目的
IBM QRadar Community Edition Ver 7.3.3がリリースされました。
IBM Developerサイトからイメージを入手出来るのですが、ova形式になっており仮想基盤が想定された配布形式になっています。
AWS環境に QRadar Community Edition を導入するに際して、幾つかの注意事項があったため、本投稿に至りました。
そのままではAWSには導入できない?
AWSでは vmimport を利用してovaイメージを導入することも出来るのですが、残念ながら、IBM社提供のQRadar CE Ver.7.3.3 ovaイメージでは以下の理由によりそのままの導入が出来ません。
- ovaイメージには初期セットアップが必要
- QRadar CEのインストーラはptyが前提になっている
- 初期セットアップを行わないとSSHが有効化されない
- AWSのEC2に接続するためにはSSH、Systems Manager (Session Manager)などの仕組みが前提になる
本家の Forums でも話題になっていましたが、そもそもパブリッククラウドでの動作環境をサポートするものでも無いようで、ovaイメージ側で対処する雰囲気も無い様子です。
このままでは悔しいので、以下の方法で実践してみることにしました。
AWSへの導入手順 ~マイグレーションツールの活用~
今回用いた手順は以下のステップになります。
- PC側で仮想ツールを用いてQRadar CE V733をセットアップ
- 自PCに VirtualBox を入れて QRadar CE V733 OVAをセットアップする
- 初期セットアップが完了するまで進めておく
- CloudEndure によるAWSマイグレーションの実施
- 仮想で作成した QRadar CE V733 に CloudEndure のagentをダウンロード
- AWS側の自アカウントに対応するキー設定でマイグレーションを開始
- AWS側にイメージが作成が作成された後、AWS側に接続して完了
CloudEndure Migration とは?
AWSが買収したクラウドマイグレーションツール。詳細はこちら
稼働状態のサーバにagentを入れて、Internet経由でイメージを吸い上げ、そのままVPCへEC2のイメージを作成してくれる便利なツール
事前準備 ~ CloudEndureのアカウントを作ろう~
AWSアカウントとは別に、CloudEndureのアカウントを作成する必要があります。
https://console.cloudendure.com/#/register/register
無料で作成出来ます。作成後はconsoleからログイン出来るようになります。
詳細は割愛しますが、CloudEndureのセットアップは以下の通りです。
Setup&Infoより
- AWS CREDENTIALS
- 移行先のAWSクレデンシャル情報を入力します。
- IAMユーザーの AWS Access Key ID、Secret Access Key、アカウント番号
- REPLICATION SETTINGS
- 移行時の設定を入力します。
- Migration Targeにリージョンを指定(例:Tokyoなど)
- 移行先のVPC設定
- 移行後のインスタンスタイプなど(m4.xlargeなど)
移行時の注意点
IBM QRadar Community Editionのクセがあるため、以下留意事項です。
- VMでQRadar CEを構築する際、IPアドレスはAWS側を意識したサブネットで設定する
- QRadarの仕様で、管理IPアドレスを変えるのはとても大変なため
- リモートでqchange_netsetupコマンドが使えないので、予めAWS移行先のVPCサブネットレンジで設定する
- VM側ではNATなどを用いて、サブネットをAWS側想定で設定すると良い
- QRadar CEのインストールには時間がかかるので注意
- 昔からそうだったが、QRadarのインストールは数時間かかる
- 自PC環境で設定するのは6GB設定でも問題は無かった(時間がかかるだけ)
やってみよう ~ QRadar CEにCloudEndure Agentをぶち込む ~
QRadar CEの母体はRedhat Enterprise Linuxです。CloudEndureコンソールに記載された手順で導入してみます。
For Linuxの部分を見ると、wgetでscriptを落として、pythonで実行すればいいようです。やってみましょう。
作成したVM側からInternetアクセスが出来る前提にになりますが、これを用いることで CloudEndure 側にイメージを吸い上げることが容易に出来ました。以下、注意点です。
- イメージ吸い上げは自動で行ってくれるのですが、とても時間がかかります。半日~1日放置するハメになるので、自PC環境を気を付けましょう
- 自PCのネットワークも影響があるので注意。ノートPC環境でVM構築、WiFiで接続していたのですが、とてつもなく時間がかかっていました。LAN接続+VM再起動をかけた結果、かなりスピードが改善して2-3時間で終了しました。
CloudEndureからデプロイしてAWS環境に導入する
無事、イメージが吸い上げが完了したら、対象のAWS環境にデプロイをCloudEndure consoleから実施します。
ここでデプロイするモードが2つ存在しますが、違いは以下の通りです。
- Test Mode
- テスト実行モード。吸い上げたイメージを残したまま、EC2を作成する
- Cutover Mode
- CloudEndureで吸い上げたイメージは削除し、EC2を作成する
最初はTest Modeで実行することをお勧めします。作業進捗はJob Progressから確認が出来ます。
AWS側でEC2が立ち上がっていることを確認する
Migrationが完了すると、EC2側で作成され起動していることが確認出来ます。
事前にセットアップしていたIPアドレスがVPC Subnetと同一であればInternetへのアクセスや、パブリックサブネットであればEIP経由のアクセスが可能になります。
ここでは、当方が実施したチューニングについて記載しておきます。
- SSHによるrootアクセスの禁止
- CloudEndureのMigrationでは、QRadar OVAのssh/rootアクセスがそのまま許可されていた(実際にEC2でもrootアクセスができてしまった)
- クラウドにおいてはSSH/rootアクセスは良くないので、sshdで無効化とする。
- SSH証明書接続方式に変更 / ec2-userの作成
- AWSでは ec2-user のデフォルトユーザー、SSH証明書接続が基本となっている
- コンソール接続するに際して、他アクセスと同一にしたいので、キーペアによる証明書接続に変更
- SSM-Agent (Systems Manager) の導入
- AWSのEC2管理は Systems Managerが便利。今後、session managerによるアクセスに変更したいので、ssm-agentを導入
QRadarにSSM Agentを入れた運用については、今後触れていきたいと思います。
IBM QRadar Community Editionへアクセス
ここまで来たらこちらのものです。これでAWS環境でQRadar Community Editionを存分に触れます。
無事に QRadar Community Edition をAWS環境に導入出来ました。
次回はAWS環境における諸設定事項、AWSログソースの取り込みについて触れたいと思います。