こんにちは。佐藤です。
こちらは グロービスアドベントカレンダー8日目の記事です。
はじめに
デジタルサービスの開発に関わっている方ならば、「UXライティング」というキーワードを一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
現在、私が所属しているプロダクトチームは発足から9ヶ月ほど経ちました。その中で、個人的に興味があったUXライティングをプロダクトチームに浸透させるためのトライを細々と行なっています。本記事では、啓蒙の一環として社内Slackに流していた「UX Writing Letter」の内容から、基本編をピックアップしてまとめておきたいと思います。
UXライターって何者?
UXライターという職種は比較的新しく、企業によって詳細な仕事内容や、責任の範囲は若干ことなります。しかし、多くの人がライターと聞いて想像する“コピーライター“とは少々毛色が違うのです
一般にコピーライターは、消費者の生活にまつわる文脈や商品の理解、言語表現への落とし込みのスキルなどが求められます。
UXライターはさらに、テクノロジーの理解、チームで開発するため多様な人とのコミュニケーション能力、プロダクトの戦略理解なども求められます。
最終アウトプットがテキストという点では共通していますが、ライターといっても焦点の異なる、さまざまなライターがいるのですね。
こちらの記事では差分をわかりやすく紹介しています。
■ Are UX writers same as Copy Writers?
http://bit.ly/2ZWjeOb
なぜUXライターが必要なのか?
Googleをはじめ、Spotifyなど、海外では知名度が上がりつつある職業ですが、すべての会社に必要かというと、そうではないように思います。
UXライターという専門家が活躍できるかどうかは、組織のサービス作りに対する価値観や、企業の規模にも左右されます。ただし、どんなサービスであれライティングを軽視することは、得策とは言えないでしょう。
■ The Rise of the UX Writer
http://bit.ly/31rQ9Yv
企業の取り組み事例
泣く子も黙る Google
Google I/Oでは、2017年からすでのその重要性について言及していました。
↓下記の動画は、Googleのコンテンツ戦略、UX writingに関する3つのベストプラクティス、ブランドボイスにまつわるケーススタディ、という3つのお話が30分でわかりやすくまとまっているのでオススメです。
https://youtu.be/DIGfwUt53nI
UX writingが重要視されはじめた背景のひとつに、Voice User Interface(以下、VUI)の急速な進化と需要の拡大、普及に向けた各企業の戦略があるとされています。
Googleのコンテンツ戦略はまさに、既存のテキストコミュニケーションはもちろん、Google Assistantなど音声によるユーザー体験の向上までを見据えています。VUIが一般的に普及していくと、サービス側はより口語的だったり、自然な対話に近い感覚での操作性、コミュニケーション設計を求められ、これまでの体験に加えて更に深く考慮した設計が必要になるためです。
スタートアップ支援のプロ All Turtles
創業者のPhilは元EvernoteのCEOで、当時からプロダクトのライティングにはこだわりをもっていました。Evernote時代、ストラテジストとしてUX writingを担っていたJessicaを誘い、立ち上げたのがAll Turtles だそうです。
All Turtlesが支援するのは主にAI領域のスタートアップで、基本的にはデジタルのユーザーインターフェイスを介すものです。Phil曰く「私たちが触れる様々なプロダクトやサービスは多くの“ことば”で構成されているわけで、肝心のことばを後回しにするなんて間違っていました。ことさらAI時代においては、プロダクトとのコミュニケーションが会話形式で行われるなど、“ことば”はますます重要な要素になるはずです。」と言っています。
MediumやEvernoteでUX writingを牽引してきたJessicaによるこちらの記事は、やや実践者向けに発信されたものではありますが、随所にことばを媒体としたコミュニケーションの基本的な心構えがちりばめられています。プロダクトのUI観点だけでなく、ユーザーと向き合うすべての人にとって、ヒントになる何かがあると思います。
ブランドボイズの先駆者 Mailchimp
ライティングをはじめるにあたって、もっとも重要なのは”What to say”を明確にすること。その上で、”How to say”を検討します。
Mail Chimpは、その両方を「Voice and tone」という原則に落とし込み、デザインシステムとして運用することで、”Mailchimpらしさ”の民主化にいちはやく取り組み、成功したことでも有名です。
Mailchimpは昨年、リブランディングを行い、ブランドボイスもより強化されました。
プロジェクトに携わったシニアデザイナー曰く、ブランドボイスに絶対的な正解は存在せず、試行錯誤の繰り返しでしかないと言います。配色などと違って曖昧さを伴う分、プロセスやアウトプットは非常に複雑になるため、UX writierはそれを楽しめる人が向いているそうです。
「らしさ」が考え抜かれ、ものさしとなる原則が、見た目だけでない振る舞いまで一気通貫しているサービスには無二性が生まれます。Mailchimpが成績を伸ばしている背景には、こうした「らしさ」へのこだわりが関係しているのかもしれません。
https://sumo.com/stories/mailchimp-marketing
まとめ
UXライターはひとりでは完結しえない職業です。しかも、よほど大きな規模、もしくはことばの重要性に理解がある組織でなければ、専属のUXライターを配置するのは難しいかもしれません。
しかし裏を返せば、“ことば”に興味があれば誰にでもチャンスがありますし、すでに置かれたポジションの上で兼務することも可能です。
ぜひ気になった方は、ライティングについて深掘りしてみてはいかがでしょうか〜。