前置き
kintone の認定資格 として(2024 年現時点では)最上位に位置する エキスパート試験 が設けられたのは 2022 年。
筆者個人としては 2019 年春にその前段の(当時は最上位試験だった) カスタマイズスペシャリスト に合格しましたが、その後始まったエキスパート試験の情報を仕入れつつ、まあいつかは・・・そのうち・・・と思いながらあれよあれよと 2 年ほど。
何やかやとやらない理由をつけて先延ばしにするのは何も成し遂げられない人の典型であります。今更かと刺してくる後ろ指を華麗にスルーしながら 2024 年 2 月に システムデザインエキスパート の試験に挑み、そしてまぁまぁの奇跡とも思える 一発合格 を果たしました。
この記事ではその顛末を述懐しようと思います。
試験のあらまし
エキスパート試験は多肢選択式と論述形式の組み合わせ試験となっており、おそらく採点に相応の労力が掛かると言う都合上、1 回の実施期間で各試験最大 40 人しか受験できない決まり。
同格の カイゼンマネジメントエキスパート は俗に 0 次試験 等と言われるほど まず試験予約にこぎつけるのが難しい と言うほどの人気ぶりであるようですが、こちらシステムデザインエキスパートは予約期間に入ってから数日後の申込みでもゆうゆう予約成功。この点 1 つとっても正直マイナー感を否めません。
ま、それはともかく、受験を決めた 1 月中旬から試験日である 2 月 16 日(実施期間終了前日)までの 1 ヶ月の間どのような勉強をしたか、そしてどうやって合格にこぎつけたかをまとめていきます。
一次試験
エキスパート試験は多肢選択+論述式の 一次試験 と、多肢選択式の 確認試験(最終試験) に分かれています。
確認試験は本当に確認的な内容なので、実際のところはこの一次試験こそが最も重要。
そしてその一次試験はシナリオベースの設問に解答する 小論文 と過去の業務経験に基づく 実績登録 と言う 2 つのパートに大別されます。
エキスパート試験自体、業務改善を kintone SIGNPOST で導出されるベストプラクティスに則って進めていく事を大前提としています。
したがって、長く業界で案件をこなして経験値が豊富にあるから実績登録パートは余裕だぜと高を括っていると試験が求める解答レベルには達せず、あっさり跳ね返されたりする。
つまり kintone SIGNPOST をしっかり覚える というのが試験対策としては何より重要です。
受験までの準備
と言う事で、試験対策として、まず kintone SIGNPOST の 44 パターン全てを覚えました。
と言っても内容を事細かに諳(そら)んじられるほどではなく理解が不十分なものもちらほら。
それでも全項目について番号と正確な字面でのタイトルは覚えました。
(実際何番が何と言うところまで覚えても大して意味はない)
正確な字面で覚えるのは、論述の中で同じ事を言おうとしても近い言葉でなく正確な言葉で表現する事によりちゃんと勉強してる感を出すためです。
(例「業務プロセスを整理して不要な承認フローを除き」よりも「業務フローを整理しプロセスのシンプル化を図り」と書くため)
- 自宅~最寄駅の移動中(運転中)は kintone SIGNPOST のパターン 0 番から 43 番までを暗誦して正確に言えるように練習
- 出勤・退勤時の電車移動中に kintone SIGNPOST のサイトで各項目を繰り返し読み込み
- パターン実践ガイド はあまり時間を割かなかったがちゃんと読み込んだ方が良かった
- 出勤後(業務開始前)に 試験補足資料 を素材にライティングの練習
筆者は普段から始業 1 時間くらい前に出社する事が多いのですが、それから始業までの時間を試験対策に使ったという感じです。
その一方、自宅ではガッツリ勉強に時間を割く事はあまりなかったです。
(kintone SIGNPOST パターン冊子 を斜め読む程度)
試験環境
そして迎えた受験当日 2 月 16 日。
試験環境を自前で用意するのは困難であるため、試験センターでの受験としました。
受験開始までの手続きあれこれはいつも通りなので省きます。
で、いざ試験開始。
・・・に先立ち、日本語変換が問題ないか確認するプロセス。
既報通り漢字変換 2 回の制限と言う問題がありますが、これは筆者が受験した環境でもやはり発生していました。
とは言っても漢字変換はよほどでない限り 2 回の変換に収まるし、そうでない場合でも言い換えの工夫などでそれほど文章の組み立てには影響はなかった印象。
(影響ゼロではなかった)
最初の
「 怪盗が来る前に解答ファイルを解凍しておく
と打って変換に問題がないか確認してください」(文章はうろ覚え)
と言う準備作業の方がよほど面倒でした。
ちなみにここでゴネて試験監督者に IME を古いバージョンに切り替えてもらうと問題は解決するとの話ですが、テストセンター的にそれができるノウハウがあるか不明でしたし、上述通り運用でカバーできる範囲と判断したので変換の制限を甘受して試験に臨む事にしました。
試験内容
試験補足資料 で公開されているものが概ねそのまま出たと言う感じ。(もちろんシナリオは異なる)
最初の設定説明は基本的に読み飛ばし、2 枚目の設問でシナリオを理解するアプローチ。
SIGNPOST を全パターン暗記したおかげで、設問の文章を読むだけでどのパターンについて書けと求められているか推察できます。
基本的には 7 割くらいの回答を目指して書きますが、言葉が過ぎるのか規定文字数からはみ出す場合がほとんど。
(「200 文字程度で書け」で 220 ~ 240 文字くらい書いたり)
規定文字数に上振れ下振れしているのが評価にどう影響するかは当然ながら不明。
なお大幅に超過(250 文字くらい?)するとその時点でアラートが出ます。
長い文章を書いていてこれに当たると無変換で確定されてしまうので漢字変換は 1 単語 2 単語レベルでした方が面倒がないでしょう。
実績登録に至るまでで残り 30 分くらい。
実績登録は事前にライティング練習していたものを書くつもりでしたが、思いのほかテーマに沿ってないと感じたためその場で違うものに変えました。
(本来「設計と構築」について書くつもりだったが、「リリースと定着」について書く事にした)
実績登録を終えた時点で残り 10 分弱。
最初から見直して誤字の修正・文章や文意の繋がらない部分の修正など。
これは最後まで行けず時間切れ。
時間が全然足りないと言うほどではありませんでしたが、あと 10 分あればもう 0.5 段くらいはクォリティを上げられたかなと言う気はします。
2 月 16 日に受験した一次試験はこうして終了。
この時点での手ごたえについては正直何ともと言う感じでした。
上述通り 7 割の得点を目指して書いたつもりではいますが SIGNPOST を咀嚼しきれていない箇所も多いので的外れな記述になっていたところもあったかも・・・と言う感想。
試験結果発表
結果が発表されるのは 3 月 21 日。
10 時少し前に、【kintone認定 エキスパート試験】 試験結果のお知らせ
と言う件名でサイボウズからメールが届きました。
メール中のリンク(kMailer でした)からスコアレポートをダウンロードし、結果を確認。
結果 : 合格
小論文スコア : 80 %
実績登録スコア: 83 %
と言う結果で、初めての受験で見事 合格。
カテゴリの結果は以下の通り。
カテゴリタイトル | 評価 |
---|---|
0. kintone 概念理解 | B |
1. 目的設定 | B |
2. プロジェクト企画 | B |
3. 設計と構築 | B |
4. リリースと定着 | C |
5. 運営 | B |
6. 継続企画 | B |
P1. 論理的な論述 | B |
P2. テーマへの適合 | B |
P3. 経験に基づく主張 | B |
基本的に 7 割程度(= B 評価)の回答を目指して書くと言う方針がそのまま結果に出たと言う感じでした。
1 つも A 評価がないのはそれはそれでどうなのと言うところはありますが、1 回で合格できるとは思っていなかったのである意味望外の結果でした。
確認試験は 3 月 22 日から 4 月 5 日までの間受験でき、これに合格する事で正式に認定となります。
確認試験(最終試験)
最短の 3 月 22 日に受験する事とし、一次試験後ほとんど顧みていなかった kintone SIGNPOST パターン冊子 に改めてざっと目を通しました。
試験環境
確認試験の受験が可能となった 3 月 22 日の 9 時以降、前日メールで受領したプライベートアクセスコードとバウチャーを使いピアソン VUE で受験申し込み。
期間中ならいつ受験しても良いので、申し込むだけ申し込んであとから受験でも構わないのですが、その場で即受験を開始しました。
オフィス内の自席で受験したのですが、周りで打合せなどもやっていたのでイヤフォンでノイキャンをオンにした状態で遮音し環境を整えました。
試験内容・結果発表
試験は(概要が公開されている通り)45 分で 20 問、多肢選択式。
設問や選択肢から SIGNPOST のどのパターンに当てはまるものかを読み解き、そのパターンが求める解決のアプローチに基づき答えを選択します。
総じて SIGNPOST をしっかり理解していれば全問正解できるレベルでした。
事実筆者もスコアは 100%で合格、無事システムデザインエキスパートとして認定されました。
こうして、無事 kintone 認定 システムデザインエキスパートに認定 されました。
試験を終えて
結局のところ、 いかに kintone SIGNPOST を理解し咀嚼できているかが何より重要 と言う印象。
逆に言えば技術的なあれこれはスペシャリストまでの試験で既に証明されているので、そこから先実際にどうベストプラクティスを現実的な実現性を持って業務に落とし込めるか(それだけの知識を備えているか)を証明するための試験と言う事が言えそうです。
実績登録については、筆者の場合解答として記述した案件の構築当時は SIGNPOST について何も知らなかったわけですが、そのような場合でも振り返って考えてみるとこのパターンが当てはまっていたなと(ある程度脚色込みで)論述する事で、試験の求めるところに沿う解答に仕立てる事が出来ると思います。
合格のための勉強法としては、結局は何はさておいても kintone SIGNPOST を全項目覚える に尽きます。
そのための素材として kintone SIGNPOST のサイトを使うか、サイボウズ商店などで販売している kintone SIGNPOST パターン冊子 や kintone SIGNPOST パターンカード を用いるなどすれば良いでしょう。
それと何より論述試験と言う特性上、 文章で理路整然と説明するスキル が当然に必要です。
そのためのライティングの練習は欠かせません。
特に実績登録は言うなれば 書くべきことを事前に決めておいて実試験では記憶通りの文章を再現する と言うアプローチが取れますので(まあ筆者はその準備が十分ではなかったのでその場で書く事を変えたわけですが)、事前に 3 回でも 5 回でも 10 回でもきっちり時間を測ってライティングの練習をしておいたほうが絶対に良い。
試験補足資料 は非常に有力な教材となりますので、これは毎日目を通すと良いと思います。
というわけで、 kintone 認定 システムデザインエキスパート受験レポート でした!
お読み頂きありがとうございました!