この記事は『Litalico Advent Calender』 16日目の記事です。
はじめに
株式会社LITALICOの@inyocchiです。toCメディアサービスでエンジニアリングマネージャーをしております。
サッカーW杯での日本代表の活躍凄かったですね!サッカーの試合結果を見ながらふと、「サッカーって失点されなければ負けないよな。今年、自分がエンジニアリングマネージャーとして取り組んだことも、失点を減らす活動だったな」と思い、失点を防ぐために行った3つの取り組みをまとめてみました。
エンジニアリングマネージャーに必要なスキルに関する記事は多いと思いますが、実践的な内容は少ないと思うので、参考になれば幸いです。
活動のきっかけ
LITALICOに入社前は、エンジニアチームのマネージャーだった期間もあるのですが、プロダクトマネージャーやプロダクトオーナーとしてエンジニアチームと関わる期間の方が長いキャリアを歩んでいました。
LITALICOに入社後は、担当プロダクトにPdMが不在であり開発プロセス全体の中で上流工程の課題が大きいという理由から、エンジニアチームのマネージャーだが多くの時間をPdM業務に使う形で仕事をしておりました。
そんな状態が1年以上続いた後、担当サービスに凄腕のPdMの方が参画してくださることになりました。そこで、私自身の業務をPdM業務から本分のエンジニアリングマネージャー業務に移していくことにしたのですが、エンジニアリングマネージャーとして色々できていないことが多く、サッカーでいうと大量失点していることに気づきました。
自分が気づく問題のみに対処する状態だったので、体系的にエンジニアリングマネージャーの仕事をよく知って失点を防ぎたいという思いに駆られ、失点を防ぐための活動を始めました。
※担当サービスは誕生から約3年のtoCメディアサービス。エンジニアチームメンバーは私を含めて6名です。
取り組み(1):失点箇所を把握する
失点を防ぎたいと思っても、自分がどこで失点しているのかを掴みきれていなかったので、まずは失点箇所=力をかけられていない箇所を知ることから始めました。
取っ掛かりとして、上司から「そのサービスのCTOになったとして考えてみたら?」というヒントをもらい考え始めました。
どういう事業/サービスのCTOかで考え方も変わると思います。私の場合は、①事業に直結するプロダクトを担当していたことと、②成果を出せていない箇所、つまり「力をかけられていないのはどこか=投資できていないのはどこか」を知りたかったので、ビジョナルCTO 竹内さんの記事「CTOの頭の中:技術投資を最適化する」を参考にするのが良いと考え、どの活動に投資しているか可視化してみました。
※実際にCTOが考えていることはもっと多岐に渡ると思います。当時の私に必要だった検討範囲がこの範囲だったと理解してもらえると幸いです。
可視化したところ、(当時の事業状況もあり)短期によった投資が多く、中長期視点での投資が少ないことが分かりました。短期投資による成果も一定出てきたので、中長期視点での投資を増やしていくことにしました。
取り組み(2):失点を防ぐ能力があるか確認する
失点箇所を認識できたので、次は失点を防ぐためのスキルが自分にはあるのかを確認しました。
エンジニアリングマネージャーに求められるスキルとして、4つのスキルが取り上げられることが多いと思います。
- テクニカルマネジメント
- ピープルマネジメント
- プロジェクトマネジメント
- プロダクトマネジメント
ただ実際には、これら4つのスキルを活かすために、社内で交渉したり、(会社から暗に求められる)組織運営を行うようなマネジメントスキルも必要だと思います。それらを「マネジメント基礎スキル」と称し、合計5つのスキルで自分を評価することにしました。
- テクニカルマネジメント
- ピープルマネジメント
- プロジェクトマネジメント
- プロダクトマネジメント
- マネジメント基礎スキル
こちらの記事を参考に各マネジメント項目を詳細に分けて、それぞれに対してざっくり①〜③で自己評価をつけていきました。
- ①できている(と思っている)点
- ②できていないが、今後改善できそうな点
- ③できておらず、今後もできそうにない点
これにより、②の項目はどうにかこうにか身につけよう、③の項目は補い方を考えようと判断できるようになりました。
取り組み(3):エンジニアリングマネージャーの実践知を知る
3つ目の取り組みとして、スキルを上手く発揮するために他のエンジニアリングマネージャーの仕事から学びたいと考え、社内のエンジニアリングマネージャーの方々にお話を伺いました。
LITALICOは幅広く事業展開しているためtoC向けの組織だけではなく、toB向けのプロダクト開発を行う組織・横断型の機能組織と多様なエンジニア組織があり、エンジニアリングマネージャーの方も多く在籍しています。
10名以上のエンジニアリングマネージャーと1on1をさせていただいたり、「エンジニアリングマネージャーのしごと」の輪読会を開催させてもらい、色々なお話を伺っていきました。
熱量高くチームメンバーのことを考え、必要なら独自のルールを生み出し、状況に適切に適応していく様子を事細かに伺えたのはとてもありがたい機会になりました。
ご参考までに、ピープルマネジメント/マネジメント基礎スキルの観点で「ココがすごい」と思った点を3つご紹介します。
ココがすごい(1):チームメンバーのことをトコトン考えている
- メンバーが希望するキャリアを詳細に把握
- その上で、メンバーが希望するキャリアを実現できるように最大限支援
- メンバーの成長支援のための目標設計
- 全社の目標管理方法(MBO)だけでは目標を自分ごと化しづらいという課題に対して、チーム専用のOKRを作成し、より自分ごと化できる目標設定を実現
- メンバーへの積極的な業務移譲で成長機会を創出
- 各メンバーの強みを生かせるように目標を設定
ココがすごい(2):全社ルールで行き届かない点をしっかりカバー
- (全社ルールから逸脱しない範囲で)独自に評価基準/評価方法を設定
- エンジニア全体の評価指標を自チーム向けに噛み砕き、等級ごとに評価水準を設定
- 新規事業で期中に事業の方向性が変わりうる部門では、アサイン業務に対して等級に見合った成果が出せているかを毎月事後評価の形で確認し、都度期待値修正。
- 専用のキャリアパスを起案し新設
- 上司と相談しながら、スペシャリストを目指したい人向けのスペシャリストコースを新設
ココがすごい(3):置かれている状況の理解度が高い
- 何が事業のセンターピンなのかを理解して、マネジメントスタイルを柔軟に変更
- 例えば、同じ新規事業でも、プロダクト品質が最重要の事業なのか、先行者優位を築くことが大事なのかで、求められる開発スタイル・マネジメントスタイルが変わる。
- それを分かった上で、担当プロダクトに合わせて柔軟に自身のスタイルを変えていく
まとめ
これら3つの取り組みを通じて、自分のアウトプットを変えることができ、徐々に失点を減らせるようになっていきました(まだできていない部分は多いのですが。。)
ご紹介した取り組みは、現状把握 → 解決能力の有無を確認 → 効果的なやり方で問題解決、というフレームワークになっているので他の組織にも転用可能だと思います。
ちょっとでも他のエンジニアリングマネージャーの参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。