SeleniumConf UK 2016 Committers Panel の内容を少し翻訳
11月14日から11月16日にかけて、Selenium の開発者とユーザーが集まる Selenium Conference UK がロンドンで開催されました。
最終日の最後には、Selenium と Appium のコミッタ 総勢10名が一堂に会するパネルディスカッションが執り行われました。
SeleniumやAppium、そして WebDriver のこれから、 さらに開発コミュニティの雰囲気も伝わってくるディスカッションでした。また、日本についての言及も。
セッションの模様は YouTube に字幕付きでアップされています。
http://www.youtube.com/watch?v=JK7WayJzBXo
全文はちょっと無理だったので、気になった質問をピックアップして翻訳してみました。
なかなか見えづらい Selenium / Appium 開発コミュニティの様子や彼らの興味を知る一助になれば幸いです。
英語は得意なわけではないので誤訳御免でお願いします。
パネラー
Selenium, Appium 両プロジェクトのリーダーをはじめ、総勢10名のコミッタが参加しています。
Selenium / Appium のどの部分をメインに開発しているかについて、簡単にまとめてみました。
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Daniel Wagner-Hall (@illicitonion)
- ChromeDriver の開発者
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David Burns (@automatedtester)
- Python バインディング、W3C WebDriver の仕様策定など
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Jim Evans (@jimevansmusic)
- IE Driver, .NETバインディングなど
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Simon Stuwart (@shs96c)
- Selenium のプロジェクトリーダーで WebDriver の最初の開発者。Java バインディングなど
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Dave Hunt (@davehunt82)
- Selenium IDE, Ruby バインディングや CI など
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Titus Fortner (@titusfortner)
- Ruby バインディングなど
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Samit Badle (@samitbadle)
- Selenium IDE など
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Dan Cuellar (@thedancuellar)
- Appium の最初の開発者。Selenium Conf 2012 の LT で Appium のコンセプトを発表
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Jonathan lipps (@jlipps)
- Appium のプロジェクトリーダー。WebDriver の仕様策定も
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Jason Huggins (@hugs)
- Selenium の生みの親。現在は tapstar という会社を設立しテスト用ロボットを開発。
Appium と Selenium って1つのドライバーにならないの?
Simon: Dan, 一緒にやったほうがいいかい? Dan がものすごく酔っ払ったらあるかもね。
司会: 答えは?
(映っていないがたぶん Jonathan が拒否するジェスチャーをしている)
Simon: ない? いや、プロジェクトがどう進むかはわからない。
何が起きるか、、Jason Haggins と私とで WebDriver と Selenium を統合すると決めたなんてことも起きた (訳注: 統合前には GTAC2007 で戦っていたりしました)。
いっしょにほろ酔いになって、お互いにいいの悪いの言い合って、、想定外にそうなったんだ。だから、いま明確にわかっていることなんてないのさ。
Jonathan: 一緒にやらない一番の理由は、Simonが JavaScript を嫌っているからだと思う。だから、それをどうにかして変えないと。
Simon: なぜ JavaScript が嫌いにならない? ファッション駆動開発 (Fashion-Driven Development)が嫌なんだ。ファッション駆動開発ってのは新しくてイケてる技術を使おうとするやつだ。なんで使うかって?「新しくてイケてるから」。バカみたいだろ。
(司会が何か言いかける)
Simon: もっと穏当な言葉をつかえってことだろ?わかってるよ。
司会: JavaScriptは本当に素晴らしいでしょう。
Simon: JavaScript ... Node.js はまだすごく流行ってるね。もっとイケてて流行ってるのは関数型言語、HaskellやClojureくらいだ。.... 目をつぶってこのやりとりがすぐ終わること祈ってくれ。
司会: 楽しんでるでしょう。
Simon: Clojure 愛してる。
Jonathan: ほら、言った通りSimon は JavaScript を嫌ってる。
Simon: 私はどの言語も嫌いだ。
Selenium と Appium はコミュニティも近しく、同じ WebDriver という仕様を共有していますが、今のところ統合の余地はないようです。
しかしながら、仲は悪くないようです。
Selenium に関わる中で、これから1,2年で一番楽しみなことは?
Daniel: いろんなものを削除できることだね。Gecko Driver も、Edge Driver も消せる。すばらしいことだね。4年前にChrome Driver を消したのは素晴らしい瞬間だった (訳注: Chrome に WebDriver が実装され、Selenium での開発が終了した)。それまでの2年か3年の仕事がむくわれて、とても幸せだったよ。
David Burns: 私もFirefox向けの実装が削除できるのは楽しみにしている。
それから、私にとっては他のブラウザベンダーと一緒に仕事をして、 WebDriver が実装されるのは楽しみだし、その実装を通して成功するのを見られることは本当に楽しみだ。
Jim Evans: 答えることが減ってしまったじゃないか。私は WebDriver の仕様がW3Cの勧告になって、しっかりした仕様の実装が各ブラウザベンダーに実装されるのが本当に楽しみだよ。それはすごく、すごくエキサイティングなことになるよ。
Simon: 私は1/4のコード(※訳注:たぶん)を消すと決めてるんだ。センセーショナルなことになるだろうね。
コードが消されて、WebDriverの仕様が勧告される。そうなったら、Seleniumプロジェクトは今とは違うものになるだろう。
仕様が決まればブラウザベンダーが関与できる余地が比べ物にならないくらい広がる。重要なことだ。
そして、テスタビリティと自動化の余地は危険水位を脱する。とても重要だ。
Seleniumプロジェクトに最新のブラウザでWebDriverを動作させる役目がなくなり、2週間前に動いていたものが動かなくなった時に我々が何をすることになるかは興味深いね(※すごく怪しい意訳です)。
私には iOS のアップデートがAppiumチームにとっていかに恐ろしいものかを思い浮かべることしかできない。
(訳者注: iOS10 から UIAutomation という既存のテスト自動化の仕組みが突然廃止になりました。Appium はiOS周りのコードの大部分を刷新することに...)
Dave: これからのアクションが楽しみです。(このカンファレンスは)明らかに限られた人のためですが、私たちはロンドンで会えることをみなさんと同じくらい楽しみにしていました。そして、(WebDriverの?)動作と仕様を見るだけで、とてつもない驚くべきことをすることができます。 テストに必要か否かにかかわらずたくさんの可能性があります。私はそこから何が起こるのかが楽しみで仕方ありません。
Titus: 私はSelenium 4を推し進めていくことと、W3Cの仕様の完璧な実装に至ることが楽しみです。また、Rubyコミュニティに働きかけて、コミットを手助けすることもやっています。何人かは初日のワークショップに参加してバグの修正をしてくれて、コミッタになることにも興味があるようでした。私はプログラミングが好きです。ペアプログラミングも好きです。IRC や Slack にいるのも好きで、いつもいますし、Seleniumに Rubyのコードを追加したい人と一緒に働きたいです。
Samit: 私はいつもコードを消すことを楽しみにしています。不要なコードは綺麗にしたいですし、Selenium プロジェクトではこれからたくさんするでしょう。
Dan: 次の iOS は楽しみじゃない...パニックと恐怖と悪いことがあるってことだから。
でもいつの日か、Apple が Microsoft を追いかけて、みんなが Selenium WebDriver Prorocol で自動化がしたいことに気づいて、自分たちで組み入れてくれることは楽しみにしている。
もう一つ楽しみなのは StarDriver Enterprise (訳注: Jonathan Lipps のセッションで話されていた、IoTデバイスから宇宙船まで、すべてのデバイスを WebDriver で自動化できるようにするという構想)でもっと多くのものが自動化できるようになることだ。
先週の Mac のバインディングについてはすごく嬉しかった。次にどんなものが自動化できるかはわからないけど、、きっと Nintendo 3DS は来週には自動化できるかもしれないし、ドローンなんかもできるかもしれない。だから、StarDriver にはすごくワクワクしてる。
Jonathan: 3つあります。
一つ目は2つのプロジェクトにまたがることです。かなり前に Simon や他のコミッタと W3C の仕様にモバイルデバイス用や広汎な自動化のための挙動を拡張する話をしました。「その話はW3Cの仕様が決まってから本格的に話をしよう。仕様策定が終わったら、追加も話し合えるようになる」と言っていました。今終わりに近づいていて、もうすぐ話し合いを始められるのが楽しみです。
それから、Dan の言うように新しいものが自動化できたり、それがWebDriverのインターフェースを実装しようとしていることです。
地平を切り開いて、人々が新たなものの自動化に取り組むことはいつだって素晴らしい経験です。
3つめは、Selenium Conf 2017 では、もっと多様性のあるコミッタでパネルディスカッションができるといいと思います。
Jason: +1 するよ。 コミュニティが多様性を持つことが何より楽しみです。
ここには靴紐がある人がいたり、ない人がいたり、髪の毛がある人がいたり、ない人がいたりします。しかし、もっとさまざまな多様性が必要です。私はここが世界全体、ユーザーコミュニティを明白な代表であることを期待しています。世の中には多くの人々がいることに、もっと意識を向けることを熱望しています。私たちが意識を向けていることで、発表者の多様性は増しました。常に改善できます。まだまだたくさんやることはあります。来年はあらゆる方法で、より多様なプロジェクトであることに目を向けます。それが楽しみです。
コードを消すこと、WebDriver という仕様について言及する方が多いことが印象的でした。
Selenium の果たす役割が大きく変わって来ていることを感じさせられます。