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なぜ日本でウォーターフォール開発は機能するのか?

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Xのシステム開発界隈で、ウォーターフォールモデルとアジャイル型開発のどちらが効率的かという議論がたびたび交わされています。

ウォーターフォールモデルとは?

ウォーターフォールモデルとは、「要求定義・設計・開発・テスト」という工程順に開発を進める手法です。各工程では直前の行程から引き渡された成果物をもとに作業するため、一貫性が保障されるという利点があります。一方で、原則として工程の後戻りができないという欠点があります。

アジャイル型開発とは?

アジャイル型開発とは、短い期間単位で「計画・実行・評価」を繰り返すことで開発を進める手法です。この反復を繰り返すことで、ユーザーが利用可能な機能を段階的にリリースしていきます。

日本のシステム開発とハイコンテキスト文化

私は地方でウォーターフォールでの開発に7年間携わりましたが、ウォーターフォールモデルは日本の文脈を読むハイコンテキスト文化だからこそ機能する手法だと考えています。

ハイコンテキスト文化とは、言葉にしなくてもお互いの意図を理解し合える文化のことです。日本では、相手の気持ちを察したり、場の空気を読んだりすることが重視されます。

先ほどウォーターフォールでは工程の後戻りが出来ないと説明しましたが、日本ではこれは建前でテスト段階になっても設計の変更は当たり前のように発生します。しかも無料ですることも多々あります。これは開発会社(ベンダー)と顧客が文脈をお互いに汲み取るからではないでしょうか。

想像するに、そのような文脈はローコンテキスト文化の海外では通じません。ベンダーは設計で書いたこと以外を顧客に要求されても対応しないでしょう。書いていないから。

海外の事例分析

具体的な例を2つ紹介します。

  1. 江崎グリコの事例
    • 2024年4月、デロイト トーマツ コンサルティングによるシステム刷新で江崎グリコはプッチンプリンを出荷停止としました。(https://diamond.jp/articles/-/342762)
    • その影響で江崎グリコは2024年12月期の純利益が43%減となりましたが、江崎グリコがデロイトを訴えるような情報はありません。
    • デロイト側としては要求されたことは達成しており、その結果出荷停止が起こったのだからこちらに非はないという流れになったのではないでしょうか。
  2. NHKの事例
    • 2025年2月、NHKがシステム開発中止でIBMを提訴、約55億円を請求しました。これに対して日本IBMは「提案時に取得した要求書では把握できない、長年の利用の中で複雑に作り込まれた構造となっていることが判明した」と声明を出しました。(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/24/02151/)
    • 日本IBMはNHK側の要求書に書いていない要求があったため、当初予定していた2027年3月までの移行を困難と報告しました。

「書面で要求されていないので開発しない」、これは至極当たり前のことですが、これを前提にするならウォーターフォールは危ない開発手法と言えます。設計段階が終わった後に発覚した漏れは修正できないからです。

日本のシステム開発の未来

日本のシステム開発は、今後ローコンテキスト文化に対応すべきだと思います。なぜなら、システム開発におけるハイコンテキスト文化は、会社内の働き方にも悪影響を及ぼすからです。

例えば、今月の開発目標が達成していないため、チームメンバー全員が連日深夜まで残業し、休日も出勤している。しかし、残業時間や追加作業に対する適切な申請や報酬は行われていないという状況があります。このような働き方は、要求書にない要求を無料で引き受ける受託文化に大きく影響を受けていると私は考えています。

日本の受託開発はハイコンテキスト文化と結びつき、サービス残業や無償での仕様変更につながっているのではないでしょうか?
ハイコンテキスト文化に頼るのではなく、要求を明確化し、文書化する仕事が重要だと思います。

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