templateクラスのstaticメンバ変数

イントロ

通常のクラス同様、templateクラス内にも静的メンバ変数を用意することができる。しかし、その実体の用意の方法は特殊化の方法や有無によって異なる。少しハマってしまったので、覚書としてまとめておく。すでに知っていた人は、何を今頃、とでも思いながら眺めてください。

非templateクラス内の静的メンバ

比較のために、まず通常のクラス中での静的メンバ変数の宣言を書いてみる。

non_template_static_value.hpp

class Hoge{
    static int Value;
};

non_template_static_value.cpp

#include "non_template_static_value.hpp"
int Hoge::Value=0;

staticメンバ変数の実体は、当然ソースファイルに別に記述する必要がある。

templateクラス内での静的メンバ

次にtemplateクラス内で、静的メンバ変数を宣言した場合。

template_static_value.hpp

template<typename A>
class Hoge{
    static int Value;
};

template<typename A>
int Hoge<A>::Value=0;

templateクラス内の静的メンバの場合には、template宣言template<typename A>とともに静的メンバ変数の実体をヘッダファイル内に記述する。

明示的特殊化したクラス内での静的メンバ変数

さて、次にtemplateクラスを明示的特殊化したクラス内でのみ、静的メンバ変数を使いたい状況を考えてみる。

explicit_specialization_static_value.hpp

template<typename A>
class Hoge{
};
template<>
class Hoge<int>{
    static int Value;
};

explicit_specialization_static_value.cpp

#include"explicit_specialization_static_value.hpp"
int Hoge<int>::Value=0;

明示的特殊化したクラスで宣言した変数の実体は、すでにintで確定しているため、template非依存なので、静的メンバ変数の実体は非templateクラス同様template宣言なしで、ソースファイルに実体を用意する必要がある。

これは、スタックオーバーフローでの質問で初めて気づいた。回答者様、ありがとうございます。

部分的特殊化したクラス内の静的メンバ

同じ特殊化でも、部分的特殊化の場合には、また変わってくる。

partial_specialization_static_value.hpp

template<typename A>
class Hoge{
};
template<typename A>
class Hoge<A*>{
    static int Value;
};
template<typename A>
int Hoge<A*>::Value=0;

部分特殊化したクラスで宣言した変数の実体は、まだtemplate依存なので、通常のtemplateクラス同様、template宣言template<typename A>とともにヘッダファイル内に静的メンバ変数の実体を記述する。

ネストされたtemplateの静的メンバ

templateが複数ネストされている場合も少しややこしい。

nested_template_static_value.hpp

template<typename A>
class Hoge{
    template<typename B>
    class Fuga{
        static int Value;
    };
};
template<typename A>
template<typename B>
int Hoge<A>::Fuga<B>::Value=0;

templateがネストされている場合、変数の実体宣言時には、template宣言template<typename ???>を必要なだけ重ねることで宣言できる。

結論

非templateクラスや、templateの明示的特殊化クラス内の静的メンバ変数
=> template宣言なしで、ソースに実体を用意

templateクラスや、templateの部分特殊化クラス内の静的メンバ変数
=> template宣言とともにヘッダで実体を用意

templateクラスがネストされている場合
=> 必要なだけtamplate宣言を重ねて、ヘッダに実体を用意