■はじめに
本記事で伝えたいこと
インフラ業務では、本番環境のシステムに変更を加える際、作業者と再鑑者の2名体制で作業することが一般的だと思います。
本記事では、再鑑者の重要性と担当する際の注意すべき事項を整理しました。
また、作業者の注意すべき事項も合わせて整理しました。
■目次
本記事の目次は、以下の通りです。
- ◇本記事のターゲット
- ◇本題
- 1.再鑑者の重要性
- 2.再鑑者の心得
- 3.作業者の心得
- 4.まとめ
- 2.再鑑者の心得
- ◇最後に
■本文
◇本記事のターゲット
本記事は、以下のような方のお役に立てればと思い作成しました。
- 本番環境のシステム変更作業でヒューマンエラーが起こり、対策に困っている方
- 再鑑者の重要性が分からない方
◇本記事を書くキッカケ
私自身、40代のインフラエンジニアとして本番環境のシステム変更を何度も経験してきましたが、30代になってから、再鑑者の重要性を知りました。
私と同じように再鑑者の重要性を知らない方がいるのかもしれないと思い、本記事を書くことにしました。
◇本題
1.再鑑者の重要性
それでは、再鑑者の重要性について説明します。
その前にまず、本記事でいう「再鑑」という言葉について定義したいと思います。
金融機関の用語のようです。
「再鑑」とは
再鑑は、主に金融機関で使われる用語で、二人の担当者で確認することをいいます。これは、業務(事務作業)において、万全を期すために行うもので、ダブルチェックの状態を指します。
具体的には、現金等の取扱いにあたって、ある人が処理をした後、さらに別の人が検算することや、他の人がやった仕事(入力や登録など)を間違いないか見直すことなどが挙げられます。
参考:再鑑とは|預金用語集|iFinance
私も初めて知りました。なんとなくで使ってました。
本記事でも上記の用語同様に特定の作業をチェックすることを表すものとします。
また、作業をチェックする人を「再鑑者」や「チェッカー」と呼んだりすると思います。
具体的な再鑑作業とは、以下のイメージです。
- 本番稼働しているWebサイトの文言を変更する作業に立ちあい作業者の操作をチェックする
- 上記の作業証跡を後日チェックする
- 本番環境のAzureテナントに仮想マシンを監視するためのAzure Monitor アラートルールを新規作成する操作に立ち合い作業者の操作をチェックする など
以上の点を踏まえ、再鑑者の重要性について、ご説明します。
稼働しているシステムに対して、何か変更を加える際に1名の作業者のみで操作してしまうと、以下のようなトラブルを引き起こす可能性があり、そのリスクを減らすために、再鑑者は必要だと考えられます。
- ①作業者が気付かない操作ミス
- ②作業者が手順書と異なる操作をすることによるトラブル
- ③想定外の画面表示(手順書と異なる)やエラー表示が起こった場合の対処を1名で行う
- ①作業者が気付かない操作ミス
- 再鑑者が操作前に指摘し、ミスを防止することができる
- ②作業者が手順書と異なる操作をすることによるトラブル
- 再鑑者が指摘できる(抑止力になる)
- ③想定外の画面表示(手順書と異なる)やエラー表示が起こった場合の対処を1名で行う
- 作業者は、操作を止めて作業証跡の確認や、調査を進め、並行して再鑑者が上長に報告することができる
2.再鑑者の心得
続いては、「1.再鑑者の重要性」を達成するために再鑑者が注意すべき事項をご説明します。
注意すべき事項は、下記4点です。
- ①作業ミスの責任は作業者よりも再鑑者の方が重い
- ②作業内容を理解した上で再鑑作業を実施する
- ③作業者が手順と異なることや間違った操作をしたときは、必ず指摘し作業を止める
- ④作業中は、他のことは一切しない(する場合は作業を止める)
- ②作業内容を理解した上で再鑑作業を実施する
上記4点について、詳しくご説明します。
- ①作業ミスの責任は作業者よりも再鑑者の方が重い
- ダブルチェックのルールとして、作業中における操作ミスや異なる手順によるトラブルの責任は、再鑑者の方が重いというルールが一般的かと思います。
- 作業者も責任はもちろんありますが、作業者は作業に集中することが責任で、再鑑者は作業をチェックすることが責任となるため、再鑑者の方が責任は重くなります。
- その反面、経験の浅い若手に再鑑者を任せることがあります。
- そういった場合でも自身を守るためにも残りの「再鑑者の心得」を実践して頂ければと思います。
- また、作業ミスを確実に検知するために、作業者が次にする操作や手順を言ってもらうようにしてください。
- そして、再鑑者はその操作や手順に問題がなければ、問題ない旨を言ってあげてください。
- 相槌は重要です。再鑑者が沈黙しているとリモート環境の問題で聞こえていないのかもと不安になる場合があるので、そういった点も考慮しましょう。
- 作業者も責任はもちろんありますが、作業者は作業に集中することが責任で、再鑑者は作業をチェックすることが責任となるため、再鑑者の方が責任は重くなります。
- ②作業内容を理解した上で再鑑作業を実施する
- 作業者は作業手順を理解していないと作業できないので問題ないと思うのですが、再鑑者への説明がない場合は多いと思います。
- 必ず再鑑者から作業手順の説明を作業者もしくは作業指示者に求めるようにしましょう。 再鑑者が作業手順を理解することで、操作ミスや手順書と異なる操作に対する検知度が大幅にアップします。 もしかすると作業前に作業手順の不備も見つかるかもしれません。
- 必ず再鑑者から作業手順の説明を作業者もしくは作業指示者に求めるようにしましょう。 再鑑者が作業手順を理解することで、操作ミスや手順書と異なる操作に対する検知度が大幅にアップします。 もしかすると作業前に作業手順の不備も見つかるかもしれません。
- ③作業者が手順と異なることや間違った操作をしたときは、必ず指摘し作業を止める
- 作業者よりも立場が弱い場合に指摘できないケースがあると思いますが、必ず指摘してあげてください。
- 特に作業時間短縮や効率化のために手順書と異なる操作をしてしまった場合の指摘も気が引けてしまうと思います。
- しかし、作業者もミスやトラブルは嫌なので、必ず指摘してあげてください。
- 感謝されると思います。
- 指摘されることで作業者は指摘された作業を思い留まることができ、再確認によりミスを防ぐことができます。
- 指摘するためには手順書と作業者の操作画面の両方を必ず確認できるように準備してください。
- 作業を理解しているから見なくても良いということは絶対にありません。
- 人はミスするもの、忘れるものということは大前提において準備は万全にしてください。
- 特に作業時間短縮や効率化のために手順書と異なる操作をしてしまった場合の指摘も気が引けてしまうと思います。
- ④作業中は、他のことは一切しない(する場合は作業を止める)
- 再鑑作業をする場合は、何か他のことをしながら対応することがないようにしてください。
- それは絶対にチェックできていないです。
- 業務が忙しく作業の合間に業務の連絡チャットやメールを確認したくなる気持ちは分かるのですが、我慢してください。
- 緊急の連絡や作業が割り込んだ場合は、必ず作業者に作業を止めてもらうように依頼した上で割り込み作業を対応するようにしてください。
- それは絶対にチェックできていないです。
3.作業者の心得
作業は再鑑者だけが頑張ってもミスは減りません。当然ですが作業者も頑張る必要があります。
そこで、「作業者の心得」についてもご説明したいと思います。
注意すべき事項は、下記4点です。
- ①次の操作や手順を再鑑者に説明した上で進める
- ②作業内容を理解した上で作業を実施する
- ③手順書と異なる操作は一切しない
- ④作業中は、他のことは一切しない(する場合は作業を止める)
- ②作業内容を理解した上で作業を実施する
上記4点について、詳しくご説明します。
- ①次の操作や手順を再鑑者に説明した上で進める
- 「再鑑者の心得」でもご説明しましたが、作業者が次にやろうとしていることを伝えることで操作ミスや手順間違いなどを再鑑者が気付き未然にトラブルを回避することができます。
- また、自分の行動を再確認する意味でも重要ですので、ぜひ実践してください。
- 再鑑者へ次の操作を伝えた際にリアクションがない場合は、再鑑者にリアクションを求めることも重要です。 特にリモートで画面共有しながら作業することも多いと思うのですが、実はリモート環境のトラブルで再鑑者が作業をチェックできていなかったということもあり得ます。
- リモート環境化こそコミュニケーションが大切ですので、その点も注意して頂ければと思います。
- また、自分の行動を再確認する意味でも重要ですので、ぜひ実践してください。
- ②作業内容を理解した上で作業を実施する
- この心得は、「再鑑者の心得」と同じなので説明は割愛させて頂きます。
- 補足としては、作業を実施する前の準備はとても重要です。
- 準備が完璧ではない作業はトラブルが起こるものです。
- 準備は万全にしてください。
- 補足としては、作業を実施する前の準備はとても重要です。
- ③手順書と異なる操作は一切しない
- 作業を進める上で、どうしても手順書と異なる操作をしたい場合があると思います。
- 例えば単純な手順書の記載ミスで正しい操作方法が分かっている場合などです。
- しかし、そういう場合も自己判断せずに必ず上長に相談した上で手順と異なる操作をするようにしてください。
- 理由は、自分を守るためです。
- 自分が正しいと思う手順が実は間違っているということも稀かもしれませんがあり得ます。
- 絶対に自己判断せずに相談することが重要です。
- 相談相手の返事がない場合は、作業を止めてください。焦りは禁物です。
- 例えば単純な手順書の記載ミスで正しい操作方法が分かっている場合などです。
- ④作業中は、他のことは一切しない(する場合は作業を止める)
- あまり他のことをしながら作業を実施する方は少ないと思いますが、絶対にミスすることになるのでやめた方が良いです。
- 例えば1つの操作後に、応答が返ってくるまで待つような場合でも、他の作業をしないように注意が必要です。
- 画面にエラー表示が出ていて見過ごすリスクがあるためです。
- 例えば1つの操作後に、応答が返ってくるまで待つような場合でも、他の作業をしないように注意が必要です。
4.まとめ
再鑑者の重要性や心得についてのまとめです。
「再鑑者の重要性」は、下記2点を挙げさせて頂きました。
- ①再鑑者の存在により作業者は安心感を持って作業に集中できる
- ②再鑑者の存在により作業者は手順と異なることをできない抑止力となる
「再鑑者の心得」は、下記4点を挙げさせて頂きました。
- ①作業ミスの責任は作業者よりも再鑑者の方が重い
- ②作業内容を理解した上で再鑑作業を実施する
- ③作業者が手順と異なることや間違った操作をしたときは、必ず指摘し作業を止める
- ④作業中は、他のことは一切しない(する場合は作業を止める)
- ②作業内容を理解した上で再鑑作業を実施する
「作業者の心得」は、下記4点を挙げさせて頂きました。
- ①次の操作や手順を再鑑者に説明した上で進める
- ②作業内容を理解した上で作業を実施する
- ③手順書と異なる操作は一切しない
- ④作業中は、他のことは一切しない(する場合は作業を止める)
- ②作業内容を理解した上で作業を実施する
◇最後に
以上で本記事は終了となります。
長文にも関わらず記事を読んで頂きありがとうございました。
この記事により少しでも作業ミス削減のキッカケになればとうれしいです。
もっと実用的なチェックリストなどの実務に役立つものが準備できれば、改めて記事にしたいと考えております。