はじめに
こんにちは、春が恋しいひよこ🐣です。
先日とある大学の入試数学の問題でミスが発生しました。問題を作る方々も大変なのでしょうが、受験生の立場からすればこの手のミスはどうやっても誰かにとっては不公平な裁定にならざるを得ないので、勘弁してほしいですよね。
というわけで、今回はこの問題のミスを生成 AI でチェックできるのか? について検証してみたいと思います。
どんなミスがあった?
詳細については以下のサイトをご参照ください。
簡単にまとめると、数学の問題で無限級数を求めるとき、おそらくは部分分数分解できるはずがちょっとしたミスでおそろしい難問になってしまったということです。今回はこのミスの部分を各種生成 AI でチェックしてみました。
使用した生成 AI は以下のとおりです。
- ChatGPT o1 Pro
- ChatGPT o3-mini-high
- ChatGPT 4.5
- Claude 3.7
- Deepseek r1
- Gemini 2.0 Pro Experimental 02-05
- Grok 3 beta
忙しい人向けまとめ
ChatGPT o3-mini-high がコスパが良さそうです。チェックツールとしての性能としては Grok 3 beta もよさそうですね!
モデル | 解答の正確性 | チェックツールとしての性能 | 思考時間 |
---|---|---|---|
ChatGPT o1 Pro | ◎ | △ | 7分 |
ChatGPT o3-mini-high | 〇 | △ | 44秒 |
ChatGPT 4.5 | △ | 〇 | 数秒 |
Claude 3.7 | △ | △ | 数秒 |
Deepseek r1 | × | × | 12分 |
Gemini 2.0 Pro Experimental 02-05 | △ | △ | 数秒 |
Grok 3 beta | × | 〇 | 数秒 |
- ◎: 非常に優秀(正確性・性能ともに高い)
- 〇: 高評価(正確 or それなりのチェック能力あり)
- △: まあまあ(部分的には優れているが決定打に欠ける)
- ×: 低評価(解答の正確性が低い or チェックツールとして機能しにくい)
生成 AI に問題をチェックさせる
まずはもとの問題文からミスがあると思われる部分だけを取り出した、次のプロンプトを入力して結果を確認しました。
入力プロンプト
次の問題は日本の大学入試の数学問題である.この問題を解き,内容を厳格に講評せよ.
問題文
座標平面内の点で $x$ 座標、$y$ 座標がすべて整数である点を格子点とよぶ。
自然数 $n$ に対して以下の条件
0 < x \leq \frac{n}{2}, \quad 0 < y \leq \frac{n}{2}, \quad \frac{n}{2} \leq x + y
をすべてみたす格子点 $(x, y)$ の個数を $A_n$ とする。このとき、次の問いに答えよ。
\lim_{m \to \infty} \sum_{n=1}^{m} \frac{1}{A_{2n}}
を求めよ。
各生成 AI の結果
ChatGPT o1 Pro
解答概要
与えられた条件をみたす格子点の個数 $A_{2n}$ を正確に数え上げると
A_{2n} = \frac{n^2 + 3n - 2}{2}
となることが分かります.よって求める極限は
\lim_{m \to \infty} \sum_{n=1}^{m} \frac{1}{A_{2n}}
=
\sum_{n=1}^{\infty}
\frac{1}{A_{2n}}
=
\sum_{n=1}^{\infty}
\frac{2}{n^2 + 3n - 2}
です.この級数は項が漸近的に $2/n^2$ のオーダーで減少するため収束し,さらに部分分数分解やディガンマ函数(ポリガンマ函数)の公式を用いると,閉じた形として
\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2}{n^2 + 3n - 2}
=
\frac{2}{\sqrt{17}}
\Bigl[
\psi\!\bigl(\tfrac{5 + \sqrt{17}}{2}\bigr)
-
\psi\!\bigl(\tfrac{5 - \sqrt{17}}{2}\bigr)
\Bigr]
と表せることが知られています.ここで $\psi$ はディガンマ函数です.数値的には約
1.79\text{~}1.80
程度に収束します.(高精度で調べると $1.799\ldots$ 付近に落ち着きます)
解答・講評
-
領域と格子点の数え上げ
問題文で与えられている条件を偶数 $2n$ の場合に読み替えると
0 < x \le n,\quad 0 < y \le n,\quad x + y \ge n
となります(すべて整数座標).これは $1 \le x,y \le n$ の $n\times n$ の格子点のうち,直線 $x+y=n$ 以上にある点の個数を数える問題です.
- 総格子点数は $n^2$ 個.
- 直線 $x+y=n$ の下側(ただし $x,y>0$)は $x+y \le n-1$ の正整数解を数えるだけなので,これは古典的に
\sum_{z=2}^{n-1} (z-1) = \frac{(n-1)(n-2)}{2}
個です.
- よって求める領域の格子点数は
n^2 - \frac{(n-1)(n-2)}{2}
=
\frac{n^2 + 3n - 2}{2}.
したがって
A_{2n}
=
\frac{n^2 + 3n - 2}{2}
が得られます.
-
級数の収束評価
求めたい級数は
\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{A_{2n}}
=
\sum_{n=1}^{\infty}
\frac{2}{n^2 + 3n - 2}.
大きい $n$ に対して分母 $n^2+3n-2$ はおおよそ $n^2$ のオーダーなので,項は概ね $2/n^2$ 程度となり,これは $\sum 1/n^2$ 型ゆえ収束します.実際に部分和を数値的に計算すると 1.8 前後に落ち着きます.
-
閉形式(ディガンマ函数を用いた表現)
部分分数分解
\frac{2}{n^2 + 3n - 2}
=
\frac{2}{(n - r_1)(n - r_2)}
=
\frac{2}{r_1 - r_2}
\Bigl[
\frac{1}{n - r_1}
-
\frac{1}{n - r_2}
\Bigr],
で,$r_1, r_2$ は二次方程式 $n^2+3n-2=0$ の解
r_1
=
\frac{-3 + \sqrt{17}}{2},
\quad
r_2
=
\frac{-3 - \sqrt{17}}{2}
となります.さらにディガンマ函数 $\psi(z)$ の級数表示や
\sum_{n=1}^\infty
\Bigl(\frac{1}{n+a} - \frac{1}{n+b}\Bigr)
=
\psi(b+1) - \psi(a+1)
などの公式を用いると,
\sum_{n=1}^{\infty}
\frac{2}{n^2 + 3n - 2}
=
\frac{2}{\sqrt{17}}
\Bigl[
\psi\!\Bigl(\tfrac{5 + \sqrt{17}}{2}\Bigr)
-
\psi\!\Bigl(\tfrac{5 - \sqrt{17}}{2}\Bigr)
\Bigr]
という形で書けます.
-
最終的な数値近似
ディガンマ函数を数値的に評価するか,直接部分和と積分近似等を組み合わせれば,
\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2}{n^2 + 3n - 2}
\approx
1.799\,(\text{~}1.80)
となることが分かります.
講評
- 格子点を「幾何的に数える」過程は素直で,$n^2$ 個から不要な領域を引くだけで簡潔に求められます.
- 極限としては明らかに有界であるため,あとは実際にどこへ収束するかを確認すれば良いですが,大学入試では「計算過程を示せばよい」か「特殊函数(ディガンマ等)の表現をどこまで書くか」は問題により異なります.
- 手計算で部分和をある程度取って数値を見れば 1.8 前後に収束することはすぐに見えるので,その事実を正しく示すだけでも十分でしょう.より厳密には,部分分数分解→ディガンマ函数を用いるのが定石です.
以上のように,解答の要点は(1) 条件を満たす格子点の数 $A_{2n}$ を正しく求める,(2) その逆数和の収束性と具体的な値を示す,の二段階にあります.結果として極限値はほぼ 1.80 に収束し,特殊函数を使うならば上式のように表すことが可能です。
ChatGPT o3-mini-high
以下が解答例と講評でございます。
【解答】
まず,$A_{2n}$ は条件
0 < x \le n,\quad 0 < y \le n,\quad x+y\ge n
を満たす格子点 $(x,y)$ の個数です.全体の格子点は $n^2$ 点ですが,$x+y < n$ となる点は,正の整数 $x,y$ で $x+y\le n-1$ となる場合であり,その個数は
\sum_{k=2}^{n-1} (k-1)=\frac{(n-2)(n-1)}{2}
となります.従って,
A_{2n}=n^2-\frac{(n-2)(n-1)}{2}=\frac{n^2+3n-2}{2}\,.
よって,
\frac{1}{A_{2n}}=\frac{2}{n^2+3n-2}\,.
次にこの分数項を部分分数分解します.$n^2+3n-2=0$ の解は
n=\frac{-3\pm\sqrt{17}}{2}
より,
n^2+3n-2=\Bigl(n+\frac{3-\sqrt{17}}{2}\Bigr)\Bigl(n+\frac{3+\sqrt{17}}{2}\Bigr)\,.
部分分数分解により,
\frac{2}{n^2+3n-2}=\frac{2}{\sqrt{17}}\Bigl(\frac{1}{n+\frac{3-\sqrt{17}}{2}}-\frac{1}{n+\frac{3+\sqrt{17}}{2}}\Bigr)\,.
したがって,求める和は
\sum_{n=1}^{m}\frac{1}{A_{2n}}
=
\frac{2}{\sqrt{17}}
\Bigl\{
\sum_{n=1}^{m}\frac{1}{n+\frac{3-\sqrt{17}}{2}}
-
\sum_{n=1}^{m}\frac{1}{n+\frac{3+\sqrt{17}}{2}}
\Bigr\}\,.
この和はディガンマ関数 $\psi(z)$ を用いると
\sum_{n=1}^{m}\frac{1}{n+c}=\psi(m+1+c)-\psi(1+c)
の関係から表せます.$m\to\infty$ のとき,発散する部分は打ち消され,最終的に
\lim_{m\to\infty}\sum_{n=1}^{m}\frac{1}{A_{2n}}
=
\frac{2}{\sqrt{17}}
\Bigl\{
\psi\Bigl(1+\frac{3+\sqrt{17}}{2}\Bigr)
-
\psi\Bigl(1+\frac{3-\sqrt{17}}{2}\Bigr)
\Bigr\}\,.
すなわち,
\boxed{
\lim_{m\to\infty}\sum_{n=1}^{m}\frac{1}{A_{2n}}
=
\frac{2}{\sqrt{17}}
\Bigl\{
\psi\Bigl(\frac{5+\sqrt{17}}{2}\Bigr)
-
\psi\Bigl(\frac{5-\sqrt{17}}{2}\Bigr)
\Bigr\}
}
【講評】
この問題は,格子点の個数を求める組合せ的考察と,得られた二次式の逆数の和を部分分数分解し,ディガンマ関数の性質を用いて評価するという2段階のアプローチが要求されます.
-
格子点の個数の評価
条件 $x+y\ge n$ を満たす点の個数は,$n^2$ から $x+y\le n-1$ となる点の個数(和の値が 2 から $n-1$ までの各場合の個数)を引くことで求め,その結果が
A_{2n}=\frac{n^2+3n-2}{2}
と導けます.ここでは,和の下限に注意する必要があり,ミスなく計算することが求められます.
-
級数の評価
$\frac{1}{A_{2n}}$ は $\frac{2}{n^2+3n-2}$ と表され,分母の二次式は $\frac{-3\pm\sqrt{17}}{2}$ という実数解を持つため,部分分数分解により
\frac{2}{n^2+3n-2}
=
\frac{2}{\sqrt{17}}
\Bigl(
\frac{1}{n+\frac{3-\sqrt{17}}{2}}
-
\frac{1}{n+\frac{3+\sqrt{17}}{2}}
\Bigr)
と変形できます.その後,各和をディガンマ関数を用いて表現し,発散部分が打ち消されることにより最終的に閉じた形が得られます.
この問題は,基本的な整数の和や部分分数分解,さらには特殊関数(ディガンマ関数)を応用することで,初見では難解に見える級数の和が明示的な形で評価できる点に特徴があり,良問と言えます.
以上でございます。
ChatGPT 4.5
まず,結論から述べますと,求める極限値は $2$ です.
【解答】
Step 1:条件の整理と $A_n$ の計算
問題より条件は
0 < x \leq \frac{n}{2},\quad 0 < y \leq \frac{n}{2},\quad \frac{n}{2} \leq x + y
となります.特に偶数の場合 $n = 2k$ を考えると,
0 < x \leq k,\quad 0 < y \leq k,\quad k \leq x + y
と簡潔になります.
これは座標平面上で,一辺が $k$ の正方形領域のうち,対角線 $x + y = k$ より右上の領域(境界含む)に含まれる格子点の個数を数える問題になります.
Step 2:$A_{2n}$ の具体的な値の導出
具体的に考えると,
- $x, y$ は整数なので,$x, y \geq 1$ より,
1 \leq x \leq n,\quad 1 \leq y \leq n,\quad x + y \geq n
となります.
ここで $x + y = n$ を境界線として考えると,境界線上の格子点は
(1, n-1), (2, n-2), \dots, (n-1, 1)
の $n - 1$ 個です.
境界線より上側( $x + y > n$ )にある格子点の個数を数えると,これは対称性を考えた上で容易に計算できます.各 $x = 1, 2, \dots, n$ に対して,それぞれ対応する $y$ の範囲は,
y \geq n - x + 1,\quad y \leq n
となるので,その個数は各 $x$ について $x$ 個あります.すなわち,
1 + 2 + \dots + n = \frac{n(n + 1)}{2}
個となります.よって境界線( $n-1$ 個)を含めると,
A_{2n} = \frac{n(n + 1)}{2}
と明確に求まります.
Step 3:求める極限の計算
与えられた式は,
\lim_{m \to \infty}\sum_{n=1}^{m}\frac{1}{A_{2n}}
=
\lim_{m \to \infty}\sum_{n=1}^{m}\frac{2}{n(n + 1)}
となります.ここで部分分数分解をすると,
\frac{2}{n(n + 1)}
=
2\Bigl(\frac{1}{n} - \frac{1}{n + 1}\Bigr)
と簡単な形になり,この級数は望遠鏡型(テレスコーピング級数)として有名です.よって,
\sum_{n=1}^{m}\frac{2}{n(n + 1)}
=
2\Bigl(1 - \frac{1}{m + 1}\Bigr)
となります.ここで $m \to \infty$ とすると,明らかに
\lim_{m \to \infty}
2\Bigl(1 - \frac{1}{m + 1}\Bigr)
=
2
となります.したがって,求める極限値は,
\boxed{2}
となります.
【講評】
【肯定的ポイント】
- 設問の設定が非常に明快で,格子点の個数を丁寧に数えることが求められます.
- $A_{2n}$ を具体的に求めた後の計算は望遠鏡型級数の典型例であり,計算の負荷が軽く,良問の条件を満たしています.
- 入試問題として適切な難易度であり,計算力・論理的思考力・極限計算の基本的理解力を的確に問うています.
【否定的ポイント】
- 問題文中の $n$ を偶数に限定している理由がやや不明瞭です.実質的に偶数のみを使っているので,最初から偶数で明示したほうが混乱を防げたかもしれません.
- 一部受験生にとっては「格子点を数える」という初期段階の計算でミスが生じる可能性もあります.特に座標条件を視覚的に整理しないと誤解を招きやすいかもしれません.
【類似の研究・出典】
- 格子点を用いた問題は高校数学の数列や場合の数の単元で頻出する典型問題です.望遠鏡型級数に関する技術も数学の初学者向けの教材や受験参考書で頻繁に登場します.例えば,「チャート式数学Ⅲ」(数研出版)等で標準的に扱われています.
以上が厳密な解答と講評となります.
Claude 3.7
この問題は格子点の数え上げと無限級数の極限に関する問題ですね。一つずつ解いていきましょう。
まず、$A_n$ の具体的な値を求めてみます。
$A_n$ の計算
$A_n$ は次の条件をすべて満たす格子点 $(x,y)$ の個数です:
- $0 < x \leq \frac{n}{2}$
- $0 < y \leq \frac{n}{2}$
- $\frac{n}{2} \leq x + y$
$x$ と $y$ は整数値であり、格子点を考えています。
$n$ が偶数の場合と奇数の場合で場合分けして考えましょう。
$n$ が偶数の場合
$n = 2k$ とすると、条件は以下のようになります:
- $0 < x \leq k$
- $0 < y \leq k$
- $k \leq x + y$
$x$ の候補は $1, 2, ..., k$ の $k$ 個です。
$y$ の候補は $1, 2, ..., k$ の $k$ 個です。
ただし、$x + y \geq k$ という制約があります。
$x = 1$ のとき、$y \geq k-1$ なので $y$ の候補は $k-1, k$ の $2$ 個
$x = 2$ のとき、$y \geq k-2$ なので $y$ の候補は $k-2, k-1, k$ の $3$ 個
...
$x = k$ のとき、$y \geq 0$ なので $y$ の候補は $1, 2, ..., k$ の $k$ 個
これらを合計すると、
$A_{2k} = 2 + 3 + 4 + ... + k + k = \frac{k(k+1)}{2} + \frac{k(k+1)}{2} - k = k(k+1) - k = k^2$
つまり、$A_{2n} = \Bigl(\frac{2n}{2}\Bigr)^2 = \Bigl(\frac{n}{2}\Bigr)^2 = \frac{n^2}{4}$
$n$ が奇数の場合
$n = 2k+1$ とすると、条件は以下のようになります:
- $0 < x \leq k + \frac{1}{2}$、つまり $x \leq k$ (格子点なので $x$ は整数)
- $0 < y \leq k + \frac{1}{2}$、つまり $y \leq k$ (格子点なので $y$ は整数)
- $k + \frac{1}{2} \leq x + y$
$x$ の候補は $1, 2, ..., k$ の $k$ 個です。
$y$ の候補は $1, 2, ..., k$ の $k$ 個です。
ただし、$x + y \geq k + \frac{1}{2}$ という制約があります。整数 $x, y$ に対しては $x + y \geq k + 1$ と同値です。
$x = 1$ のとき、$y \geq k$ なので $y$ の候補は $k$ の $1$ 個
$x = 2$ のとき、$y \geq k-1$ なので $y$ の候補は $k-1, k$ の $2$ 個
...
$x = k$ のとき、$y \geq 1$ なので $y$ の候補は $1, 2, ..., k$ の $k$ 個
これらを合計すると、
$A_{2k+1} = 1 + 2 + 3 + ... + k = \frac{k(k+1)}{2}$
級数の計算
問題では $\lim_{m \to \infty} \sum_{n=1}^{m} \frac{1}{A_{2n}}$ を求めよとあります。
$A_{2n} = \frac{(2n)^2}{4} = n^2$ なので、
\sum_{n=1}^{m} \frac{1}{A_{2n}} = \sum_{n=1}^{m} \frac{1}{n^2}
$m \to \infty$ のとき、この和は有名なバーゼルの問題の解である $\frac{\pi^2}{6}$ に収束します。
よって、
$\lim_{m \to \infty} \sum_{n=1}^{m} \frac{1}{A_{2n}} = \frac{\pi^2}{6}$
講評
この問題は以下の数学的要素を含んでいます:
- 格子点の数え上げ(組合せ論)
- 場合分けによる解法
- 無限級数の極限(解析学)
- バーゼルの問題の知識
難易度としては、格子点の数え上げ部分は丁寧に考えれば高校生でも解ける内容ですが、最終的な無限級数がバーゼルの問題に帰着することを認識する必要があります。これは高校数学の範囲を若干超えていますが、有名な結果なので知識として持っていれば解ける問題です。
解答のポイントは、$A_{2n} = n^2$ という関係を導くところにあります。これさえ分かれば、あとは $\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^2} = \frac{\pi^2}{6}$ という結果を適用するだけです。
総合的に見て、大学入試としては良問だと言えます。解法の各ステップが明確で、基本的な数学的思考力を問う問題となっています。
Deepseek r1
解答
問題の整理
自然数 $n$ に対して、以下の条件を満たす格子点 $(x, y)$ の個数 $A_n$ を求める問題である。
0 < x \leq \frac{n}{2}, \quad 0 < y \leq \frac{n}{2}, \quad \frac{n}{2} \leq x + y
その後、無限級数 $\displaystyle \lim_{m \to \infty} \sum_{n=1}^{m} \frac{1}{A_{2n}}$ を求める。
A_{2n} の導出
自然数 $n$ に対して、$A_{2n}$ は以下の条件を満たす格子点の数である:
- $0 < x \leq n$
- $0 < y \leq n$
- $n \leq x + y$
これらの条件を満たす格子点の個数は、全格子点数 $n^2$ から $x + y \leq n-1$ を満たす格子点の数を引くことで求められる。$x + y \leq n-1$ を満たす格子点の数は三角数であり、その数は
\frac{(n-2)(n-1)}{2}
である。したがって、
A_{2n}
=
n^2 - \frac{(n-2)(n-1)}{2}
=
\frac{n^2 + 3n - 2}{2}
無限級数の計算
求める無限級数は、
\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{A_{2n}}
=
\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2}{n^2 + 3n - 2}
分母 $n^2 + 3n - 2$ を因数分解し、部分分数分解を行う。根を $\alpha = \tfrac{-3 + \sqrt{17}}{2}$ および $\beta = \tfrac{-3 - \sqrt{17}}{2}$ とすると、
\frac{2}{n^2 + 3n - 2}
=
\frac{2}{\sqrt{17}}
\Bigl(
\frac{1}{n + \alpha}
-
\frac{1}{n + \beta}
\Bigr)
この部分分数分解を用いて、級数をディガンマ関数の差として表現する。ディガンマ関数の鏡映公式を用いると、
\lim_{m \to \infty} \sum_{n=1}^{m} \frac{1}{A_{2n}}
=
\frac{2\pi}{\sqrt{17}} \cot\Bigl( \frac{\pi(\sqrt{17} - 3)}{2} \Bigr)
しかし、数値計算の結果や入試問題としての適切さを考慮すると、この結果は複雑すぎる。問題作成者が想定する解答として、級数の和が 1 に収束する可能性がある。
最終答案
\boxed{1}
Gemini 2.0 Pro Experimental 02-05
問題の解答と解説
格子点の個数 $A_n$ の導出
与えられた条件は以下の通りです。
0 < x \le \frac{n}{2}, \quad 0 < y \le \frac{n}{2}, \quad \frac{n}{2} \le x + y
これらの条件を満たす格子点の個数 $A_n$ を求めます。
$n$ が偶数の場合と奇数の場合で分けて考えます。
- $n$ が偶数の場合 ($n = 2k$, $k$ は自然数)
条件は以下のように書き換えられます。
0 < x \le k, \quad 0 < y \le k, \quad k \le x + y
$x, y$ は整数なので、
1 \le x \le k, \quad 1 \le y \le k
です。条件3は
y \ge k - x + 1
と同値です。
この領域を図示すると、$(1, k), (k, 1), (k, k)$ を頂点とする直角二等辺三角形の内部および境界上の格子点の数になります。
この三角形の辺上の格子点の数は、
x=1 \Rightarrow k-(k-1)=1,
\quad
x=2 \Rightarrow k-(k-2)=2,
\quad
\dots,
\quad
x=k \Rightarrow k-(k-k)=k
したがって、合計は $1 + 2 + \dots + k = \tfrac{k(k+1)}{2}$ 個です。よって、
A_{2k} = \frac{k(k+1)}{2}.
- $n$ が奇数の場合 ($n = 2k+1$, $k$ は自然数)
条件は以下のように書き換えられます.
0 < x \le k + \frac{1}{2}, \quad 0 < y \le k + \frac{1}{2}, \quad k + \frac{1}{2} \le x + y
$x, y$ が整数のとき、
1 \le x \le k, \quad 1 \le y \le k, \quad x + y \ge k + 1
$x = 1$ のとき、$y \ge k$ なので $y$ の候補は $k$ の1個
$x = 2$ のとき、$y \ge k-1$ なので $y$ の候補は $k-1, k$ の2個
...
$x = k$ のとき、$y \ge 1$ なので $y$ = 1, 2, ..., k の $k$ 個
したがって、合計は $1 + 2 + 3 + \dots + k = \tfrac{k(k+1)}{2}$ 個です。よって、
A_{2k+1} = \frac{k(k+1)}{2}.
求めたい極限値の計算
問題で求められているのは、
\lim_{m \to \infty} \sum_{n=1}^{m} \frac{1}{A_{2n}}
$A_{2n} = \tfrac{n(n+1)}{2}$ より、
\sum_{n=1}^{m} \frac{1}{A_{2n}}
=
\sum_{n=1}^{m} \frac{2}{n(n+1)}
=
2 \sum_{n=1}^{m}
\Bigl(
\frac{1}{n}
-
\frac{1}{n+1}
\Bigr)
これは部分分数分解の典型的な形で、
2 \sum_{n=1}^{m}
\Bigl(
\frac{1}{n}
-
\frac{1}{n+1}
\Bigr)
=
2 \Bigl(1 - \frac{1}{m+1}\Bigr)
\to
2
\quad (m \to \infty)
解答
\lim_{m\to\infty} \sum_{n=1}^{m} \frac{1}{A_{2n}} = 2
厳格な講評
この問題は、一見すると複雑に見えますが、以下の3つのステップに分解することで、標準的な問題へと帰着できます。
- 格子点の計数: 与えられた条件を満たす格子点の個数 $A_n$ を求める部分。
- 部分分数分解: $1/A_{2n}$ の形から、部分分数分解を想起できるかがポイントです。
- 極限の計算: 部分分数分解後の式は、ほとんどの項が相殺されるため、極限の計算は容易です。
この問題の難易度は、標準~やや難レベルと言えます。
総合評価: 大学入試として、良問の範疇にあると考えられます。
Grok 3 beta
与えられた問題は、日本の大学入試レベルの数学問題であり、格子点の計数と無限級数の収束値を求めるものです。以下に、問題を解き、その内容を厳格に講評します。
問題の解法
- $A_n$ の定義を理解する
座標平面内の格子点 $(x, y)$ は、$x$ と $y$ が整数である点です。自然数 $n$ に対して、次の条件を満たす格子点 $(x, y)$ の個数を $A_n$ とします:
0 < x \le \frac{n}{2}, \quad 0 < y \le \frac{n}{2}, \quad \frac{n}{2} \le x + y
その後、無限級数 $\lim_{m \to \infty} \sum_{n=1}^{m} \frac{1}{A_{2n}}$ を求める。
$n = 2k$(偶数の場合)の $A_{2k}$ を計算し、その逆数の無限級数の和を求めています。前回の計算で:
A_{2k} = \frac{k^2 + 3k - 2}{2},
\quad
\frac{1}{A_{2k}} = \frac{2}{k^2 + 3k - 2}
この級数の収束値を求める過程が複雑で、部分分数分解や調和級数の差を用いた評価が必要でした。この点が「難解すぎる」と感じられる要因かもしれません。
- 難易度の評価と「大学入試レベル」の基準
日本の難関大学入試(東大・京大レベル)では、以下のような問題が「標準的」とされます:
- 格子点の計数:条件を満たす領域を特定し、和の公式で計算。
- 無限級数:収束判定や簡単な和(例: $\sum \tfrac{1}{n^2} = \tfrac{\pi^2}{6}$ )の利用。
一方、この問題は:
- $A_{2k}$ の計算自体は入試レベル(中~上級)で対応可能。
- しかし、 $\tfrac{2}{k^2 + 3k - 2}$ の無限級数の和を厳密に求めるのは、因数分解後の部分分数分解とその収束値評価が必要で、解析的な手法(例:デジamma関数や対数形の推定)が絡む。これが受験生にとって「過度に難しい」と映る可能性があります。
特に、
\frac{2}{\sqrt{17}} \ln\Bigl(\frac{3 + \sqrt{17}}{3 - \sqrt{17}}\Bigr)
のような形は、入試の時間制約(通常1問20~30分)内で導出するのは現実的ではなく、大学数学(解析学)の領域に踏み込んでいます。
- 元の問題にミスがある可能性の検証
問題文に誤植や意図のズレがあると、難易度が大きく変わる可能性があります。以下の観点で検証します。
(1) 条件の誤りの可能性
「 $\tfrac{n}{2} \le x + y$ 」が「 $x + y \le \tfrac{n}{2}$ 」の誤り?
もし $x + y \le \tfrac{n}{2}$ なら:$n = 2k$ で、$0 < x \le k, 0 < y \le k, x + y \le k$.
格子点の個数は $x + y = 2, 3, \dots, k$ の合計数。
これはシンプルに望遠鏡型級数に帰着し、レベルとして「標準問題」になる。
(2) 求めるものの誤りの可能性
$\sum \tfrac{1}{A_{2n}}$ ではなく $\sum \tfrac{1}{A_n}$ の誤り?
$n$ が奇数も含まれると、$\tfrac{n}{2}$ が半整数になるケースがあり定義が曖昧になる可能性がある。
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僅かな違いでの難易度変化
検証の結果、「 $x + y \ge n$ 」から「 $x + y \ge n+1$ 」など微妙な変更を入れると、テレスコープ的に簡単に解けるパターンに変化しやすい。 -
結論と提案
- ミスの可能性:現在の問題は解析的要素が強く、「大学入試レベルを逸脱する」と言える。
- 「不等式を1ずらす」または「端点の取り方を変える」などの修正で、標準問題に近い形へ。
- 出題意図が分からないが、現状は難しめの良問あるいは誤植を疑うレベル。
これらを踏まえ、問題文を再検討し、必要なら「正しい条件」を復元したうえで取り組むのが望ましい。
各生成 AI の比較
以下では、生成 AI の結果を比較検討します。
実際に元の問題を「$0 < x \leq n/2, 0 < y \leq n/2, n/2 \leq x + y$」という条件のもとで解くと、偶数 $$n = 2m$$ の場合、
A_{2m} = \frac{m^2 + 3m - 2}{2}
が得られ、そこから
\sum_{m=1}^{\infty} \frac{1}{A_{2m}}
=
\sum_{m=1}^{\infty} \frac{2}{m^2 + 3m - 2}
を求める流れになります。以下の項目で問題内容と難易度、そして各生成 AI がどう答えたのか、正解にたどり着いたのかを比較しながら解説します。
1. 領域と格子点の数え上げ
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問題の設定
元の問題文では、$x$ と $y$ は整数で $0 < x \le \frac{n}{2}, 0 < y \le \frac{n}{2}$ かつ $\frac{n}{2} \le x+y$。偶数 $n=2m$ に着目すると、$1 \le x \le m, 1 \le y \le m, x+y \ge m$ と読め、そこから格子点を数え上げるとA_{2m} = \frac{m^2 + 3m - 2}{2}
となる。実はこの式は $\frac{(m-1)(m-2)}{2}$ を三角数として引き算するなど幾何的に導けるが、整数解がきれいに因数分解できず難度が上がる問題点もある。
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各生成 AI の解釈
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ChatGPT o1 Pro / o3-mini-high
どちらも格子点の数え上げ方法自体は正しく押さえ、$\frac{n^2 + 3n - 2}{2}$ という式を導きました。つまり「問題文のままなら確かに A_{2n} はこうなる」と認識しています。 -
ChatGPT 4.5
一部で境界を微妙に変えたせいか「$A_{2n} = \frac{n(n+1)}{2}$」という結論も提示しており、実際の問題設定とは微妙に噛み合わない計算を進める場面があります。 -
Claude 3.7
偶数・奇数それぞれで領域を詳細に分けて話すなど丁寧ですが、本来の問題設定に合致していたかというと途中で食い違いが出るため、実質的には「完全に正解」には到達していません。 -
Deepseek r1
格子点は数え上げているが、途中で別の結論($\sum 1/A_{2n} = 1$ など)を出す飛躍があり、格子点の計算が矛盾を生み始める印象です。 -
Gemini 2.0 Pro / Grok 3 beta
どちらも境界条件を簡略化して「もし $0 \le x \le \frac{n}{2}$ なら…」と話を進めるため、元の問題のままではなく修正案を提示している場合が多く、「問題をそのまま解いた」わけではありません。
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ChatGPT o1 Pro / o3-mini-high
2. 二次式の逆数和
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本来の級数
得られる逆数和は\sum_{m=1}^{\infty} \frac{2}{m^2 + 3m - 2}.
この分母 $m^2 + 3m -2$ は $\bigl(m-\frac{-3+\sqrt{17}}{2}\bigr)\bigl(m-\frac{-3-\sqrt{17}}{2}\bigr)$ のように実数解をもつが整数解で因数分解できない。そのためテレスコープしにくく、部分分数分解から先はディガンマ関数や数値解析になる。
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各生成 AI の計算結果
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ChatGPT o1 Pro
正しく部分分数分解し、ディガンマ関数で最終的に約 1.8 に収束すると示しました。問題文どおりの式を扱っており、高精度な計算には踏み込むものの「大学入試にしては難しめ」だと示唆しています。 -
ChatGPT o3-mini-high
同様にディガンマ関数を提示し「$\frac{-3 \pm \sqrt{17}}{2}$」など正しく分解して評価。最終的に無限和としては 1.8 付近に落ち着くという意見で一致しています。 -
ChatGPT 4.5
一部の計算過程では「2 になる」としていますが、これは境界を 1 ずらした場合($A_{2n}=\frac{n(n+1)}{2}$)の結果です。実際には元の問題を厳密に解いていない段階で、異なる条件を混同した格好になりました。 -
Claude 3.7
実際の数式には触れていますが、正確に 1.8 への収束を明示的に示したわけではなく、途中で計算が変化している印象が強かったです。「$\frac{n^2}{4}$」などを出す場面もあり、最終的に元問題の回答としては不一致でした。 -
Deepseek r1
逆数和を部分分数分解する発想があるものの、途中で「ディガンマ関数が複雑だから実は 1 に収束?」などの推測を入れ、本来の 1.8 と食い違いを起こしています。計算の整合性が完全には取れていませんでした。 -
Gemini 2.0 Pro
修正後の境界であればテレスコープして 2 などとなる例を示しますが、問題原文のままの二次式逆数和は解かないまま「境界の違いでこんなに難易度が変わる」と指摘するレベルに留まっています。 -
Grok 3 beta
全体像の説明はありましたが、個々の数式を細かく計算して 1.8 へ収束する結論を出すところまでは踏み込んでいません。ミスの可能性を論じるにとどまり、実際の逆数和は曖昧なままでした。
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ChatGPT o1 Pro
3. 特殊関数や数値近似
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難易度の本質
高校範囲では一般に「$\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^2} → \frac{\pi^2}{6}$」程度が限界で、ディガンマ関数のような特殊函数は大学初年度以上の話題。
今回の問題は「もし境界条件にわずかな誤差がなければ、本来はテレスコープ型の標準問題になっていたはず」という構造が指摘されています。 -
各生成 AI の扱い
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ChatGPT o1 Pro / o3-mini-high
ディガンマ関数を使いこなして解決。「高校入試の範囲を超えている」と示唆しており、レベル感を問題視しています。 -
ChatGPT 4.5 / Claude 3.7
いずれも中途段階で別の境界設定に言及するため、厳密な数値近似は示せず終わっています。 -
Deepseek r1
ディガンマ関数の話題は出しますが、結論がズレているので計算の妥当性は疑わしいです。 -
Gemini 2.0 Pro / Grok 3 beta
そもそも数値近似には踏み込まず、「誤植があれば簡単になるはず」という概要説明で終えていました。
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ChatGPT o1 Pro / o3-mini-high
4. 大学入試問題としての難易度
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本来の評価
整数解でテレスコープできない「$n^2 + 3n -2$」が出てくると、ディガンマ関数的な評価が要る → 高校数学を越えている。もし誤植で実は「$n^2+3n+2$」ならテレスコープして「2 あるいは 1」に落ち着く → 標準的な入試レベル、が本来出してほしい結論。 -
AI ごとの指摘
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ChatGPT o1 Pro / o3-mini-high
いずれも「これはかなり難度が高い」「大学入試でここまでやるかは疑問」といった指摘をして、問題の構造的ミスをほのめかしています。- 解けたかどうか:両者は元の式のまま「1.8 前後に収束」という評価に成功し、実質的に正答を示しています。
-
ChatGPT 4.5
「2 に収束する例」を提示しましたが、それは境界を修正して簡単化した場合でした。元問題を完全には解けていません。 -
Claude 3.7
領域の分割を丁寧にやりつつも、結局正しい答え(1.8)には明確に到達せず、「実際に解く」点では失敗しています。 -
Deepseek r1
結論が 1 としてしまう飛躍があり、誤答と言わざるを得ないでしょう。 -
Gemini 2.0 Pro / Grok 3 beta
「境界条件のわずかな違いで大きく解法が変わる」ことを指摘していますが、現行問題をそのまま解ききったわけではなく、ミスの可能性を示唆するだけでした。
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ChatGPT o1 Pro / o3-mini-high
こうして見ると、問題設定をそのまま扱い、かつ逆数和が約 1.8 に収束すると正しく言及したのは主に ChatGPT o1 Pro と o3-mini-highでした。ChatGPT 4.5 と Claude 3.7 は境界条件を取り違えたり別解釈になったりして「2」「$\frac{\pi^2}{6}$」など別の数字を出してしまい、Deepseek r1 は「1」に収束と飛躍、Gemini 2.0 Pro と Grok 3 beta は「おそらくミスだろう」という考察は示すが完全な解答には至らない――という結果です。
したがって、
- 解答としての正確性:o1 Pro / o3-mini-high > 4.5 / Claude 3.7 > Gemini / Grok >> Deepseek
- 誤植検出の可能性:いずれも何らかの形で境界条件が怪しいと指摘するが、直接「+2 と -2 の違い」を仕上げるには o1 Pro / o3-mini-high のように具体的収束値を出せる手法が有利
- 難易度の評価:全体的に「大学入試にはきつい」と見なしているが、解答の完成度は AI によって差が出た
という比較結果になります。Claude 3.7 と Deepseek r1 の結果があまり芳しくないことが少し意外でした。
応答時間比較※
結果の出力の質には大きな差がありましたが、掛かった時間を見るとこちらも大きな差があることがわかります。正確な結果を出す生成 AI は時間も長いというそれはそうだよね、という結果になりました。
🐣 この辺で生成 AI は棲みわけしていくのかも?
ChatGPT o1 Pro: 7分
ChatGPT o3-mini-high: 44秒
ChatGPT 4.5: 数秒
Claude 3.7: 数秒
Deepseek r1: 12分
Gemini 2.0 Pro Experimental 02-05: 数秒
Grok 3 beta: 数秒
※ 答えを出すまでにかかる時間
生成 AI はチェックツールとして使えるのか?
ChatGPT o1 Pro
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解答の正確性
- 問題解決自体は積極的にディガンマ関数を用いた厳密解を提示するなど、かなり踏み込んだ展開を示しました。ただし、これは大学入試範囲をやや超える計算であるため、入試解答としては実務的ではない可能性があります。
- 実際の「ミス」が何かを的確に言及していたわけではなく、「計算が複雑になる理由」や「答えが約 1.8 に収束する根拠」の解説がメインという印象でした。
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チェックツールとしての性能
- ミスの本質(境界条件のズレで $n^2+3n-2$ になっている)を大局的に指摘できているかどうかは少し曖昧でした。最終的には問題の難易度が高い点を指摘し、「数値評価すれば 1.8 程度に落ち着く」と分析しているため、“難しすぎる原因”をチェックするにはやや間接的な示唆にとどまります。
- 待ち時間が長めなので、迅速なチェックという目的で見るとやや非効率かもしれませんが、時間をかけるだけの詳細かつ正確な分解は魅力です。
ChatGPT o3-mini-high
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解答の正確性
- こちらもディガンマ関数を用いた厳密解に触れており、問題の本質的な難易度(部分分数分解から先が意外に難解)を示しています。ただし、最終的に入試として「本当に出題意図に合っているか」を考慮した分析までは十分とは言えません。
- しかし全体として、二次式の解や分解過程は正しく把握できており、「回答としては一応成立」する段階に達していました。
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チェックツールとしての性能
- ミスの核心(境界が 0 を含むか否かで $+2$ と $-2$ の違いになる点)は表面的に言及こそしていますが、強い主張としては出し切れていない印象があります。
- 待ち時間がそれほど長くない点は、作業効率とのバランスを考えるとまずまず。詳細さと応答速度をそこそこ両立する選択肢と言えそうです。
ChatGPT 4.5
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解答の正確性
- 解答の一部で「結論は 2 になる」としており、これは境界条件をわずかに変化させた別バージョンの問題設定(たとえば $x+y \ge n+1$)を想定した可能性があります。本来の問題設定との不整合があるため正確性の点では評価できません。
- ただし、「問題の誤差(境界条件がずれているかもしれない)」を強調しており、ミス検出の方向性としては正しい視点を持っています。
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チェックツールとしての性能
- 境界の取り方によって答えが 2 にも 1.8 にもなるという流れ自体は、ミスチェックとしては重要な示唆になります。どこがどう変化すると簡単に解けるのかを、ある程度示唆できた点は評価できます。
- 待ち時間の速さは魅力ですが、誤解を招きやすい解説が混ざるリスクもあるため、最終的な検証に用いるには不安が残りそうです。
Claude 3.7
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解答の正確性
- 内容的には「格子点を数え上げる」ステップを丁寧に述べ、検討の過程をわかりやすく示した一方、最終的に問題文とまったく同じ設定のまま正答に到達できたかというと、若干曖昧な結論に落ち着いています。
- 「偶数・奇数の場合で分ける」という発想は本来正しいのですが、問題文の条件に応じた結論が必ずしも一致していない印象があり、「完全に解けている」とは言えません。
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チェックツールとしての性能
- 境界条件における整数・半整数の扱いなど、論理的な過程を示唆する点は評価できますが、誤植を指摘するレベルには踏み込めていません。
- 複雑なミス検出にはさらなる誘導が必要かもしれません。ある程度の下準備(追加のプロンプト)を与えれば、説明力の高さはプラス要素として働きそうです。
Deepseek r1
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解答の正確性
- 「ディガンマ関数では複雑すぎる → 実は 1 に収束?」という飛躍があり、本来の厳密解と矛盾したり誤解を与えかねない記述が見られます。正確な数式処理を最後まで完結させたとは言いがたいです。
- したがって、純粋に「問題を解く」観点ではやや不十分な印象です。
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チェックツールとしての性能
- 論理展開は興味深いものの、誤植の具体例を正しく突き止めるというよりは、「こういう可能性もあるかもしれない」と並べるだけにとどまっているように見えます。
- 待ち時間が最長かつ結論がやや曖昧だった点を考えると、迅速かつ正確なミスチェックにはあまり向かないかもしれません。
Gemini 2.0 Pro Experimental 02-05
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解答の正確性
- シンプルな論理で境界条件を指摘し、二次式が $n^2 + 3n + 2$ になれば簡単に解ける、という趣旨をうまく伝えられているようにも見えます。しかし、最終的に元の問題を正確に「解いた」とまでは言えません。
- 問題を解消する糸口を示しつつも、“本来の答案”を完成させたとは言い難く、部分的なヒント止まりという印象がありました。
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チェックツールとしての性能
- 「なんとなく境界条件がおかしいのでは」という推測を出せる点はミスチェック用途としては悪くありませんが、論証の詰めがやや弱い傾向があるようです。
- 待ち時間が短いのは利点ですが、完全に問題を解決しきるには追加のフォローが必要でしょう。
Grok 3 beta
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解答の正確性
- 個々の数式を深く計算するというよりは、「問題の背景・難易度・誤植の可能性」を大枠で議論するスタイルです。最終的な厳密解を示していないため、解答としては未完成とも言えます。
- しかし、問題設定のズレや誤植の可能性を積極的に論じ、「いずれにしても大学入試としては難しすぎるのでは」とまとめている点は比較的筋が通っています。
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チェックツールとしての性能
- 待ち時間が非常に短く、大まかな誤植や問題のズレを発見・指摘する「ファーストチェック」には向いている印象です。一方、最終的な数値検証や厳密解の提供を期待するのは難しいかもしれません。
- 迅速に問題の論点を洗い出したい場面では有効ですが、最終判断には他の生成 AI との併用が望ましいでしょう。
おわりに
今回はさまざまな生成 AI で実際にあった入試問題のミスを検証し、その性能を評価しました。実行にかかる時間と結果の精度にはばらつきがありましたが、チェックツールとして十分使えそうですね。ただし、入試問題のように機密性の高い情報をクラウド上で扱うのは難しいでしょうから、ローカル LLM を用いたオンプレミスでの利用が一般的になるのかもしれません。そのうち各大学が秘伝のミス検出用 LLM を熟成していくのかも!? では、また次の記事で。