はじめに
スクラムチームでサービス開発をしています。
私たちのチームで続けている「リファインメント」の活動をご紹介します。
この活動を通じて、チーム運営が改善され、心理的安全性の向上にもつながっていると感じています。
リファインメントが継続的にできない・チーム運営に課題がある方などのご参考になれば幸いです。
なお、この記事では、スクラムに関する用語をある程度略して書かせていただきます
- PBI=プロダクトバックログアイテム
- PO=プロダクトオーナー
リファインメントについて
定義のおさらい
スクラムガイド(2020年11月版) でリファインメントについて書かれているのは、「プロダクトバックログ」の章です。
1 スプリント内でスクラムチームが完成できるプロダクトバックログアイテムは、スプリントプランニングのときには選択の準備ができている。スクラムチームは通常、リファインメントの活動を通じて、選択に必要な透明性を獲得する。プロダクトバックログアイテムがより⼩さく詳細になるように、 分割および定義をする活動である。 これは、説明・並び順・サイズなどの詳細を追加するための 継続的な活動である。 多くの場合、属性は作業領域によって異なる。
ここから、リファインメントでの活動は、以下のようなものが挙げられます。
- PBIを詳細化する
- PBIを適切に小さくする
- 並び順を更新する
これらの活動により、PBIでやることを明確にし、最新の状況や顧客のニーズを反映しながら、小さくインクリメントできる状態にすることができます。
とはいえ:ちゃんとできてる?
リファインメントは継続的活動とされているものの、(プランニングなどと異なり)いつやるかは規定されていません。
実際に、私も過去のスクラムチームでは 「やろうと思ってはいるができていない」 ことが多かったです。
やらなくても、なんとなく回せる感じになってしまいます。
ただ、リファインメントをやらない状態が続くことで、いろいろと問題があったように思います。
- ゴールが曖昧・どこまでやるかが人によって認識が異なる
- 最新の情報が反映できていない
- PBIを更新する作業に追われる、更新するPOの負担だけが増える
などです。
毎日やることにした
今回の私たちのチームでは、リファインメントを継続的に実施できるよう 「毎日30分ずつリファインメントをやる」 ことにしてみました。
参加者は、営業担当者・PO・スクラムマスター・一部の開発メンバーで、5人くらいの少人数で行うことにしました。
話す内容によっては、その分野に詳しい別のメンバーを呼ぶこともあります。
私たちのチームは開発メンバーが約10人と多かったので、リファインメントの参加者は少人数にして、そこでの意思決定を素早くしたい狙いです。
チームの人数によっては、全員でリファインメントをやるのもよいと思います。
話していること
リファインメントの中で、どのような話題を話しているかをご紹介します。
- 次以降のスプリントの計画・PBI並べ替え
- PBIの内容検討
- UX・デザイン検討
- その他、PBI見積もりのための材料揃え
ここまではスクラムガイドに書かれているような内容の議論ですが、
毎日リファインメントを続けていく中で、他の話題も話すようになりました。
- お客様からの問い合わせや要望の共有
- 要望に応える手段の検討
- 障害・不具合に関する情報収集結果の共有
- 障害・不具合の対応方針の検討
- 長期計画(向こう3ヶ月〜半年)の見直し・更新
- 連携している外部サービスの障害情報やアップデートの確認
- チーム運営・進め方の改善検討
などです。
こうして私たちのリファインメントは、リファインメントと称した 「気になることをいろいろ話す場」 になりました。笑
よいと感じること
スクラムにおけるリファインメント本来の活動からはみ出している部分もありますが、この活動を続けてみてよかったと感じていることがいくつもあります。
- 最新の状況を反映できる
- 各役割・観点からの情報をタイムリーに共有できる
- プロダクトの方向性を頻繁に確認・修正できる
- 素早い決定ができる
- 全員で議論する前の準備ができる
- 負荷が少ない
- 次回以降に持ち越せる
- いろいろなことを話せる
- 雑談できる
最新の状況を反映できる
チームやプロダクトを取り巻く状況・お客様のニーズなどは日々変わっていきます。
これをPBIの優先順位などにすぐに反映できます。
各役割・観点からの情報をタイムリーに共有できる
営業・PO・開発メンバーなど、それぞれの立場で把握している状況や持っている情報が異なります。
頻繁に集まることで、これらの情報をタイムリーに共有でき、多様な選択肢から次のアクションを検討することができます。
プロダクトの方向性を頻繁に確認・修正できる
長期計画について話せる機会を持てることで、直近の作業がどこにつながっているかを確認したり、計画自体に違和感を感じたら見直すこともできます。
頻繁に 小さな「向きなおり」 ができている状態でもあると思います。
素早い決定ができる
少人数で話すため、素早い決定ができます。
たとえば障害などで緊急の対応が必要だったとき、誰がどう対処するかを素早く決められたのはよかったです。
全員で議論する前の準備ができる
チームとしての意思決定などは、全員での議論が必要だと考えています。
その前にある程度論点をまとめたり、予め少し検討しておくことで、全員の場での不要な発散を抑制したり、議論の負荷を下げたりすることができます。
負荷が少ない
毎日30分ずつの短時間なので、お互いが拘束される負荷を抑えながら進められます。
次回以降に持ち越せる
翌日も集まることがわかっているので、時間が足りない時は次回に持ち越す判断もしやすいです。
いろいろなことを話せる
POや営業メンバーを含めて確認したいことや、少し気になっていることなど、幅広い話題を出せるようになりました。
雑談できる
毎日集まるので、雑談する機会も多くなりました。
家庭でのできごとや体調のことなど、フランクな話ができたため、POやメンバーとの距離が縮まる効果もあると感じています。
私自身雑談は苦手なほうで、こういった場を持てること自体が、チームの心理的安全性を高めることにもつながっていると思います。
気をつけていること
私がこのリファインメントを進行することが多いのですが、進行するうえで気をつけていることはいくつかあります。
- 場を持てることに感謝する
- 発散・脱線OK
- 書きながら話す
- 話したことや議論の経緯は書き残しておく
- 時間をかけすぎない
- 前向きな議論をする
- チーム内で情報格差ができないようにする
場を持てることに感謝する
毎回感謝を伝えているわけではないですが、感謝の気持ちを持つことは大事だと思っています。
場を持つ重要性を理解されていることや、毎日時間を作って集まれていることに感謝することで、場を形骸化させず、より有意義な議論ができるようにしたいと考えています。
発散・脱線OK
程度やケースによりますが、発散や脱線をしてもあまり止めていません。笑
それよりも、いろいろなことが話せることを実感できたり、別の気づきにつながったりするので、そのプラス効果のほうを活かしたいと考えています。
書きながら話す
口頭だけでいろいろと話していると、議論が混線してしまいます。
会議の進行と同時に私の画面を共有していることが多いので、特にこの「空中戦」になってきたときは、みんなが見えるところに書きながら話すことを意識しています。
そうすることで、みんなで見ながら認識を合わせられることが効果として大きいです。
時系列の事象・いまわかっていること・解決したいことなどを視覚的に確認でき、時には書いている私自身が誤解していることも知ってもらえます。
そういった理解のずれも含めて認識を合わせられます。
また、このように書き出すことを続けたことで、私の「議事まとめスキル」が少しだけ向上したような気がします。笑
話したことや議論の経緯は書き残しておく
決定事項だけでなく、なぜそう決めたかの経緯や、その時話したことを書き残しておくことを意識しています。
私が次の日になると忘れてしまうからです。笑
でも、私だけではなく他のメンバーも時間が経つと忘れてしまうことがわかってきたので、やはり思い出せるようにしておくのは大事だと思っています。
時間をかけすぎない
自分たちが持っている情報だけではどうしても決めきれない選択もありますが、悩み続けても進みません。
何かしら仮説を立てるなどして、進められるようにしたいと考えています。
時間を30分と短めにしていることで、その間に何か進めなければいけないと思わせる効果もあるかなと思います。
前向きな議論をする
当たり前かもしれませんが、犯人探しをしたり誰かを悪者にするのではなく、チームのプロセスを改善することで解決できる手段を模索するなどは続けていきたいです。
チーム内で情報格差ができないようにする
先述の通りリファインメントのメンバーを少し絞っているので、参加しているかどうかで情報の差ができないようにしたいと考えています。
情報の差が大きいと、信頼関係や心理的安全性を崩すことにつながると思うからです。
リファインメントで決まったことは、全員が集まる場で共有するのを忘れないようにしています。
議論の経緯を書き残しておくことで、こういった共有がスムーズにできるという効果もありました。
おわりに
私たちのチームの「リファインメント」の活動をご紹介しました。
ほかのチームでの活動のご参考になれば幸いです。