はじめに
こんにちは、ひよこです!昨日 NHK の 笑わない数学 の微分積分回を見ていたら、懐かしの $ \sigma - \varepsilon$ 論法が出てきたのでちょっとまとめてみました。なんとなく大学数学の鬼門みたいに言われていましたが別段そんなこともなのでは?と思います。
🐣 C 言語のポインタみたいなもの?
$ \sigma - \varepsilon$ 論法 は「極限」や「関数の連続」を厳密に定義するためのツールですが、初めて触れると直感的に理解しづらい部分があるのは確かです。この記事では、初心者にも分かりやすいように極限と連続性の部分を分けて説明し、直感的な解説をしてみます。
🐣 例の如くガチ数学系の人から見るとかなり荒い内容なのでご容赦を
σ-ε 論法とは?
$ \sigma - \varepsilon$ 論法は、数学において無限小に代わり明確に「どこまでも近づく」という概念を厳密に表現する手法です。この考え方は以下のように適用されます。
- 極限: 数列や関数の値が特定の値に「近づく」ことを厳密に定義
- 連続性: 関数が「滑らかに」つながっていることを厳密に定義
それでは、それぞれのケースについて具体的に見ていきましょう!
極限における σ-ε 論法
まずは数列の極限の定義から始めましょう。
数列の極限
例えば、$a_n$ が $n \to \infty$ のときに $L$ に近づくこと、つまり $ \lim_{n \to \infty} a_n = L$ を意味します。
この定義を $ \sigma - \varepsilon$ 論法で表現すると以下のようになります。
- 任意の $ \varepsilon > 0$ に対して
- ある整数 $N$ が存在して
- すべての $n > N$ について
- $|a_n - L| < \varepsilon$ が成り立つ
直感的な説明
- $ \varepsilon$ は「どれだけ $a_n$ が $L$ に近づくべきか」という目標値
- $N$ は「どれだけ大きな $n$ から $a_n$ がこの目標を満たし始めるか」を示す
- 「どんなに厳しい目標(微小な $ \varepsilon$)でも、それを達成するためのしきい値 ($N$) が存在する」と保証している
例: $\lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} = 0$
- $ \varepsilon > 0$ を任意に取ると、$|a_n - L| = \left|\frac{1}{n} - 0\right| = \frac{1}{n}$
- $\frac{1}{n} < \varepsilon$ となる $N$ を求めると、$N > \frac{1}{ \varepsilon}$
- よって $N = \left\lceil \frac{1}{ \varepsilon} \right\rceil$ とすれば、$n > N$ のとき $ \frac{1}{n} < \varepsilon$ が成り立つ
図 1: 数列 $a_n = \frac{1}{n}$ の図
- 青い点 (sequence points): 数列 $a_n = \frac{1}{n}$ の各点
- 赤い破線 ($L + \varepsilon, L - \varepsilon$): 極限 $L = 0$ の周囲の許容範囲 ($ \varepsilon$)
- 黒い破線 ($L = 0$): 極限値 $L = 0$
この図は、「$n > N$ のとき、すべての青い点が赤い線と 0 の範囲内に収まる」という数列の極限の特性を表しています。
補足
1 と 0.9999$\cdots$ (9 が無限に続く) は同じ数か? という問の答えは「この 2 つは正確に等しい」です。どんな $ \varepsilon$ を取っても
|1 - 0.9999\cdots| < \varepsilon
だからです。どうしても納得できない人は次の式でどうでしょうか?
1 = 3 \times \frac{1}{3} = 3 \times 0.333\cdots
やっぱり完全に一致していますね。
関数の連続性と σ-ε 論法
次に、関数 $f(x)$ が点 $a$ で連続であることの定義を見てみましょう。
関数の連続性
関数 $f(x)$ が点 $a$ で連続であるとは、以下を満たすことです。
- 任意の $ \varepsilon > 0$ に対して
- ある $ \delta > 0$ が存在して
- $|x - a| < \delta$ のとき
- $|f(x) - f(a)| < \varepsilon$ が成り立つ
直感的な説明
- $ \varepsilon$ は「$f(x)$ が $f(a)$ にどれだけ近づくべきか」という目標値
- $\delta$ は「$x$ をどれだけ $a$ の近くに選べばよいか」を示す
- 「目標となる近さ ($ \varepsilon$) を設定すれば、それを達成する入力範囲 ($\delta$) が存在する」ことを意味する
例: $f(x) = x^2$ が $x = 2$ で連続
- 任意の $ \varepsilon > 0$ に対して、$|x - 2| < \delta$ の範囲を探す
- $|f(x) - f(2)| = |x^2 - 4| = |x - 2| \cdot |x + 2|$
- $|x - 2| < \delta$ のとき、$|x + 2| \leq 4+1$ ( $x$ が 2 に十分近いと仮定。 )
- よって $|f(x) - 4| \leq \delta \cdot 5$
- $\delta \leq \frac{ \varepsilon}{5}$ と設定すれば、目標を満たす
🐣 極限だとある $N$ 以上だった部分が $\sigma$ で定められる近傍に変わった感じですね
σ-ε 論法の違いを整理
極限と連続性では、次のような違いがあります。
項目 | 極限の定義 | 連続性の定義 |
---|---|---|
範囲 | $n \to \infty$ | $x$ が $a$ に近づく |
基準値 | 極限値 $L$ | 関数値 $f(a)$ |
必要な値 | $N$ | $\delta$ |
σ-ε 論法を身近に感じるために
$ \sigma - \varepsilon$ 論法は最初難しく感じるかもしれませんが、以下のポイントを意識すると理解が深まります。
- ゲーム感覚で捉える: 相手が $ \varepsilon$ を決めたら、それに勝つための $N$ や $\delta$ を探すゲーム
- 日常的な例を考える: 例えば「指定した精度で測定できる温度計が存在するか」の問題に似ている
- 具体例を試す: 実際に数式を使いながら「どんな $ \varepsilon$ にも対応できる $\delta$ や $N$ を探す」練習をする
おわりに
今回、$ \sigma - \varepsilon$ 論法を極限と連続性に分けて解説しました。この論法は、数学の厳密さを体感できる魅力的なツールです。初めは難しいと感じるかもしれませんが、具体例や直感的な考え方を通じて、ぜひ理解を深めてみてください。今年はこれで最後でしょうか? 皆様良いお年を。