日ごろの生活の中で「あれ?これって自分の思い込みだったの?」と気づいてハッとするようなことってないでしょうか?
子どもと話していて、不意にくる「なんで?」「これはなんでなの?」の質問攻めに答えているうちに、よくよく考えると自分もちゃんと理解していないことに気づき、調べると実は少し違っていたというようなことが時々あります。
私は事業会社のデザイナーとして、サービスの改善や保守業務に従事しており、チームメイトとユーザー行動について考えることもしばしばあります。
それって本当にそうだっけ?
仮説を立て、議論して物事を進めようとする中で、自分たちがいつしか「〜なはずなんだ」と認識していたことが、実はそうでもなかったようなケース
- これだけ工数がかかるんだから、きっと成果も大きいはず
- 前任の頃からずっと存在しているコンテンツだから、きっとサービスにとって欠かせないはず
- 解析ツールで見てもスクロールされているので、文章はしっかり読まれているはず
など、頭ではそんなことないと分かっていても、関わる人が変わり次第に個々の解釈が重なって、いつの間にかチーム単位で思い込みに囚われてしまったりするんですよね。
プラスすることだけが正解じゃない
一例になりますが、弊社が運営している金融商材を扱うサービスで、サイトに流入した際にユーザーの経験や状況を問うポップアップを設置していました。
最初に設置した理由としては「ランディング時にユーザーの経験や状況を聞き取ることによって、最適なページに誘導し、求められている情報を最短で提供することができる」といったところだと思います。
当初よかれと思って用意したコンテンツではありましたが、時間が経過し、次第にチームメンバーから「サイトに訪れていきなりポップアップが出るのって、ちょっと嫌だよね」といったネガティブな声が聞こえるようになりました。
実は運営側でもそう思っていた人が結構いたのでは?と今になって思いますが、このポップアップがあることである程度のユーザー属性のデータが蓄積され、施策考案に活かすことができたのも確かなので、なかなか外すという決断に至りませんでした。
ですが、UXの観点でも一定のユーザー行動を阻害してしまっている可能性を考え、一度外してみたところ、図らずも大きくCVRが改善する結果となりました。
工数面でも、あるものを外すだけなので小工数で済み、まさにローリスク・ハイリターンな施策となりました。
サービスとしての軸を置いておく
あるサービスのデザインに携わっていた時に「この商材だと情報が整理されて見やすい状態よりも、ごちゃっとして雑多なデザインの方が何故か成果がでるんだよね〜」という話を耳にしました。
まぁ分かる気はするけれど、デザイナーとしてはなんかモヤモヤする。。
仮にそうだとしても、意図的に認知負荷を上げるようなことはしたくないし、アクセシビリティを低くするようなことを推奨しちゃうチームは嫌。。
確かに業種によっての「っぽさ」やメンタルモデルのような側面もあってとても難しい問題だなと思いますが、同時にサービスとしての軸をしっかり置いておくことが重要なんだなと感じます。
サービスの方針として「ここは譲れない」といった優先度を、チームの共通認識として持っておくだけで、物事は判断しやすくなるのではと思います。
これは全くの余談ですが、過去にパチンコ商材がメインの制作会社にいた頃、先輩に「岩、炎、雷とにかく何でもいいから埋め尽くせ」「隙間があったらダメだからな」と、これでもかという程言われたことを思い出しました。
業界あるあるでしょうか。。
メンタルモデルについて
個人的に今年意識することが多かった「メンタルモデル」という概念。
元々は認知心理学の用語で、その人がこれまで生きてきて、見たり聞いたり経験したことから形成される物事の思い込みや価値観を指します。
例えば寒い冬の朝、窓を開けてみたら雪が積もっていたとします。
一面の雪景色に心が躍って駆け出したくなる人もいる一方、過去に雪道で転倒してしまった経験がある人はちょっと苦い顔をしてしまうかもしれません。
同じ事柄でもその人のバックボーンによって受け取り方や感じ方が違ってくる。
改めて意識できれば、サービスやユーザー行動について考える上で、大いに活用できる概念だなと思います。
メンタルモデルについてはこちらの記事がとても分かりやすかったので、興味がある方はぜひ見てみてください。
たまには棚卸ししてみよう
仕事をする上で常にフラットな視点が持てればベストなのですが、人間どうしても「〜なはず」といった見方をしてしまいがちです。
意識することで回避できれば何よりなのですが、それが難しいのであれば、定期的に振り返りの時間を設けたり、過去の事象からなんとなくそのままにしているようなことも、改めて検証してみることで思わぬ結果が得られるかもしれません。
今このサービスにとって何が必要か?と考え、ついついプラスする施策に進みがちですが、時には引いてみるという選択を考えてみるのもいいかと思います。
何かと忙しい12月ではありますが、区切りのよいこのタイミングで一度棚卸ししてみて、来年に備えるのはいかがでしょうか。