データウェアハウス、データレイク、データマートとは?違いを分かりやすく解説
近年、企業のデータ活用が重要となる中で、「データウェアハウス」「データレイク」「データマート」といった言葉を耳にする機会が増えています。これらの言葉は、いずれもデータを保管・活用するための概念ですが、その目的や特徴は大きく異なります。本記事では、それぞれの違いを分かりやすく解説し、あなたのデータ活用戦略に役立つ情報を提供します。
1. データベース:日々の業務を支えるデータの保管庫
データベースは、蓄積されたデータを抽出、編集、共有しやすい形に整理して保管したものです。例えば、顧客の氏名、会員番号、メールアドレスといった項目ごとに整理された大量の顧客情報などが該当します。データベースの主な目的は、情報を整理しておき、必要な時に必要な情報を素早く取り出せるようにすることです。
身近な例としては、Excelをイメージすると分かりやすいかもしれません。Excelも表形式でデータを管理しますが、大量のデータ処理やデータの形式の制約、複数人での同時編集には限界があります。
リレーショナルデータベース(RDB)と呼ばれる種類のデータベースは、Excelの課題を解決するために生まれました。RDBでは、大量のデータを効率的に扱えるだけでなく、SQLという言語を使ってデータの追加、削除、更新などをプログラムで行うことが可能です。また、各項目(カラム)に格納できるデータの種類(型)を定義できるため、データの誤入力などを防ぐことができます。
RDBは、リアルタイムでのデータの更新や参照に強く、日々の業務システム(例えば、顧客管理システムや予約システムなど)のデータ管理に広く利用されています。Google Cloudでは、Cloud SQL、Cloud Spanner、Cloud Bigtable、AlloyDBなどのデータベースサービスが提供されています。
データベースの特徴まとめ
- データの種類: 主に構造化データ(列や行に整理されたデータ)
- データ構造: 定義された構造を持つ
- 利用目的: データの効率的な抽出、編集、共有、日々の業務処理
- 更新頻度: 頻繁な更新、リアルタイム更新
- 容量: 業務に必要なデータ量
- 速度: リアルタイムな読み書きが求められるため、高速なストレージが適している
2. データウェアハウス:分析に特化したデータの倉庫
データウェアハウスは、異なる複数のシステムから抽出されたデータを分析しやすい形に整理して一元的に格納する場所です。データウェアハウスも構造化データを扱いますが、その主な目的はデータ分析に活用することであり、そのために最適化された設計がなされています。
データベースが日々の業務で発生する最新のデータを管理するのに対し、データウェアハウスは過去のデータを長期にわたって保管し、傾向分析や意思決定に役立てます。異なるシステム間のデータ連携や分析をスムーズに行え、データベースに比べて大容量のデータを扱えるため、長期間にわたるデータ分析に適しています。
Google CloudのBigQueryは、ビッグデータを超高速で分析できるデータウェアハウスサービスとして高い人気を誇ります。BigQueryは、XMLやJSONといった半構造化データも分析可能であり、プレビュー機能ではオブジェクトテーブルを使ってCloud Storage上の画像などの非構造化データの一部分析も可能です。BigQueryを用いて、データマートを構築することもできます。
データウェアハウスの特徴まとめ
- データの種類: 構造化データ(異なるシステムから統合された分析しやすい形式)
- データ構造: 分析に最適化された構造(非正規化など)
- 利用目的: データ分析、ビジネスインテリジェンス(BI)、意思決定支援
- 更新頻度: 定期的なバッチ処理による更新、リアルタイム更新は少ない
- 容量: 大容量のデータを長期保管
- 速度: 分析処理に最適化、参照処理は高速
3. データレイク:あらゆる種類のデータをそのまま保管
データレイクは、異なる複数のシステムから抽出した構造化データと非構造化データをそのままの形でまとめて保管しておける場所です。非構造化データとは、テキスト、画像、動画、音声など、事前に形式が定まっていない生データのことを指します。
データレイクの大きな特徴は、様々な形式のデータを加工せずに保管できる点です。これにより、「とりあえずデータをためておき、後からどんな分析がしたいとなっても活用できる」という柔軟性が生まれます。
データレイクは、ビッグデータ分析、リアルタイム分析、機械学習など、高度なデータ活用を目的として利用されることが多いです。例えば、顧客の購買履歴(構造化データ)に加えて、SNSの投稿データ(非構造化データ)やWebサイトのアクセスログ(半構造化データ)などをまとめて分析することで、より深い洞察を得ることが期待できます。
Google Cloudでは、Cloud Storageをデータレイクとして利用することができます。
データレイクの特徴まとめ
- データの種類: 構造化データ、半構造化データ、非構造化データなど、あらゆる種類のデータ
- データ構造: 様々な形式の生データをそのまま保管(スキーマオンリード)
- 利用目的: ビッグデータ分析、データサイエンス、機械学習、将来的な分析ニーズへの対応
- 更新頻度: 様々(リアルタイムに取り込む場合もある)
- 容量: 非常に大容量のデータを保管
- 速度: データ形式が多様なため、分析によっては処理に時間がかかる場合がある
4. データマート:特定の目的や部門に特化したデータの集まり
データマートは、データウェアハウスを特定の利用用途ごと、あるいは部門ごとに分割したものです。データウェアハウスがあらゆる情報を網羅的に格納しているのに対し、データマートは特定の目的や部門に必要な情報のみを保管します。
例えば、マーケティング分析用のデータマート、財務部門用のデータマート、機械学習用のデータマートなど、目的に応じてデータを整理することができます。データが特定の用途に絞られているため、よりスピーディーに、より簡単にデータを取り出すことができるというメリットがあります。
Google Cloudでは、BigQueryを使ってデータマートを構築することができます。
データマートの特徴まとめ
- データの種類: データウェアハウスから抽出・加工された構造化データが中心
- データ構造: 特定の分析・利用目的に最適化された構造
- 利用目的: 特定の部門や目的におけるデータ分析、レポート作成
- 更新頻度: データウェアハウスの更新に依存
- 容量: データウェアハウスの一部であるため、データウェアハウスよりは小さい
- 速度: 特定の目的に最適化されているため、データ抽出・分析が高速
まとめ:目的に応じた使い分けが重要
特徴 | データベース | データウェアハウス | データレイク | データマート |
---|---|---|---|---|
データの種類 | 主に構造化データ | 構造化データ(分析しやすい形式に統合) | 構造化、半構造化、非構造化などあらゆるデータ | 構造化データ(特定の目的に最適化) |
データ構造 | 定義された構造 | 分析に最適化された構造 | 様々な形式の生データをそのまま保管(スキーマオンリード) | 特定の分析・利用目的に最適化された構造 |
利用目的 | 業務処理、データの抽出・編集・共有 | データ分析、BI、意思決定支援 | ビッグデータ分析、データサイエンス、機械学習、将来的な分析ニーズ | 特定の部門や目的におけるデータ分析、レポート作成 |
更新頻度 | 頻繁な更新、リアルタイム更新 | 定期的なバッチ処理による更新 | 様々 | データウェアハウスの更新に依存 |
容量 | 業務に必要なデータ量 | 大容量のデータを長期保管 | 非常に大容量 | データウェアハウスより小さい |
速度 | 高速な読み書きが求められる | 分析処理に最適化、参照処理は高速 | データ形式が多様なため、分析によっては時間がかかる場合がある | 特定の目的に最適化されているため、データ抽出・分析が高速 |
データウェアハウス、データレイク、データマートは、それぞれ異なる特徴と目的を持っています。重要なのは、データ活用の目的に合わせて最適なサービスを選択し、適切に使い分けることです。
例えば、日々の業務システムを安定稼働させるためにはデータベースが不可欠であり、過去のデータを分析して経営判断に役立てたいのであればデータウェアハウスが有効です。将来的なデータ活用を見据えて多様なデータを蓄積したい場合にはデータレイクが適しており、特定の部門や目的のためにデータを効率的に利用したいのであればデータマートが役立ちます。
それぞれの特徴を理解し、あなたのビジネスにおけるデータ活用戦略をより効果的なものにしていきましょう。
引用元:
- NEW YOUTUBE SOURCE, Excerpts from the transcript of the video "5分でわかる Google Cloud !データウェアハウス・データベース・データマートの違い" uploaded on the YouTube channel "クラウドエース株式会社 Cloud Ace, Inc."
- NEW YOUTUBE SOURCE, Excerpts from the transcript of the video "「データベース」と「データウェアハウス」と「データレイク」の違い" uploaded on the YouTube channel "大和賢一郎"