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QuickSight Q で試す自然言語でのゲームデータ分析

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こちらは AWS for Games Advent Calendar 2023 の 24 日目の記事です。

この記事ではre:Invent2023のキーノートにて Amazon Q との連携が発表された QuickSight Q を使って、自然言語でゲームに関する分析が行えるのか試してみたいと思います。

なお、QuickSight Q のre:Invent2023のアップデート内容については、当記事の執筆の時点ではプレビューとなっております。一般公開時には仕様が異なる可能性がございますのでご注意ください。

はじめに

そもそも Amazon QuickSight のことを知らない方もおられると思いますので、QuickSight と QuickSight Q について簡単に紹介しておきたいと思います。

Amazon QuickSight

Amazon QuickSight は非常に高速で使いやすいクラウド対応のビジネス分析サービスで、組織内のすべての従業員が可視化の構築、アドホック分析の実行およびデータから、いつでも、どのデバイス上でもビジネスインサイトを迅速に得ることを容易にします。

お客様はカスタマイズ可能なダッシュボードで日々のデータの確認を行い、より適切なデータ駆動型の意思決定を行うことができます。

モバイルゲームでの利用用途を例に挙げると日々の売上やユーザーの状況を確認するKPIダッシュボードを構築し、日々のゲーム運用に役立てることができます。

ゲームKPIダッシュボードサンプル

Screenshot 2023-12-22 at 16.10.03.png

QuickSight Q

QuickSight Q は機械学習により自然言語で問い合わせを行うことができる、QuickSight の機能の一つとなっています。QuickSight Q 自体は2021年の9月に一般提供を開始しています。対応している言語は英語のみとなっています。

下記サンプルでは、南部で最も売れている商品は?と英語で問い合わせてその結果を表示しています。

Screenshot 2023-12-22 at 16.16.34.png

2023年の re:Invent2023 ではこの QuickSight Q と AIアシスタント Amazon Q との連携が発表されました。大規模言語モデルを利用して、さらに深いインサイトを得ることが期待されます。

QuickSight Q できること

QuickSight Q を使うと自然言語で問い合わせを行うことができるということはなんとなくイメージしていただけたかと思います、具体的にできることとしては、

  • データのビジュアルの作成・調整の指示
  • データに関する質問
  • データストーリーの作成
  • エグゼクティブサマリーの作成

といったことを行うことができます。

QuickSight Q を使ってみよう

それでは実際に QuickSight Q を試していきたいと思います。

今回は先程出てきたKPIダッシュボードおよびダンジョンクリア型のゲームのプレイ状況ダッシュボードと各ダッシュボードで使っている分析を使って試していきます。ちなみにこちらのダッシュボードは2021年のGameTechNightというイベントで利用したダッシュボードとデータのためデータは2021年のデータとなっています。

ゲームKPIダッシュボード

Screenshot 2023-12-22 at 16.10.03.png

ゲームプレイダッシュボード
Screenshot 2023-12-22 at 17.16.04.png

なお、今回は手順を省略しますが、実際に QuickSight Q を使うためにはサブスクリプションの設定で QuickSight Q を使うプランに変更の上、利用するリージョンを設定する必要があります。

データのビジュアルの作成・調整の指示

こちらは QuickSight の分析機能で行います。

KPIダッシュボード

まずはビジュアルの作成です。画面上部のbuild visiaul と表示されている箇所をクリックすると、専用のダイアログが開きます。
Screenshot 2023-12-22 at 17.41.27.png

こちらに「how many sales by month in vertical barchat(月毎の売り上げを棒グラフで表示して)」と指示してみたところ以下のように棒グラフを表示してくれました。

Screenshot 2023-12-22 at 17.23.31.png

ちなみに日本語で「月別の売り上げを棒グラフで表示してください」とお願いしてみたところ回答できませんでした。

Screenshot 2023-12-22 at 17.46.19.png

ではビジュアルの調整です。すでに作成されているビジュアルに「Qで編集」というアイコンが表示されるので、これをクリックすると指示画面が出てきます。ここで「show in rader chart(レーダーチャートで表示してください)」と指示を出してみます。

Screenshot 2023-12-22 at 17.30.22.png

するとちゃんとレーダーチャートに変更してくれました。

Screenshot 2023-12-22 at 17.30.32.png

次に日本語で指示を出してみます。「レーダーチャートで表示してください」と指示を出してみます。

Screenshot 2023-12-22 at 17.33.03.png

こちらはちゃんとレーダーチャートに変更してくれました。

Screenshot 2023-12-22 at 17.30.32.png

ゲームプレイダッシュボード

同じことがゲームプレイダッシュボードでできるか試してみます。

ビジュアルの作成からです。「show me total gainExp by dungeonId」と入力すると見事に横棒グラフで表示してくれました。

Screenshot 2023-12-22 at 17.35.19.png

ちなみに日本語で「dungeonIdごとのgainExpの合計を表示してください」と入力したところ、同じグラフを表示してくれました。この辺りは指示の出し方によるのかもしれません。

Screenshot 2023-12-22 at 17.35.57.png

ビジュアルの調整はKPIダッシュボードと変わらなかったので、ここでは割愛します。

このようにビジュアルの作成・調整については日本語は苦手ですが、自然言語で対応することができています。見た目を変えてみてみたい、でも設定を触るの怖いという場合に便利に使える機能ですね。

データに関する質問

データに関する質問は QuickSight のダッシュボードで行います。

ダッシュボード上部に表示されているQのアイコンをクリックすると質問用の画面が表示されます。

Screenshot 2023-12-23 at 3.23.37.png

KPIダッシュボード

質問の入力欄で「Unique number of users starting December 2021(2021年12月に開始したユーザー数)」と質問すると以下のように正しい結果を返してくれました。

Screenshot 2023-12-23 at 3.22.42.png

ちなみに日本語で「2021年12月に開始したユーザー数」と入力したところ、回答することができませんでした。

Screenshot 2023-12-23 at 3.23.14.png

ゲームプレイダッシュボード

質問の入力欄で「Unique number of userid for Result Clear for DungeonId in 71(DungeonIdが71で結果がClearとなっているユニークユーザー数)」と質問すると以下のように正しい結果を返してくれました。

Screenshot 2023-12-23 at 3.29.54.png

ちなみに日本語で「DungeonIdが71でresultがclearとなっているユニークIDのユニークカウント数」と入力したところ、ほしい内容と違う結果が表示されてしまいました。

Screenshot 2023-12-23 at 3.33.04.png

日本語でのデータの質問は今後の精度アップに期待したいところです。

データストーリーの作成

次はデータストーリーです。データを説明してくれる文言・ストーリーを作成してくれる機能です。データストーリーは QuickSight のダッシュボードで行います。ダッシュボードの右上の「BUILD」メニューで「Data story」を選択します。

Screenshot 2023-12-23 at 2.06.23.png

KPIダッシュボード

説明に利用するビジュアルを選択した上で、どのような説明をしてほしいのかを入力して指示を出します。

今回は日本語で試してみます。売り上げ構成を表すグラフと日々の売り上げのグラフを使って「売り上げ構成を参考にして、売り上げを増大させる販売戦略を日本語で出力してください」と指示を出します。

Screenshot 2023-12-23 at 2.22.51.png

30秒ほど待つとストーリーが生成されて表示されます。

Screenshot 2023-12-23 at 2.20.09.png

Screenshot 2023-12-23 at 2.19.58.png

Screenshot 2023-12-23 at 2.20.23.png

Screenshot 2023-12-23 at 2.20.35.png

Screenshot 2023-12-23 at 2.21.05.png

Screenshot 2023-12-23 at 2.21.19.png

Screenshot 2023-12-23 at 2.21.38.png

ちゃんと日本語で販売戦略を提案してくれました!

ゲームビジネス・タイトルの文脈は理解していないため、そのまま使える提案とは言い難いですが、これをベースにゲームビジネスやタイトルの文脈を反映・修正していくことで提案に使えるようになるのではないかと思われます。

ゲームプレイダッシュボード

ゲームプレイダッシュボードではダンジョンでの利用武器・利用キャラクターの利用状況とプレイ回数のビジュアルを選択し、「ダンジョンの利用キャラおよび利用武器の構成を参考に、プレイ回数を伸ばすための施策を全て日本語で提案してください。」と指示を出してみました。

Screenshot 2023-12-23 at 2.46.54.png

30秒ほど待つとストーリーが表示されます。

Screenshot 2023-12-23 at 2.29.34.png

Screenshot 2023-12-23 at 2.29.47.png

Screenshot 2023-12-23 at 2.29.56.png

Screenshot 2023-12-23 at 2.30.07.png

Screenshot 2023-12-23 at 2.30.47.png

Screenshot 2023-12-23 at 2.31.02.png

傾向の説明は日本語で表示されたのですが、肝心の提案は英語になってしまいました。この辺りはまだプレビュー版ということで今後に期待です。

提案部分は日本語にすると以下の様な内容となります。

新武器提案

このセクションでは、プレーを多様化するための新しい武器コンセプトを紹介することを目的とする。潜在的な武器のアイデアの属性を効果的にプレイヤーに示すために、ビジュアルが必要である。検証の結果、ユーザーから提供されたグラフは、この目的が必要とする武器の比較タイプを示していません。例えば、この理想的なビジュアルは、理論的な魔法入り剣の強さと魔法の属性バランスを表示しており、このような武器がいかに斬新なキャラクターの組み合わせを可能にし、より多くのプレイヤーを惹きつけるかを説明することができる。

週末イベントシリーズ

このセクションでは、ダンジョンでのゲームプレイへの参加者を増やすために、週末に定期的に開催されるイベントを提案することを目的としています。一連の特別イベントの実施による参加者増加の予測を示すグラフは、目的を説明するのに役立つだろう。しかし、どのグラフも "イベントによるプレイヤーの増加予測 "という理想的なビジュアルに合致していないようです。そこで、「戦士の合宿」や「魔道士の講義」など、イベントスケジュール別のプレイヤー数増加予測グラフを新たに作成し、本節の目的に沿うようにすることを提案する。

ゲームショッププロモーション

関係者に収入増加の見込みを示すためのビジュアルが必要。利用可能なグラフのどれもが、プロモーションキャンペーンを通じてゲーム内購入を動機付けるという目的に合致していない。例えば、プロモーションによる収入増加予測を示すグラフがあれば、ゲームバランスを崩すことなく、プレイで集めたレアアイテムの武器スキンを購入キャンペーンで提供することで、ゲーム内ショップへの関心を高めることができることを文章で説明できる。

アクションへの呼びかけ

提示された新しい戦略を取り入れることで、開発チームはより定期的なゲームプレイを動機付け、熱心なコミュニティを育成することができる。これらの提案は、様々なプレイスタイルのダンジョン体験を多様化し、継続的な体験を共有することで長期的な楽しみと興味を持続させることを目的としている。

まとめ

最後に、様々なダンジョンにおけるキャラクターと武器の利用傾向を調査し、ゲーム体験の様々な側面を祝う定期的なイベントや、継続的な楽しみをサポートするプロモーションを通じて、エンゲージメントを高めるための提案を考えてきた。最終的な目的は、この調査結果をゲームコミュニティの強化に活かすことである。

期待以上にかなりまともな提案をしつつ、もっとビジュアルが必要であるとの要求をこちらにしてきていますね。このような形で対話しながら提案を作り上げていくこともできそうです。

エグゼクティブサマリーの作成

最後にエグゼクティブサマリーです。エグゼクティブサマリーは QuickSight のダッシュボードで行います。ダッシュボードの右上の「BUILD」メニューで「Executive Summary」を選択します。

Screenshot 2023-12-22 at 18.28.10.png

選択すると30秒ほどでサマリーが表示されます。なお、表示内容の調整や言語の調整は今のところできません。

KPIダッシュボード

KPIダッシュボードではこのような内容が表示されました。

Screenshot 2023-12-22 at 18.09.06.png

  • The sheet shows sales, user engagement, and revenue metrics for a mobile game app, with highest activity in December 2021.
    • Total monthly sales increased 131.47% from November to December 2021, reaching ¥252,554,500 in December.
    • Daily active users peaked at 22,913 on December 30, 2021, up 0.13% from the prior day.
    • Weapons, game items, and skins were the top 3 item types by revenue in December.
    • Google Play, Other, and Steam were the top 3 stores by revenue on December 30.

日本語にすると以下のようになります。

  • このシートは、モバイルゲームアプリの売上、ユーザーエンゲージメント、収益の指標を示し、2021年12月のアクティビティが最も高くなっています。
    • 月間総売上高は2021年11月から12月にかけて131.47%増加し、12月には252,554,500円に達しました。
    • デイリーアクティブユーザーは、2021年12月30日に前日比0.13%増の22,913人でピークに達しました。
    • 武器、ゲームアイテム、スキンが12月の収益上位3アイテムです。
    • Google Play、その他、Steamが12月30日の売上高上位3ストアとなりました。

要約としては正しいのですが、もう少し表示量や内容を調整できると嬉しいですね。

ゲームプレイダッシュボード

Screenshot 2023-12-22 at 18.20.58.png

  • The sheet visualizes dungeon gameplay statistics in a game application, including dungeon completion rates, character and weapon usage, and daily gameplay metrics.
    • The top 3 dungeons by total records are dungeon 22, 23, and 24.
    • The most used characters are character01, character14, and character28.
    • The most used weapons are weapon16, weapon15, and weapon18.
    • Highest daily plays was 326,410 on December 31, 2021. Lowest was 232 plays on July 1, 2021.

日本語にすると以下のようになります。

  • このシートは、ダンジョンクリア率、キャラクターと武器の使用率、1日のゲームプレイ指標など、ダンジョンのゲームプレイ統計をゲームアプリケーションで可視化したものです。
    • 総記録数の上位3ダンジョンは、ダンジョン22、23、24です。
    • 最も使用されたキャラクターはcharacter01、character14、character28。
    • 最も使用された武器は武器16、武器15、武器18。
    • 1日の最高プレイ回数は2021年12月31日の326,410回。最低は2021年7月1日の232回。

こちらは要約としては正しく、ざっと内容を把握できる内容になっています。

まとめ

個人的には想像していた以上に自然言語での分析ができていて驚きました。

ただ、まだゲームビジネス・ゲームタイトルのコンテキストが理解できていないため、その点は人間が補足してあげる必要がありそうです。この辺りはRAGやファインチューニングで補足してあげられると良さそうですね。

また、日本語については使えるところと使えないところがありました。こちらはまだプレビュー版ということで一般公開時の対応言語の追加と精度アップに期待したいと思います。

このあたりを実現ができれば、プランナー・ディレクター・プロデューサーがエンジニアの力を借りることなく、ゲーム分析を日本語で行うことができる日も遠くなさそうです。

QuickSight Q のアップデートの一般公開と機能拡充が待ち遠しいですね!楽しみに待ちたいと思います!

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