をスケールアップする可能性を探る。

Newcastle University (英) 🧊

テーマ

  • 電動航空機の将来のモーター技術のための冷却システム

研究目的

  • 東芝が開発中のモーター技術の活用を可能にするような高度な冷却技術の検討を行う。

研究内容

  • 当プロジェクトでは、東芝が航空宇宙推進用途で研究設計を進めているモーター技術に合わせて、既存の冷却方法の性能、能力、実行可能性の評価を行う
  • また、既存の空冷・水冷・油冷のような冷却方法とは別に、超電導巻線とそれに関する冷却方法、電気機械でのヒートパイプの使用、相変化冷却などの冷却技術について研究を行う(具体的にどの冷却技術が主な焦点となるかは決定していない)。
  • 冷却システムの有効性の分析方法としては、様々な数値モデリングや実験手法、「数値流体力学」などの非常に複雑な計算ソフトウェアを使用する可能性がある。

フランスの研究動向

CRISMAT Laboratoire de Cristalographie et Sciences des Materiaux (クリストマット結晶学・材料科学研究室)🛩

テーマ

  • 超電導モーターの実現

研究目的

  • 航空機の高効率エンジンの製造を目的として、新たな超電導機械構造の開発および既存の超電導機械構造の最適化を目指す

研究内容

  • 当研究では、YBCO(イットリウム系超電導体)、BSCCO(ビヒマス系超電導体)、MgB2(二ホウ化マグネシウム)の3つの超電導材料を超電導スクリーンと超電導コイルの両方に使用することによって、超電導スクリーンの実現を目指す

INSTITUT NATIONAL POLYTECHNIQUE DE LORRAINE(ロレーヌ国立工科大学)

テーマ

  • 超電導機インダクターの実現

研究目的

  • 高質量および体積のパワーとトルクを得るために、航空機の超電導モーターとオルタネーターの新しい超電導構造の発見と既存の構造の最適化を目指す

研究内容

  • 事前にサイズ・仕様を規定した電気モーターに超電導素子を使用することを目的とした研究と、これらの結果を踏まえてより大きなデバイスで活用することを目指す研究の2つのアプローチで構成される
  • 高出力超電導モーターおよびオルタネーターの実現可能性を検証し、実際に使用する場所での実証も可能とするような、10~100kWで動作する実験装置/産業用デモンストレータの研究を行う。
  • デモンストレータの製造にあたって、以下の2つの方法を用いてインダクタの性能を比較する
    • 1,インダクタの銅巻線を超電導線材に変更することで輸送電流容量を向上させる
    • 2,超電導磁石を使用することでより大きな磁場を作り出す

SAFRAN(サフラン)/ GROUPE DE RECHERCHE EN ENERGIE ELECTRIQUE DE NANCY(ロレヌ大学電気エネルギー研究グループ)🛩

テーマ

  • 航空用超電導エンジン

研究目的

  • 航空用超電導モーターにより、コスト、騒音、温室効果ガス、汚染物質排出量の十分な削減を目指す

研究内容

  • 航空システムの最も重要なパラメータは、貯蔵システムの質量エネルギー(Wh / kg)と電動アクチュエータまたは電力変換器の質量電力(kW / kg)である。超電導体などの材料を使用すると、モーターや発電機のこれらの出力密度が大幅に向上する可能性がある

研究開発の今 - 材料

物質・材料研究機構(NIMS)/ 明興双葉(東京・中央)

材料
MgB2

研究内容
世界最細となる直径15マイクロメートルのMgB2(二ホウ化マグネシウム)超電導線を開発した。直径約300マイクロメートルほどの小さな結び目を作れる柔軟性を持つ他、大きな特性劣化もないという。将来、この超電導線を使った超電導モーターの開発が進めば、液体水素を搭載した電動航空機などの実現可能性が高まる。

プレスリリース

産総研

材料
イットリウム系酸化物超伝導線材

研究内容
高い磁場環境で大電流が流せるイットリウム系酸化物超電導線材を開発した。

プレスリリース

超伝導モーターのこれから

ジェットエンジンは片翼に1~2基を搭載していますが、全超電導推進システムの超電導モーターはより多くの数を分散配置することを想定しており、航空機の上部に配置すれば現行の航空機の半分以下の出力で離陸できるようになります。ボーイングの「B787」が出力2MW程度といわれており、開発目標とする1MWのシステムは、新たに開発する超電導航空機に十分な出力を持つことになります。なお、九州大学大学院の岩熊研究室は、今後に最も大きな需要が見込まれる100~200人乗りの航空機を想定し、出力20MW級の超電導モーターの開発を目指して研究しておられるとのことです。
e2-3_fig3.png
出典:「次世代電動推進システム研究開発」における全超電導推進システム開発の概要

また、既存の電池では重量エネルギー密度が低いため、電源には、電池は使わず、既存のジェット燃料かLNG(液化天然ガス)、将来的には液体水素による発電機から得ることが想定されています。発電機とモーター、これらをつなぐ配線を超電導化したのが全超電導機となり、比較的安価な液体窒素で超電導にできる高温超電導材料を使うことが想定れています。ジェット燃料を利用する全超電導機は、冷凍機の電力を必要とされていますが、これを含めても燃料消費量を現行機の30%にできるとのことです。高効率、高安全性の冷却システムが開発されることを願っております。

今後の展望についてこちらの記事で九州大学大学院システム情報科学研究院の岩熊成卓教授が語ってくださっています。ぜひお目通しください。

開発の歴史

こちらでまとめてくださっています。
京都大学の中村武恒教授がこちらの記事でまとめてくださっています。

モーター開発技術や材料開発技術の進展、その時取り組んでいたプレイヤーと直面していた課題について、特に高温超伝導バルクモータと高温超伝導巻線形モータに焦点を当てて解説してくださっています。

参考文献

  1. 超伝導技術は大空へ https://www.jsap.or.jp/columns/gx/e2-3 (閲覧日2023年10月27日)

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