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〈弱いロボット〉の事例を通じてRPAとの関係性を考えてみた話

Last updated at Posted at 2022-08-11

人とRPAの関係性を見直してみた

この記事は、豊橋技術科学大学 情報・知能工学系 岡田美智男 教授の Schooの授業 を参考にして、自分なりに思考整理した上で人とRPAとのこれからの関係性について考えたものです。
また、RPAとの関わりを通じて、人と人とのコミュニケーションについて学べることもあるのではないかと思いアウトプットしてみました。

利便性が人の意識をひっそり変えている?

私はRPA関連の仕事に携わっていますが、RPAを導入した現場の方から以下の話題をよく耳にします。
自動化ツールなんだから、導入する過程や保守管理も自動化されればいいのに!
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確かにその通りです。
実現すれば現場は楽になりますし、実際各ベンダーからそういった技術がRPAに実装され始めています。
私もRPAツールを使いこなせていなかった初心者の時期は同じ所感を持っていました。

しかし次第にRPAツールを使いこなせてくると、その考えは変わりました。
どんなにRPAツールが完璧に近づいて自動作成できるようになったとしても、結局現場での微調整が必要になります。
そして自動作成したものを微調整するためには、結局RPAツールに関する知識やロボットの構成要素についての読解力や関連ツールに対する知識がなければ実現できません。
私はRPAのロボット作成を通じて、新たなロボット作成時に役立つ知識を得て、お役に立てる範囲を広げることが出来ました。
確かにRPAツールに慣れるまでは利便性は望めないかもしれませんが、逆に不便なことがきっかけで、RPAについての学びが深まり得られるものがありました。

以上のことから、改めて考えたいのは
完璧なRPA(=経済的な合理性)は、現場の人を真の意味で幸せにするのだろうか?
ということです。
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まず、経営者視点から考えると「かなり幸せになる」と思われます。
現場の人が本来割くRPA関連作業が無くなるわけですから、その分他の業務に携わってもらい、さらに利益を上げることも可能だからです。

現場視点からも「ある程度幸せ」と言えるかもしれませんが、合理性を追求しすぎると思わぬ弊害も出てくるのでは?と考えています。
例えば、自動化した業務や使用するシステムに対する学習をしなくてもよくなるので、不測の事態が起きたときに対応できなくなる可能性があります。
また、業務に対する学習をする際に必ず必要になるコミュニケーションも減るので、逆にコミュニケーション・コストがかかる場合もあるかもしれません。
さらに、ロボットに対して自己完結かつ完璧にできていることが当たり前になってくると、知らず知らずのうちに人に対しても完璧さを求めることが普通になってくると思われます。
そうなると、不寛容な関係性が常態化するというリスクも秘めています。
もちろん、人間関係はそんなに単純なものでもないですし、今さら経済的な合理性の追求やテクノロジーの進歩は止めようもありません。

大切なのは不寛容な関係性が常態化しないよう、どう自動化と関係性を築くべきかを意識することだと考えます。

そしてこの課題に対する対策の手がかりになりそうなのが〈弱いロボット〉の事例にあるのではないかと考えます。

弱いロボットとは

まず、〈弱いロボット〉とは何かを簡単に説明します。
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ロボットの分類の一つとして〈強いロボット〉と〈弱いロボット〉があります。
強いロボットはタスクを自己完結でき、弱いロボットは特定のタスクをこなすものとイメージしていただければと思います。
一見すると完璧なロボットの方がいいんじゃないの?と考えてしまいますよね。

「弱いロボット」に関するお話は、こちらのブログでも学びが深まるかと思います。
助けがないと何もできない〈弱いロボット〉が教えてくれた、いま私たちに足りないこと

しかし弱いロボットの面白い試みとして、〈ゴミ箱ロボット〉の事例があります。
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ロボットに実装されている動きは単純で、かつ、ロボット自身で目的を達成できない仕様になっています。
しかしロボットが頼りない動きをしていることで、中には思わずゴミを拾って投入してくれる親切な人も現れるんだそうです。このように、ロボットが人に頼ることで相手の優しさや行動を引き出し目的を達成することが出来た、興味深い結果になったそうです。
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この事例を聞いて私が真っ先に感じたのが、「RPAって弱いロボットに近いかも!」ということでした。
この考え方や価値観をRPAにうまく当てはめれば、RPAと人の関係性も変わってくるのでは……そう考えて、以下の内容を考察してみた次第です。

委ねる/支えるの関係

現状のロボットと人の関係性は、利便性の向上というメリットに注目されがちで、その他のデメリットは意識が向いていないように思います。
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自分に当てはめてみても、デメリットを明確に意識できていなかったですし、むしろ利便性の方にしか目を向けていなかったです。そして今後も利便性の向上は進んでいく一方で、デメリットはますます意識されなくなっていくと思います。

この状況が進むと、自動で作ったロボットの動作が自分の想定していないものになるだけで「なんで完璧に動かないのか」とイライラしがちになり、動作を微調整しようにも簡単に修正もできず、自分よりも知識や経験のあるユーザーに修正を頼らざるを得ない状態になります。また、人に依頼して作ってもらったロボットを保守管理しようにも解読できなければ手が付けられない状態になるでしょう。

そういう考え方や価値観でロボットの運用をしていると、ユーザー側はイライラした状態になったり、仕事が味気ないものになったり、逆にロボットの運用保守に関するコストがかかる可能性も秘めていると思います。この状態が果たしてユーザー側が幸せな状態なのかと問われると、疑問が残ります。
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なので、ここからは〈弱いロボット〉の事例の授業から学んだことを参考に、人の幸せについてのモノサシで関係性を考えてみようと思います。
道具(ロボット)と人の間で「委ねる/支える」の関係性が適切に築けると、人は「なんだか幸せ」と感じるそうです。
その人の幸せについては「ウェルビーイング」と授業では表現していました。

ウェルビーイング
当事者自らの能力が十分に生かされて、生き生きとした幸せな状態。
(ちなみに個々の立場によって幸せの内容は変わります。)

そして、デジタル面でのウェルビーイングを向上するための主な構成要因として「自律性」「有能感」「関係性」が挙げられていました。

ということは、利便性に重きが置かれている現状に、人の幸せについての価値観も併せて意識していけば、「委ねる/支える」の関係性のバランスが取れ、双方共に幸せになれるのではないか……その視点で人とRPAの関係性を考えてみました。

人とRPAの関係について考えてみた

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人とRPAを「委ねる/支える」の関係性で考えていきます。
当然のことながら人はRPAツールで作成したロボットに、パソコン上での作業をほぼ委ねています。
では人がRPAを「支える」という点、RPAの弱さとは何でしょうか。

RPAツールを使用している人はピンとくると思いますが、RPAツール自身で自動化を実現するロボットを作成することは出来ません。
また、自動記録という手段で人間が補助して作ったとしても、思った通りの自動化が出来ている可能性は現状低いです。
作成したロボットが想定している完璧な動作をするよう、ロボットの部品を組み替えてユーザー側が作りこむ必要があります。
また、別のツールの機能と連携させて処理速度を向上させるとか、処理手順を変えてみたり、処理自体の必要性を確認するなど、手間をかけたり工夫することで支えることが出来ます。
さらにロボットの修正や不具合対応をして成功体験を得られると、場合によってはロボットとのつながりや一体感を感じられるかもしれません。

「支える」という経験を通じて、RPAツールを自由自在に使いこなし、RPAツール以外にも新たな知識も得て、協働している気分になることができれば……利便性と人の幸せのバランスが取れて、より自動化への取り組みが進んでいくものと考えます。

では利便性と人の幸せのバランスを取るための ウェルビーイングの向上 には何が必要でしょうか。

「自律性」「有能感」「関係性」を自己実現できるようにするためには、結局 ユーザー側の継続的な学習と経験 が必要だと考えます。
組織で取り組んでいく場合には、人員の適切な配置研修や勉強会の開催 も必要になるでしょう。
最近では国を挙げてリスキリングを推進していますが、利便性と人の幸せのバランスという観点から見てみると「確かに必要だな」と私自身納得できるようになりました。

まとめ

以下に、こちらの記事に関するまとめを記します。
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人と道具の「委ねる/支える」の信頼関係を意識して、人が「支える」関係になるための継続的な学習と経験を地道に積むことが大切であることに気付くことができました。

またこの考えは人と人にも適用でき、信頼関係を築くためにはお互いに思いやりを持つこと不足を補うための不断の努力が必要で、それが寛容な関係性につながっていくということも理解できました。

この考えが、会社単位、国単位で広がれば組織間の心理的安全性寛容な社会につながる……すぐに実現は無理でも自分からスタートしていければ、と思いました。

まずは、自分に身近なRPAツールを通じて、ウェルビーイングの向上を目指してみようと思います!

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