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プロジェクト・アリストテレスの日本語訳:Googleが発見したチームのパフォーマンスを最大化する方法

Last updated at Posted at 2018-03-29

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※2018/9/2追記:本家に正式な日本語訳が掲載されました。

Googleでは従業員の働き方についての研究・検証が盛んに行われており、その研究結果がre:Workにまとめられています。

その中でも、チームのパフォーマンスについての研究である「プロジェクト・アリストテレス」が有名ですが、レポートの日本語訳が発見できなかったので、勉強ついでに翻訳して載せます。

以下の文章は全て、https://rework.withgoogle.com/guides/understanding-team-effectiveness の日本語訳です。

チームのパフォーマンスを理解する

まえ書き

Googleや多くの組織において、仕事はチームによる共同作業で実行されてきました。チームとは、革新的アイデアが生まれ、検証され、そして実際の生産活動が行われる単位であり、従業員は仕事のほとんどをチームの一員として経験します。しかしチームにおける、対人関係問題、不適切なスキルセット、不明瞭なゴール等の問題は、生産性を妨げ、メンバー内の摩擦を引き起こす可能性もあります。

Google's Project Oxygen research の成功から、People Analytics チーム は 何が偉大なマネージャーを作るか を学びました。そしてGoogleの研究者は同様の方法で、Googleで高いパフォーマンスを発揮するチームの秘密を発見しました。この研究は、"全体は部分の総和に勝る"というアリストテレスの言葉に敬意を表し、コードネーム「プロジェクト・アリストテレス」と名付けられました。Googleの研究者は、従業員は単独より共同作業をした方がより多くのことを成し遂げることができると信じていたのです。このプロジェクトのゴールは、次の問いに答えることです。「Googleにおいて、高いパフォーマンスのチームを作るには?」

この研究者達については、 The New York Times: What Google Learned From Its Quest to Build the Perfect Team を参照してください。

「チーム」を定義する

「高いパフォーマンスのチームを作るには?」という問いに答える第一歩は、「チームとは何か?」と尋ねることです。共に働く全ての人の個々のメンバーシップ、関係性、責任感を実際に明らかにすることは、思考訓練よりも難しいことですが、チームのパフォーマンスを解明するためには必要不可欠です。

チームという用語は、幅広い意味を持つことができます。タスクの相互依存性、組織の状態、そして任期に応じて 多くの定義とフレームワーク が存在します。最も基本的なレベルで、Googleの研究者は "ワークグループ"と"チーム"を区別しようとしました。

  • ワークグループ は、相互依存性が最も少ないという特徴があります。組織的または管理的な階層に基づいています。ワークグループは定期的に会合して情報共有を行います。
  • チーム は相互依存が非常に強く、仕事を計画し、問題を解決し、意思決定を行い、特定のプロジェクトの進捗状況を確認します。チームメンバーは仕事をするためにお互いを必要とします。

組織図からは上記を判別できないため、Googleの研究チームは、自分達が本当に相互依存の強いグループ(=チーム)かどうかをメンバーに決めてもらい、チームに焦点を当てました。プロジェクト・アリストテレスの研究対象になったチームの構成人数は、3人から50人(中央値は9人)となりました。

「パフォーマンス」を定義する

Googleにおけるチームとは何かを理解したら、次に研究者達は、どのようにしてパフォーマンスを定量的に測定するかを決定しなければなりませんでした。彼らは、書かれたコード行数、修正されたバグ、顧客満足度などを調べました。しかし、元々客観的なパフォーマンス測定を推進していたGoogleのリーダー達は、提案されたすべての測定方法に本質的に欠陥がある可能性があることに気付きました。良いものを作るのにより多くのコード行数が必要とは限りませんし、また沢山のバグ修正を行ったということは、沢山のバグが初期に生み出されたことを意味するからです。

よって研究者達は代わりに、定性的評価と定量的測定の組み合わせを使用することにしました。定性的評価のために、研究者は経営幹部、チームリーダー、チームメンバーという3つの異なる立場の人に評価をしてもらいました。彼らは皆、同じ尺度でチームを評価するように求められましたが、自分が下した評価を説明するように頼まれた際に、それぞれが異なる側面に焦点を当ててチームのパフォーマンスを評価していました。

経営幹部は結果(例:販売数や製品の出荷)に最も関心がありましたが、チームメンバーはチームのパフォーマンスに対する最も重要な指標はチームの文化であると言いました。チームリーダーは、オーナーシップ・ビジョン・ゴールが最も重要な指標であると言い、大きな視点と個人の懸念の両方に考えが及んでいました。

これらから、研究者はチームのパフォーマンスを4つの異なる方法で測定しました。

  1. 経営幹部の評価
  2. チームリーダーの評価
  3. チームメンバーの評価
  4. 四半期割当に対する売上高

定性的な評価は、結果と文化についての微妙な見解を捉えるのに役立ちましたが、固有の主観が入ってきます。一方で、定量的な測定基準は具体的なチームの尺度を提供してくれますが、各チームの状況に対する考慮が欠けています。しかし、これらの4つの尺度を組み合わせることで、研究者達はチームのパフォーマンスを包括的に定義することができました。

データを収集し、パフォーマンスを測定する

研究者達は、全世界の経営幹部からのインプットを基に、研究対象の180チーム(エンジニアのプロジェクトチーム115チームと販売の65チーム)を選定しました。この180チームには高いパフォーマンスと低いパフォーマンスのチームが混ざっています。この研究で、チームの構成(例えば、性格特性、セールススキル、チームの人口統計)とチームのダイナミクス(例えば、チームメイトとの関係性)がチームのパフォーマンスにどのような影響を与えるかをテストしました。アイデアは既存の研究からだけでなく、高いパフォーマンスのチームを作ってきたGoogleの独自の経験からも引き出されました。

彼らは、リーダー達がチームのパフォーマンスに影響すると考えるものを理解するために、リーダー達と二重盲検のインタビューを数百回実施しました。また研究者達は、毎年の従業員エンゲージメント調査による250項目を超える既存の調査データと、仕事と人生に関するGoogleの長期的な研究 であるgDNA を参照して、どのような変数がパフォーマンスに関連するのかを調べました。参加者に同意するか否かを尋ねた調査で使用されたいくつかのサンプル項目を以下に示します。

  • グループのダイナミクス: 私はチームと異なる意見を表明することは安全だと感じます。
  • スキルセット: 私は障害を乗り越えるのが得意です。
  • 性格特性: 私は自分自身を信頼できる労働者であると見ています(ビッグファイブの性格評価で判定されます)。
  • 感情的知性: 私は他の人の問題に興味がありません(トロント共感アンケートで判定されます)。

また、入社年数、役職、場所、といった人口統計学的変数も収集されました。

高いパフォーマンスの原動力を特定する

収集された多くのインプットのうち、どれが実際にチームのパフォーマンスに影響を与えたかを理解するために、 すべてのデータを使用して、研究者達は統計的にモデリングを行いました。何百もの変数について35以上の異なる統計モデルを使って、彼らは以下の要因を特定しようとしました:

  • 定性的および定量的な複数の評価指標に影響を与えた
  • 組織を跨いで、様々な種類のチームに影響を与えた
  • 安定した統計的有意性を示した

研究者は、「誰がチームにいるのか」「チームメンバーがどのように協力し合っているのか」という点はそれほど重要でないことを発見しました。 重要性の順に以下になります。

研究者はまた、どの変数がGoogleのチームパフォーマンスと大きく関係していないかを発見しました。

  • 場所(同じオフィスに一緒に座っているか)
  • 合意形成による意思決定
  • メンバーの外出
  • 個々のパフォーマンス
  • 仕事量
  • 経験年数
  • チーム人数
  • 期間

これらの変数はGoogleのチームパフォーマンスに大きな影響を与えませんでしたが、どのような状況でも重要でないわけではありません。たとえば、Googleの分析ではチーム人数の影響はパフォーマンスに大きく影響を及ぼしませんでしたが、その重要性を示す多くの研究があります。多くの研究者達は小さいチーム(10名未満)の方が、大きいチームよりも成功すると示しています(Katzenbach & Smith, 1993; Moreland, Levine, & Wingert, 1996)。また小さいチームは、より良い仕事と生活の質(Campion et al., 1993)を感じ、よい成果を出し(Aube et al., 2011)、衝突が少なく、コミュニケーションが密になり、団結し(Moreland & Levine, 1992; Mathieu et al., 2008)、より組織化され市民的に行動します(Pearce and Herbik, 2004)。

ツール:チームに足りないものを見つけ出す

Googleの研究チームは、調査結果を単に伝えるだけでなく、Googleの社員達にチームの力学を理解してもらい、その改善のヒントを提供したいと考えました。そこで彼らは、各チームが議論するための調査票を作成しました。調査票は、5つのパフォーマンス向上の柱に焦点を当てており、以下のような質問を含みます:

  • 心理的安全性 - ミスをしても、責められません
  • 信頼性 - 何かしようとするとき、それを受け入れてくれます
  • 構造と透明性 - 効果的な意思決定プロセスがあります
  • 意味 - チームの仕事は自分自身にとっても有益です
  • 影響 - チームの仕事が組織の目標にどのように貢献しているかを理解しています

調査を完了した後、チームリーダーは集計された匿名のスコアを受け取ってチームメンバーと共有し、議論します。People Operations のファシリテーターは頻繁に議論に参加し、またはチームリーダーはPeople Operationsチームが作成したガイドラインに従います。

ツール:心理的安全性を育てる

パフォーマンス向上の鍵となる5つの力学の中でも、心理的安全性は最も重要です。またGoogleの研究者は、心理的安全性の高い社員は退職率が低く、チームメイトの多様なアイデアを生かし、より収入が高く、経営幹部からも2倍以上の評価を得ていることを発見しました。

ハーバード大学の組織行動学者のAmy Edmondsonは、初めて「チームの心理的安全性」という概念を導入し、それを「チームの一人一人が不安なく自分を表現できる雰囲気」と定義しました。メンバーがリスクある言動をすることは一見簡単に思えるかもしれません。しかし、例えば「そもそもこのプロジェクトの目的って何だっけ?」といった質問は、あなたがチームに着いていけてないような印象を与えます。そのように無知だと見なされることを避けるためには、曖昧なまま進めるほうが楽でしょう。

チームの心理的安全性のレベルを測定するために、 Edmondsonはチームメンバーに以下の点をどの程度強く感じるかを質問しました。

  1. ミスをすると、しばしば責められる
  2. 問題や難しい課題を提起できる
  3. 異なる意見が拒絶されることがある
  4. リスクを取っても安全だと感じる
  5. 他のメンバーに助けを求めるのが難しい
  6. 意図的に努力を否定するような言動がない
  7. このチームでは、自分のユニークなスキルと才能が評価され活用される

EdmonsonはTEDxにおけるプレゼンテーションで、個々人がチームの心理的安全を促進するためにできる、3つのシンプルな方法を提示しました:

  1. 実行問題ではなく、学習問題としてフレームワークを構築する
  2. あなた自身の誤りを認める
  3. 好奇心をモデル化し、たくさんの質問をする

Googleの調査結果を社内で促進するために、研究者はチームとのワークショップを運営しました。ワークショップでは匿名化されたシナリオが使用され、心理的安全性をサポートする行動と、害する可能性のある行動について説明しました。シナリオはロールプレイングされ、その後グループの報告が行われます。シナリオの例を示します。

心理安全性シナリオ| アイデアとイノベーション

ウリさんは長年マネージャーを務め、技術的専門知識を持つことで知られています。過去2年間、彼は大規模プロジェクトを遂行するXYZチームのマネージャーとして働いていました。彼は非常に高い水準を維持していますが、ここ数ヶ月でウリさんは、過ちや、「あまり良くない」と思ったアイデアや、自分の考え方に対する挑戦的な意見に対して、寛容さを失いつつありました。

最近ウリさんは、経験豊富なチームメンバーが提案したアイデアを皆の前で「痛めつけ」、そのことをとても否定的に、チーム外に公言しました。誰もが、このアイデアは強く、よく研究されており、探求する価値があると考えました。この後、アイデアは途絶えてしまいました。

ウリさんのアイデアは最近のプロジェクトの提案を後押ししましたが、それは創造性と革新性が欠けていたため、経営陣によって最終的に却下されました。

デブリーフィングの質問:

  • 心理的安全性を反映する行動はどのようなものですか?
  • このシナリオで心理的安全性が欠如していることを示す行動はどのようなものがありますか?
  • なぜ心理的な安全はとても重要なのですか?チームにどのような違いを生み出しますか?あなたは自分のチームで何を見てきましたか?

あなたがマネージャーの場合は、メンバーにコーチングする際に、これらの推奨事項を検討してみてください。

チームが行動を起こすためのヒント

パフォーマンス向上の鍵となる5つの観点は、チームのパフォーマンス研究という幅広い領域を根拠にしています。あなたがGoogleでコードを書いていようと、作曲者の部屋で演奏していようと、火星旅行の準備をしていようと、アイスホッケーをしていようと、チームは仕事体験と結果に対して必要不可欠なものです。Googleでは、プロジェクト・アリストテレスがGoogleにおいてパフォーマンスに影響を及ぼすのか因子を解明しました。彼らは次のステップとして、高いパフォーマンスのチームを作り、育て、強化するための研究を行っています。

Googleの研究者による発見は、あなたの組織における答えとは異なっているかもしれません。あなたの努力を共有するために、以下の手順について検討してみてください。

  1. 共通の語彙を確立する - あなたの組織で醸成したいチームの行動・規範を定義してください。
  2. チーム力学を議論するためのフォーラムを開催する - チームが安全で建設的なやり方で、繊細な問題について議論することを可能にしてください。HRビジネスパートナーまたは訓練を受けたファシリテーターが役立つかもしれません。
  3. リーダーの強化・改善へのコミット - リーダーシップのモデルを作り、継続的な改善を求めることで、定義された行動・規範を実践できます。

マネージャーやチームリーダーが、高パフォーマンスなチーム作りをするためのヒントをいくつか紹介します。これらは外部の調査とGoogle自身の経験に基づいています。

心理的安全性:
- グループから意見を求めてください。
- 仕事とプライベートに対する考えをメンバーに共有してください。また、そうすることを他のメンバーにも推奨してください。
- 心理的安全性に関する Amy Edmondsonの TEDトークを見てください。

信頼性:
- チームメンバーの役割と責任を明確にしてください。
- あらゆる個人の仕事について透明性を提供するため、具体的なプロジェクト計画を作成してください。
- 誠実性の研究について話しあってみてください。

構造と明快さ:
- 定期的にチームの目標を伝え、メンバーが達成プランを確実に理解できるようにしてください。
- 会議では明確な議題と会議のリーダーを設定してください。
- チームの作業を組織化するために、目標と主要結果(OKR)を採用することを検討してください。

意味:
- チームメンバーに、彼らがやっている優れたことについて積極的なフィードバックを与え、彼らが苦労していることを手伝ってあげてください。
- あなたを助けてくれた人に感謝の意を表明してください。
- KPMGケーススタディを読んでください。

影響:
- 各メンバーの仕事が、チームそしてより広い組織の目標に対して、直接どのように貢献しているかを、より理解しやすくするために明快なビジョンを作ってください。
- あなたがやっている仕事のこと、そしてそれがどのようにユーザーやクライアント、組織に影響を与えているかを考えてみましょう。
- ユーザー中心の評価方法を採用し、ユーザーに焦点を当てましょう。

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