前置き
この記事は、ドキュメンテーションと情報共有 Advent Calendar 2018と、Webじゃないアクセシビリティ Advent Calendar 2018の、12/16分の投稿になります。
はじめに
Excel方眼紙は、IT業界の様々なところで使われていますが、アクセシビリティという観点から見ると、もしかするとExcel方眼紙はよくないのではないかと思っています。
なお、私は一応晴眼者1ですが、発達障がい当事者2です。晴眼者でスクリーンリーダーを使っていないため、この文章は推測が主になりますがご容赦ください。
Excel方眼紙とは?
お分かりの方、そして日々Excel方眼紙に泣かされている方も多いでしょうが、要は、スプレッドシートのセルの縦横の長さを均一にして、そこに文字や表などを配置していくドキュメント形式の一つです。
Excelのセルという縦横の制約が、Wordより使いやすいという側面があったりします。
ひどいと、セル1つに1文字という「ネ申Excel」も存在しており、公務員が公開している「ネ申Excel」がビッグデータの時代において日本の生産性を下げていると主張する大学教授がいたり、とうとうExcel方眼紙の問題が政治家にまで波及したり、Excel方眼紙についての議論を行う討論会が開かれたりしています。
Excel方眼紙のどこがいけないの?
前の紹介のところで上げた問題点は、上原哲太郎氏が、「公務員が公開するネ申Excelが日本の生産性を落としている話」というTogetterまとめで述べている以下の言葉から考える必要がありそうです。
別に公務員に限った話ではない
多分日本中のあちこちでExcelをただのワープロ、ただのPDF生産ツールとして使っているためにせっかく入力されたデータを再利用しようとしても手で加工する必要が生じたり、単に帳票作成ツールとして使っていて集計が手作業で行われていたりということが起きているのだろうと思います。これが事務の文化の問題だと思います。
Excelはデータ処理と流通のためのツール です。罫線などの機能はその集計結果を美しく見せるためにあるだけです。見かけにこだわるのではなくて、データの再利用性と業務の効率化にこだわれるようにシートがデザインできるように教育していかないと、生産性はいつまでたっても上がりません。
(強調は筆者による)
と、言いたいことをはっきり述べています。
問題なのは、これが2013年にまとめられたまとめだということです。
アクセシビリティの観点から見ると?
前にも引用したとおり、Excelのデータは本来行と列でデータを表す「表」というデータ形式です。
視覚障がい者はスクリーンリーダーという、コンピューター内の表示を読み上げる支援機能を使います。
表というデータ形式はスクリーンリーダーでも扱えるようになっていて、支援してくれるので、Excelのファイルは表というデータであると解釈して支援機能が動いてしまいます。
そうなると、視覚的に文書であるという「日本のアダルトマン将軍3の共通認識」に従って書かれたExcel方眼紙は、変な形の表データと認識されるでしょう。
そうなってしまうと、視覚障がい者や学習障がいをもつ発達障がい者で音声読み上げに頼っている人は、ドキュメントを書いた人の意図する形で理解できないことになってしまうのです。
ビッグデータ活用の観点から見ると
「変な形の表データ」を理解できないのは、コンピューターも同じです。
スクレイピングしないとデータを理解・再利用できない表になってしまうと、ビッグデータ活用にも影響が出ると思われます。
分析する前に手作業でデータを解析するというのは、生産性を落としてしまうことに繋がってしまうのではないでしょうか。
あ、これどこかで見た構図だな……
よくよく考えてみると、CSSが普及する前のテーブルレイアウトの問題と似た構図だと思うのです。
テーブルレイアウトは、比較的自由にデータを配置できるという点でよく使われました。
アクセシビリティの観点から表というデータ形式を転用するのはよくないという声は上がっていましたが、なかなか手を付けられませんでした。
そんな中、Googleなどのクローリングしてデータを収集する検索エンジンが登場すると、テーブルレイアウトを解析することは非常に大変であり、SEO対策が重要になってくると経済的要請からテーブルレイアウトは姿を消しました。
Excel方眼紙も、テーブルレイアウトの一種であると思っています。
なぜ無くならないのか
それでも、Excel方眼紙をなくせない理由として、以下の2つがあると思っています。
- Wordは欧文ワープロとして作られており、日本語文書を扱うのに使いづらかった
- 追加のソフトウェアを入れさせてもらえない
とりわけ、2.の追加のソフトウェアを入れられないという問題は大きいと思っています。
それが、結果的にExcelをスイスのアーミーナイフのような何でも使える道具にしちゃっているところはあるかと。
結び
アクセシビリティとデータ再利用性の観点から、Excelを「データ処理と流通のためのツール」として使ってくれる人が増えることを祈っています。