はじめに
以下の記事は、「リバちゃんの基幹システムの最適解」の内容をもとにまとめたものです。ERP(基幹系システム)の最新事情から、EPM/BIの役割、さらにシステム選定や構築のポイントまでを解説しています。ボリュームは多めですが、全体像を俯瞰しながら読み進めていただければ幸いです。
また、わかりやすく貴重な情報を提供してくださったリバちゃんには、心より感謝申し上げます。具体的な内容は、ぜひ本動画もご覧いただき、あわせてご理解を深めていただければと思います。
基幹系システムの最適化とは?
タイムテーブル
00:00 オープニング
00:47 拡張するERP機能
03:36 EPM/BIとは何か?
06:56 グローバル展開されているEPM/BI製品の紹介
07:50 基幹系システムのあるべき姿
(海外のグローバル企業はどうしている?)
09:10 ERP選びはシンプルに考えろ!
09:33 基幹系システムは3つの構成要素で考える
16:33 基幹系システム 選定のポイント
19:40 今回のまとめ
23:06 雑談コーナー ~ITベンダーとの関わり方を考える
00:00 オープニング
動画は「リバちゃん」が登場し、IT歴30年の知見から「基幹系システムの最適化」について解説するところから始まります。主に以下の3点を伝えたいとのことです。
- いまERPマーケットがどのようになっているのか
- 基幹系システムはシンプルに考えれば簡単に解決できる
- 「リバちゃん」おすすめのシステム構成
00:47 拡張するERP機能
ERPマーケットの3分類
まず、ERP(Enterprise Resource Planning)のマーケットは大きく次の3つに分けられます。
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グローバル企業・大企業向け
- 有名どころ:SAP(S/4HANA)、Oracle、Microsoft Dynamics 365 など
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国内の準大手・中堅企業向け
- 国産ERPメーカー:グロービア、Biz∫(ビズインテグラル)、OBCの勘定奉行(大型版)、OBIC7など
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中小企業向け
- 勘定奉行シリーズ、マネーフォワード、freee など
かつてはERP内部の機能をどんどん拡張してきましたが、近年ではSFA(営業支援)やCRM(顧客管理)などにまで広がり、総合的に経営にかかわるシステムを提供しているのが特徴です。
ERPとSFA/CRMの統合・拡張
- 従来、SFA/CRMといえば「Salesforce」「kintone」「HubSpot」などが代表的でした。
- 一方、SAPやOracle、MicrosoftのERPメーカーも、SAP Sales Cloud、Oracle SFA、Dynamics 365 Salesといった拡張オプションを用意。
- Salesforce自体もプラットフォームとして拡張し、ノーコードでさまざまな業務領域を構築できるように進化しています。
EPM/BI時代
- 「データ経営」という言葉に象徴されるように、今やEPM(Enterprise Performance Management)やBI(Business Intelligence)の機能を各ERPベンダーが提供している。
- 例:SAP Analytics Cloud、Oracle Fusion EPM など。
- Salesforceは買収した「Tableau(タブロー)」を「Salesforce Tableau」として提供。
- 結果として、今のERPは会計に留まらず、多角的に経営・管理を支援する仕組みに発展しているというのが現状です。
03:36 EPM/BIとは何か?
「分析」と「計画・シミュレーション」の役割
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BI(Business Intelligence)
- 日々発生する売上・仕入れ、在庫などの「実績データ」を分析するためのツール。
- さまざまな切り口で分析ができ、現状を可視化して経営判断に役立てる。
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EPM(Enterprise Performance Management)
- BIが導き出した洞察をもとに、今後の計画・シミュレーションを行うためのツール。
- 予算管理やシナリオ分析など、「未来の数字」を素早く計画・予測する。
「実績データ → 分析 → 計画」の流れ
- ERPやCRM、あるいは生産管理システムなどに格納される「実績データ」
- そのデータを取り出して多角的に分析するのがBI
- 分析結果に基づいて未来シナリオを立て、計画に落とし込むのがEPM
多くの企業では、この部分をエクセルベースで行い、月末月初に人海戦術でシミュレーションしている。その負荷を軽減し、スピードアップするためにEPM/BIを導入するケースが増えている。
06:56 グローバル展開されているEPM/BI製品の紹介
「リーダー」と呼ばれる製品群を例示すると、以下のようになります。
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EPM部門
- Anaplan, Oracle, Board, Workday, Wolters Kluwer (Tagetik) など
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BI部門
- Microsoft(Power BI), Salesforce(Tableau), Qlik など
もちろんリーダー以外の製品も多く、チャレンジャー枠やニッチプレイヤー枠も十分に高機能。企業規模や用途に応じて製品を選ぶ柔軟性が必要です。
07:50 基幹系システムのあるべき姿
(海外のグローバル企業はどうしている?)
- ERP(実績のデータを蓄える)
- BI(蓄えたデータを多角的に分析する)
- EPM(分析結果から計画・予測を行う)
この3つがシームレスに連携している形が理想的とされています。海外のグローバル企業では10年以上前からこれが当たり前になっている一方、日本企業ではまだ導入例が少ないという指摘があります。海外ではエクセルベースのマネジメントを減らし、EPMのツールでB/S、P/L、キャッシュフローまで素早く回しているのが特徴です。
09:10 ERP選びはシンプルに考えろ!
ERPには多数の製品があり、どれを選べば良いかと悩む企業も多いですが、基本的な考え方は「シンプルに」が大切だと強調されています。
09:33 基幹系システムは3つの構成要素で考える
基幹系システムは、大きく次の3つのレイヤーで構成されると説明されます。
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Infrastructure(インフラ)
- サーバー、OS、CPU、メモリ、バックアップなど
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Security(セキュリティ)
- 社員や顧客の個人情報の取り扱い、デジタル署名、可用性(UPS/BCP)など
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Application(アプリケーション)
- ERPやSFA/CRM、会計、給与、販売管理、生産管理など実際の業務ソフト
インフラとセキュリティはPaaSに任せる
- AWSやMicrosoft Azure、Google Cloudなど「PaaS」を利用するのがベスト。
- 世界最高水準のセキュリティや可用性を、月額で利用できるメリットが大きい。
アプリケーションは「自社の特性」に合わせて分散
- 企業の業務領域を縦軸(自社文化が出る/法律で決まっている)と横軸(情報系/勘定系)で分解すると、販売管理・生産管理・会計・給与・労務などがマトリクス状に整理できる。
- 例えば「販売」や「生産管理」は24時間365日止まってはいけない安定重視のシステム。
- 「会計」や「給与」は法律に厳格に従う正確性重視のシステム。
- 「SFA/CRM」や社内コミュニケーションはスピード重視(1円単位の正確さよりもリアルタイム更新が必要)のシステム。
企業の決算サイクルとシステム形態
1. 日次決算レベル(超高速サイクル企業)
- 「安定重視」+「正確性重視」をひとつのERPに集約して、マスター管理も一元化すると良い。
- それ以外のスピード重視領域はノーコードなどの内製ツールで自前開発。
2.月次決算レベルの企業
- 「安定重視」の領域(販売・生産など)は一つのERPにまとめる。
- 「正確性重視」(会計・給与)は、国産パッケージなどを別に導入してもよい。
- 「スピード重視」はノーコードツール(kintoneやJUST.SFAなど)で柔軟に内製化。
16:33 基幹系システム 選定のポイント
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安定重視の感情系(販売や生産)
- 一からフルスクラッチ開発ではなく、SIer(システムインテグレーター)と協力しながら作る。
- ただし全部外注にせず、自社のスタッフがメンテできる部分は内製化し、機敏に対応できる状態を目指す。
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正確性重視の感情系(会計や給与・労務)
- パッケージ製品をベースに「自社の勘定科目体系や階層、ルールに合うかどうか」を最初に確認する。
- 管理会計やKPI算出の部分は会計システムに過度に期待せず、EPMなど別の内製化可能ツールで柔軟に構築するほうが良い。
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管理会計
- 販売や生産、人事、給与と連携する必要があり、幅広いデータを扱う。
- したがって、特定の会計ソフト付属の「管理会計モジュール」だけでは不十分になる場合が多い。
- EPM/BIツールやノーコード基盤を活用して、内製でカスタマイズ性を高めるのがおすすめ。
19:40 今回のまとめ
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インフラ・セキュリティはPaaSに任せる
- 世界レベルのクラウドセキュリティを月額で利用できるメリットは大。
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安定重視の勘定系システムはSIerと連携して構築
- 自社の独自性が出やすい領域なので、要件定義や運用設計をSIerと協業しつつ、自社側も一定のスキルを持っておく。
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正確性重視の勘定系システムはパッケージベースで構築
- 法律や会計基準変更にも素早く対応できるよう、極力パッケージの標準機能に合わせる。
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管理会計は内製化できるツールで実現
- EPMなどを用い、機動的にKPIやシミュレーションを回せる体制づくりが鍵。
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シンプル化し、分散したシステム構築が重要
- なんでもかんでも1つのシステムに詰め込むのではなく、役割ごとに最適なツールを利用する。
- それらをAPIや連携基盤でうまくつなげば、ITコストや保守負荷も抑えられる。
人材育成の重要性
- 結局、企業は「人」がすべて。テクノロジーの進化に適応するには、社員のスキルアップ(リスキリング)が急務。
- ノーコードツールやPaaSが普及し、ITの基本を学べば現場でも素早くデータ分析やアプリ開発が可能になる。
- これを機に、社内でIT人材を改めて育成すべきだという提言がされています。
23:06 雑談コーナー ~ITベンダーとの関わり方を考える
最後の雑談では、「50社を回ったところ、すべての企業が既存ベンダーに満足していない」といった興味深い話題が紹介されました。乗り換えを繰り返しても結局は不満が出るのはなぜか? という問題提起です。
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日本のIT成熟度が低く、世界から大きく立ち遅れている現実
- DXランキングで世界35位というデータも紹介され、日本のIT企業に世界最先端を期待するのは酷かもしれない。
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内製化の重要性
- 昔は自社開発が普通だった時代もあり、今後はノーコードなどで再び内製化の流れが加速するかもしれない。
- ベンダーを完全に頼り切るのではなく、協業しながら自社スキルを伸ばすことが大事。
リバちゃんは「外注すべきところは外注しつつ、自社でも対応できる部分は伸ばし、ベンダーとWin-Winの関係をつくることが重要」というメッセージを強調していました。
おわりに
「リバちゃんの基幹システムの最適解」は、ERPをはじめとする基幹系システムの導入・最適化を考えるうえでのポイントをわかりやすく整理してくれています。「インフラやセキュリティはPaaSに預け、企業固有の競争力を発揮するアプリケーション部分は内製化やSIerと協業して作りこむ」という方針は、多くの企業が参考にし得る内容でしょう。また、EPMやBIを組み合わせて経営管理を高度化し、エクセルベースの属人的な業務を減らしていくことが、今後の日本企業に求められる道ではないでしょうか。
最後に強調されるのは、「人材育成」です。どんなに優れたシステムを導入しても、運用・活用できる人がいなければ意味がありません。ノーコードやクラウド環境が整備されているいまこそ、社内のリスキリングやスキルシェアに力を入れ、スピーディーで変化に強い“攻めのIT体制”を築いていくことが肝心です。
ポイントまとめ:
- ERP選びはシンプルに。 自社の安定重視領域・正確性重視領域・スピード重視領域を整理する。
- インフラ&セキュリティはPaaSに。 世界最高水準を手軽に活用。
- 会計・給与などの正確性重視はパッケージ利用。 法改正等に自動対応できる。
- 販売・生産管理などの安定重視はSIerと協力しつつも内製化も意識。 自社独自の強みを反映。
- 管理会計やSFA/CRMなど、スピード重視の部分はノーコードなどで迅速に内製化。
- 人材育成が最大のカギ。 技術に詳しいベンダーを頼りつつ、自社で継続的にスキルを高める。
以上が、本動画の主要なメッセージとなります。ぜひ今後の基幹系システムの導入・リプレース・運用改善のヒントとしてお役立てください。