Azure OpenAI APIの簡単セットアップと複数モデル活用ガイド
Azure OpenAI Serviceを使えば、ChatGPTなどで知られるGPT-4やGPT-3.5 Turboなどの強力なAIモデルを自社システムに組み込めます。この記事では、初心者でもわかるようにAzure OpenAI APIの設定方法と、用途別に複数モデルを使いこなす基本を解説します。
目次
Azure OpenAI APIのキホン
まずは基本的な用語を理解しましょう:
基本用語
- Azure OpenAIリソース: Azureで作成する基本的なサービス単位
- モデルデプロイメント: GPT-4などの特定のAIモデルを使えるようにしたもの
- デプロイメント名: プログラムからAIを呼び出すときに使う名前
料金プランの違い
Azure OpenAIには2種類の料金プランがあります:
-
従量課金(Standard):
- 使った分だけ支払う
- 開発・テスト環境向け
- 混雑時にはやや遅くなることも
-
固定容量(Provisioned):
- 専用の処理能力を確保
- 安定した速度を維持できる
- 本番環境・重要なサービス向け
Azure OpenAI APIのセットアップ手順
1. 準備するもの
- Azureアカウント
- Azureサブスクリプション
- OpenAIサービスへのアクセス権限
2. Azureポータルでリソースを作成
- Azureポータルにログイン
- 「リソースの作成」→「Azure OpenAI」を検索
- 「作成」をクリック
- 必要事項を入力:
- サブスクリプション(お支払いアカウント)
- リソースグループ(関連リソースをまとめる単位)
- リージョン(地理的な場所)
- 名前(任意の識別名)
- 価格レベル(Standard S0など)
- 「確認と作成」→「作成」をクリック
3. Azure AI Foundryでモデルをデプロイ
- 作成したOpenAIリソースの「概要」ページを開く
- 「Azure AI Foundryを開く」をクリック
- 左側メニューから「デプロイメント」を選択
- 「新規デプロイメントの作成」をクリック
- 設定を行う:
- モデル選択(GPT-4、GPT-3.5 Turboなど)
- デプロイメント名(例: mygpt4、mychatbot)
- デプロイメントタイプ(StandardまたはProvisioned)
- 容量設定(トークン/分や処理ユニット数)
- 「作成」をクリック
4. APIキーとエンドポイントの取得
- Azureポータルのリソースページに戻る
- 左側メニューから「キーとエンドポイント」を選択
- キー1(またはキー2)とエンドポイントURLをメモ
- これらの情報はプログラムからAPIを呼び出すときに使います
5. シンプルなAPIテスト
以下のようなPythonコードでAPIが正しく動作するか確認できます:
import openai
# Azure OpenAI設定
openai.api_type = "azure"
openai.api_key = "あなたのAPIキー"
openai.api_base = "あなたのエンドポイント"
openai.api_version = "2023-05-15" # 最新バージョンに更新してください
# APIリクエスト
response = openai.ChatCompletion.create(
deployment_id="あなたのデプロイメント名",
messages=[
{"role": "system", "content": "あなたは役立つAIアシスタントです。"},
{"role": "user", "content": "こんにちは!"}
]
)
# 結果表示
print(response.choices[0].message.content)
複数のモデルを賢く使い分けるコツ
サービスの特性に合わせて、複数のモデルを効率よく使い分ける方法を紹介します。
基本的な考え方
- 単一のAzure OpenAIリソース内に複数のモデルデプロイメントを作成できます
- 用途や重要度に応じてモデルを選び分けると費用対効果が高まります
- 開発・テスト環境と本番環境は分けて管理しましょう
おすすめの組み合わせパターン
-
チャットボット向け
- メインモデル: GPT-4(高品質な応答用)
- サポートモデル: GPT-3.5 Turbo(コスト効率重視の場合)
- 補助モデル: Embeddings(情報検索用)
-
コンテンツ生成向け
- メインモデル: GPT-4(質の高い文章作成)
- 画像モデル: DALL-E(画像生成用)
- 大量処理: Global-Batchデプロイメント(一括処理用)
-
社内ツール向け
- 日常業務用: GPT-3.5 Turbo(コスト効率の良い回答)
- 複雑な分析用: o3-mini(より高度な推論能力)
- データ検索用: Embeddings(社内ドキュメント検索)
わかりやすい命名規則
モデルが増えても管理しやすいように命名規則を決めておきましょう:
[環境]-[モデル]-[用途]
例:
-
prod-gpt4-chat
- 本番環境のGPT-4チャット用 -
dev-gpt35-test
- 開発環境のGPT-3.5テスト用 -
prod-embed-search
- 本番環境の検索用埋め込みモデル
まとめ
Azure OpenAI APIを使いこなすポイントは次のとおりです:
- デプロイメントはAzure AI Foundryで行う
- 用途に合わせて複数のモデルを使い分ける
- 開発環境と本番環境は適切に分ける
- わかりやすい命名規則で管理を効率化
この記事の内容を実践すれば、Azure OpenAI APIの基本的なセットアップと複数モデルの活用方法をマスターできます。サービス構成パターン、バージョン管理、セキュリティ最適化などの詳細については、後続の記事で解説します。
参考リンク
- Azure OpenAIリソースの作成方法
- Azure OpenAIモデルの種類
- デプロイメントタイプの比較
-
Azure OpenAIのベストプラクティス
ドIDを使用してAPI認証を強化- プライベートエンドポイントを使用してネットワークアクセスを制限
-
コンテンツフィルタリング:
- コンテンツフィルタリングポリシーを適用
- 非同期コンテンツフィルタリングを検討
- コンテンツセキュリティポリシーをカスタマイズ
-
データ保護:
- 顧客マネージドキー(CMK)を使用して保存データを暗号化
- 個人を特定できる情報(PII)の処理ポリシーを確立
- データ保持・削除ポリシーを実装
パフォーマンス最適化
-
効率的なトークン使用:
- プロンプトを最適化して不要なトークン使用を削減
- コンテキスト長を必要最小限に保つ
- バッチ処理可能なリクエストはバッチ処理用デプロイメントを使用
-
レイテンシー削減:
- ユーザーに近いリージョンにデプロイ
- ストリーミングAPIを活用して体感レイテンシーを低減
- APIゲートウェイのキャッシュ機能を利用
-
スケーラビリティ対策:
- クォータ制限を監視し、必要に応じて引き上げ要求
- トラフィックパターンを分析して最適なPTU配分を決定
- スパイクトラフィック対策としてスピルオーバー設計を実装
まとめ
Azure OpenAI APIの払い出しと複数モデル設定は、適切な計画とベストプラクティスに従うことで、安全で効率的なAIソリューションを構築できます。
- 環境やテナントごとに適切なリソース分離を行う
- 用途に応じてStandardとProvisionedデプロイメントを組み合わせる
- APIゲートウェイを活用してトラフィック管理と認証を強化
- モデルバージョンの更新は計画的に実施し、影響を最小化
- セキュリティとパフォーマンスを継続的に最適化
これらの原則に従いながら、ユースケースに合わせたアーキテクチャを設計することで、Azure OpenAI APIの能力を最大限に活用できるでしょう。