画像処理エンジニア検定とは
CG-ARTS協会が実施しているエンジニアが画像処理技術を用いて開発、設計するときに求められるスキルを評価する試験です。7月の前期、11月の後期と1年に2回受験することができます。問題はマークシートの選択問題のみで、情報処理技術者試験のような記述式の問題はありません。
以下、検定公式サイトより引用
- 検定試験概要
「画像処理分野」の開発、設計に必要な知識の習得を評価する検定- 想定職種
- エンジニア
- プログラマ
- 開発・研修者
検定としては以下の2種類の検定があります。
- ベーシック (ベーシックの試験範囲)
- エキスパート ([エキスパートの試験範囲]
(https://www.cgarts.or.jp/kentei/about/img_engineer/second.html))
ベーシックが画像処理の基礎知識のみを図る検定であるのに対し、エキスパートは専門知識の理解と応用をする能力が図られるので、エキスパートの方が難易度が高いです。そして、エキスパートの方が出題される試験範囲が広く、知識をより多く身につけておかなければなりません。なお、簡単なニューラルネットワークは出題されますが、いわゆる第3次AIブーム以降のDeep Learningについては出題範囲ではなく、Deep Learningの学習は特に必要ではありません。
合格に必要な点数は、ベーシック、エキスパートともに70点以上(100点満点)です。
検定公式サイトより2017年前期の合格率は以下のように発表されています。
- ベーシック 74.9%
- エキスパート 31.6%
2017年度以前の合格率も発表されており、ベーシックはおおよそ60~70%、エキスパートは20~40%の間で合格率が推移しています。情報処理技術者試験の難易度の高い試験に比較して、エキスパートにおいてもそこまで合格率が低いわけではありませんが、しっかり対策をしないと合格できない検定かと思います。
数式やアルゴリズムを理解しているレベルまで求められるので、数学が苦手な人にとっては、最低でも行列だけでも基本的なことはあらかじめ勉強しておいた方がいいです。
私が受験した感想として、これから画像処理を始めたいが、特にやりたいことや目標がわからないという人にとって、より効率的にスキルを習得するための一つのきっかけになる感じの検定です。また、公式の参考書は画像処理について非常に良くまとまった形で解説されているので、基礎をしっかり身につけたいという方におすすめです。
私は、ベーシックは受験していないですが、2017年7月の前期試験でエキスパートに合格しましたので、その時に行っていた学習方法を紹介します。需要があるかわかりませんが、少しでも参考になればと思います。
受験前の自分のステータス
- 理系大学卒業後、社会人2年目のSE
- 業務で比較的Pythonを使っていました
- 画像処理は未経験
- 画像処理を知らなかったが、Deep Learningの本を読んだりしてました (ゼロから作るDeep Learning ―Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装)
- 業務で画像認識をすることになったので、それをきっかけに勉強を始めました
学習期間
- 1か月半の6週間くらい(2017年5月中旬~2017年7月上旬)
学習参考文献
メインに使用していた参考書は以下。ともに公式が出版している本で、ベーシック、エキスパートをともにカバーしていて、基本的にディジタル画像処理 [改訂新版]を読んで画像処理の知識を理解し、公式問題集を解くのをしっかり行えば合格できると思われます。
その他の参考文献として以下。こちらは実際にプログラミングをしたい方や、画像処理、画像認識の応用に興味がある方が並行して学習するのにおすすめです。
実際に受験までに行った学習内容
1~2週間目
まず、画像処理がなんなのかそもそものイメージが湧かなかったので、以下のサイトを参照し、基本的なイメージをつかむことにしました。
豊富な図を用いて説明してくださっているので、数式を完全に理解しようとせず、edgeやcornerといった特徴点の検出、フィルタについてなど画像処理がどういったことをするのかをおおよそイメージをつかむといいかも。この記事は勉強をしていった後で読み直すと理解が深まりましたので、おすすめです。
そして、公式の参考書であるディジタル画像処理 [改訂新版]を
読み始めました。この参考書はけっこう厚く、およそ450ページで16章あったので、1回で理解しようとせず、おおまかに内容をつかむようにし、この期間で10章あたりまで1回読みました。
3~5週間目
この期間は公式の参考書の残りの11~16章を読み進めるとともに、OpenCV-Pythonチュートリアルのサンプルコードを動かしながら、学習を進めていました。やはり、公式の参考書を読むだけではあまり頭に入ってこず、理解が進まなかったので、実際にコードを動かして画像がなんらかの処理をされたときにどのようになるかを見ることで理解を深めていきました。
OpenCV-Pythonチュートリアルをこなしながら、チュートリアルに対応する公式の参考書の章を読み返すことで知識がより定着したと思います。
今後、画像認識やDeep Learningをやっていくうえで、PythonとOpenCVは必須なので、余裕があれば、OpenCV-Pythonチュートリアルに取り組むことをおすすめします。
6週間目~受験日前日
この期間は、ひたすら 画像処理エンジニア検定エキスパート・ベーシック公式問題集 [改訂第二版]を解いて、問題を解くことに慣れるようにしました。
問題を解いたら、参考書の該当するページを確認し、知識の定着を図るといいと思います。
自分は問題集をKindleの電子版で購入したのですが、問題と解答のページが離れていて行き来するのが大変だったので、できれば書籍で購入した方が面倒がなくてよいかもしれません。
ちなみに出題範囲の知的財産権は共通問題となっており、必ず出題されるようになっています。知的財産権はあまり数学的な難しさはなく、暗記できれば得点源になります。数学が苦手な方は確実に答えられるようにしておくとよいかと思います。
受験日当日
エキスパートの試験時間は80分で10問解答します。基本マークシートなので、時間内に解答ができないということはないかと。数学が苦手な方は、数学的な問題にかかる時間が長くなりすぎないように、意識してまんべんなく問題を解くようにするといいと思います。
ちなみに合格結果通知書はこんな感じ
勘で解答した知的財産権が見事に外れている...
合格点は70点と公表されていますが、何点だったかはわからないようです。
今後受験しようという方の参考になれば幸いです。