#時は西暦2000年頃にまで遡ります。
ちょっとベテランの方々ならご存知だと思いますが、今から20年ほど前、IntelとAMDが、それはそれは熾烈な高クロック争いを展開したことがありました。
このころからクロック表記がメガヘルツからギガヘルツに代わり、省電力などどこ吹く風、急激な高クロック化でこれでもかという高熱を出しまくるCPUを冷やすために、水冷ヒートシンクなんて登場したり、と、ひたすら大型化していく筐体を抱え、いま思えばかなり逝っちゃってた時代でした。
ちなみに、当時はクロックがあがりにくくなってもコア数を増やすことで並列処理能力を上げる、というIntel方針をMicrosoftが支持してIntelが蜜月になり、Windowsがマルチコアをサポートすることで、「Intel Inside」というキャッチとともにAMDの敗戦という結果になりました。
それから20年の時を経て、いま再びAMDが巨人Intelに真っ向勝負を仕掛けています。
#Ryzen登場のインパクト
気が付けば、Macにまでインテル入ってる時代となり、CPUの性能比較といえば、「Coreiいくつ?何世代?」だけという、競争原理が全く働かない時代となって久しくなった2012年、AMDは「Zenアーキテクチャ」の開発をひっそりと開始しました。というか、悲しいかなAMDの情報発信に世の中がほとんど気を留めることもなく、まったくといっていいほど当時はニュースにならなかった気がします。(CPUのコアアーキテクトの新規開発、というインパクトであったにもかかわらず)
それから5年、2017年にAMDは「Ryzen」を発表します。
###「Celeron程度のコストで、Core-i7に匹敵する性能を実現!!」
そのインパクトたるや、CPUの世界をひっくり返すくらいの強烈なものでした。それにはとどまらず、翌年2018年にはGPUにRadeonを統合(何気にこれはこれでとんでもない話)した第2世代を発表、さらに2019年には次世代アーキテクトの「Zen+」が登場し、Intel-CPUがどうしても超えられなかったプロセスルール「14nmの壁」を超え、たったの15Wの電力(モバイル向け)で12nmを実現します。
プロセスルールとは、回路を作るときの「幅」のことで、これが小さければそれだけCPUにいっぱい回路を詰め込める、ということです。
この時点で、モバイル向け省電力「Ryzen5 3500U」のPASSMARKスコアは、ハイエンドクラスの「Intel Core-i7 7700HQ」を上回るものとなりました。
https://www.cpubenchmark.net/cpu.php?cpu=AMD+Ryzen+5+3500U&id=3421
・・・おーい、Intel、息してるかーー??
#そしてプロセスルール7nmの「Zen2」登場
Zen+発表からたった半年後に、AMDは現在のコアアーキテクトとなる「Zen2」を発表します。ついにAMDは、このZen2でプロセスルール7nmを実現!これ、おおざっくりにいえば、14nmのIntelCPUと比較して半分のプロセスルールなので、突っ込める回路が理論値4倍です、ということです。もちろん、Intelも黙っていたわけではなく、矢継ぎ早に第8世代、第9世代、と新型を投入し、プロセスは14nmのものの、6コア、8コアとどんどん増やして高性能化を図っていきましたが、ベースのプロセスが倍速のRyzenに敵うはずもなく、マーケットの評価はどんどん「同じコストをかければRyzenのほうが高性能」「同性能ならRyzenのほうがコスパ高い」となっていきます。。MacもIntelじゃなく自社プロセッサを採用という。。あぁ。。
#現在のCPUベンチマークと価格の比較
前置きが長くなりましたが笑、それでは現在の様相をご紹介します。
https://www.cpubenchmark.net/cpu_list.php#single-cpu
まずは、一部の超廃人のための超トップクラスのCPUベンチマークスコア。
一般ユースで世界最強といわれているRyzen Threadripper 3990Xが、Passmarkで8万越え!8マンですよ、もうおかしいって。コロナで高騰していますが、コロナ前は4000ドルくらいで安定していました。 それでも一般庶民にはなかなか手が出る価格ではありませんが、あ、あれ、Intelさん、「Xeon W-3275M @ 2.50GHz」なんていう、サーバー特化の超ハイスペックCPUでさえ、スコアが半分以下なんすね。。しかもお値段、約7500ドルって。。
そのIntel最強スーパーCPUよりも、AMDハイクラスのRyzen9 5900Xという、高性能デスクトップに採用されている程度のCPUのほうがスコアが高く、550ドルでお釣りがきます。
・・・おーい、Inte(ry
まあ、ここは神様の領域なので、もうちょとなじみのあるトップクラスのベンチを見てみます。
って、第10世代のIntel Core i9-10980XE @ 3.00GHzでも、Core i9-9980XE @ 3.00GHzでも、1000ドル弱するので、もはや600ドル前後のRyzen9 3900Xの前では太刀打ちできません。
同性能で、コスト3分の2ですよ?
###※以下、中堅クラスでも同じ内容のいじめが続くので、割愛します。
#実機では、どうなのさ?
ここまで、ベンチマークで性能とコスト比較をしてきましたが、やはり大事なのは実感値です。使ってみてどうなの?というところだと思うので、私の所有する「ノートPCとしてちょうどいい2台」で、ガチンコ再起動対決してみました。
・左側
ASUS Zenbook 14インチ 第7世代Core-i5 7200U NVMe256GB DDR4-2666 16GB
購入当時8万5千円くらい、それでも超激安超特価の限定品をゲット
Passmarkスコア:3397
Clockspeed: 2.5 GHz
Cores: 2 Threads: 4
Typical TDP: 15 W
そりゃスーパーカーじゃないけど、何の不満もないレベルっすよ?
・右側
Lenovo Ideapad 14インチ 第3世代Ryzen 3500U NVMe256GB DDR4-2666 8GB
Lenovo公式サイトで、5.5万円!中古か?っていう価格。メモリがオンボード4GBでスロットに4GB増設。
Passmarkスコア:7174 ←ダブルスコア以上!!
Clockspeed: 2.1 GHz
Cores: 4 Threads: 8
Typical TDP: 15 W
タッチスクリーンついてて値段は3分の2以下ですけど??(今は8GB挿して合計12GBで使っています)
・・・では、再起動してみます。一応ハンデじゃないですが、撮影しながら2台のPCを同時に再起動が難しいので、Core-i5のZenbookから先に再起動しますね。
【再起動対決動画はこちら】
https://www.facebook.com/100002754788680/videos/2147082495393556/
1秒程度はハンデがあったと思いますが、それでもRyzenの圧勝!スリープ復帰かのような起動時間!
Zenbookだって14nm・2コア4スレッドで、何の不満もなく使っていたんですが、こうやって並べて起動比較すると、12nm・4コア8スレッドって、かなりの爆速ですよ!!5.5万でタッチスクリーンついて、こんな爆速PC買える時代になって、、、倍の性能を実現しているんだから。AMD様、本当に恐れ入ります。
7nm・16コア32スレッドのRyzen 9 3950X(Passmarkスコア:39255)って、どんな世界なんだろう。。しかも>700ドルちょとって。。驚
#そしてついに、Intelが敗北宣言(?)
2011年、AMDはIntelに敗北宣言を出しました。自分たちの技術に「負け」を認めるのは、とても勇気がいるし、代償も大きかったはずです。市場価値=株価も低迷し、優秀な技術者は流出し、RadeonなどGPUを中心とした企業にシュリンクしたのかと思っていました。それくらい、誰もAMDのCPUに見向きもしなかった。
そしてZenアーキテクトを信じ、改善改善でZen2まで拡張し、ついに単月におけるCPUシェアでIntelを上回るようになりました。
https://www.bcnretail.com/market/detail/20200623_178933.html
これを受けて、ついにIntelが「ベンチマークにはもう意味がない」と、事実上の敗北宣言をしました。
https://freefreech.com/%E5%AB%8C%E5%84%B2/114590/
まるで、半沢直樹を見ているようです。やられたらやり返す。倍返しだ!
積年の想いが、ついに。。。AMDさん、よく頑張ったよ。。涙
#おわりに
本当は、メモリやマザボの話も全然あったのですが、CPUだけでかなりの乱文長文になってしまいましたので、それはまたの機会に。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
(追記)
プロセスルールのくだりで、おおざっくりにいえば~の個所を修正しました。ご指摘ありがとうございました!