キーボードを新調するにあたり遊舎工房のErgo68を購入したので、そのレポです。
来歴
- 主な利用用途: プログラミング
- 使用している配列: dvorak/dvorakJP(10年以上)
- 使っていたキーボード: realforce 91U
- 備考: 腱鞘炎
動機
- 一日を通してほとんど常にPCの前に座っており、キーボードは毎日10時間以上触るデバイスである
- 肩こりはそれほどではないが、腱鞘炎に長い間悩まされている
- 腰椎ヘルニアのため常に(座面含め)15度ほど後ろに倒れ、背中で体重を肩代わりする座り方をしている
- そのためアームレストと机に角度ができ、手首が常に15度曲がっている状態である
- もともと平たいキーボードを使うために手首を内転させた上でさらに15度曲がっていることになる
- 肩こりはそれほどではないが、腱鞘炎に長い間悩まされている
- 現在、realforce 91Uを使っている
- 廃盤になって10年ほど経っている
- いつ故障するか分からない
- 現行品はどれも好みとはすこしズレており、それならいっそ整備性やカスタマイズ製を考えて自作キーボードに挑戦しようと考えた
- 廃盤になって10年ほど経っている
検討材料
- マスト
- 左右分割
- 肩が楽になる
- 角度をつけることが用意になる
- 手首が楽になる
- realforce2枚をそれぞれナナメに固定しようとするとしんどい
- 親指にキーいっぱい
- 現在、変換/無変換をenter/backspaceにリマップして使っている
- これを踏襲したい
- 1段目に数字キー
- ゲームでよく使うので、すぐ押せることが望ましい
- ベゼルレス(?)
- なるべく省スペース
- パームレストのことは一旦考えない
- US配列
- 変換/無変換に価値を見出してJIS配列を使っているが、中身はUS配列にリマップしている
- dvorak配列をUS配列で学習したため
- そもそもフルリマップするため、US/qwertyでもJIS/qwertyでも関係ない
- dvorak/qwertyの切替
- ソフトウェア側で実現できればそれでもよい
- 現状JIS/qwertyであるrealforce 91Uを使ってwin/mac両方で、ソフトウェアによるリマップでdvorak入力しているのでノウハウはある
- できればハードウェアでやりたい
- USB-C
- 令和にmicroUSBなんて使わせないで
- キースイッチのホットスワップ対応
- メカニカル初体験なので色々試したい
- 左右分割
- ベター
- 独立したカーソルキー
- トラックボール
- ファンクションキー
- 全部は必要ない
- F7(ひらがな直変換)
- F10(英字半角直変換)
- F11(macのデスクトップ表示)
- F12(devtools cmd+shift+i で代用可能なので優先度低め)
- いらない
- ファンクションキーのその他
- なんかキーボードの右上にいる連中
- print screenだけは必要
- でかいenterキー
- でかいspaceキー
モノ探し
予算は1万円〜4万円で検討していました。
既製品
トラックボール付きのものが存在しないことは最初から分かっていたので、ゆるめの条件で探しました。
FILCO Majestouch
- なぜかamazonレビュー低め
- ファンクションキーがないことによる減点
- 左右の通信が切れることによる減点
- カーソルキーがない
- cherry MX
- JIS/USを選べる
- ホットスワップ非対応の模様
- 低評価が気になるので除外
Mistel Barocco
- カーソルキーがあるモデルもあるが配置がキモい(MD770)
- モデルによってホットスワップ対応(MD600系?)
- JIS配列はキーが多すぎてキモい
- かといってUS配列は親指にキーが足りない
- JIS/USどちらもキー配列の問題により除外
Kinesis Freestyle
- US配列のみ
- 親指にキーが足りないため除外
Ergodox EZ
- モノはよし
- 個人輸入になるので手に入るまでに時間が掛かる
- 価格自体は昔からほとんど変わらないが(オプション込で$350くらい)、円安+送料により予算オーバーで除外
- 中古相場はだいたい2万円〜4万円
- 中古はチルトスタンドがよく錆びており見た目があまりよろしくない
- 無接点容量方式と違いメカニカルなので軸の残耐久が信頼できない
- 年代によってホットスワップ可不可、接続端子がminiUSB/USB-Cというバリエーションあり
自作キット
boothやメルカリなどで個人出品もあるにはありますが、まったくノウハウがなかったため遊舎工房で探すことにしました。
また、工具(はんだごて等)も新規に用意することになるので、4万円のうち1万円は工具代として計上することにしました。
よって キーボード本体 + キースイッチ + キーキャップ + マイコン を3万円に収めることを目標としました。
キーボード本体のみ
Hatsukey70 https://shop.yushakobo.jp/products/8361
- 7000円!ぶっちぎりで安い
- 親指のキー数も問題なし
- カーソルキー有
- kailh choc v1のみ対応
- キーキャップの選択肢が非常に少ない
- ホットスワップ非対応
- PCBパターンがkailh choc v1の平たい端子にのみ適合するものであり、後からホットスワップ化も難しい
- キースイッチを後から交換する場合、都度はんだ作業が必要になる
- そもそもkailh choc v1は選択肢が少ない。。。
- かなり魅力的だが、対応キースイッチとホットスワップ不可という2つの課題により除外
keyball61 https://shop.yushakobo.jp/products/5358
- 25800円 予算オーバー
killer whale https://shop.yushakobo.jp/products/7948
- 12000円 * 2 予算オーバー
- 親指部分の拡張性が素晴らしい
セット商品
はんだ付け済み簡単キット https://shop.yushakobo.jp/products/3923?variant=42888566178023
- ドライバーのみで組み立てられるとのこと
- いずれもmicroUSB接続
- キースイッチ・キーキャップは別途購入が必要
- 作業費込ということもあり、どれも25000円ほどするため予算オーバー
自作キーボード入門セット https://shop.yushakobo.jp/products/beginnerset
- 必要パーツがすべて含まれるので、あとは工具のみでOK
- キースイッチ・キーキャップも含まれる
- はんだ作業などはすべて自分でやる必要がある(が、キットによってほとんど済んでいるものもある)
以上を踏まえて、最終的に自作キーボード入門セットのErgo68に決めました。
https://shop.yushakobo.jp/products/beginnerset?variant=47862198010087
決め手はこんなかんじでした。
- 親指のキーが十分な数ある
- 遊舎工房のオリジナルのようなので、直接のサポートを期待できる
- 無線化がハード側でサポートされている
- ホットスワップ対応
- ホットスワップソケットやLEDなどのはんだ付けが済んだ状態で届く
- もろもろ込みで22000円なので予算に十分収まる
その他購入物
買ったもの | 値段 | 備考 |
---|---|---|
はんだごて | 0円 | 学生の頃に買わされたやつ |
はんだ | 0円 | 学生の頃に買わされたやつ |
テスター | 1500円 | 導通確認のためやっすいやつでOK |
作業マット | 1000円 | A3サイズ |
小物ケース | 400円 | ねじや小さい工具などを保管する用 |
マスキングテープ | 200円 | |
キースイッチ潤滑オイル | 1500円 | https://shop.yushakobo.jp/products/lubricants?variant=37665261060257 |
キースイッチ潤滑グリス | 1500円 | https://shop.yushakobo.jp/products/lubricants?variant=37665260994721 |
絵画用の筆 | 600円 | 3本セット |
絵の具皿 | 100円 | |
pro micro(USB-C版) | 1320円*2 | 左右で必要なので2つ分 https://shop.yushakobo.jp/products/3905 |
コンスルー | 250円*4 | https://shop.yushakobo.jp/products/31 |
USB-C to USB-Aケーブル | 1650円 | https://shop.yushakobo.jp/products/8218?variant=48039932035303 |
TRRS to TRRSケーブル | 1100円 | https://shop.yushakobo.jp/products/8111?variant=47850237001959 |
ちなみに4万円という予算は結局オーバーしました。
こんなはずじゃ。。。
組み立て
1.内容物の確認
左3つがキットの内容で、右の3つが別途注文したものです。
キースイッチ
販売ページには「リニア軸」「タクタイル軸」としか書かれていなかったのでcherry MX互換の何かだろうと思っていたので大きな驚きはありませんでした。
Gateron Milky Yellow Switch Black Bottom / Linear / pre-lubedというスイッチのようでした。
cherry MX赤軸と似た性能のようで、こちらのほうがだいたい4割くらい安いみたいです。
https://shop.yushakobo.jp/products/7468
以降このキースイッチに触れないので軽くレビューすると、今まで使っていたrealforce 91Uに思ったよりも近い打鍵感が得られたのでかなり満足しています。
潤滑用の諸々も買い揃えはしたんですが、最初から静かで今のところ文句もないです。
いままで青軸などクリッキーなキースイッチのチャチ・うるさいという印象が強くてメカニカルに対してマイナス印象がかなり強かったんですが、いい意味で裏切られました。
この軸が安価な部類に入るのであれば、もっと良いスイッチであればもっとゴキゲンな体験になりそうで期待が持てます。
基板の完成度
Ergo68単体の販売ページによるとほとんどのパーツが実装済とのことでした。
スイッチソケットやダイオードだけでなく、実装難度の高いLEDも実装済みです。そのため作成が簡単でありながらフルキーバックライトに対応しています。
実際のところは、表にするとこんなかんじでした。
ただ実際の作業量的には90%くらい終わっている状態なのでめちゃラク!2時間分くらいの作業時間がまるまる浮きます。
部品 | 実装状況 | 備考 |
---|---|---|
ホットスワップ用ソケット | ||
バックライトLED | ||
制御用マイコン | ||
コンスルー | マイコンと基板を橋渡しするための足 | |
TRRSジャック | ||
タクトスイッチ | 基板リセット用 |
▼無線化するときのボタン電池用接点
(今回は無線化しないのでスルー)
マイコン
セットに付属するのはpro micro(microUSB版)ですが、今回は別途pro micro(USB-C版)を用意しました。
流石に令和にmicroUSBを持ち出すのはしんどいので。
ただし前例を見つけられなかった(そもそもErgo68の組み立てレポ自体ほとんど見つからない)ので、人柱になることにしました。
▼左から pro micro(microUSB版)、pro micro(USB-C版)、コンスルー
下側に2つあるコンスルーはセットに付属しているもの
寸法比較
商品説明には「USB-C版のほうが寸法がでかいので注意」という風に書かれていたため、念のため事前に比較しました。
https://shop.yushakobo.jp/products/3905
▼USB-C版のほうが縦方向に1mmほど長い
横方向やピンホールの寸法はおなじ模様。アサインも同じなので互換性があるといえる
今回は、寸法が問題なさそうだったためUSB-C版を使うことにした。
まあ失敗してもmicroUSB版でやり直せばいいし。
コンスルー
マイコン付属のものとは別のものがセットに入っており、ビルドガイドも後者で説明している写真しか存在しないため、こちらも寸法を確認しました。
▼上から セット付属、pro micro同梱
ピッチは同じだが全長が異なる
▼左から セット付属、pro micro同梱
側面から見るとピン形状が全く異なることがわかる
金属の塑性を考えると、何度も抜き差しするのであれば左のほうがより適していそう
今回は、ビルドキットに倣いセット付属のほうのコンスルーを使うことにしました。
ちなみに、別途注文したコンスルーは左側のものと同一のものでした。
2. キースイッチの導通確認
本作業の前に、まずスイッチがちゃんと機能するものなのかどうかを確認します。
他に電気的な故障箇所がなかったので、テスターはここが最初で最後の出番でした。
▼キーを押し込んだ状態で、導通確認モードにしたテスターの端子で触れて音が鳴ればOK
3. はんだ付け
pro micro
コンスルーは基板側ははんだ付けをせず、pro micro側のみ固定させました。
これにより、トラブル発生時に交換しやすくなるメリットを期待しています。
(が、このせいでトラブルが発生しました 後述)
左右両方あるので同じ作業を2回やることに注意。
▼USB-C版で寸法問題なさそうなのではんだ付けGO
(あとで気が付きましたが接続すべき基板の向きが逆です)
▼我ながらキレイなはんだ付け
はんだ付け対象を十分に温めたあとにはんだを流し込むのがコツ
TRRSジャックとタクトスイッチ
これも左右両方に施工するのを忘れないようにします。
なんと、Ergo68はここではんだごての出番が終わります。
4. LEDへの通電確認
pro microとLEDの両方に異常がないことを確認します。
USBを接続するだけでOK。
▼左手側基板をTRRSケーブルで接続し確認
右手側にUSBを差し替えても同様に光ることを確認する
5. のこりの作業
あとは公式のビルドガイドを見れば十分なので説明は省きます。
https://github.com/yushakobo/build-documents/tree/master/Ergo68
付属キーキャップは大変かわいいんですが
- qwerty配列に準拠したstep-sculpture構造なので、それがめちゃくちゃになるdvorak配列との相性が最悪
- 1.5Uのスペースキーがない
このへんに不満があるので近いうちに新調する予定です。
0.おまけ
ケーブル比較
議論不要。かっちょいいケーブルにしておきましょう。
セリアのタブレットスタンド
サイズ的にはかなりちょうどいいが、打鍵していると徐々に重さに負けてくるのと…
コネクタの位置のせいでpro microが浮いてしまい、一部キーが接触不良になってしまう事象が発生しました。
pro microのメンテナンス性を求めてはんだ付けしなかったのがここに響いてきました。
スタンドの使い方を工夫すれば低減はできるものの、設計不良だと感じるのでここはなんとかしてほしいところです。
まとめ
作業の所要時間は2時間程度でした。
左右分割で自由にキーバインドできるキーボードが完成してほくほくしています。
参考文献のないUSB-C化も問題なく実施できて満足です。
Ergo68を検討している方の参考になれば幸いです。
次の記事はキーマップ作業編です。
https://qiita.com/ikentoh/items/4c82df1916d39a9329a1