「数字が合わない、調べろ」
外国為替予約の現在残高と、期間中毎日積み上げた残高の合計(=積数)数値が合わないそうだ。
そういう場合は「このデータが積数に反映されてないようだ」程度までは調べてから言ってほしいものだが「システムが悪いんだろう」と一方的に押し付けてきた。
当時の関係者はとっくに引退している時効案件なので今更であるが、他山の石として。
同じように丸投げされた人が「こんなことになった例がある」と抗弁する材料として。
そのとき最若手だった私は素直に対応した。200万件のレコードをSQLを打ち込んで絞ってゆく。途中からトランス状態になって打ちまくった。
どうやら要因となるレコードが絞り込めた。見てみるとわかりやすい特徴があった。
通常、企業はドル円相場の変動リスクを回避するために為替予約をしておくものだが、してなかったんだな。どうやら相場がいい方に動けばそのまま、悪い方に動けば銀行に「遡って為替予約しておいたことにしておいて」と頼んで(命令して)損をしないようにする。
これなら残高には跳ねるが、予約期間中に毎日残高を合計することによって算出される積数には反映しない。(一晩でも経過すれば夜間バッチで積数を調整するのだけれども。)
これで問題解決!なのだがそれでいいのか?
事務ミスなら仕方ないが、
明らかに利益供与だろう!
しかも、北緯1度のひとつの支店に集中。相手企業も同じ名前が並ぶ。実は西半球と東半球の境目にほど近い支店にも一つだけあったが、相手の企業名は同じ。つまり、意識して組織的にやっている。
とりあえず「これが違うよ」と一覧を送ったが、お礼すら言ってこない。
別件で電話で話したとき「こないだの積数が違う件、どう?」と問うと
「ああ、あれはもういいから」。
でスルーされた。
なるほどもういいんだな、許可はもらったものとして、ウン十年の時を超えて警告を発するもの。
システム開発者に調査を丸投げするととんでもないものがヒットするという実例だ。
当時新聞社にタレ込めば大きなネタになったのを黙ってたんだから感謝してくれ。
そもそも「ごめん、あれ黙っといて」という一言さえなかったんだ。
なので後輩たちよ。「システムが悪いんだろ」と無茶振りされたらこういう実例を出して回避してくれたまへ。しかし、システム部門をこうやって軽視するから・・・せめて懐柔して口止めしろよな~汎用機でJCLをサブミットしながら検索結果を待つ、というのがどれくらい大変か、想像できない人がほとんどだろうが、相当の腕だし、推理力だぞ・・・きちんと敬意を払わないとシステム障害で有名になっちゃうぞ。
しかしあの会社、為替予約オープンで差益を稼いでいた取引があったわけだけど、社として承認していたのだろうか?してないんだろうなあ、儲かるときだけオープン/損しそうなときは予約、なんて明らかに不自然だろ。内部監査があれば一発である。
なんとなく帳簿の上では全部為替予約しておいて、差益が出たときは未計上にして、ようするにポケットに入れていたような気がする。そのほうが自然だ。
あくまで推測であるが。
システムとは関係ないけど、国内メーカーの時計というとそれ以来CASIOしか買っていない。SEIKOは高いから。もう一つの有名どころを買わないのは、ダーティーなイメージを持ってしまったからだ。さすがに名指しまでは避けよう。