部屋レイアウトなどの都合で、ルーター間のネットワークを有線だけで構成できない状況があるかと思います。例えば上記のような場合です。
このような場合、いわゆる二重ルーター構成にするしかないと考える人が多いのではないでしょうか。少なくとも私はそう思っていましたが、WDSやメッシュネットワークを使えば途中に無線区間があっても全体を1つのサブネットに収容でき、ネットワーク構成をシンプルに保つことができます。
このような構成は市販の無線LANルーターでも実現できますが、本稿ではOpenWrtルーターでのWDS構成について説明します。
WDSとは
WDS (Wireless Distribution System)は無線アクセスポイント間を接続し、両側のネットワークをシームレスに接続する技術の総称です。実現方法については規格化されておらず、概念に対する名称だというのが私の理解です。そのため、別会社の製品同士のWDS機能に互換性があるとは限りません1。
この機能は多くの市販製品で「WDS機能」「リピータ機能」として提供されています。また、リピータ機能に特化した機種も販売されています。
OpenWrtでの設定
OpenWrtでのWDSの設定は若干わかりにくい気がしますが、端的に言えば「親APと子APの無線モードをWDSにする」のがキモです。
以下、LuCIから設定する手順を紹介します。
親AP
- 「Network」「Wireless」の設定で「Interface Configuration」「General Setup」「Mode」を「Access Point (WDS)」に変更
子AP
- 「Network」「Interface」のLAN設定「General Settings」で「Static address」にして親APのサブネット内の固定IPを設定
- 「Network」「Interface」のLAN設定「DHCP Server」「General Setup」で「Ignore interface」としてDHCPを無効に
- 「Network」「Wireless」で「Scan」をクリックして既存ネットワークに「Join Network」してPSKの設定などを行う。「Firewall zone」はlanに変更
- 無線の「Mode」を「Client (WDS) 」に変更、所属する「Network」をwwanからlanに変更
- 「Network」「DHCP and DNS」の「DNS forwardings」に親APのIPアドレスを設定
- 「Network」「Interface」のLAN設定「General Settings」「IPv4 gateway」に親APのIPアドレスを設定
- 「Network」「Interface」のLAN設定「Physical Settings」「Enable STP2」にチェックを入れる
- 他に必要なネットワーク設定を行う。例えばリピータ設定をする場合は同一のネットワーク設定でアクセスポイントを構成する(Client設定と両立できる)
- 「Network」「Interface」のWWANは不要なので削除
上記の設定にするとDHCPやDNSは親APが全部担当することになります。
構成例
我が家の場合は旧型PS4が有線LAN配線しにくい位置にあるのですが、このPS4は5GHz無線に非対応なので、無線LANルーターを介して5GHzネットワークに参加するのにWDSを利用しています。
シンプルな構成なんですけど、子APの無線モードを単に「Client」にしてしまうと無線インターフェースをブリッジインターフェースに参加させられず、どうしても二重ルーター構成になっちゃうんですよね。無線モードを「Client (WDS)」にすれば同一サブネットにできるので、二重ルーターにせずに離れ小島にネットワークを通せるというわけです。
余談ですが、最近のPS4は5GHz無線に対応しているのでこんな面倒な作業は不要です。
参考URL
-
Spanning Tree Protocol。ブリッジループやブロードキャストストームを防止する。 ↩