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記事を書いた動機

  • 「徹底攻略 情報処理安全確保支援士教科書 令和7年度」を使って勉強を始めた
  • 情報セキュリティにおける、組織や個人がリスクをどのように捉え、対応するかの方針のもととなる考え方の紹介がされていた
    • テキストP.107でリスク選好リスク忌避について紹介されていて、リスク選好にはrisk appetite、リスク忌避にrisk aversionという英訳が割り当てられていた
  • 「避ける」系の英単語はいくつか思いつくが、それらとどういったニュアンスの違いがあるか気になった

TL;DR (記事の要約)

  • 「リスク選好(Risk Appetite)」と「リスク忌避(Risk Aversion)」の概念を解説
    • リスクを積極的に受け入れる態度とリスクを回避しようとする態度
  • リスク忌避に関連して、英語表現の「aversion」「evasion」「avoidance」の違いも説明

リスク選好リスク忌避とは

リスク選好は、組織や個人がセキュリティリスクをどの程度受け入れるか、または回避するかを表す嗜好(態度)のこと。経済学やファイナンス理論における「リスク選好」の定義を今回私が勉強しているセキュリティの文脈に置き換えつつ、以下の3つのタイプの紹介をする。

a. リスク回避的(リスク忌避的)

特徴: リスクを嫌い、リスクを排除する方向に行動する。

効用関数: 凹関数(富が増えるほど追加の効用が減少する)。

そもそも効用関数とは?

効用関数は、選択肢や状態(たとえば「富」や「収益」)に対して、どれだけ満足感(効用)を得られるかを数値で表したもの。

  • 効用 U(x) というのがあるとしたら
    • x: 富や収益(リターンなどの指標)
    • U(x): x に基づく満足感(効用)

効用関数の形状によって、意思決定者のリスクに対する態度(リスク選好)が異なる。

  • : 企業がサイバー攻撃のリスクを完全に排除しようと、全てのデータを物理的に隔離したネットワークで管理する。
    • この例においてxとU(x)は?
      • x
        • サイバー攻撃による損害を回避することで得られる「企業の資産価値」や「潜在的な利益」などを表すことができる。
        • サイバー攻撃が発生しない場合、企業は最大の富(利益やブランド価値)を維持できる。
      • U(x)
        • 企業の「安心感」や「満足感」を数値化したもの。
        • セキュリティ対策を導入した結果、リスクが減少し、企業が得る心理的・運用的な利得を示す。
        • x が大きい(富が増える)ほど、企業は安心感を得て効用が増す。
        • ただし、今回のリスク回避的な企業の場合、追加的な富(損害回避額)が増えるほど効用の増加分(限界効用)は小さくなる(凹関数の特性より)。

b. リスク中立的

  • 特徴: リスクの発生確率や影響を冷静に分析し、コストと便益を最適化する態度をとる。
  • 効用関数: 線形(リスクに対する無差別)。

c. リスク愛好的(リスク選好的)

  • 特徴: リスクを好む、または積極的にリスクを受け入れる態度をとる。
  • 効用関数: 凸関数(富が増えるほど追加の効用が増加)。

「避ける」系の意味を持つ英単語との比較

語源などを見てみて覚える参考にする。今回は「aversion」「evasion」「avoidance」の3つを対象にする。これらは似たような概念を持つが、語源やニュアンスの違いにより、それぞれ独自の意味と使い方を持っている。

1. Aversion(嫌悪、反感)

語源:

  • ラテン語 aversio(背を向けること)に由来し、ab-(離れる)+vertere(回る、向く)が組み合わさった形。
  • 直訳すると「自分から背を向けて離れる」というイメージ。

意味:

  • 「嫌悪」や「強い反感」を指し、心理的または感情的な反応を伴う。
  • 具体的な行動よりも感情や態度の側面を強調する。

用例:

  • He has a strong aversion to crowds.
    (彼は人混みが大の苦手だ。)
  • ここでは、行動(避ける)の前提となる「嫌悪感」を表す。

ニュアンス:

  • 感情的・本能的な拒絶反応に焦点を当てる。
  • 行動を取るかどうかにかかわらず、内面的な嫌悪の状態を指す。

2. Evasion(回避、逃避)

語源:

  • ラテン語 evasio(逃げること)に由来し、e-(外に)+vadere(進む、行く)が組み合わさった形。
  • 直訳すると「外へ進む」「抜け出す」というイメージ。

意味:

  • 「責任や危険から逃げること」「直接的な対処を避けること」を指す。
  • 特にずるさや意図的な逃避を含む場合が多い。

用例:

  • His tax evasion got him into trouble.
    (彼の脱税は問題になった。)
  • She evaded the question skillfully.
    (彼女はその質問を巧みにかわした。)

ニュアンス:

  • 主に「責任」や「問い」に対する逃避を指す。
  • 意図的・計画的な逃避行動を示し、否定的なニュアンスが強い。
  • 特定の状況や要求から抜け出す、またはすり抜ける行動を強調。

3. Avoidance(回避、避けること)

語源:

  • ラテン語 videre(見る)に由来する動詞 avoid から派生。a-(離れて)+videre(見る)で、「見ないようにする、避ける」というイメージ。

意味:

  • 「問題や危険、望ましくない状況から距離を置く行動や状態」を指す。
  • 行動そのものを表すことが多く、心理的背景にはあまり触れない。

用例:

  • Avoidance of conflict is not always a good strategy.
    (対立を避けることが常に良い戦略とは限らない。)
  • He practices avoidance by not answering emails.
    (彼はメールを返さないことで回避行動を取る。)

ニュアンス:

  • 行動面に焦点があり、特に消極的な行動や戦略を指す。
  • 感情的な拒絶ではなく、論理的・実際的に「避ける」ことが中心。
  • 社会的行動や心理学の文脈でよく使われる。

比較

単語 語源 意味 ニュアンス
Aversion ab-(離れる)+vertere(向く) 嫌悪や反感を感じること 内面的な感情に焦点。行動が伴うとは限らない。
Evasion e-(外に)+vadere(進む) 責任や危険から逃げること 意図的・計画的な逃避行動。否定的な意味が強い。
Avoidance a-(離れて)+videre(見る) 問題や危険を避ける行動や状態 行動そのものを表す。心理的背景には触れないことが多い。

今回の「リスク回避」「リスク忌避」の文脈でいうと、あくまで経済的なストラテジーを選ぶうえでの嗜好なので”evasion”がもつ否定的な意味はそぐわない。「嗜好」としての側面に注目するのであれば、”avoidance”よりもさらに”aversion”が適切であることがわかる。

まとめ

リスク選好とリスク忌避

  • リスク選好: リスクを積極的に受け入れる態度。

  • リスク忌避: リスクを排除しようとする態度。

効用関数について

  • 効用関数を用いて、リスクに対する意思決定を数理的にモデル化。
    • 凹関数(リスク忌避的)、線形関数(リスク中立的)、凸関数(リスク選好的)。

リスク忌避に関連して英語でのニュアンスの違い

  • Aversion: 嫌悪や反感を伴う心理的反応。
  • Evasion: 意図的・計画的に責任や危険を回避する行動。
  • Avoidance: 問題やリスクを物理的・行動的に回避すること。

今回のリスク忌避についてはaversionと呼称するのが適切

雑感

  • 「避ける」系の言葉で英語の動詞だとある程度例を出せたが、日本語での「忌避」に対しては類義語をあまりさくさく出せなかった
    • 情報処理安全確保支援士の午後科目の対策としても日本語力をちゃんと磨いておいたほうがよさそう
  • 「リスク選好」「リスク忌避」で検索するとコンサルティング等のビジネスであったり、投資の文脈であったりのページが多く出てきた
    • もとが経済学の用語であるというのもある
    • エンジニアリングにおける情報処理安全確保もビジネス活動の一環であることを改めて認識
  • 経済学のワードがわからなかったので調べるいい機会だった
    • 効用関数とかが最初わからなかった
    • 参考として読んでいたサイトのうち「リスク選好: みずほ証券 ファイナンス用語集」がしっかり目に書いてある印象なのでもう少し読み込んでおく

References (参考文献・サイト等)

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