ステッピングモーターとは
ステッピングモータは,一定の角度(位置)の分だけローターが回転するモータです。
アナログ時計をイメージしてください。1秒ずつ秒針が動いています。このように決められた角度の分だけ動くよう制御できるのがステッピングモータです。アナログ時計のほかプリンターやエアコンのルーバー,ATM,券売機,自動改札機のゲートシステムなどに使われています。
ローターを正確な角度の分だけ回す仕組みはシンプルです。ステッピングモータのローターには何本もの溝が入っています。そしてモータに電気を流して,意図した溝の分だけローターが動いたら電気を止めるのです。これによってローターは正確な角度の分だけ回転して停止します。
たとえば,二相ステッピングモータには,一般的に200本の溝が入っています。一回転360度を200分割にするので、溝1本あたりで動く角度は1.8度になります。仮にモータを18度回転させたければ,モータに電気を流して溝10本分のローターが動いたら電気を止めることになります。
ステッピングモータを制御するには,コントローラーがなくてはなりません。コントローラーの役割は,ステッピングモータにどれだけ動くかを指示する信号を送ることです。まず,前提として電気のオンからオフまでをセットで1パルスと数えます。そして,コントローラーがステッピングモータに1パルスの信号(パルス信号)を送ると,ローターは溝1本分を回転して止まります。簡単な回路構成で、正確な位置決め制御を実現できるので、装置の位置決めを行う場合などによく使われます。
出典:https://techcompass.sanyodenki.com/jp/training/servo/motor_tips/003/index.html
ステッピングモータ(stepping motor)の原形は、6コイル集中巻ステータと凸極珪素鋼板ロータを組み合わせたもので、図のような1920年代の軍艦(イギリス海軍)で、魚雷の発射方向を指示するアクチュエータとして採用されました。
このモータでは、巻線への電流切り換えにロータリースイッチが利用されていました。
図の右側では、これらのスイッチの機能をS1、S2、S3で示しています。

図1 イギリス軍艦に利用されたステッピングモータ(VR型)
図2は、ステータ巻線の電流を切り換えることによって、ロータ位置がステップ状に回転する様子を示しています。
図2 ステッピングモータの原理(VR型)
特徴
先ほどの例のように,200本の溝が入っている二相ステッピングモータを18度だけ回転させるとしましょう。この場合はコントローラーから10パルスの信号を送ります。すると,信号を受信したステッピングモータは溝10本分にあたる18度回転して止まります。
このように,ステッピングモータの制御にはコントローラーが必要です。
ステッピングモーターとは、回転子に複数の溝があり、ドライバーから送られるパルス信号によって決められた溝の分だけ回転するモーターです。「パルスモーター」とも呼ばれます。ここまで紹介したDCおよびACモーターは、持続的に回転する仕組みです。そのため、さまざまな製品の動力源として用いられます。対するステッピングモーターの回転は、断続的です。動力源には向いておらず、一定の角度ごとに回転する特性から位置制御のために利用されています。
ステッピングモーターの仕組みがわかりやすい製品例が、アナログ時計です。1秒ずつ動く秒針は、ステッピングモーターにより1秒に6°ごと回転しているわけです。アナログ時計のほか、ATM、自動販売機、医療機器、レーザー・3Dプリンター、改札といった製品に組み込まれています。
高精度に速度や位置を制御できる一方で、制御にはコントローラーおよびドライバーが必要です。その分、モーター全体が大型化してしまうといったデメリットがあります。また、ステップごとに駆動するため機械的なノイズが発生しやすい点にも注意しましょう。
回転子の種類による分類
- Permanent Magnet Type (PM型:永久磁石形)回転子として、円周上にNSNS…と交互に着磁した磁性体を使用する。安価であるが、着磁間隔を細かくすることに限界があるので、ステップ角度は小さくできない。
- Variable Reluctance Type (VR型:歯車状鉄心形)回転子として、歯車状の鉄心を使用する。ステップ角度を小さくできるが、トルクがやや低い。
- Hybrid Type (HB型:複合形)PM型とVR型の特徴を併せ持った構造である。PM型の場合は円周方向に着磁するが、HB型では軸方向に着磁した磁石を使用し、磁極側を二枚の歯車状鉄心で挟み込む。この時、N極側とS極側の歯の凸凹が逆になるようにする。
Variable Reluctance Type (VR型:歯車状鉄心形)
ステッピングモータでは、ロータがある角度だけ回転して停止した後、その位置を保持することが要求されます。
このためには、電流によって励磁されたポール(pole:大きな歯または極歯)がロータの歯と磁力によって整列するという原理を利用します。
ステータとロータの歯数の比率が6:4の構造では、この原理による位置決め分解能は1回転について12となります。つまり、30°間隔での位置決め可能です。
高分解能を実現するための方策としては、図1.25で見るようにポールに細かい歯を刻み、ロータの歯も同様に細かくする方法(図1.26)が採られます。
このように、永久磁石を使わないステッピングモータをVR型ステッピングモータ(Variable Reluctance stepping motor)と呼びます。
歴史を振り返ると、工作機械やコンピュータ周辺装置用として、いろいろな形式のVR型モータが製造されました。
VR型の利点は、機械加工によって細かい歯を刻み、またステータとロータ間のギャップ長を短くすることによって、高い分解能が実現できる点にあります。
欠点としては、小型化と大トルク化の両立が困難なことです。そのために今日では、VR型はステッピングモータとしてよりは、むしろブラシレスモータの一種であるスイッチドリラクタンスモータ(Switched Reluctance Motor:SRM)としての利用に関心が集まっています。

図5 ポールに歯を刻むことによって分解能(360°の分割数)が上がる
Permanent Magnet Type (PM型:永久磁石形)
VR型とは別に、永久磁石を利用したPM型ステッピングモータ(Permanent Magnet stepping motor)も開発されました。これは基本的に、ロータとして図3の永久磁石ロータを利用したものです。実際の例としては、図4のような4コイルステータと2極磁石ロータの組み合わせ(2相構造※)が典型です。このモータが進化したのが、腕時計用ステッピングモータの分野です。小型化しても、強力な永久磁石のために電力の消耗が少ないのが特長で、1個の電池で数年間も秒針を含めて3本の針を駆動させることが可能です。なお、PM型は高トルクで、小型化可能で、安価なステッピングモーターですが、細かい分解能を持たせるのは困難です。
(※相(そう)とは、向かい合った2つの磁極の組のこと。同じ相の磁極は同じ極(N極同士またはS極同士)に磁化する仕組みになっている。)
Hybrid Type (HB型:ハイブリッド型)
VR型とPM型の両方の利点を生かした複合型が、今日広い用途を持つハイブリッド型ステッピングモータ(hybrid stepping motor)です。生産台数ではクローポール型と呼ばれている形式が多いのですが、広い意味で、これもハイブリッド型の一種とみなされます。
元来、ハイブリッドとは、生物学における交配種のことを示します。ここではVR型構造(歯車鉄心)によってきめ細かなステップ角刻みが実現され、これに永久磁石を組み合わせてトルク増大が実現されることを意味します。
その構成を図5に示します。基本的には、図6のロータ構造に見られるように、歯を刻んだ2枚の鉄心で、ディスク型の永久磁石をサンドウィッチ状に挟んだものです。
構造は、ロータにピッチをずらした歯を取り付けて分解能を高めたものです。PM型と同じく永久磁石を採用しているため、高いトルクも発揮できます。一般的には2相から5相までで構成し、相の数が多いほど分解能に優れます。
図6 誘導子型ロータ
HB型の分類
HB型ステッピングモーターは、電流を流す方式によってユニポーラ型とバイポーラ型にも分けられます。ユニポーラ型は制御回路がシンプルで高速駆動向きです。一方、バイボーラ型はユニポーラ型より高いトルクを得やすく、モーター温度が上昇しにくいという特長を持っています。
上図ではフェライト永久磁石が歯を刻んだ2枚の鉄心にサイドウイッチ状に挟まれています。この磁石は一方の面がN極なら他方はS極です。軸方向に垂直な断面にはNかSの一つの磁極しか現れません。これがユニポーラ(単極)です。両側の珪素鋼板の歯には磁極が誘導されるので誘導子と呼びます。軸方向にみるとあたかも極数の多い永久磁石ロータのように見えます。ハイブリッド型ステッピングモータとして利用されます。
サーボモーターとの違い

サーボモーターとは
サーボ制御(サーボ機構)は、自動制御機構の一つです。
制御対象の状態を測定し、基準値と比較して自動的に修正制御してくれます。
サーボモーターとは、任意の回転角度に合わせる、この制御機構を持ったモーターです。
ラジコン模型に使われているサーボモーターは、小さいケースに小型の直流モーターと、減速歯車機構・回転角度センサ(回転式可変抵抗)・サーボ制御のための電子回路が内蔵されています。
扱いやすく、安価なのが特徴です。
サーボモータは,ステッピングモータと同じく,意図した角度の分だけローターを回転させることを目的としたモータです。ただし,サーボモータとステッピングモータには,明確な違いがあります。
サーボモータのローターには溝がありません。そのため1.8度ずつローターを回転させるといったような制約がないため,分解能の高いセンサを使えば100万分の1度といったような精密な角度でローターを止めることができます。
その制御に必要なのがセンサです。サーボモータでは,このセンサがローターの回転位置を正確に把握するため,意図通りの角度で停止させることができます。また,停止したあとも監視を続け,停止角度がずれた場合はすぐに自動で修正するように制御しています。
「リニアモーター」と「ダイレクトドライブモーター」
「リニアモーター」や「ダイレクトドライブモーター」というモーターの種類を耳にしたことがある方もいらっしゃるでしょう。これらはいずれも、サーボモーターに含まれる種類のうちのひとつです。
前述のとおり制御性に優れたサーボモーターのうち、サーボ機構部分の運動方向が直線運動となるものをリニアモーター、回転運動となるものをダイレクトドライブモーターと呼びます。
サーボモータとステッピングモーターの違い
サーボーモーターとは、ステッピングモーターと同じく制御装置として使われるモーターです。
サーボモーターはステッピングモーターと異なり、回転子に溝がありません。代わりに、モーターの位置や速度を検出するセンサー「エンコーダー」が備わっています。エンコーダーの役割は、モーターの速度・位置情報をドライバーへ伝達することです。ドライバーは、モーターの位置・速度と制御指令の情報に差がなくなるように調整します。
こうした仕組みにより位置のずれを自動修正できる上、ステッピングモーターよりも非常に細かな位置制御が可能です。ただし、ステッピングモーターに比べて構造が複雑になるため、コストは高くなります。