時系列分析をしていて悩んだことがあったのでメモ。
疑問
様々な資料を読んでいると「Dickey-Fuller 検定をやって単位根が無かったのでこれは定常過程」と書いてあるものがあまりにも多かった。
しかし Dickey-Fuller 検定は「データ系列に単位根が存在する」を帰無仮説とする仮説検定であって、帰無仮説が棄却された場合それは「データ系列に単位根が存在しない」ということが言えるに過ぎない。
- 定常性の定義は
abs(φ) < 1
- 単位根の定義は
φ = 1
(φ は自己回帰係数)
だから、
定常性 | 単位根 | |
---|---|---|
abs(φ) < 1 | 定常 | なし |
abs(φ) > 1 | 非定常 | なし |
φ = -1 | 非定常 | なし |
φ = 1 | 非定常 | あり |
ということであって、「単位根がない」からと言って「定常性がある」と言うことはできないのではないか?
わかったこと
「データによっては」、Dickey-Fuller 検定の対立仮説を「定常性がある」とすることができる。
現場ですぐ使える時系列データ分析~データサイエンティストのための基礎知識~ (横内大介;青木義充) によると、
収益率の時系列プロットは図3-5の(a)、(b)、(d)のように発散していくようなものではないため、収益率は「単位根を有する」か「定常性を満たす」のいずれかであると考えられます。いま、Dickey-Fuller 検定によって収益率が単位根を有していないことがわかりましたので、消去法的に収益率が定常性を満たしていると判断できます(注10)。
(注10)R の出力では Dickey-Fuller 検定の対立仮説が「データ系列は定常性を有す」となっていますが、正確には本文で述べた手続きを踏んだ後に、「データ系列が定常性を有す」という判断に至ります。
つまり、 abs(φ) > 1
や φ = -1
な時系列データは発散するため、そもそも扱っているデータが発散するようなデータ系列ではない場合はこれらの可能性を考慮しなくてもいい、ということ。
残った abs(φ) < 1
(定常過程) と φ = 1
(単位根過程) のうち、単位根過程が否定できれば消去法で定常過程だと言うことができる、つまり Dickey-Fuller 検定の対立仮説を「定常性がある」とすることができる。