今まではクラウド中心に記事を書いてましたが、今回はちょっと内容を変えてネットワーク現場でよく見かける定番のルーティングプロトコルのOSPFとEIGRPの再配布に関してパケットトレーサーの仮想環境も添えて構築していきます!
##再配布とは?
異なるネットワーク領域に対し、プロトコルの内容を変換して送信する技術です。
大企業では全国にネットワークを構成するためWAN内ではEIGRPやBGPなどのプロトコルを使用し
社内などの中規模LAN内ではOSPFを使用するなど、一つのプロトコルのみを使用してネットワークを構成するのはほぼ不可能になっています。
そういう時に、LANからWANに向かってプロトコルの変換を実現してくれる技術が
**再配布(redistribute)**です。
OSPF
Open Shortest Path Firstの略語で、RFCで標準化されている
小規模から大規模ネットワーク向けの※リンクステート型ルーティングプロトコルです。
IPv4アドレス対応のOSPFv2とIPv6アドレス対応のOSPFv3の2種類があります。
※リンクステート型
どのルータとどのルータが**隣接(リンク)しているかという接続情報(リンクステート)**を交換し合い、この情報の集合に基づいてどこにパケットを送るかの経路を選択する方式です。
EIGRP
Enhanced Interior Gateway Routing Protocolの略語で
※ディスタンスべクト型とリンクステート型の両方の利点を備えた、シスコ独自のルーティングプロトコルです。
もちろんIPv6にも対応しており、名称はEIGRP for IPv6と言います。
※ディスタンスべクタ型
ネットワーク内でほかのルーターに対しての**ディスタンス(距離)とベクタ(方向)**の要素を加味して最適なルートを選択する方式です。
パケットトレーサー で実際に環境を作ってみよう
##IPアドレス設定時の注意
ルータは異なるネットワーク (ネットワークアドレスが異なるネットワーク) を接続するものなので、同じネットワーク帯のIPアドレスをFa0/1とSe1/0など異なるインターフェイスに設定することはできません。
RouterA~RouterBの間で11.0.0.1~11.0.0.254までのアドレス帯を使用してしまったので、RouterA~PCの間でIPアドレスを設定する際は11.0.1.1~11.0.1.254を設定します。
セグメント | 使用可能最小IPアドレス | 使用可能最大IPアドレス |
---|---|---|
RouterA~RouterBの間 | 11.0.0.1 | 11.0.0.254 |
RouterA~PCの間 | 11.0.1.1 | 11.0.1.254 |
同じくRouterB~RouterCの間では192.168.1.1~192.168.1.254までのアドレス帯を使用してしまったので、RouterC~PCの間でIPアドレスを設定する際は192.168.11.1~192.168.11.254までのをアドレスを設定します。
セグメント | 使用可能最小IPアドレス | 使用可能最大IPアドレス |
---|---|---|
RouterB~RouterCの間 | 192.168.1.1 | 192.168.1.254 |
RouterC~PCの間 | 192.168.11.1 | 192.168.11.254 |
投入コンフィグ
interface FastEthernet0/1
ip address 11.0.1.1 255.255.255.0
no shutdown
interface Serial1/0
ip address 11.0.0.2 255.255.255.0
no shutdown
router eigrp 100 ←EIGRPを設定
network 11.0.0.0
interface Serial1/0
ip address 192.168.1.1 255.255.255.0
no shutdown
interface Serial1/1
ip address 11.0.0.1 255.255.255.0
no shutdown
router eigrp 100
distance eigrp 90 100
redistribute ospf 2 metric 100000 100 255 1 1500 ←OSPFをRouterAに再配布
network 11.0.2.0 0.0.0.255
network 11.0.0.0
router ospf 2
router-id 3.3.3.3
log-adjacency-changes
redistribute eigrp 100 metric-type 1 subnets ←EIGRPをRouterCに再配布
network 192.0.0.0 0.255.255.255 area 0
interface FastEthernet0/0
ip address 192.168.11.1 255.255.255.0
no shutdown
interface Serial1/0
ip address 192.168.1.2 255.255.255.0
no shutdown
router ospf 2 ←OSPFの設定
router-id 2.2.2.2
log-adjacency-changes
network 192.0.0.0 0.255.255.255 area 0
コンフィグ設定の結果
RouterA#show ip route
C - connected 直接つながっているルーティング
D - EIGRP EIGRPの設定
EX - EIGRP external
→EIGRPが外部から再配布により外部柄取得した外部エリアのルーティング情報
Gateway of last resort is not set
→デフォルトルートが設定されていないですという意味
11.0.0.0/24 is subnetted, 2 subnets
C 11.0.0.0 is directly connected, Serial1/0
C 11.0.1.0 is directly connected, FastEthernet0/1
D EX 192.168.1.0/24 [170/20537600] via 11.0.0.1, 00:02:37, Serial1/0
D EX 192.168.11.0/24 [170/20537600] via 11.0.0.1, 00:02:37, Serial1/0
※viaは次に経由するのルーターのアドレス
RouterB#show ip route
C - connected 直接つながっているルーティング
D - EIGRP
O - OSPF OSPFの設定
省略
Gateway of last resort is not set
11.0.0.0/24 is subnetted, 2 subnets
C 11.0.0.0 is directly connected, Serial1/1
D 11.0.1.0 [90/20514560] via 11.0.0.2, 00:03:15, Serial1/1
C 192.168.1.0/24 is directly connected, Serial1/0
O 192.168.11.0/24 [110/65] via 192.168.1.2, 01:06:11, Serial1/0
RouterC#show ip route
O - OSPF
E1 - OSPF external type 1
省略
Gateway of last resort is not set
11.0.0.0/24 is subnetted, 2 subnets
O E1 11.0.0.0 [110/84] via 192.168.1.1, 00:00:19, Serial1/0
O E1 11.0.1.0 [110/84] via 192.168.1.1, 00:00:19, Serial1/0
C 192.168.1.0/24 is directly connected, Serial1/0
C 192.168.11.0/24 is directly connected, FastEthernet0/0
RouterAとCはRouterBを経由して外部の経路情報を受け取ったことがルーティングテーブルに記載されているので構築成功です。
##次回予告
次回は現場で行われたペーパーレス化に関して投稿予定です。