目次
- モーターとは
- モーターの論点
- 動作原理
- モーターの構成
- モーターの分類と用途
- 直流モーター(ブラシあり)
- 簡単な説明
- 詳細
- 直流モーター(ブラシレス)
- 交流モーター
- 誘導型
- 同期型
- ステッピングモーター
- VR型
- HB型
- PM型
- (超音波モーター)
- 直流モーター(ブラシあり)
- 研究
- 方針と内容
- モーターの沿革領域
- モーター制御
- 材料力学
- モーターのこれから-産業への応用-
- これからの概要
- 超伝導モーターについて
- 電動航空機への応用
- 電動航空機の用モーターの概要
学習教材
時間がある方はこちらを参照してください。かなり詳しく解説してくださっています。
本題に入っていきましょう。
モーターとは
電動機は学術的には、電力を動力に変換する装置、あるいは電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換する装置のことです。
動作原理
モーターの特徴
1.エネルギー変換効率が高い
たとえば,一般的なエンジンの熱効率は30~40%といわれています。これは,投入したエネルギーの30~40%しか動力にならず,残りの60~70%は熱として捨てられていることを示しています。
一方,モータのエネルギー変換効率は80%以上です。このように,エンジンと比べてエネルギーを無駄にすることなく,動力に変えられるのです。
2.構造がシンプルで制御しやすい
エンジンは多くの機械部品から構成されており,それぞれの部品も精度よく作る必要があります。また,エンジンを電子制御するためには多くのセンサを使うので,制御が複雑になります。
エンジンに比べると,モータは構造がシンプルであり,直接電気で動かすことができることから,電気できめ細かく制御することに適しています。
3.クリーンである
この点も忘れてはいけません。エンジンはガソリンを燃やして動力に変換するため,どうしても二酸化炭素(CO2)が排出されます。それに対して,モータはそれ自体からガスが排出されることはありません。その上、運動エネルギーから電気エネルギーを得ることも可能です。例えば、電気自動車や風力発電、新幹線はモーターによって運動エネルギーから電気エネルギーを得ています。モーターは駆動力だけでなく電力も生み出せるため、幅広い用途に使われているわけです。カーボンニュートラル実現に向けた流れが加速するなか,モータには大きな期待がかけられています。
※一般的にモーター(電動機)と呼ばれるものは、厳密には電磁力を利用する「電磁モーター」を指します。エネルギー変換の原理が異なる「静電モーター」や「超音波モーター」は含まれません。
モーターの論点
日本では、発電される電力の60%以上がモータで使われています。
地球環境保全のためには、損失の少ないモータの設計とその利用法が重要な課題です。
上で述べた入力電力、出力(動力ともいう)および損失との間には、次のような関係があります。
入力電力 = 機械出力 + 損失
これらの量を表す単位は、ワット[W]です。
また、入力電力と機械出力の定義は、以下の式で表されます。
入力電力[W]=電圧[V]×電流[A]
機械出力[W]=回転速度[rad/s]×回転力[Nm]
(radはラジアン、Nmはニュートン・メートルと呼びます)
モータの効率(efficiency)とは、入力電力に対する機械出力の比を百分率 (percentage)[%]で表したものです。

損失の中には摩擦のように機械的な原因によるものもありますが、大きな割合を占めるのは銅線内の損失と鉄心内の損失です。前者を銅損(copper loss)、後者を鉄損(iron loss)と呼びます
モーターの構成 (小型)
最初に、ステッピングモーター、ブラシ付直流(DC)モーター、ブラシレス直流(DC)モーターの3種類について、構造の概略と比較を示します。これらのモーターの基本構成部品は、コイル、磁石、ロータが主体で、種類によりコイルが固定のものと磁石が固定のものがあります。
以下、例示した図に関する構成の説明です。細かくは別構造の場合もありますので、大枠での構成だと理解してください。
このステッピングモーターは、コイルが外側にあり固定されており、磁石が内側にあり回転します。
このブラシ付DCモーターは、磁石が外側にあり固定されていて、コイルが内側にあり回転します。コイルに電流供給と切り替えの役目をするブラシと整流子(コミュテータ)があります。
このブラシレスモーターは、コイルが外側にあり固定されており、磁石が内側にあり回転します。
ここでは、モーターの種類によって、基本構成部品は同じでも構造が異なることを概略的に理解しておいてください。

ステータ
これら構成要素の中で、モータの基本的な分類法に大きく関係するのが、ステータ(固定子)とロータ(回転子)です。ステータの典型的な構造として、次の4種類が挙げられます。
- A:分布巻ステータ
- B:集中巻ステータ
- C:誘導子型ステータ
- D:永久磁石型ステータ
ロータ
ロータについては、10種類に分類できます。
- かご型ロータ(squirrel-cage rotor)
- 突(凸)型かご型ロータ(salient-poled squirrel-cage rotor)
- 半硬磁鋼ロータ(semi-hard steel rotor)
- 軟鋼ロータ(solid-steel rotor)
- 凸極型珪素鋼鈑ロータ(salient-poled lamination rotor)
- 微細歯条型軟鋼ロータ(solid-steel rotor with fine teeth)
- 永久磁石型ロータ(permanent-magnet rotor)
- 誘導子型ロータ(inductor rotor)
- 巻線型ロータ(winding rotor)
- 整流子型ロータ(commutator rotor)
モーターを構成する材料
モータを構成する主要素材を簡単に説明しましょう。
電線(wire)
電線とは電流の通路であり、導線(conductor)とも呼びます。材料としては銅が一般的ですが、まれにアルミニウムが使用される場合もあります。
電線には、電源からモータへと電力を供給するためのリード線と、モータ内部に巻かれて結線された巻線があります。磁界を発生するための電線という意味から、巻線のことを英語では magnet wire と称します。また、電線の絶縁材(後述)にエナメル樹脂を用いていたことから、日本語ではエナメル線という名称もあります。
現在では、絶縁材に高分子材料を用いていますが、エナメル線の名前だけが残っています。
エナメル線の名称は、モータの巻線の部材という意味から、上記の英語magnet wire に対応する日本語として用いられます。
鉄心(core)
鉄心とは磁束の通路であり、鉄心の文字から分かるように材料は鉄です。また、2つの磁石間を磁束で結合するための鉄心を継鉄(ヨーク:yoke)といいます。
機械構造用の鉄と鉄心用の鉄には、副成分の種類に違いがあります。機械構造用の鉄には炭素(C)が含まれていますが、鉄心用の鉄にはシリコン(Si)が混入されており、これには珪素鋼という名称があります。モータの場合には、鉄心はステータ鉄心とロータ鉄心とに分かれ、両者間の空隙(エアギャップ)を通して磁気回路が構成されます。電磁石界磁型 DCモータ(後述)の界磁回路を構成するステータ鉄心では、磁極は直流で励磁されるため鉄心を積層構造する必要はなく、軟鋼が用いられます。
一方、電機子回路を構成するロータ鉄心では回転とともに磁束が変化するので積層鉄心が用いられます。また、小型 DCモータでは、磁極に永久磁石がよく利用されます。同期モータのステータ、誘導モータのステータとロータの鉄心は共に交流で励磁されるので、何れも積層鉄心を用います。
絶縁体(材)(insulator)
電流が所定の場所以外に流れないように遮断するのが絶縁体であり、その素材が絶縁材です。
これには、ゴムやエナメルといった高分子化合物・樹脂、紙、マイカ、ガラス繊維などが使われています。
永久磁石(permanent magnet)
モータの構成する素材で重要なのが、磁界の発生源となる永久磁石です。これも鉄を主成分とする合金あるいは酸化物といってよいでしょう。
モーターの分類
モータの分類法としては、次の4つの方法が考えられます。
-
①変換原理による分類(電磁モータ・静電モータ・超音波モータ)
-
②電源による分類(直流電源・単相交流電源・三相交流電源)
-
③回り方による分類(回転速度を決める要素・逆転)
-
④構造による分類(回転するものと静止しているものの組み合わせ)
分類の仕方は、モータに対する考え方によって異なってきます。以上に挙げた分類法はいずれも製造側の視点に立ったものです。
また、ざっくりとまとめると、
Tech web https://techweb.rohm.co.jp/trend/glossary/18321/
電源による分類で分けてそれぞれについてまとめているのでご確認ください。
直流モーター
交流モーター
ステッピングモータ
超音波モーター
モーターの比較
https://www.tsugawa.co.jp/motor/
モーターの製造
モーターの製造工程 https://www.tsugawa.co.jp/process/
研究
モーターの沿革領域
モーター制御
材料力学
モーターによる発電
モーターの発電原理
モーターは、電気エネルギーを動力に変換するもので、回転運動は磁界と電流の相互作用による力を利用することで得られることは前回説明した通りですが、逆に電磁誘導によって機械的エネルギー(運動)を電気エネルギーに変換します。すこし回りくどい言い方をしましたが、モーターには発電作用があります。発電と言えば第一に発電機(ダイナモ、オルタネータ、ジェネレータなどとも呼ばれる)を思い浮かべると思いますが、原理はモーターと同じで基本構造も近いものです。端的に言えば、モーターは端子に電流を流すことで回転運動を得ることができ、逆にモーターの軸を回すと端子間に電流が流れます。
モーターの発電作用とは
先に記した用に、モーターの発電作用は電磁誘導によります。以下は、関連の法則と発電作用を図化したものです。

左の図はフレミングの右手の法則に則り電流が流れることを示しています。磁束の中を導線が運動することで導線に起電圧が発生し電流が流れます。
中央と右の図はファラデーの法則とレンツの法則で、コイルに磁石(磁束)を近づけた場合と遠ざけた場合に電流が流れ向きが変わることを示しています。
これらを踏まえて、発電の原理を説明します。
モーターの発電原理
面積S(=l×h)のコイルが一様な磁場内で角速度ωで回転するとします。
そのとき、コイル面の平行方向(中段図黄線)と、磁束密度の方向に対する垂線(黒破線)がなす角度をθ(=ωt)とすると、コイルを貫く磁束Φは以下の式で表されます。

また、電磁誘導からコイルに生じる誘導起電圧Eは以下になります。

起電圧はコイル面の平行方向が磁束方向と垂直のときゼロになり、水平のとき絶対値で最大になります。

この様に、モーターには発電作用があります。ここで説明したかったのは、モーターには回転動作と発電作用があるということで、モーターを発電に利用するという趣旨ではありません。発電目的には発電に最適化された発電機を利用します。
モーターのこれから-産業への応用-
これからの概要
超伝導モーターについて
電動航空機への応用
電動航空機の用モーターの概要
Appendix - モーター歴史
モータは社会の技術革新の流れのなかで発明され,進化してきました。
人間はもともと人力や動物の力によって物を動かしていました。人間が自分の力で物を動かすことは,昔もいまも当たり前におこなわれています。また,馬車は紀元前には発明されていたといわれており,日本の平安貴族が牛車を使っていたことはご存じの通りです。
しかし,人力や動物の力ではいくらテコや滑車を利用しても,スピードや力に限界がありました。
このような動力を大きく変化させたのが,1700年代後半から1800年代にかけて起きた産業革命です。
人や動物をはるかに超える力を持つ蒸気機関が登場し,工場制機械工業が成立。農耕社会から工業社会へと社会構造の変革がおきました。また,蒸気機関車や蒸気自動車,蒸気船が開発されたことで,交通や物流の形も大きく変化しました。ただし,蒸気機関には大きくて重いという欠点がありました。
発明家や研究者は蒸気機関に変わる動力を模索しはじめます。モータはこうした変革のなかで登場したのです。
イギリスの科学者マイケル・ファラデーが1821年,モータと発電機の原理を発見。1831年には電磁誘導の法則を発見しました。これがモータに応用されていくことになります。
そしてファラデー以降,アメリカのトーマス・ダベンポートらによってDCモータ(直流モータ)が開発されましたが,なかなか実用化には至りませんでした。
最初の実用的モータは,ニコラ・テスラが発明した二層AC誘導モータ(交流誘導モータ)でしょう。テスラは1888年,自分が発明したモータを回すために多相誘導発電機を開発,1889年には特許を取得しました。これによって,モータが実用化されていくことになります。
その後,モータは動力源としての役割だけでなく制御装置としての役割も担いながら,進化を続けていきます。現在,国内の電力の50%がモータによって消費されているといわれています。モータはそれほどまでに人間の生活に深く関わっており,文明を支えるものになっているのです。
<過去~現在>
モーターの歴史は、19 世紀前半の電磁現象の発見に端を発し、現在使用されているモーターの多くは100 年以上前にはその原形が完成していますが、その後現在に至るまで進歩し続け、モーター性能は飛躍的に向上してきました。
モーターが開発された当初は、発生した力をどのようにモーターの回転運動に変換するかが課題でした。これを解決したのが、ブラシと整流子の機構の発明であり、これによりDCモーターが実現しました。
その後、AC(交流)発電機が実用化され、三相交流を電源とするモーターも開発されました。また、当初は電磁力の発生原理として、電磁力の吸引力を利用する方法が考えられていましたが、現在では、フレミングの左手の法則とローレンツ力で大部分のモーターは動作しています。
<現在~未来>
現在、モーターの電力使用量は国内電力使用量の50% 以上を占めていますが、今後も動力の電動化などが進み、モーターによる電力使用量の増加が見込まれています。
そのため環境・エネルギー問題の観点からモーターの省エネルギー・高効率化は、現在の最も重要な課題のひとつとなっています。
参考文献
モータの不思議と更なる可能性の探究