目次
第1章:Opengradsの基礎
1. Opengradsとは
-
概要と特徴
- Opengrads(OpenGrADS)は、気象・気候データの可視化と解析のためのオープンソースソフトウェアです
- 主に気象学、海洋学、気候学の分野で広く使用されています
- コマンドラインインターフェース(CLI)を採用し、効率的なデータ処理が可能です
- 無料で利用でき、様々なOS(Windows、Mac、Linux)に対応しています
- 豊富なデータ形式(NetCDF、GRIB、HDFなど)をサポートしています
- スクリプト言語による自動化が可能で、バッチ処理に適しています
-
インストール方法
- MacOSの場合
- Homebrewのインストール(未インストールの場合)
/bin/bash -c "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/HEAD/install.sh)"
- XQuartzのインストール
-
XQuartzとは
- XQuartzは、MacOS上でX11ウィンドウシステムを提供するオープンソースのソフトウェアです。
- OpenGrADSを使用するために必要です。
-
インストール手順
- XQuartzの公式ウェブサイトにアクセスします: XQuartz公式サイト
- バージョン2.8.4以下のインストーラーをダウンロードします。
- ダウンロードしたインストーラーを実行し、指示に従ってインストールします。
- インストール後、XQuartzを起動します。
-
注意点
- XQuartzをインストールした後、OpenGrADSを使用する前に必ず再起動してください。
-
- Opengradsのインストール
brew install opengrads
- Homebrewのインストール(未インストールの場合)
- Linuxの場合
- パッケージマネージャーを使用したインストール
- Ubuntu/Debian:
sudo apt-get update sudo apt-get install opengrads
- CentOS/RHEL:
sudo yum install opengrads
- Ubuntu/Debian:
- パッケージマネージャーを使用したインストール
- Windowsの場合
- 公式ウェブサイトからインストーラーをダウンロード
- ダウンロードしたインストーラーを実行
- インストールウィザードに従って設定
- インストール後の確認
バージョン情報が表示されれば、インストール成功です
grads -V
- MacOSの場合
-
基本的な使い方
-
Opengradsの起動
grads
起動すると、
ga->
というプロンプトが表示されます -
基本的なコマンド
- 終了:
quit
またはexit
- ヘルプ表示:
help [コマンド名]
- コマンドの実行: コマンドを入力してEnterキーを押す
- コマンドの中断: Ctrl+C
- コマンドの省略
- コマンドは一意に特定できる最小限の文字数で省略可能です
- 複数のコマンドが同じ省略形を持つ場合は完全なコマンドを入力する必要があります
- コマンドの省略形は大文字小文字を区別します
- 終了:
-
画面の操作
- グラフィックスウィンドウのクリア:
clear
- 画面の更新:
display
- グラフィックスウィンドウの保存:
printim [ファイル名]
- グラフィックスウィンドウのクリア:
-
データの読み込み
sdfopen [データファイル名] # NetCDFファイルの場合 xdfopen [データファイル名] # その他の形式の場合
-
変数の表示
q file # 利用可能な変数の一覧を表示
-
-
基本的な表示コマンド
- 変数の表示
display [変数名] # 変数を表示
- 表示の設定
set gxout [表示形式] # 表示形式の設定 set ccolor [色番号] # 等値線の色を設定 set clevs [値1] [値2] ... # 等値線の値を設定 set cint [間隔] # 等値線の間隔を設定
- 表示の更新
display # 表示を更新
- 変数の表示
-
グラフの作成
-
グラフの種類
- 等値線図:
set gxout contour
- 塗りつぶし図:
set gxout shaded
- ベクトル図:
set gxout vector
- 散布図:
set gxout scatter
- 時系列グラフ:
set gxout line
- 等値線図:
-
グラフの設定
set x [x軸の範囲] # x軸の範囲を設定 set y [y軸の範囲] # y軸の範囲を設定 set z [z軸の範囲] # z軸の範囲を設定 set t [時間の範囲] # 時間の範囲を設定 set vrange [最小値] [最大値] # 変数の範囲を設定
-
グラフの保存
printim [ファイル名] [形式] # グラフを画像として保存
形式の例:
- PNG:
png
- JPEG:
jpg
- GIF:
gif
- PNG:
-
注意点
- コマンドは大文字小文字を区別します
- コマンドの実行には必ずEnterキーを押す必要があります
- エラーが発生した場合は、エラーメッセージを確認してください
- コマンドの実行中は、完了するまで待つ必要があります
-
2. コマンドラインの基礎
-
ターミナルの使い方
-
ターミナルとは
- コマンドを入力してコンピュータを操作するためのインターフェース
- テキストベースの操作環境
- より効率的な操作が可能
-
基本的な操作
-
ターミナルの起動
- MacOS: Spotlight(Command + Space)で「ターミナル」を検索
- Linux: アプリケーションメニューから「ターミナル」を選択
- Windows: スタートメニューから「コマンドプロンプト」または「PowerShell」を選択
-
ディレクトリの移動
cd [ディレクトリ名] # 指定したディレクトリに移動 cd .. # 一つ上のディレクトリに移動 cd ~ # ホームディレクトリに移動
-
現在のディレクトリの確認
pwd # 現在のディレクトリパスを表示
-
ディレクトリの内容表示
ls # ファイルとディレクトリの一覧を表示 ls -l # 詳細情報付きで表示
-
-
-
基本的なコマンド
-
ファイル操作
cp [元ファイル] [コピー先] # ファイルのコピー mv [元ファイル] [移動先] # ファイルの移動 rm [ファイル名] # ファイルの削除 mkdir [ディレクトリ名] # ディレクトリの作成 rmdir [ディレクトリ名] # ディレクトリの削除
-
テキストファイルの操作
cat [ファイル名] # ファイルの内容を表示 less [ファイル名] # ファイルの内容をページ単位で表示 head [ファイル名] # ファイルの先頭部分を表示 tail [ファイル名] # ファイルの末尾部分を表示
-
検索とフィルタリング
grep [検索文字列] [ファイル名] # ファイル内の文字列を検索 find [検索開始ディレクトリ] -name [ファイル名] # ファイルを検索
-
-
ファイルとディレクトリの操作
-
パス
- 絶対パス: ルートディレクトリ(/)から始まる完全なパス
- 相対パス: 現在のディレクトリからの相対的なパス
- 特殊なパス
-
.
: 現在のディレクトリ -
..
: 一つ上のディレクトリ -
~
: ホームディレクトリ
-
-
ファイル名の規則
- 大文字小文字を区別する
- スペースを含む場合は引用符(
"
)で囲む - 特殊文字(
*
,?
,[
,]
,{
,}
,!
,$
,&
,;
,|
,<
,>
,(
,)
,#
,@
,\
,'
,"
,~
,^
)は注意が必要
-
ファイルの権限
- 読み取り(r): ファイルの内容を表示可能
- 書き込み(w): ファイルの内容を変更可能
- 実行(x): ファイルを実行可能
- 権限の変更
chmod [権限] [ファイル名] # ファイルの権限を変更
-
第2章:Opengradsの基本操作
1. データの表示
-
データファイルの配置場所
- デフォルトの作業ディレクトリ
- MacOS/Linux: ホームディレクトリ(
~/
) - Windows: ユーザーのドキュメントフォルダ
- MacOS/Linux: ホームディレクトリ(
- 推奨される配置場所
- プロジェクトごとに専用のディレクトリを作成
- 例:
~/opengrads_data/
や~/projects/weather_data/
- 注意点
- パスに日本語や特殊文字を含めない
- ファイル名は英数字とアンダースコア(_)を使用
- 大文字小文字を区別する
- デフォルトの作業ディレクトリ
-
データファイルの読み込み
-
NetCDFファイルの場合
sdfopen [ファイル名] # NetCDFファイルを開く
サンプルファイルの例:
- JRA-55データ: `MSM2025032000P.nc'
-
その他の形式の場合
xdfopen [ファイル名] # その他の形式のファイルを開く
サンプルファイルの例:
- GRIB形式:
gfs_forecast.grb
- HDF形式:
modis_data.hdf
- バイナリ形式:
model_output.bin
- 取得元: 各気象機関のデータ提供サービス
- GRIB形式:
-
利用可能な変数の確認
q file # ファイル内の変数一覧を表示
表示される情報の例:
File 1 : JRA-55 temperature data Descriptor: jra55_temperature.nc Binary: jra55_temperature.nc Type = Gridded Xsize = 144 Ysize = 73 Zsize = 37 Tsize = 8760 Number of Variables = 1 Variables: 1. temp[37][73][144] Temperature (K)
-
データファイルの解除
-
個別のファイルを解除する場合
close [ファイル番号] # 指定したファイル番号のファイルを解除
例:
close 1 # 1番目のファイルを解除 close 2 # 2番目のファイルを解除
-
すべてのファイルを一括で解除する場合
close all # すべてのファイルを解除
-
注意点
- ファイル番号は
q file
コマンドで確認できます - ファイルを解除しても、表示設定は保持されます
- 新しいファイルを開く前に、不要なファイルは解除することをお勧めします
- メモリ使用量を抑えるために、使用していないファイルは解除してください
- ファイル番号は
-
-
環境の初期化
reinit # すべての設定を初期状態に戻す
- このコマンドの効果
- すべてのファイルを閉じる
- すべての表示設定を初期化
- すべての変数をクリア
- グラフィックスウィンドウをクリア
- 使用するタイミング
- 新しい解析を始める前
- エラーが発生した場合のリセット
- メモリ使用量を抑えたい場合
- 注意点
- このコマンドは取り消しできません
- 保存していない設定は失われます
- 実行前に必要な設定は保存することをお勧めします
- このコマンドの効果
-
-
基本的な表示コマンド
- 変数の表示
display [変数名] # 変数を表示
- 表示の設定
set gxout [表示形式] # 表示形式の設定 set ccolor [色番号] # 等値線の色を設定 set clevs [値1] [値2] ... # 等値線の値を設定 set cint [間隔] # 等値線の間隔を設定
- 表示の更新
display # 表示を更新
- 変数の表示
-
グラフの作成
-
グラフの種類
- 等値線図:
set gxout contour
- 塗りつぶし図:
set gxout shaded
- ベクトル図:
set gxout vector
- 散布図:
set gxout scatter
- 時系列グラフ:
set gxout line
- 等値線図:
-
グラフの設定
set x [x軸の範囲] # x軸の範囲を設定 set y [y軸の範囲] # y軸の範囲を設定 set z [z軸の範囲] # z軸の範囲を設定 set t [時間の範囲] # 時間の範囲を設定 set vrange [最小値] [最大値] # 変数の範囲を設定
-
グラフの保存
printim [ファイル名] [形式] # グラフを画像として保存
形式の例:
- PNG:
png
- JPEG:
jpg
- GIF:
gif
- PNG:
-
注意点
- 表示前に必ずデータファイルを開く必要があります
- 変数名は大文字小文字を区別します
- 表示形式によって利用可能な設定が異なります
- グラフの保存時は適切な形式を指定してください
-
2. データの操作
-
変数の選択
- 変数の指定方法
display [変数名] # 単一の変数を表示 display [変数名1];[変数名2] # 複数の変数を同時に表示
- 変数の範囲指定
set x [x軸の範囲] # 経度の範囲を設定 set y [y軸の範囲] # 緯度の範囲を設定 set z [z軸の範囲] # 高度の範囲を設定 set t [時間の範囲] # 時間の範囲を設定
- 変数の情報確認
q dims # 現在の変数の次元情報を表示 q file # ファイル内の変数一覧を表示
- 変数の指定方法
-
計算式の使用
- 基本的な演算
display [変数名1] + [変数名2] # 加算 display [変数名1] - [変数名2] # 減算 display [変数名1] * [変数名2] # 乗算 display [変数名1] / [変数名2] # 除算
- 関数の使用
display sqrt([変数名]) # 平方根 display exp([変数名]) # 指数関数 display log([変数名]) # 自然対数 display abs([変数名]) # 絶対値
- 条件付き計算
display maskout([変数名], [条件式]) # 条件に合致する値のみを表示 display const([変数名], [値], [条件式]) # 条件に応じて値を設定
- 基本的な演算
-
データの保存
- グラフの保存
printim [ファイル名] [形式] # グラフを画像として保存
- データの出力
fwrite [ファイル名] # バイナリ形式でデータを保存
- スクリプトの保存
save [ファイル名] # 現在の設定をスクリプトとして保存 restore [ファイル名] # 保存したスクリプトを読み込む
- グラフの保存
-
注意点
- 変数の演算時は、次元が一致していることを確認してください
- 計算結果は一時的なもので、保存しないと失われます
- データの保存時は、適切なファイル名と形式を指定してください
- スクリプトの保存は、よく使用する設定を再利用する際に便利です
第3章:気象データの可視化
1. 2次元データの表示
-
地図の表示
-
基本設定
set mpdset [地図データセット名] # 地図データセットの設定 set map [色番号] [線の太さ] # 地図の線の設定 set mpdraw on # 地図の描画を有効化
-
色番号の例
- 1: 黒
- 2: 赤
- 3: 青
- 4: 緑
- 5: 黄
-
線の太さの例
- 1: 細い線
- 2: やや太い線
- 3: 太い線
-
地図データセットの種類
-
hires
: 高解像度地図(標準で利用可能) -
lowres
: 低解像度地図(標準で利用可能) -
nps
: 北極投影地図 -
sps
: 南極投影地図 -
mres
: 中解像度地図
-
-
地図表示のサンプル
# データファイルを開く(例:気象庁のMSMデータ) sdfopen /ファイルを置いたディレクトリ/MSM2025032000P.nc q file # 利用可能な変数を確認 # 日本周辺の気温データの表示 set mpdset hires # 高解像度地図を設定 set map 1 2 # 黒色でやや太い線を設定 set lon 120 150 # 経度の範囲を設定(東経120度から150度) set lat 20 50 # 緯度の範囲を設定(北緯20度から50度) set gxout shaded # 塗りつぶし図として表示 display temp-273 # 気温データを表示
-
-
等値線図の作成
-
基本設定
set gxout contour # 表示形式を等値線図に設定 set ccolor [色番号] # 等値線の色を設定 set clevs [値1] [値2] ... # 等値線の値を設定 set cint [間隔] # 等値線の間隔を設定 set cstyle [スタイル番号] # 等値線のスタイルを設定
-
等値線の種類
- 実線:
set cstyle 1
- 破線:
set cstyle 2
- 点線:
set cstyle 3
- 一点鎖線:
set cstyle 4
- 実線:
-
等値線図のサンプル
# データファイルを開く(例:気象庁のMSMデータ) sdfopen /ファイルを置いたディレクトリ/MSM2025032000S.nc # NetCDFファイルを開く q file # 利用可能な変数を確認 # 日本周辺の気圧データの等値線図表示 set mpdset hires # 高解像度地図を設定 set map 1 2 # 黒色でやや太い線を設定 set lon 120 150 # 経度の範囲を設定(東経120度から150度) set lat 20 50 # 緯度の範囲を設定(北緯20度から50度) set gxout contour # 等値線図として表示 set ccolor 1 # 等値線の色を黒に設定 set cint 2 # 等値線の間隔を2hPaに設定 set cstyle 1 # 実線で表示 display psea/100 # 海面気圧データを表示 # 気温データの等値線図表示(塗りつぶし図と組み合わせ) set gxout shaded # 塗りつぶし図として表示 set clevs 0 5 10 15 20 25 30 # 色分けの境界値を設定 set ccols 2 3 4 5 6 7 8 9 # 各範囲の色を設定(青から赤) display temp-273 # 気温データを表示 set gxout contour # 等値線図として表示 set ccolor 1 # 等値線の色を黒に設定 set cint 5 # 等値線の間隔を5℃に設定 set cstyle 1 # 実線で表示 display temp-273 # 気温データの等値線を表示 cbarn # カラーバーを表示
-
-
カラーマップの設定
- 塗りつぶし図の設定
set gxout shaded # 表示形式を塗りつぶし図に設定 set clevs [値1] [値2] ... # 色分けの境界値を設定 set ccols [色番号1] [色番号2] ... # 各範囲の色を設定
- カラーバーの表示
cbarn # カラーバーを表示 set cbar [位置] # カラーバーの位置を設定
- カラーマップの種類
-
デフォルト:
set ccols 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
-
青から赤:
set ccols 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
-
赤から青:
set ccols 15 14 13 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0
-
塗りつぶし図のサンプル
# データファイルを開く(例:気象庁のMSMデータ) sdfopen /ファイルを置いたディレクトリ/MSM2025032000S.nc # NetCDFファイルを開く q file # 利用可能な変数を確認 # 気温データの塗りつぶし図表示 set mpdset hires # 高解像度地図を設定 set map 1 2 # 黒色でやや太い線を設定 set lon 120 150 # 経度の範囲を設定(東経120度から150度) set lat 20 50 # 緯度の範囲を設定(北緯20度から50度) set gxout shaded # 塗りつぶし図として表示 set clevs 0 5 10 15 20 25 30 # 色分けの境界値を設定 set ccols 0 1 2 3 4 5 6 7 # 各範囲の色を設定(青から赤) display temp # 気温データを表示 cbarn # カラーバーを表示
-
- 塗りつぶし図の設定
2. 3次元データの表示
-
鉛直断面図
-
基本設定
set z [高度の範囲] # 高度の範囲を設定 set y [緯度] # 断面の緯度を設定 set x [経度の範囲] # 経度の範囲を設定
-
表示方法
set gxout contour # 等値線図として表示 display [変数名] # 変数を表示
-
鉛直断面図のサンプル
# データファイルを開く(例:気象庁のMSMデータ) sdfopen /ファイルを置いたディレクトリ/MSM2025032000P.nc # NetCDFファイルを開く q file # 利用可能な変数を確認 # 北緯35度の鉛直断面図(気温) set mpdset hires # 高解像度地図を設定 set map 1 2 # 黒色でやや太い線を設定 set z 1 20 # 高度の範囲を設定(1層から20層) set lat 35 # 北緯35度の断面を設定 set gxout shaded # 塗りつぶし図として表示 set clevs -60 -50 -40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50 # 色分けの境界値を設定 set ccols 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 # 各範囲の色を設定(青から赤) display temp-273 # 気温データを表示(Kから℃に変換) cbarn # カラーバーを表示 # 東経35度の鉛直断面図(風) set gxout vector # ベクトル図として表示 set ccolor 1 # ベクトルの色を黒に設定 display u;v # 東西風と南北風を表示
-
-
時間変化の表示
-
基本設定
set t [時間の範囲] # 時間の範囲を設定 set x [x軸の範囲] # x軸の範囲を設定 set y [y軸の範囲] # y軸の範囲を設定
-
表示方法
set gxout line # 時系列グラフとして表示 display [変数名] # 変数を表示
-
時系列グラフのサンプル
# データファイルを開く(例:気象庁のMSMデータ) sdfopen /ファイルを置いたディレクトリ/MSM2025032000P.nc # NetCDFファイルを開く q file # 利用可能な変数を確認 # 東京(北緯35.7度、東経139.8度)の気温の時間変化 set mpdset hires # 高解像度地図を設定 set map 1 2 # 黒色でやや太い線を設定 set lon 139.8 # 経度を設定 set lat 35.7 # 緯度を設定 set z 3 set t 1 last # 時間の範囲を設定(1時から24時) set gxout line # 時系列グラフとして表示 set ccolor 2 # 線の色を赤に設定 display temp-273 # 気温データを表示(Kから℃に変換)
-
-
アニメーションの作成
-
基本設定
set t [開始時間] [終了時間] # アニメーションの時間範囲を設定
-
アニメーションの作成
xanim [-option] [変数] # アニメーションを作成
-
アニメーションのサンプル
# データファイルを開く(例:気象庁のMSMデータ) sdfopen /ファイルを置いたディレクトリ/MSM2025032000P.nc # NetCDFファイルを開く q file # 利用可能な変数を確認 # 気温分布のアニメーション set mpdset hires # 高解像度地図を設定 set map 1 2 # 黒色でやや太い線を設定 set t 1 last # 時間の範囲を設定(1時から最後) set gxout shaded # 塗りつぶし図として表示 display temp-273 # 気温データを表示(Kから℃に変換) cbarn # カラーバーを表示 xanim -sec 1 temp-273 # GIFアニメーションとして再生
-
-
注意点
-
2次元データの表示
- 地図の表示前に適切な地図データセットを設定してください
- 等値線の間隔は、データの特性に応じて適切に設定してください
- カラーマップは、データの範囲に合わせて調整してください
-
3次元データの表示
- 鉛直断面図は、適切な高度範囲を設定してください
- 時間変化の表示は、適切な時間間隔を設定してください
- アニメーション作成時は、メモリ使用量に注意してください
-
第4章:実践的な気象解析
1. 気象要素の解析
-
気温・湿度の解析
-
気温分布図の作成
# データファイルを開く sdfopen /ファイルを置いたディレクトリ/MSM2025032000S.nc q file # 気温分布図の作成 set mpdset hires set map 1 2 set gxout shaded display temp-273 cbarn
-
相対湿度の表示
# 相対湿度の表示 set gxout shaded display rh cbarn
-
温位の計算と表示
# 温位の計算(K) define theta = temp * pow(1000/sp,0.286) # 温位の表示 set gxout shaded display theta cbarn
-
-
風の解析
-
風ベクトル図の作成
# データファイルを開く sdfopen /ファイルを置いたディレクトリ/MSM2025032000S.nc q file # 風ベクトル図の表示 set mpdset hires # 高解像度地図を設定 set gxout vector # ベクトル図として表示 set ccolor 1 # ベクトルの色を黒に設定 display skip(u,20,20);v # 東西風と南北風を表示(そのままでは矢印の数が多すぎるので間引いている)
-
風速の表示
# 風速の計算(m/s) define wind = mag(u,v) # 風速の表示 set gxout shaded display wind cbarn
-
渦度の計算と表示
# 相対渦度の計算(1/s) define vort = hcurl(u,v) # 渦度の表示 set gxout shaded set clevs -0.0001 -0.00005 0 0.00005 0.0001 set ccols 0 1 2 3 4 5 display vort cbarn
-
-
降水の解析
- 降水量の表示
# 降水量の表示 set gxout shaded set t 2 #本データの降水量は積算量で初期時刻には値がないため時刻を変える display r1h cbarn
- 降水量の表示
2. 高度な機能
-
Opengradsのスクリプトとは
-
スクリプトの概要
- Opengradsのスクリプトは、一連のコマンドをファイルに保存したものです
- 拡張子は通常
.gs
を使用します - コマンドを自動的に実行できるため、作業の効率化が可能です
- 同じ処理を繰り返し行う場合に特に有用です
-
スクリプトの特徴
- コマンドを一括で実行できる
- 引数を使用して柔軟な処理が可能
- 条件分岐やループなどの制御構造が使用可能
- 複数のファイルや変数を効率的に処理できる
-
スクリプトの作成方法
- テキストエディタで
.gs
ファイルを作成 - コマンドを1行ずつ記述
- コメントは
#
で始まる行に記述 - スクリプトの実行は
run [スクリプト名]
コマンドで行う -
「'」の使用理由
- Opengradsのスクリプトでは、コマンドを文字列として認識させるために「'」を使用します。
- これにより、コマンドが正しく解釈され、実行されることが保証されます。
- 特に、変数や引数を含むコマンドを実行する際に、文字列として扱うことでエラーを防ぎます。
- テキストエディタで
-
スクリプトの実行方法
run [スクリプト名] [引数1] [引数2] ... # スクリプトを実行
例:
run temp_plot.gs # 引数なしで実行 run plot_var.gs data.nc 0 5 6 temp # 引数付きで実行
-
-
スクリプトの作成
-
基本的なスクリプト
# スクリプトの例(temp_plot.gs) 'reinit' 'sdfopen /ファイルを置いたディレクトリ/MSM2025032000P.nc' 'set mpdset hires' 'set map 1 2' 'set gxout shaded' 'display temp-273' 'cbarn' 'gxprint temp_plot.png'
-
引数を使用したスクリプト
# 引数を使用したスクリプト(plot_var.gs) function main(args) arg1 = subwrd(args, 1) arg2 = subwrd(args, 2) 'reinit' 'sdfopen 'arg1 'set mpdset hires' 'set map 1 2' 'set gxout shaded' 'display 'arg2 'cbarn' 'gxprint 'arg2'.png'
-
-
バッチ処理
-
複数時刻の処理
# 複数時刻の処理(batch_process.gs) 'reinit' 'sdfopen /ファイルを置いたディレクトリ/MSM2025032000P.nc' t = 1 while(t <= 12) 'set t 't 'set mpdset hires' 'set map 1 2' 'set gxout shaded' 'display temp-273' 'cbarn' if t < 10 fname = 'temp_00' t '.png' else fname = 'temp_0' t '.png' endif 'gxprint ' fname t = t + 1 endwhile
-
複数変数の処理
# 複数変数の処理(multi_var.gs) 'reinit' 'sdfopen ./Opengrads/MSM2025032000S.nc' vars = 'temp rh sp clda' varnames = 'temperature relative_humidity surface_air_pressure cloud_amount' i = 1 while (i <= 4) var = subwrd(vars,i) varname = subwrd(varnames,i) 'set mpdset hires' 'set map 1 2' 'set gxout shaded' 'display 'var 'cbarn' 'gxprint 'varname'.png' 'clear' i = i + 1 endwhile
-
-
データの加工と変換
-
データの補間
# データの補間 'set x 1 144 linear 120 150' 'set y 1 73 linear 20 50'
-
データの集計
# 時間平均の計算 'define temp_ave = ave(temp,t=1,t=24)' # 空間平均の計算 'define temp_spatial = aave(temp,lon=120,lon=150,lat=20,lat=50)'
-
データの変換
# 単位の変換 'define temp_c = temp - 273.15' # Kから℃へ 'define pres_hpa = pres / 100' # PaからhPaへ # 物理量の計算 'define theta = temp * pow(1000/pres,0.286)' # 温位 'define wind = mag(u,v)' # 風速 'define vort = hcurl(u,v)' # 渦度
-
第5章:トラブルシューティング
1. よくある問題と解決方法
-
エラーメッセージの読み方
- Opengradsでは、エラーメッセージが表示されることがあります。これらのメッセージは、問題の特定に役立ちます。エラーメッセージを注意深く読み、どのコマンドや変数に関連しているかを確認してください。
-
データ形式の問題
- データファイルが正しい形式であることを確認してください。Opengradsは、NetCDF、GRIB、HDFなどの形式をサポートしていますが、ファイルが破損している場合や、サポートされていない形式の場合、エラーが発生することがあります。
-
表示の問題
- グラフィックスウィンドウが真っ白になる場合、地図データセットが正しく設定されていないか、表示範囲がデータの範囲外である可能性があります。
set mpdraw on
を使用して地図の描画を有効にし、経度や緯度の範囲を確認してください。
- グラフィックスウィンドウが真っ白になる場合、地図データセットが正しく設定されていないか、表示範囲がデータの範囲外である可能性があります。
2. リソースとサポート
-
ドキュメントの活用
- Opengradsの公式ドキュメントやチュートリアルを参照することで、コマンドの使い方や設定方法を確認できます。特に、エラーメッセージの解決策や、特定の機能の使用方法についての情報が得られます。
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コミュニティの利用
- Opengradsのユーザーコミュニティやフォーラムに参加することで、他のユーザーからのサポートを受けることができます。質問を投稿したり、過去の質問を検索することで、問題解決の手助けを得られます。
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質問の方法
- 問題を解決するために質問をする際は、具体的なエラーメッセージや実行したコマンド、使用しているデータファイルの形式など、詳細な情報を提供することが重要です。これにより、他のユーザーやサポートチームが迅速に問題を理解し、解決策を提案しやすくなります。