この記事は、ZOZOテクノロジーズ #1 Advent Calendar 2019 24日目の記事です。
昨日は @sonots さんの「書き込みがあるワークロードにおける ZOZOTOWN マルチクラウド構想とその検討停止について」の記事でした。
はじめに
こんにちは、ZOZOテクノロジーズ CTO室の池田(@ikenyal)です。本記事では今年の4月に新設されたCTO室がどのような業務及び組織作りをしてきたのか、現状の課題とこれからどうしていくのかを紹介します。
CTO室設立の経緯
2019年4月にZOZOテクノロジーズにCTO室が新設されました。その新組織立ち上げのタイミングに私自身も転職し、ZOZOテクノロジーズにジョインしました。
まずは、なぜCTO室をこのタイミングで立ち上げたのか、会社の歴史に触れながら説明します。
20年以上前の1998年、現在のZOZOグループの源流である「有限会社スタート・トゥデイ」が設立されました。
その後、吸収合併や社名変更を繰り返します。そしてエンジニア組織として次の転機となるのが、2018年の 「株式会社スタートトゥデイテクノロジーズ」への進化です。このタイミングで、株式会社スタートトゥデイ工務店・株式会社VASILY・株式会社カラクルが合併し、今のエンジニア組織の原型が誕生しました。
その半年後、現在の社名である「株式会社ZOZOテクノロジーズ」に社名変更されました。
この流れから分かるように、「ZOZO」としては20年以上の歴史を持つグループ・会社なのですが、エンジニア組織としては2018年に再スタートをしたところです。このタイミングでは決してエンジニア組織として整っていたとは言えない状況でした。そのため、VPoEの今村を中心として、他社に負けないエンジニア組織を目指した改革への道を歩みだしました。
2018年度はVPoEが採用から評価、技術戦略まですべてを一人で担っていましたが、これではスケールしないことは容易に予想できます。そのため、VPoEが2018年度に担っていた動きをチームとして対応できるようにするためにCTO室が設立されました。現在は私とVPoEの2名がCTO室に所属しています。
CTO室のミッション
「全社における技術的な戦略策定および、エンジニア組織強化のための施策の推進」
CTO室ではこのミッションを掲げて活動しています。その中でも注力していく5項目を設立時に以下のように定めました。
項目 | 内容 |
---|---|
技術戦略策定 | 社内で共通で利用するようなサービスや基盤、外部パートナーとのやりとり、全社における重要な技術選定や戦略の策定などを行う |
技術広報 | テックブログ、登壇、発信強化など、会社として技術的なブランディングおよび文化醸成のための施策を行う |
人材採用 | 新卒、中途の採用に関わる業務や採用フローの整備などエンジニア採用に関わる業務を人事と連携しながら行う |
人材育成 | エンジニアの教育および、マニフェスト布教、1on1などを通じてエンジニアの強化を行う |
セキュリティ対策 | サービスにおけるセキュリティリスクや社内のリスクマネジメント、セキュリティ対策の策定・実施などを行う |
この5つの軸を中心に2019年は活動してきました。そこで、その2019年の活動内容を振り返り、達成できたことと今後の課題をまとめて紹介します。
社内認知度向上
4月に設立したCTO室ですが、現在では何か困った時に相談できる部署としてエンジニアだけでなく他職種からも認識してもらい機能しだしているかと思います。新設の部署としては、まず社内の関係各所の認知度を上げることが重要になります。今後施策を行う際にもこの認知度がベースとして必要になるでしょう。
課題としては、この認知度に関しても肌感では向上を感じていますが、定量的には評価ができていないというように、なかなかCTO室の活動を定量的に評価できていないこと、評価の仕方を見つけられていないことがあげられます。
また、ZOZOテクノロジーズでは認知度が向上しましたが、次のステップとしてZOZOグループ内で何か技術に関して困った時の相談窓口としての認知度向上を目指す必要があります。
業務効率化
CTO室設立時、社内で使われているSaaS・ツールの管理がなされていない点が大きな課題としてありました。そのため、何かアカウントを発行してもらいたいと思ったときにも、定まったフローが無いので、誰にどのように依頼すればよいのかの調査から必要な状況でした。
また、社内でどんなツールが使われていて、誰が管理者権限を持っており、現状どのような運用がされているのか誰も全体像を知らない状態でした。非常にセキュリティ的にも良くない状況であり、それぞれの管理者でそれぞれでルールを定めて運用をしないといけないため、非効率的な状況です。
今後の組織拡大を考えた時に、アカウントが適切に管理できていない状況は大きな問題になります。そこで社内で使われているツールや外部サービスの洗い出し、管理者の特定し、アカウント管理方法の把握をまずは実施しました。
そして、それまでは各担当者にDMなどでアカウントの発行を依頼していたのを、全社共通のツールであるkintoneを利用し、アカウントの追加・削除時には適切な承認フローを経由させ、証跡も残るようにフローを一元化しました。これにより、何をするにも同じ流れで申請をできるようになったため、管理者・利用者両者ともに効率が向上しました。
その結果、アカウントの棚卸しや利用状況の把握、ものによっては料金プランの調整なども可能になりました。次のステップとしては、社員の退職時のフローに剥奪処理を組み込み、自動的にアカウントの追加や削除をできるものは自動化される状況を目指します。
採用
採用に関しては、まだやらないといけないことはたくさんあります。
まず初めに行ったのは求人票の洗い出しと刷新でした。それまで求人票を横断的に確認することがなく、それぞれ現場が必要だと思う内容を記載し、都度更新していました。もちろん、人事が確認はしていましたが、技術的な視点からのチェックは人事ではなかなか難しいのが実状です。
今回、CTO室という技術的な横断組織ができたので、求人票も横断的に確認し、職種によって意図せぬスキルレベルの偏りが起こっていないかを確認するのはもちろん、どのような求人票が存在するのかも一元管理し、全体像をつかめるようになりました。
また、採用に関するPDCAもCTO室と人事で連携しながら定例化することができました。
しかし、まだ採用のための戦略は不十分なため今後も検討・改善は続けていきます。合わせて、面接官のトレーニングなど、採用のための内部体制の強化も課題となっており、来年はそちらも力を入れていきたいと思っております。
セキュリティ
セキュリティ面も制度や仕組みとしては不足している状態でした。そのため、まずはセキュリティを専門で扱う部隊を「ZOZO CSIRT」として設置しました。
7月にはZOZO CSIRTは日本シーサート協議会にも加盟し、社外とも情報交換をしながら活動をしています。日本シーサート協議会では、他社のCSIRTと事例や悩み・課題を共有・ディスカッションすることでき、そこで得られる知識は非常に多いです。
- [CSIRT - 日本シーサート協議会]
(https://www.nca.gr.jp/)
社内でインシデントが発生した場合の対応や、インシデント以外にもセキュリティに関する制度やルールの作成・見直し、セキュリティに関する社員教育・啓蒙活動など、ZOZO CSIRTのやるべき内容も多岐にわたります。
今年はZOZO CSIRTの設立と日本シーサート協議会への加盟により、セキュリティに対応していく体制の基礎はできました。来年は、これを形だけでは終わらせず、いかに運用していくかの質の部分に注力していきます。ZOZO CSIRTは全員兼務状態であり、やりたいこと・やらなければならないことは日々増えていく中で、効率的で効果的な運用を進めてまいります。
エンジニアのスキルアップ
エンジニアがスキルアップするための施策や、適切な評価がされるよう議論・検討をしています。
7月にはそのための施策として開発合宿を開催しました。ZOZOテクノロジーズとしては初の開発合宿でしたが、実施後のアンケートでもその効果が確認できたので今後も合宿は定期的に実施予定です。次回は2月の開催を予定しています。
なかなか普段は時間を取って新しい技術に触れたり、技術的な課題に取り組むことは難しくなってしまうので、1泊2日で集中する時間を確保できることは、技術と向き合う時間を作る上で効果的でした。また、弊社は拠点が複数あり、普段なかなか交流する機会の少ないエンジニア同士が同じ合宿に参加できたのもお互いを知る良い機会となりました。
日常でのエンジニアのスキル向上施策として、各界で著名な方を技術顧問として招いて相談やディスカッションをする機会を設けたり、各職種でプロダクトを横断した技術共有会を実施したりしています。
また、CTO室では、GoogleのCTO室とエンジニアの評価や組織のディスカッションをしたり、Googleの本社にてマネージャー陣とディスカッションをする機会を頂けています。そこでは、Googleが持つノウハウを共有して頂いたり、弊社のエンジニア組織作りに対するアドバイスを頂け、非常に有意義な取り組みができています。
技術広報
採用のためにも会社の技術力をアピールすることは非常に重要です。そのため、テックブログでは、公開前の記事レビューや執筆の推進をCTO室が行っています。テックブログはただ書けば良いものではなく、その記事で読者にどんなバリューを与えられるのかを重視してレビュー・アドバイスをしています。
同様に、社外での登壇に関しても事前にどんな内容でどんな場で登壇するのか確認し、必要であればアドバイスをするようにしています。登壇もただすれば良いのではなく、聴講者が何かを得られないと意味がありません。
そして、今回のアドベントカレンダーも技術広報の一部です。今回はエンジニアに広く投稿を呼びかけ、5つのアドベントカレンダー、計125本の投稿となりました。テックブログではハードルが高いと感じるエンジニアも、アドベントカレンダーであればハードルは低くなるのでアウトプットの練習としては最適です。
- ZOZOテクノロジーズ #1 Advent Calendar 2019
- ZOZOテクノロジーズ #2 Advent Calendar 2019
- ZOZOテクノロジーズ #3 Advent Calendar 2019
- ZOZOテクノロジーズ #4 Advent Calendar 2019
- ZOZOテクノロジーズ #5 Advent Calendar 2019
マネジメント層の拡充・スキルアップ
こちらの項目はまだ施策が追いついておらず、来年に注力したい項目です。
弊社の課題として社員数に対してマネジメント層の不足があげられます。採用によってマネジメント層の拡充も行いますが、既存リーダー陣のマネジメントスキルの向上も重要です。そのため、リーダー向けの研修や部長とのコミュニケーションによる学びなど、リーダー個人ではなく組織として学べる環境にする必要があります。なお、今月にはリーダー有志によるマネジメント勉強会も開催されるようになり、良い傾向にあるかと思います。
CTO室としても、技術だけではなくマネジメントに関する悩みにも対応できるよう、「CTO室のオフィスアワー」のような、相談しやすい環境の整備も検討しています。
その他
CTO室では現場やプロダクトではまかないきれない様々な業務を請け負っています。SlackやConfluenceの整備、共通で使うSaaSの管理から、引越し時の取りまとめなど多岐にわたります。
今まであれば、どの部署にも拾われなかったタスクをCTO室ができたことにより対応できるようになりました。多岐にわたる業務が次々と発生しているということは、それだけ今までできていなかったタスクに対応できる組織になった、とも言えるでしょう。
来年の目標
今年は設立の年なので、いろいろと新しい仕組みを導入するフェーズでした。来年は導入したものをいかに運用していくか、PDCAを重ねてより良いものにできるか、という点が重要になります。CTO室は冒頭でも触れましたが現状2人での運用です。そのため、限られたリソースで順次必要な事案に対応するためには、効率化と仕組み化が重要になってきます。
加えて、一緒に組織作りを担っていただけるCTO室メンバーやマネージャーも募集をしていますので、成長真っ只中の組織で組織作りに関わりたい方、是非ご応募ください!
ご連絡いただければ、質問にお答えしたりもできますので、ご連絡ください。
明日、アドベントカレンダー最終日はVPoE @kyunsの担当です。お楽しみに!