今年は多くのカンファレンスや勉強会がCOVID-19の感染防止のため、オンラインでの開催となりました。オンライン開催の大きなメリットは、いつでもどこでも参加・貢献できるという点で、ぼくもいくつかのカンファレンスや勉強会の運営や準備に関わらせてもらいました。そこで、いくつか注意する点が見えたのでまとめてみます。
『代わり』が重要
全国の障害が影響を及ぼす
上記で、いつでもどこでも参加・貢献できるをオンライン開催の大きなメリットとして挙げましたが、これはそのままデメリットにもなります。オンライン開催の場合、ありがたいことに全国各地から開催のお手伝いや登壇をしていただけるようになりましたが、それはつまり全国各地の障害の影響を受けるということになります。
現地での開催の場合、基本的に天災や停電、ネットワーク障害などの悪影響は現地で発生しなければ、開催自体は問題なく行えます。しかしオンラインの場合、各地での障害により、当日のお手伝いや登壇ができなくなる可能性があります。
今年開催したWordCamp Ogijima 2020は、前日に日本を通過した発生した台風10号の影響で九州地方のメンバーの参加が危ぶまれ、瀬戸内海沿岸の地域での停電が危惧されました。
オンラインサービスは当日利用できるとは限らない
YouTube LiveやZoomなど、オンラインでの配信に不可欠なオンライン配信(会議)サービス。オンライン開催はこれらのサービスを駆使して配信していくことになります。普段あたりまえのように使っていますが、これらサービスが当日利用できる保証はありません。
今年開催したdo_action Japan 2020では、懇親会開始直前にオンライン懇親会場として利用する予定だったZoomがダウンし、懇親会の場所を急遽変えることになりました。
[対策] 代替策を用意する
全国の障害や、オンラインサービスのダウンは予測することはできません。そこで、当日不測の事態が起きたときの代替策を用意しておくと安心です。
参加が急遽できなくなった対策として、当日進行に関わるクリティカルな部分の担当者には2,3人割り当てる、登壇者が参加できなくなった場合の代替セッションを用意するなどが挙げられます。
オンラインサービスが利用できなくなった対策として、同じ機能がまかなえるサービスを別途契約して切り替えれるようにしておく、どのタイミングでサービスダウンの影響による中止や延期を発表するか決めておくなどが挙げられます。
著作権や版権に気を付ける
あたりまえすぎる内容ですが、オンラインではいつも以上に著作権や版権に注意をする必要があります。
スライドに著作権・版権を侵害したものが入る
登壇(LT含む)していただける登壇者様各位
ほ ん と う に や め て
そりゃ、なんか些細な違いがわかる某派出所のおまわりさんや、部下にパワハラしてる鬼、バトルやゲットしている少年などを、スライドに混ぜればウケるかもしれないですけど、そのまま配信に乗るわけですから、権利者から訴えられることになります。最初に訴えられるのは登壇者ではなく運営者です。
配信先のBGMにも注意
YouTube Liveなどは、著作権侵害などコミュニティガイドライン違反を自動検知するようになっています。
オンライン開催では、参加者は自宅やコワーキングスペースなど、好きな場所で参加・登壇することができますが、登壇で利用するスライド以外にも自宅や店舗で配信している環境で流れているBGMに自動検知が反応してしまうおそれがあります。
カンファレンスではありませんが、某コミュニティでお世話になっている方から、その方のお子様のお遊戯会がライブ配信されたものの、お遊戯会の途中で利用していたBGMがガイドライン違反自動検知によりBANされて強制終了された。というお話を聞いています。
[対策] 指針を設ける
対策としては、登壇者ガイドライン作成し、そのガイドラインに則ったスライド作成やセッション登壇をお願いする、配信環境ではBGMが流れないようにお願いする、というのが挙げられます。また、スライドチェックも必須にします。
未成年の参加に気を配る
今までも未成年の方が参加・登壇することはありましたが、オンラインになったことでさらに参加しやすくなりました。オンラインになった故に気をつけないといけないことがあります。
だいたいのサービスには年齢制限がある
各オンラインサービスはほとんどの場合、年齢制限があります。指定した年齢に満たさない場合はサービスを利用することができません。以下、メジャーなサービスの年齢制限です。
サービス | 年齢制限 | 備考・利用規約抜粋 |
---|---|---|
YouTube | 13歳以上 | 本サービスを利用するには、13 歳以上である必要があります。ただし、親または保護者によって有効にされていれば、あらゆる年齢のお子様に YouTube Kids をご利用いただけます(利用可能な地域の場合)。 親または保護者による許可 お住まいの国や地域で未成年と見なされるユーザーは、本サービスの利用について親または保護者の許可を得ていることを表明するものとします。本契約を親または保護者と一緒にお読みください。 お住まいの国や地域で未成年と見なされるユーザーの親または保護者である方は、お子様が本サービスを利用することを許可することにより、本契約の規定の対象となり、本サービスでのお子様の行為について責任を負うことになります。 |
Zoom | 16歳以上 | 16歳未満の未成年が自分のアカウントにサインアップすることを許可していません |
Discord | 13歳以上 | お客様はこれらを利用することやこれらにアクセスすることで、次の内容に同意します。 (i)お客様が13歳以上かつお客様の国におけるデジタル同意の最低年齢に達していること、 (ii)お客様がお客様の法域における成年に該当する年齢以上である場合、お客様は本利用規約を読み、理解し、これに拘束されることを承諾すること、 (iii)お客様が13歳以上(または該当する場合、デジタル同意の最低年齢以上)かつお客様の法域における成年に該当する年齢未満の場合、お客様の法的保護者が本利用規約を確認し、これに同意したこと。 |
Slack | 16歳以上 | 本サービスは、16 歳未満のユーザーを対象外としているため、利用するには 16 歳以上である必要があります。 |
13歳以上 | いかなる場合においても、本サービスを利用するためには少なくとも13歳(Periscopeの場合には16歳)以上でなければならないものとします。 | |
GitHub | 13歳以上 | 年齢が13歳以上である必要があります。 当社は若く優秀なプログラマーがプログラミングを熱心に習得することを歓迎していますが、その一方で当社は米国の法律に従う必要があります。 |
※2020年12月現在 |
サービスによっては、保護者の許可があれば(保護者のアカウントで)利用できるもの、保護者の同意があっても利用できないものがあります。この利用規約はそこそこの頻度で更新されるので、利用サービスを検討する際に各社に確認を取った方がよいでしょう。なお、13歳は米国のCOPPA、16歳は欧州のGDPRが関係しています。
配信環境に潜むプライバシー
未成年の方が登壇する際、自宅などで配信すると壁に飾っている学校で作成した作品・時間割・カバンなどで通っている学校がわかってしまう恐れがあります。また、YouTubeでは未成年が配信する環境で禁止されているものがあり、例えば寝室での配信は禁止されています。未成年を危険に晒さないためにもプライバシーに配慮が必要です。
[対策] 事前に説明する
対策としては、未成年の方が登壇・参加される場合は、可能なかぎり事前に説明を行い、プライバシー侵害の対策を促す、事前に配信環境を指定する、などが挙げられます。
まとめ
上記に挙げたほかにも、いろいろとオンラインならではの考慮する点はあるかと思いますが、ぼくが特に注意しておきたいポイントは上記の通りです。もしかすると気にしすぎなのかもしれませんが、配信が途中で止まったり登壇者や参加者に危険がおよぶ可能性があるのであれば、気にしすぎでちょうどよいのではないかと個人的に思っています。