1. はじめに
以下書籍の要約。
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題名:最高の体調
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著者:鈴木 祐
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出版:クロスメディア・パブリッシング
2. 文明病
- 文明が発達したにも関わらず、現代の日本人は幸福からほど遠い場所にいる。
- 薬は増えたのに、健康な人は減った
- 便利になったのに、時間はない
- 道路は広くなったが、視野が狭くなった
- 文明病を引き起こす要素は、炎症と不安である。
3. 炎症
- 体がなんらかのダメージを受けたときに起きる、ヒトの細胞レベルの火事のようなもの。
- 炎症は体の表面だけに起きる現象だけではなく、鬱や肥満、糖尿病といった様々な不調の原因となる。「なんだか調子が悪い」「よく寝たはずなのに疲れが取れない」といった症状は要注意。
- 炎症については、腸、自然、人間関係、ストレスに注目する。
3-1. 腸
- 腸内細菌は、「栄養の吸収を助ける」「食物繊維をエネルギーに変える」等、活躍は八面六臂である。
- 腸内細菌の働きの中でも最も大事なのが、外敵との戦いである。栄養を体内に取り込むと同時に外敵が体内に入り込む際、腸内細菌は兵隊として働いてくれる。
- 腸内細菌は不足すると、免疫システムが低下し、リーキーガットという症状を引き起こす。結果アレルギー、認知機能低下、疲れやすさに繋がる。
<対策>
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空気
部屋の換気に気を配った上で、空気清浄機を使用する。空気が乾燥しないように、加湿機能が付いているとよい。 -
発酵食品
納豆、キムチ、チーズ、ヨーグルト、味噌、生キャベツ等をとる。 -
食物繊維
野菜、フルーツ等をとる。中でもゴボウ、寒天、海藻、キノコ類、オクラ、リンゴがすごい。
3-2. 自然
- 人類は、これまでの歴史の中で、自然から切り離された存在になっている。
- 自然との触れ合いにより、人体の副交感神経が活性化する。副交感神経は日中にたまった疲れやダメージを回復させる働きを持っている。
- 自然がここまでの効果を持つのは、人類の感情システムに影響与えるからである。感情システムは人間の心の働きである興奮、満足、脅威の3種類から構成されている。
- 私たちが最高のパフォーマンスを発揮するためには3つのシステムがバランスよく機能していなければならない。自然の環境は3つの感情システムをバランスよく刺激する。
- 季節のうつろいや草木の変化が程良い興奮を生む
- 緑に守られる安心感が心地よい満足を生む
- 森や川に潜む未知の脅威が時に脅威を生む
<対策>
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デジタルの自然
偽物の自然音や自然画にもリラックス効果がある。(アムステルダム自由大学の研究)
PCやスマホの壁紙を自然画像にする。また、川や鳥の音を聞くようにする。動画を見るのもよい。 -
観葉植物
仕事場や自宅のリビング等に観葉植物を配置する。常に目に入る場所に配置するとよい。 -
太陽
最低でも1日20分は陽光を浴びる。 -
アウトドア
年に3~4回はキャンプや山登り、魚釣りに行く時間を設ける。できれば2週間に1回は大自然に身を置くことを心掛ける。
3-3. 人間関係
- 孤独だった人に友人ができた結果、最大で15年寿命が伸びた。良い人間関係が及ぼす健康への影響はダイエットや喫煙よりも大きい。(ブリガムヤング大学の研究)
- いくら富や名声を手にしようが、身近な人たちとの人間関係が悪ければ、満足の機能は活性化されない。
- 孤独から来る炎症は、体調を崩し、脳の機能を低下させてしまう。
<対策>
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接触時間
200時間ほど他人とコミュニケーションをとれば、大抵の人とは深い仲になれる。 -
同期行動
人と同じ行動をとることで、絆が深まる。「全員が同じ場所で行うこと」「同じタイミングで同じ行動をすること」の条件が揃えばなんでもよい。ランニング、エクササイズ等がある。 -
信頼
セルフディスクロージャーを行う。
3-4. ストレス
- 心臓麻痺の死亡率は世界で年に1700万人。そのうち25%は激しいストレスが原因とされている。ストレスは人を殺す。
- 睡眠不足は借金のようなもの。毎日の寝不足が少しずつ溜まっていくと、様々な疾患を引き起こす。睡眠負債が怖いのは、本人も気づかないうちに債務が増えていくこと。
- 睡眠負債が続くと、脳と体が受けたダメージを修復するはずの時間がなくなり、処理されずに残った疲労やストレスが体を破壊し、最終的には手の付けられない炎症に変わる。
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良質な睡眠のサインは以下。
- 眠りに落ちるまでの時間が30分以内。
- 夜中に起きるのは1回まで。
- 夜中に目が覚めた場合は20分以内に再び眠ることができる。
- 総睡眠時間の85%以上を寝床で使っている。(昼寝や電車等での居眠りの合計が15%を超えない)
- スマホは本人の気づかないうちにストレスを貯めていく。スマホの使用時間が長い人ほど社会不安のレベルが高く、自宅でスマホを使い続ける人ほど仕事のストレスが回復しにくくなる。(ハーバード大学の研究)
<対策>
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リアプレイザル
日常で緊張によるストレスを感じたら、「楽しくなってきた」「興奮してきた」と言い換える。人間は自分の感情をコントロールし、意図的に影響を与えることができる。リアプレイザルは、積み重ねれば確実に脳がストレスに強くなっていく。(ハーバード大学の研究) -
睡眠
まずは自分が良質な睡眠をとれているかチェック。睡眠負債を返すには、日中にできるだけ日光を浴び、睡眠の際は照明をできるだけ暗くする。睡眠を改善するアイテムとしてはアイマスクや耳栓を使用する。マッサージ、アロマ、音楽は効果がない。(コクラン共同計画の研究)
寝たりない気分が続くときは、12時~14時までの間に15分~20分の昼寝を挟む。眠れなくても目を閉じるだけで効果がある。NASAやGoogleでも昼寝を奨励している。 -
ウォーキング
ウォーキングだけでストレスは激減する。週に2~3日のペースで12分以上の早歩きを行うのが最低ライン。可能であれば、週に150分以上のウォーキングができるとよい。
脳機能のアップを見込むには、1回45分の少しキツイ運動を週に2回行う。 -
デジタル断食
LINE/ツイッター/インスタグラム等は、朝/昼/夜に1回ずつチェックする等、事前に使用時間を決めておく。とにかく、スマホの利用時間を減らす。最初は不安に襲われるかもしれないが、少しずつ「興奮」の感情システムが落ち着き、やがて「満足」のシステムが起動していく。
4. 不安
- 意味的にはそのまんま。
- 現代は「不安の時代」であり、不安障害の患者は過去15年で2倍に増加している。現代人がかかえている不安は、「未来」の概念から生まれる「ぼんやりとした不安」が多い。
- 不安は記憶量を低下する、理性的な判断力を奪う、死期を早める、不安が不安を呼ぶ等、現代人の脳のパフォーマンスと人生の質に多大な影響を及ぼしている。
- 現代人がとれる対策は、未来の自分と現在の自分の心理的な距離を近づけることである。未来との心理的距離が近い者ほど不安に強く、セルフコントロール能力も高い。(スタンフォード大学の研究)
- 不安については、価値、畏敬、観察、遊びに注目する。
4-1. 価値
- 価値観は何事も耐え抜くモチベーションを与えてくれる。
- 6000人の男女に「価値観を持って生きているか」と尋ねたところ、イエスと答えた者は14年後の死亡率が15%も低い傾向にあった。価値観が明確な人は自然と健康的な食事と運動を実践している。(ロチェスター大学の研究)
- 不安な感情に対処する方法を学ぶと同時に自分の価値を見定め、それに合った行動を増やしていくことを目指す最先端の心理療法をACT(Acceptance Commitment Therapy)という。ACTでいう「価値」とは人生のモチベーションを与える基本原理のようなもの。
- ACTはサイコセラピーや心理教育などの治療よりも不安障害への効果が高く、人生の満足度も上がるとの結論が出ている。
<対策>
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価値表スケール & パーソナルプロジェクト分析
科学的に正当性の高い、自分にとっての価値観を見つけ出す方法。今の多くの臨床現場で実際に使われており、鬱病や不安障害などの治療に大きな効果を発揮している。
やり方については以下参照。
《最高の体調より》価値評定スケール・パーソナルプロジェクト分析をやってみた。 -
貢献
自分の行動が他者に良い影響を与えていると確信できたときほど、私たちの幸福感は高まりやすくなる。もし未来の選択に不安を感じたら「誰かの役に立つ行動はなにか?」を考えてみる。
4-2. 畏敬
- 人間は畏敬の感情を体験した回数が多いものほど、心理的な不安や体内の炎症レベルが低くなる。(カリフォルニア大学の研究)
- 心理学で言う畏敬とは何か自分の理解を超えるような対象に触れた際に湧き上がる鳥肌が立つような感情を指す。
- 畏敬の念には、炎症物質を適切なレベルに保つ作用がある。自然の中を歩いたり、素晴らしい後に触れたりといった活動は、いずれもポジティブな感情を引き起こし、健康や長寿に大きな影響を持つ。
- 壮大な海や山を写した動画を鑑賞した被験者は人生の満足度が上がり、チャリティーなどへの寄付を行う気持ちも増加した。
- 生まれつき畏敬を感じやすい性格の人ほど親切な行いが多く、目の前の欲望にも強い傾向が確認されている。畏敬の感情が私たちの不安を減らし、良い人間にさせる働きを持つ。
- 過去の畏敬研究をまとめると、畏敬を引き起こしやすいポイントには自然、アート、人がある。
<対策>
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自然
アウトドアの回数を増やす、ナショナルジオグラフィックなどで壮大な自然の映像を見る。宇宙論や数学の美しさを描いた科学者に触れてみるのも有効。自然は人類にとって最強の炎症対策である。 -
アート
音楽、映画、映画、演劇など高度な創作性を持つものに触れる。芸術作品に限らず、巨大ダムやスタジアムのような建造物でも構わない。人類の偉業を示すものであれば何でも畏敬をもたらす触媒になる。
自分にとって心地よいものだけではなく、あなたの世界観に衝撃を与えるものや、ちょっとやそっとでは理解できないような作品を選ぶようにすると良い。 -
人
キリスト、ガンジー、アインシュタインといった歴史上の偉人は当然のこと、スポーツ選手、タレント、政治家などカリスマ性を備えた人物はいずれも畏敬の念を生む。自分が思わず感動を覚えてしまうような人物であれば誰を選んでも構わない。あなたにとってのカリスマ人物を掘り下げてみる。
4-3. 観察
- 自己観察は現時点でのメリットが認められている。マインドフルネス瞑想を実践すれば、不安、鬱、慢性痛が確実に減る。
- 1日に30から40分の瞑想を8週間ほど続ければ薬物治療と同じレベルで不安と鬱を和らげることができる。その上副作用も認められなかった。
- 重要なのは、マインドフルネスの感覚を、日常の生活でも保ち続けながら生きることである。すべての体験を現在と捉えることで、未来の不安から解き放たれるようにする。私たちは未来に心を奪われ、このひと時を本当に生きることができずにいる。
- 自己観察の感覚がつかめると、日常のあらゆる状況がマインドフルネスのトレーニング場に変わる。被験者に水の温度や洗剤の泡の感覚に意識を向けながら皿洗いをしてくださいと伝えたところ、たった6分マインドフルに皿を洗っただけで、不安や神経性のレベルが27%下がり逆に新しいアイディアを思いつく確率が25%も上がった。雑巾がけ、歯磨き、炊事、洗濯など全ての家事をマインドフルに行うだけでも、不安は減っていく。
<対策>
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タイガータスク
①目を閉じ、目の前に大きな虎のイメージを浮かべる。
②虎のイメージを変化させようとせず、ただ観察する。
上記のことを行う。意識してトラに触れたり、角度を変えたりしない。目の前の虎をただ観察するのが最大のポイント。このトラはあなたの心に生まれる恐怖や不安の象徴である。もし今後の暮らしで自分の中にネガティブな感情や思考が生まれたらタイガータスクで虎を見つめたときの感覚を思い出す。するとあなたの感情や思考は虎と同じように勝手に目の前を動き回り、それ以上は何もしない。さらに観察を続ければ、ネガティブな感情と思考が勝手に消えていく。タイガータスクは1日5分ほど続けると良い。 -
日常行動のマインドフルネス
部屋の掃除や皿洗いなど、日常的な家事をただひたすら作業に集中するように意識する。
食事を瞑想の場に使うのも有効。テレビやスマホ見ながら初の食事を止め、家の中に入れた食品や液体を味わう作業だけに集中すれば、それはやはり瞑想と同じ行為になる。
非常にシンプルなトレーニングだが、ACTやメタ認知療法などで実際に不安障害の治療に使われているほど効果は高く一般にマインドフルーティングと呼ばれている。
4-4. 遊び
- 狩猟採集民は、常に大量のユーモアと遊び心を表現しながら過ごす。遊びは単に毎日の暮らしに楽しみを与えるスパイスではなく、部族の平等を維持し、平和を保つための重要な手段である。狩猟採集民にとって遊びと生活はイコール。遊びのために生きるのではなく、生きることそのものが遊びなのである。
- 人間の遊び心が幸福と高い相関がある。簡単に言えば、遊び心がある人ほど幸福な人生を送っている傾向がある。(心理学者レネ・プロワイエ博士の研究)
- 心理学で言う遊び心とは、仕事、育児、勉強などにおいて、どんな状況でも、楽しさやユーモアを使って解釈できるかどうかを意味する。それぞれの年齢に合った遊びは、人生のストレスに立ち向かい、ポジティブな感情を引き出す最良のリソースになり得る。
<対策>
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下位プロジェクト分析
人生を遊び化するためには下位プロジェクト分析から始める。
①4-1. 価値 のパーソナルプロジェクト分析により合計点が高いプロジェクトを5つ選択する。
②それぞれのプロジェクトについて「このプロジェクトを進めるために必要なプロジェクトは何か?」を自分に投げかけていく。
③1番下位に出てきたものが、最もあなたの幸福度アップにつながるプロジェクト(タスク)である。
1日のタスクは3つにすると良い。やるべきタスクが多すぎると、未来の姿が複数に分岐し、モチベーションが下がってしまう。
その日にやるべきタスクはいつも目に入る場所に置いておく。人の脳は未来の取り扱いが苦手なので、少しでも先の見通しがぼやけただけで不安が生まれてしまう。この点でデジタルデバイスは不利なため、面倒でも紙に書き出したほうが効果は高くなる。
また、特定のタスクが終わったら、必ず記録を残すようにする。カレンダーに印をつけてもいいしシールを貼ってみるのも良い。