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【経済学】資本主義について

Last updated at Posted at 2023-10-30

はじめに

我々は『資本主義』というゲームルールの下で社会活動をしています。
そんな否が応でも意識しなければならない資本主義について、
浅学菲才の筆者は『資本主義? あれでしょ? お金がお金を作るシステムでしょ?』くらいの理解しかありませんでした。

もはや、ルールを知らないのにサッカーをしているようなものです。

さすがにこのままじゃいけないなと思い、改めて資本主義について整理してみました。

どなたかの理解の一助になれば幸いです。

資本主義ができるまで

経済の生い立ち

 人類は進化の過程で「認知革命」が起こり生態系の頂点に立った。「認知革命」とは、高度な言語を生み出し、その言語で虚構の物語を作り、仲間と共有できるようになることである。すなわち、人類は進化の過程で物事を認識する能力、脳の中で虚構の物語を作り出しそれを他の人と共有する想像力を獲得したでのである。この能力によって人間は「お金そのものは食べることができないが、食べ物と交換することができる」という”虚構(物語)”を理解することができるようになり、結果的に人々が共同体の中で協力しあってよりよい暮らしを実現する一定の決まり事として市場とそこで行われる取引に関する約束事(=”経済”)という”虚構(物語)”を生み出すに至った。

 (人類は虚構の物語を生み出してそれを信じることができた理由を理解するには宗教が良い。太古の人々は生き抜くために厳しい自然と向き合う中で、大自然への畏怖から、神という絶対的な存在を作り出し、祈りを捧げることで感謝を示すことで神の怒りを沈めたりすることができるという物語(虚構)を生み出した。それが宗教(虚構の信仰)の始まりである。)
 (同様に法律も、国家も、人類の想像力によって生み出されたものであると言える。)
 (人々は、世の中仕組みを理解し、活用することで人々の幸せな暮らしを実現しようとしていたし、今もしている。その理解には、自然の中の法則の発見などの科学的な視点からの理解、神の存在や善悪、愛などの宗教的な視点からの理解、交換・市場・資本・貨幣などの経済的な視点からの理解がある。)

現在の経済の構成要素(貨幣・資本主義・金融・国債・資本家)は原型はどのようにして生まれたか

 その始まりは、お金の登場である。市場での物々交換を円滑に行うために、”お金(ドングリ)”を用いて物の価値の基準を決めた。後に取引の規模が大きくなり交易が生まれる。その派生で、生まれた商人は、東西交易などを行い地域による価値の違いを利用して利益を得た。これを商業資本主義といい、資本主義の原型となる。また商業資本主義の発展に伴って、国によって貨幣が違うため両替商が生まれ、両替が発展した為替手形も誕生し、現在の金融の原型になった。中世末期にはヨーロッパでは国王が絶対的な権力を握る絶対王政の時代を迎えており、そこで商人は国王から依頼されお金を貸すことになり、それが国債の始まりとされる。そして、15世紀になると、ヨーロッパの国々は新たな領土を探して航海を行った。航海はリスクを伴うものの、帰還すると持ち帰った財を売り捌いてかなり儲ることができた。そこで交易によってひと財産を築いていた商人は航海に必要な莫大な費用を商人が援助し帰還後に売上の一部を分け前としてもらうことで収益を得ていた。それが資本家の原型となる。

現在の資本主義はどのようにして生まれたか

 18世紀後半に産業革命が起こり大量生産の時代になった。そこで登場したのが「産業資本家」と「労働者」という階級区分。産業資本家が労働者を雇い、物を生産して利益をあげる。これが現在まで続く資本主義という経済システムの始まりとなる。
(かつての商業資本主義との違いは、人の労働力と時間を投入物としてお金で買うかということである。)

 資本家は、労働者という商品を買い、賃金を超える価値を生み出すまで働かせ、この剰余価値を搾取することで儲けていた。マルクスはイギリスの労働者たちの窮地を見て、資本家しか豊かになれない資本主義は資本家と労働者という新たな階級対立を生み出していると批判し、社会主義を提唱した。

 社会主義を最初に実現されたのは1917年に政権が成立したソ連。社会主義では資本主義の弊害である搾取を禁じ、あらゆるものを共同で管理し、国民が平等に分配を受けることを目指した。しかし、政治指導者たちが独裁や汚職に走り、労働者は計画経済の過剰なノルマを課せられ、労働意欲も生産性も低下。1991年に社会主義(ソ連)は崩壊する。再度経済の自由が求められるようになり「新自由主義経済」が誕生。それと並行して、帝国化していたヨーロッパが第一次世界大戦を起こして国力を失うことで新興国アメリカの影響力が強くなっていたこともあり、このアメリカ型の経済システムがソ連崩壊後世界に拡大した。そこでは、競争を勝ち抜いた巨大企業や巨大金融資本が世界の隅々まで入り込み、経済のグローバル化が進んだ。

 (自由な経済活動を野放しにした結果、1929年に世界は大恐慌に陥ったが、この時アメリカでは、政府が経済の超制約を務めるべきだと経済学者のケインズの理論を実行に移し、布教を乗り切った。)

資本主義を動かす8つの歯車

1. 私的所有権

私的所有権という制度・考え方が確立されたことによって、自分の財産を自由に使ったり売ったりすることができるようになった。
(アダムスミス労働は生産物に対する所有権を生むと考えた。自然物+労働=私有物。)
(ジョンロックは所有権は労働によって発生すると考えた。土地+労働=私有地。)

2. 市場

市場の存在によって財やサービスが取引される。また、市場での需要と供給の関係によって価格が決まる。

 (両者を調整する市場原理が働いており、買い手も売り手も自分の利益のために自由に取引しているのに、この行動が集積されて市場経済は自然な均衡を作り上げる。これを市場原理といい、アダムスミスは見えざる手と表現した。)
 (アダムスミスは、市場の自由に任せておけば社会の利益は増大すると考えた。)
 (市場を機能させるために生まれたものが貨幣、両替商、金融業、etc… なのである。)

3. 資本 / 株式

資本は市場を構成する企業を作るために必要な要素である。
また、株式の発行によって、経営者は効率よく資本を集めることができるし、投資家は効率的に稼ぐことができる。

4. (金融の)信用創造

信用創造というバグがあるおかげで、市場で流通するお金の総量が増える。

5. 金利

この制度によって、金融などのシステムが機能し、市場への資金注入が行える。

6. 法人 / 株式会社

個人が借金をして投資を行うのではなく、法人格を作って、株式を発行してお金を集めることで投資家個人のリスクを形式的には無くすことができる。破産しても株券が紙屑になるだけだからである。

7. 革新・イノベーション

 イノベーションとは、従来と異なる方法や考え方を取り入れて新しい価値を生み出すことであり、商品、生産方法、坂路、原料、組織を変革する五つのイノベーションとして挙げられる。それらのイノベーションによって、市場での生産が加速する。
(世界を激変させるような道具や素材、サービスの登場を促したのは、資本主義が持つ潜在的な力だった。)

8. 資本主義の精神

 資本主義の考え方には、宗教改革が産んだキリスト教の一派、カルヴァン派の教えが反映されていると言われている。もともとキリスト教はお金儲けや金利を禁じる宗教だったが、中世のカトリック教会はこっそり莫大な富を蓄えた。これに反発した人々が16世紀に興したのが宗教改革。カトリックからプロテスタントとして分離しその一派がカルヴァン派である。カルヴァン派を興したカルヴァンの教えは、勤勉、禁欲、節約を重んじる厳格なものだった。そこでは神から与えられた仕事に励めば天国に行けると、労働の大切さを解いた。利益を追求するのは自分の欲のためではなく、神の救いを得るためであるとした。その精神が資本主義を機能させる一助になっていると言える。

資本主義は何を間違ったのか

社会的共通資本を損なっている

 資本主義は自然環境を自由材として損なってきており、それを批判したのが宇沢経済学である。宇沢経済学では人々が豊な経済生活を営み、優れた文化を展開し、人間的に魅力のある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置として「社会的共通資本」を定義した。森林・緑地などの自然環境資本、発電や鉄道などの社会インフラ資本、金融や司法や福祉などの社会制度資本が社会的共通資本に該当する。そして、これらは一般資本と同様に取引されるものではないとした。

 農業、教育、医療にも資本主義の影響が顕著に出ているとした。農業も社会的共通資本の一つであるが、市場経済で競争させた結果、衰退し、輸入に頼ることになった。教育も社会的共通資本のうちの制度資本に該当するが、資本主義の介入によって、学校教育が効率化され、本来教育に求められるものが達成されていないとした。大学は純粋に知識を求める場であり、経済活動から独立した存在であるべきであるとしたが、現在の大学は、実用的な研究や、利益を生み出す知識ばかりが日の目を見るし、法人として利益を上げるために多くの学生を集めることに腐心し、独自性を失っていると指摘した。同様に、医療にも経済理論が持ち込まれた結果、人間性を無視した制度改革が行われることになった。

社会的余剰が最大化されていない

 他にも、行き過ぎた市場原理主義の弊害としてレントシーキングが挙げてられる。レントシーキングとは、企業が政府などに働きかけ、レント(超過利潤)を得ようとすること。一部の大企業の利益の独占により、社会的余剰が最大化されていない状況がでてしまっていることが問題とされる。

環境汚染

 18世紀後半、イギリスで産業革命が起こり、生産の機械化が進んだことで、資本家が大工場で多くの労働者を雇って商品を量産して利益を上げた。これが産業資本主義である。19世紀に木炭から石炭へのエネルギー源の移行があり、石炭火力エネルギーが使われるようになる。これがエネルギー革命である。20世紀後半には石油が用いられるようになり、一層温室効果ガスの排出が加速した。結果として、資本主義は温室効果ガスを無制限に出し続ける産業構造に拍車をかけており、それはすなわち、気温の上昇、海面上昇、異常気象、熱波、干ばつといった地球温暖化の問題を誘発するものであるため、資本主義の欠点として挙げられる。

 地球は太陽のエネルギーだけを受け、生態系を維持しており、他から何も入れず、排出もしない、閉じた空間である。よって、地球の生態系が消費できるエネルギー量にも限界があるにも関わらず、資本主義によって許容範囲以上のエネルギーを消費せざるを得ない状況ができており、それが地球温暖化として表面化しているとも言える。
宇沢経済学でも資本主義は外部不経済を無視しておりその帰結として地球温暖化が生じているとした。

 主な原因は資本主義は社会的共通資本の適切な扱いができていないことである。生産の外部性を考慮せずに市場原理に任せているから、その皺寄せが環境や途上国に来ているとした。実際、自動車産業で確かめてみたらとんでもない社会的費用がかかっていることがわかった。なのにそれは生産活動の中の費用として内部化されていないのが現状である。

経済格差

 他にも、経済のグローバル化によって経済格差が生じている。
 社会主義をとっていたソ連が崩壊し、新自由主義経済が世界に広まるが、国際通貨基金、世界銀行、アメリカ財務省は途上国に経済援助をする条件として、税制改革、市場の規制緩和、金利や貿易の自由化を要求し、経済格差が生じた。その経済格差は、貧困だけでなく飢餓をうみ、世界人口の1/10以上の人が栄養不足の状態に陥っている。食糧不足の原因としては、植民地時代に支配国が植民地の自給自足農業を破壊し、輸出用植物のモノカルチャー国家にした。その結果、食料輸入国になるのだが、輸出作物の価格は市場の気分で乱高下するわ、輸入する食料価格も乱高下するわで、満足に食料が手に入らないことが挙げられる。

明日の資本主義のために

新たな経済システムは定常システム

 ローマ帝国では帝国支配経済システムを、スペイン帝国では植民地強奪経済システムを、イギリスでは産業資本主義経済システムを、ソ連では社会主義計画経済システムを、アメリカでは新自由主義経済システムを採用して幾度となく経済システムを作り直してきた。現在は、資本主義から次の経済システムへ移行するにあたって、持続可能な経済を実現できるシステムが求められている。すなわち、現在世界が抱える資本主義経済が招いた過剰な開発によって引き起こされた、貧困、飢餓、健康、教育などの多くの問題を解決できるようなシステムの構築が必要である。
 そこで候補の一つとして上がるのが、定常経済システムである。定常経済とは、一定の人口と一定の資本によって成り立つ経済のことである。

資本主義と比較して定常経済システムが望ましい理由

  1. 地球の処理能力はキャパオーバーであり、これ以上経済を成長させても環境破壊が続いて自分たちの首を絞めるだけになるということ。
  2. あらゆるものはエントロピー増大の法則に従うため、地球から低エントロピーの資源を取り出すとこうエントロピーの廃棄物を地球に戻ることになるので定常経済システムによってこのスループットを制限する必要があるということ。
  3. 本当に求めるべきはGDPではなく人間の幸福。これまでの経済学は経済成長を前提としてきたが、経済成長が良いものと考えるのは大きな錯覚であり、現在の経済は、成長の代わりに環境や社会に経済的損失をもたらしている。その結果、費用に対して便益が少ない不経済成長に陥っているということ。

どのように移行するのか

  1. 全世界で地球資源の使用料の上限を定め、構成に各国に割り当てること。これをキャップアンドトレードという。ただ、各国の受け入れに時間がかかる。
  2. 全世界の企業に対して経済活動に必要な地球資源の取得量とその結果生じる温室効果ガスの排出に対して、環境税として課税しようというもの。この環境税は、企業経営から自然環境資本に関わる費用を排除する現在の資本主義に対して大きな修正を迫るものとなる。
  3. 国際自由貿易を制限すること。環境コストを内部化せず製品コストをあげなかった国に対して、相殺関税をかけて自由貿易から新しい保護主義に移行する。保護主義とは、自国内の産業保護のために商品・資本の輸出入に関税や法律の障壁を設けて海外からの無制限な流入を食い止めようとするもの。
  4. 国際金融システムの変革。
  5. 所得格差の是正。富裕層への適切な課税を行う。
  6. ソーシャルビジネスの導入。代表例は、少額無担保の金貸を行なったグラミン銀行が挙げられる。これまでは、企業の利益の追求が至上命題だったが、ソーシャルビジネスの目標は貧困など社会が欠ける課題をビジネスをとして解決すること。それも株式会社として投資家を募り、厳しい市場で成功し、投資を回収して持続可能なビジネスとして成立させることを目指す。ソーシャルビジネスは一般のビジネスは経営に関して厳しい条件を自らに課しているおり、「投資家は投資額を回収してもそれ以上の配当は受け取らない」「経営では、資本主義が無視してきた環境コストを内部化する」「影響利益は事業が継続できる範囲に抑え従業員の給与もこの範囲で十分なものとし、それでも余剰があれば製品を値下げする」といった方針をとる。(このソーシャルビジネスを、新しい資本主義という。)

Appendix

資本主義をする際のキーワード

  • 私有財産
  • 利潤統治
  • 市場経済
  • 生産性投資
  • 株式会社
  • 金利

資本主義の特徴

  • 市場経済を前提として成り立っている
  • 市場にとって良しとされる行動にしかインセンティブがない
  • 持続的成長は生産人口に比例している
  • 期待値を定量化することができるが、お金しか定量化されてない
  • 資本が資本を生む
  • 資本主義は、システムではなくOSである。

経済学の巨人の資本主義の捉え方

マルクス

  • 分業と貨幣経済を前提としている市場を資本主義の中心として据えている
  • 資本の形成と持続的増加を目的としている
  • 生産手段おもつ資本家と生産手段を持たない労働者の間には緊張関係がある
  • 伝統的なものを解体しつつ、それを経済以外に拡大していくダイナミズムを持っている

マックスウェーバー

  • 資本主義の行為
    • 競争と交換
    • 市場価格による行動決定
    • 資本の投下
    • 利潤の追求
  • 特徴
    • 資本主義下における経済行為は基本的にはリスクや利益などを予期できてコントロールできそうだと思うから行えるよね。計算可能だし、定量化できるし、コントロールできると思っているから行うんだよね。
    • 資本主義下における行動は、封建的な家での活動とは分離されていて、企業の中に個人が組み込まれて活動するようになった。家の目的とか関係なしに、会社の中の一個人として活動するようになったよね。
    • 企業内における目的の追求は、経営者からの命令によって行われているよね。
  • →これがポスト資本主義になって家庭と企業の活動を一緒にしようとしてる企業とかはマックスウェーバー的な定義から
  • →ウェーバーは前近代的な生活と比較している。

シュンペーター

  • 資本主義は貸与された金銭を用いて、イノベーションがされるような私有財産制度である。このイノベーションがなされるような制度は、信用創造が前提になっている。
    • →シェアリングエコノミーでは私有財産制度が成立しなくなるのでポスト資本主義だと言える
    • 私有財産制度では万物が誰かに帰属している
    • イノベーション:=経済が内発的に変化するメカニズム

ケインズ

  • 資本主義の経済の推進力として、アニマルスピッツがある。
    • アニマルスピリッツ:=金銭愛に向かう諸個人の本能

ユルゲンコッカ

  • 個人の所有権と分権的決定を前提としている
  • 経済的行動は、競争と協働、需要と供給の販売を中心に行われている。
  • 経済活動の中心には資本があって、将来の利益追求に向けて資本の配分が行われる
    • 時間が推移するかっていうことを考えてる。時間の経過という概念がないと資本主義は機能しない。

参考文献

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