#前提
SIerを想定して書いていますが、BtoCでも、イベントの企画でも、どこでも何にでも使える考え方です。実践してみることで必要な考え方だと身に滲みてきます。
ペルソナとは?
システムを実際に使用するユーザ像のことです。「20代男性」というターゲットレベルではありません。
「29歳男性、佐藤雅人(さとうまさと)、独身、彼女あり、東京在住、埼玉出身、営業マン、東洋大学(社会学部)、小学校から高校まで野球部、小さい頃は大人しい真面目な性格だったが野球を始めてよく話すようになった、、、」
とユーザをイメージできるよう細かいところまで定義されているものです。最初のターゲットと比べて明確にイメージが湧くかと思います。また、誰が見ても同じイメージになります。「20代男性」だけだと人それぞれイメージするユーザ像が異なります。「20代男性」だけだと20歳の大学生もいれば、29歳のサラリーマンもいます。今の時代はダイバーシティ(多様化)というように29歳サラリーマンだけでも色んな人がいます。趣味嗜好や生活習慣、考えていることなど全く違いますよね?「20代男性」だけでは情報が不十分なんです。明確に共通の認識を持てるユーザ像をペルソナと言います。
何で必要?
システムを使うターゲットとなるユーザはどんな人ですか?と聞くと平気で「全員」と答える方もいるかと思います。もちろん、みんなに使って欲しい気持ちは分かります。でも、全員をイメージしてシステムを作ると、何を軸にしていいか分からないですよね。作る人によって軸にするユーザ像が違うかもしれません。その結果、どうなるでしょうか?そう、なんだか統一感のない使いにくい誰向けなのかよく分からないシステムのできあがりです。
(例)
スマホのSNSアプリを作るとします。
JKと高齢者はITリテラシー(スマホの操作スキル、慣れなど)が異なります。また、欲するアプリも変わってきます。
JKは流行りに敏感なので既に存在する写真のSNSには見向きもしないでしょう。それでは、どんなSNSならJKの中で流行るでしょうか。声だけのSNS?動画だけのSNS?カップル限定のSNS?など、JKがハマりそうなことを考える必要があります。
逆に高齢者向けのSNSでは、操作が難しくない、同年代の情報交換になる、1人暮らしでも寂しくない(1日一度は人と話せる)などを考えて作った方がいいかもしれないですね。
また、JKと高齢者向けのUIは全く異なります。JK向けは小さなボタンでもアイコンでも理解できますが、高齢者は大きなボタンや文字で表現してあげた方がいいかもしれません。インタラクション(操作の反応)にしてもJK向けは素早く、高齢者向けはゆっくりにするなど、真逆です。
これでも本当に全員向けのシステムを作ります、と言えますか?
プラグマティックペルソナ、プロトタイプペルソナとは?
ペルソナとの違いは実際の調査や統計情報から抽出したものかどうかです。プラグマティック(プロトタイプ)ペルソナは経験や想定から抽出して作ります。システムを作る人や営業、マーケティング、お客様だけであまり時間もお金も掛けずに作ることができます。本当のペルソナを作るのは時間もお金も掛かります。なぜかというと実際のユーザにインタビューをしたり、統計情報を分析したり、といったプロセスが必要となるからです。確かに本物のペルソナがいた方がいいかもしれませんが、目的はペルソナを作ることではありません。いいものを作りたい、それだけです。まずはいいものを作るための使いものになるペルソナを作ってみよう、という気軽な気持ちで始めてみてはいかがでしょうか。プラグマティックペルソナはブラッシュアップして本物に近付けることができます。偽物だからと怪しまず、ちょっと仲良くなってみましょう。
共感
UXでは必ず話に挙がる、共感(エンパシー)と共感(シンパシー)。これを勘違いしてはいけません。
シンパシーは「思いやり、同情、気の毒に思うこと、共感、共鳴」という意味。エンパシーは「人の気持ちを理解する、共感、共鳴」という意識。似てますよね。「同情するなら金をくれ」と有名なセリフがありますよね。シンパシータイプは「大変だ可哀想だ」と同情します。エンパシータイプは大変だなと思ってお金をくれます。シンパシーは大変だ気の毒だという気持ちは分かっていますが他人事なところがあります。エンパシーは自分が同じ立場だったらと置き換えて同情されるよりお金をもらった方が有難いと考えることができます。同じ共感でも少しニュアンスが異なります。UXの考え方としてはエンパシー(共感)できるようになることが大切です。
効果
ペルソナを作ったからといって、すぐに効果は出ないと思っていませんか?思っている以上に、効果が出るものです。
実際に私はエンジニア、営業、マネージャーチームでプラグマティックペルソナを作ってみました。その大きな効果として下記が挙げられました。
- 全員の共通認識ができ、判断基準となるためブレない
- 全員がきちんとユーザの気持ちになって考えられる
- 検証の基準ができる(ユーザビリティテストなどに役立つ)
プラグマティック(プロト)ペルソナの作り方
色んな方法がありますが、今回は既にシステムが決まっている前提で書きます。
- インプット情報の収集:まずはインプットとなる情報をできる限り集めてみましょう。または、ユーザを知っている人を連れてきてもいいですね。ユーザを知っているメンバばかりのチームの場合は当ステップは不要です。また、プロジェクトの方針、目的など全体感が分かる情報があれば、それもみんなで確認しましょう。
- 方向性の決定
大雑把にどういう人をターゲットとしているのか、したいのかの方向性を決定します。 - 属性情報の検討
名前、年齢、性別、出身地、居住地、家族構成、出身大学など - ストーリーの検討
高校、大学や就職先の決め方、小さい頃、部活での様子、結婚までのストーリーなどを考えてみます。属性や他のストーリーとかけ離れないように注意してください。 - まとめ
人物像がはっきりしてきたら、誰がみても分かるようにまとめましょう。メンバの入れ替えが激しいプロジェクトだと特にまとめておいた方が共有しやすいです。
3つのチェックポイント
- 矛盾はないですか?
(例)大人しい性格なのに飲みサークルに入っていた、出身地も居住地も東京なのに熊本大学出身など。 - 全員に違和感はないですか?
一人でも違和感のある人がいたら、きちんと主張してみてください。理由を含めてなんかしっくり来ないと。 - 実在しそうな人をイメージできていますか?
全員がイメージできて、全員が同じ人をイメージできることが理想です。
あとがき
あくまで考え方の話なので、ペルソナが必須だと言うつもりはありません。何でもいいのです。ペルソナはあくまでユーザの共通認識を持つためのフレームワークの一つとして知っていただけたら嬉しいです。