はじめに
主にこちらのサイトを参考にしております。
その他、参照させていただいたサイトなどは、末尾に記載しております。
ACモーターとは
「ACモータ」とは,交流電気を流すことで動くモータです。
ACモータの特長は,整流子やブラシ,制御回路が不要であることです。シンプルな構造でコストを抑えて製造できるため,扇風機や掃除機などの家電,水をくみ上げるためのポンプや搬送用のコンベア,産業用機器など,さまざまな用途に使われています。
交流モーターの分類
- 誘導電動機
- 単相誘導電動機
- かご形三相誘導電動機:電車、電気機関車などに使われる。
- 巻線形三相誘導電動機
- 同期電動機
- 電磁石同期電動機:揚水発電のポンプ水車などに使われる。
- 永久磁石同期電動機:電気自動車などに使われる。
- リラクタンスモータ:界磁の励磁が不要で回転子の吸引力のみで回転する。[1]
- 交流整流子電動機:電気掃除機などに使われる。
AC モータを分類すると、整流子型モータ、同期モータおよび誘導モータに大別されます。同期モータおよび誘導モータはともに、回転磁界により回転速度が決定するACモータです。ここで回転磁界とは、ステータ巻線に三相交流や二相交流などの多相交流電流を流した際に、発生した磁界が多相交流電流の周波数で決まる回転速度(=同期速度)で回転する現象をいいます。回転磁界によってロータが吸引されて回転しますが、その回転法の相違によってACモータが分類されます。
誘導モータの分類
誘導モーターは、使用する電源によって二つに分けられます
- 「単相誘導モーター」:家庭に二本線で配電されているAC100Vを電源とするモータ
- 「三相誘導モーター」:工場等に配電されている三本線の AC200V を電源とするモータ
単相誘導モーター
- 電源として家庭に配電されている100V 50/60Hzを利用します。
- 単相誘導モーターは、単相交流で動作します。仕組みがシンプルで、比較的安価なモーターです。洗濯機や扇風機、電灯などの家庭用製品に用いられています。
- ただし、コンデンサを使って、擬似的な2相交流にしてモータに供給する機種が多いです。
三相誘導モーター
- 電力会社が送・配電している100/200V、50/60Hzをそのまま、あるいはトランスを介して利用する場合と、インバータという電子回路を介して、周波数と電圧を可変・調整して給電する場合があります。
- 三相誘導モーターは、三相交流で動作します。モーターのエネルギー損失が小さく、単相誘導モーターよりも大きな動力を得られます。回転子の形状によって「かご型」や「巻線型」があり、近年の主流はかご型です。主に、産業機械の動力として利用されています。
最近では、三相交流モータをインバータ(inverter)という半導体素子を用いた電力変換回路によって駆動する機会が多くなってきました。インバータによって電圧と周波数を制御して、目的にかなった回転速度とトルクで運転するためです。
同期と非同期
回転磁界型モータを語るときに、同期・非同期という言葉がよく使われます。これは「交流の周波数と同期して回るのか、同期しないのか」という技術的要素に関係します。次に、重要な用語を記します。
◎同期速度(synchronous speed)N0
同期速度は、回転磁界型交流モータで重要な意味をもつパラメータです。周波数(frequency)と極数(number of magnetic poles)によって決まります。
同期速度 $N_0 = \frac{2f}{p} (f : 周波数, p : 極数)$

電力会社が配電する電気の周波数は、富士川より西で60Hz、富士川より東では50Hzです。
回転磁界型モータの最小極数は2ですから、電力会社の電源をそのまま利用するときの同期速度は、富士川より西で秒速60回転(分速3600回転)が最高です。
同期速度で回るモータの総称を、同期モータ(synchronous motor)と呼びます。
同期速度より遅い速度で回るのが、非同期モータ(asynchronous motor)です。
非同期モーターは、誘導モーターで呼ばれることが多いです。
誘導モーター(非同期モーター)
誘導モーターは、回転する磁界(回転磁界)を利用します。
まず、固定子のコイルに交流電流を流し、回転磁界を発生させます。固定子の内側にある回転子は鉄などの導体であるため誘導電流および電磁力が生まれ、回転子がつられて回る仕組みです。
回転磁界の回る「同期速度」よりも回転子の回転速度のほうがやや遅いため、「非同期モーター」とも呼ばれます。
誘導モーターのメリットは、構造が比較的単純かつ堅牢で、メンテナンスがしやすい&コストが安い、大型化するほど高効率になるメリットがありますが、すべりによるエネルギーロスや、誘導電流によるロータの発熱を考慮しなければなりません。
三相誘導モーター > かご型誘導モータ
かご型誘導モータ(squirrel-cage rotor type induction motor)のロータには、かご型ロータを使用します。
外装を含めるとこんな感じです。
鉄と書いているのは積層鉄心のことで、四角で囲んだ部分は何枚もの薄いケイ素鋼板の集まりです。
積層にすることで余計なうず電流の発生を防いで効率を良くしています。
回転力を生み出しているのはアルミの部分です。
この部分が電磁力を利用して、回転磁界につられて回ります。
概略図を書くと以下のような感じです。
- ステーター(固定子)鉄心
- ステーター(固定子)コイル
- ローター(回転子)
- 出力軸
- 負荷側ベアリング
- 反負荷側ベアリング
- 負荷側ブラケット
- 反負荷側ブラケット
- 冷却ファン
- ファンカバー
電流の流れるバーの部分はアルミが多いですが、銅バーを使用しているタイプもあります。 バーを端絡環と呼ばれるリングでつなげることで、環の部分は電流がニュートラルになります。 写真のA-A'の部分の断面は下のようになります。
上の断面図の導体の形状は「二重かご型」といいます。 この導体の断面の形状でモーターのトルク特性が大きく変わってきます。
始動トルクの小さい普通かご型を使っているのは小型機のみのようです。 一般的なのはアルミダイカストに特殊二重かご型(普通かごと二重かごが交互に入る)です
工業用の汎用動力モータがこの形式です。かご型ロータを硝酸に浸して鉄分を溶解すると、図のようにアルミニウムの「かご」だけが残ります。ロータのかご型導体の形状と材質を調整することによって、特性曲線を微妙に調整することも可能です。
かご形モーターは比較的安価で運転設備も少なく、保守や修理が簡単です。それに対し、巻線型モーターは、電源盤や抵抗機、制御器が必要になるなど設備が複雑になります。かご型より高価ですが、加減速での電流変化が小さく、始動時の回転もスムーズです。

図 硝酸で鉄分を溶解するとアルミニウムの「かご」だけが残る。
左がかご型誘導モータ、右はリラクタンスモータのロータ
性能
電源電圧:200/220V以上〜 50/60Hz
定格出力:数w〜数千kw
回転速度は n=120f[周波数]/p[極数]×(1-s[すべり]) となります。
すべりは%で表しまして、おおむね1〜10%程度になり、容量が大きくなる程すべりは小さくなります。 効率も%で表しまして、おおむね82〜96%程度、容量が大きくなる程効率は良くなります。
三相誘導モーター > 渦電流モータ
渦電流モータ(eddy-current motor)のロータには、軟鋼ロータ(図)を使用します。起動時に大きなトルクを発生し、速度の上昇とともにトルクが低下する特性を有します。
図 軟鋼ロータ
円筒状の鉄の塊(かたまり)を主要材料とする。渦電流モータ用。
三相誘導モーター > 巻線型誘導モータ
巻線型誘導モータ(Wound-rotor type induction motor)には、巻線型ロータ(図)を使用します。スリップリングを通して接続した可変抵抗器により、モータの特性を変化させることができます。 特に、大型モータに利用されます。
図 巻線型ロータ
ブラシによって通電するための 3 本のスリップリングがある
単相誘導モータ > コンデンサモータ
分相始動式単相モーターの場合ローターはかご型を使います。これは三相かご型のローターと全く同じ構造です。 巻線は単相の主巻線にプラス補助として始動用巻線を別に巻いてあります。
- ステーター(固定子)鉄心
- ステーター(固定子)コイル
- 遠心力スイッチ
- コンデンサ
特徴
特徴はその始動方法にあります。 単相モーター自体の回転するしくみは単相誘導モーターの原理にて説明しておりますので,ここでは省略します。 要約しますと単相モーターというものは始めに回転力を外部から与えてやれば回り続けるということです。 そこでこの分相始動式始動といいますのは,連続運転用の磁界をつくるコイル(主コイル)とは別に始動の為だけのコイル(始動コイル)をステーター鉄心内に巻いてあります。そして始動コイルには直列にコンデンサを入れています。
コンデンサモータ(capacitor motor)は図 1.19に示すように、 A 相にコンデンサを挿入して VA が VM より進み位相となるようにしています。
始動コイルは主コイルに対して90°空間的にずれた位置にあり、始動コイルに流れる電流はコンデンサを通す事で、時間的に1/4サイクルずれて流れる為 単相誘導モーターの原理で説明したように回転磁界が発生します。 主コイルは始めに回転を与えてやれば回転し続けるために,そうなると補助巻線は必要がなくなります。そこで機械的に動作する遠心力スイッチを設置していて,それは回転が定速に達すると始動回路部分を切るために働きます。 始動用コイルに直列にコンデンサが入ることでコンデンサ始動式というようです。下は実際の遠心力スイッチ(ガバナスイッチ)の写真です。
※写真はフランス製電動石臼用単相モーターです。
もっと小型のものでは始動用コンデンサの無い分相始動式もあります。
これはコンデンサを利用せずにコイルのもつ誘導リアクタンスの差を利用して回転磁界をつくります。
といいますのはコイルの抵抗といえるインピーダンス(誘導リアクタンス)には電流の流れを早める(位相を変える)働きがあるからです。
この位相の大きさはコイルの自己インダクタンスによって変わってきます。自己インダクタンスはコイルの巻数と線径が関わってくるので,
つまり始動コイルに(主コイルに対して)線径の大きな銅線を少ない巻数で巻いてやると主コイルに流れる電流と始動コイルに流れる電流の位相差が出来るのです。
始動コイルの位置を空間的に90°ずらして入れておけば、磁界は楕円軌道のややいびつな回転磁界となり,モーターは回り始めるということです。
単相モーターは他にもコンデンサに電圧が入りっぱなしのコンデンサモーターや、くま取りコイル始動式があります。
コンデンサモータには、コンデンサCを始動時にだけ挿入するコンデンサ始動型モータ、始動時から一定のCを挿入しておくコンデンサラン型モータ、運転に入ったらコンデンサ容量を切り換えて小さくする二値型コンデンサモータに分類されます。
コンデンサモータは、家電製品の中でも比較的に始動トルクの小さいものに好んで用いられるほか、工業用途として小型ベルトコンベア駆動やFA(Factory Automation)用途でも簡便さとコストの面で用いられています。
図1.20工業用途で用いられるコンデンサモータ
性能
電源電圧:100-200V 50/60Hz
定格出力:100w〜750w
始動トルクは大きく200〜300%
始動電流は400〜500%
始動トルクの割に始動電流は少なめらしい
コンデンサの無い,分相始動式の場合は 電源電圧:100-200V 50/60Hz 定格出力:20w〜250w 始動トルク125〜200% 始動電流は500〜600% こちらは始動トルクが小さく,コンデンサ式に比べて始動電流が大きくなります。
単相誘導モーター > くま取りコイル型単相誘導モータ
くま取りコイル型誘導モータ(shaded-pole type single-phase induction motor)は、主巻線の他に、主巻線から電気角で90°より少ない角度だけずれた位置に、短絡された補助巻線を持つ誘導モータです。
補助巻線は、主巻線からの変圧器作用で電圧を誘導して短絡電流を流し、その起磁力と主巻線の起磁力によって回転磁界を発生します。
くま取りコイルに発生する損失のために効率は良くありませんが、構造が簡単なので、ファンモータのような小容量のものに用いられます。
同期モーター
同期モータ(synchronous motor)は、回転速度が同期速度に等しいモータのことで、以下の3種類があります。
リラクタンスモータ
リラクタンスモータ(reluctance motor)は、ステータに分布巻ステータ(図1.13左)を、ロータに突(凸)極かご型ロータ(図1.14右)をそれぞれ使用します。
始動時には誘導モータとして回転し、運転時には電源周波数に同期して回転するもので、50Hz地帯と60Hz地帯で回転速度が異なります。起動トルクが比較的大きいモータです。また、このモータはリアクションモータとも呼ばれます。

図1.13分布巻ステータ(左)と6コイル集中巻ステータ(右)
図1.14(左)かご型ロータ(かご型誘導モータ用)。(右)凸極かご型ロータ(リラクタンスモータ用)。
導体として銅、黄銅、アルミニウムを使用。
ヒステリシスモーター
ヒステリシスモータ(hysteresis motor)は、ステータに分布巻ステータ(図1.13左)を、ロータに半硬磁鋼ロータ(図1.15)をそれぞれ使用します。
ヒステリシス特性を利用して回転させるもので、回転ムラや振動が非常に少ないモータです。また、起動トルクと停止トルクの差がないため、一定負荷の条件下での運転が望ましいといえます。特殊なヒステリシスリングを保有しているメーカでないと製造できません。
インダクタ型モータ
インダクタ型同期モータ(inductor-type synchronous motor)の動作原理は、ステータコイル(電磁石)に流す電流の周波数にロータの動きを同期させ、吸引および反発を行いながら回転運動に変えていくものです。
つまり、ロータの回転速度が、電流の周波数で一意に決まる回転速度(同期速度)の整数分の1になります。ロータ構造から
- クローポール型(claw-pole motor)
- ハイブリッドステッピングモータ型(超低速同期モータ)(slow-synchronous motor)
の2種類に分類できます。
クローポール型は、モータの構造とギアヘッドの組み合わせにより、さまざまな速度のものが用意されています。
クローポール型の用途として、遊戯機器(パチンコ機)、複写機、防犯カメラ駆動、記録計、自動カーテン、バルブ開閉などがあります。ハイブリッドステッピングモータ型の用途は、主として製造用機械です。
整流子型モーター
整流子型モータ(commutator motor)とは、ロータとして図1.12 に示す整流子型ロータを使う モータの総称です。現在でも大量に使われているのが、ユニバーサルモータ(交流シリーズ、交流直巻モータともいう)の名前で呼ばれるモータの類です。
主な用途は、電気掃除機、電動工具およびジューサーです。つまり、単相交流を電源として高速運転が必要な分野です。
ここでユニバーサル(universal)という言葉には、交流でも直流でも回転する(つまりは交直両用)という意味が込められています。
構造は、原理的には直流直巻モータと同じですが、交流の場合は次を考慮しなければなりません。
- 直流の場合はステータの磁束は一定でしたが、交流の場合には変動します。従って、変動する磁束によって発生する渦電流を、鉄心を絶縁積層して軽減する必要があります。
- 電圧降下は直流の場合には抵抗による降下のみでしたが、交流では、電磁誘導による位相ずれも生じるため力率が悪化し、出力は減少します。
図1.12整流子型ロータ 斜溝(スキュー)型/直溝型
巻線をもち複数の銅片で構成される整流子を備える。
参考文献