この記事の背景
先日、約4年間所属していたスクラムチームを離脱しました。
このチームが、私はとてもよいチームだと感じました。
なぜそう感じたかを言語化しておくことで、ほかの誰かや私自身が今後チーム運営していくうえで参考になるかもしれないと思い、今回まとめてみました。
なぜよいチームだと感じたか
以下に挙げてみました。
- エンジニアの地位が確保されている
- 互いの立場を理解しようとする
- 分業しすぎない
- わかるように説明することを試みる
- オープンに話すことができる
- 間違いや誤りを受け入れる
- 士気やオープンさを妨げる態度や言動をしない
- 邪推しなくてよい
- 「チーム vs 課題」の形にできている
- 個人ではなくチームでの取り組みを改めるアプローチができる
- 集まって話す機会を頻繁に持てる
- 自分たちでドライブしている感がある
それぞれをこの後詳しく見ていきます。
エンジニアの地位が確保されている
このチームは、エンジニアの意見が尊重され、信頼されているチームでした。
これにより、 エンジニアが安心して発言したり提案したりできる 状態になっていました。
私はエンジニアの立場だったので、この状態になっていることがとてもありがたかったです。
チームで健全な議論をするために、自由に発言をできる環境であることは重要ですが、これはなかなか難しい要素だと思います。
実際に、私の過去のチームでもなかなかこの状態を作れなかったことが多かったです。
企画メンバーやプロダクトオーナーが契約上の「発注者」にあたるケースが多く、プロダクトオーナーが「依頼・検査・評価する側」、エンジニアが「作る側」となり、どうしてもエンジニアが立場的に弱くなってしまう構造になりやすかったです。
この状況では、プロダクトオーナーから常に疑いの目を向けられるプレッシャーがあったり、話を始める前にまずはその疑いを払拭するところから毎回やらなければいけませんでした。
今回のチームでも、契約上はプロダクトオーナーが「発注者」にあたるケースだったのですが、企画メンバーやプロダクトオーナーのスクラムに対する理解が深く、 ワンチームで一緒にやっていこう という意識を強く持ってもらっていたおかげで、このような状態になっていたのだと思います。
互いの立場を理解しようとする
企画メンバー・プロダクトオーナーはできるだけ技術面の理解をしようとし、
開発メンバーはできるだけ顧客や企画側の視点でも考えようとしていました。
異なる立場にあることで、見えていること・考えていることや優先したいことが異なりますが、相手の立場での考え方を尊重できる ようなチームになっていました。
分業しすぎない
プロダクトオーナーが考えなければいけないこと・開発メンバーが考えなければいけないことなどはそれぞれありますが、「それはそちらの仕事」と言い切らず、 協力できるところは協力する ような関係ができていました。
また、 属人化防止や知識展開はできるところからやる ようにしていました。
たとえば、スプリントレビュー・ふりかえりなどの進行役や、エラー通知の解析などは持ち回りでやっていました。
また、我々のサービスを利用したい企業からセキュリティチェックシートの記入を求められることもよくあり、この作成作業も誰か特定の人がやるのではなく、持ち回りでやっていました。
これだけではありませんが、知識・知見が誰かだけに閉じてしまっていると感じたら、それをチームに展開するにはどうすればよいかを積極的に考えられるチームでした。
わかるように説明することを試みる
立場やバックグラウンドが違うと持っている知識も異なりますが、何かを説明する時に「言ってもわからないだろう」と諦めずに、 わかるように説明する よう努めていました。
また、聞く側も同様に「聞いてもわからないだろう」と諦めずに 理解しようとする 姿勢がありました。
これは説明する側だけではなく聞く側の意識も必要となります。
なので難しいことではありますが、私はとても重要なことだと考えています。
どちらかが諦めてしまうと、一部のことが理解しきれない・説明されない状態になってしまいます。
これが積み重なると、知っていることが分離され、知らない部分に関して疑いを持ったり、邪推することにつながってしまうと考えています。
わかるように説明される・わかるように聞こうとする状態が作れていると、 お互いの知見を尊重する ことができます。
そうなることで、先述の エンジニアの地位が確保されている 状態にもなっているのだと思います。
また、多様な知見を認め合うことで、それぞれの知見を持ち寄って いろいろな手段を試すことができるようになる という効果もあると思います。
オープンに話すことができる
チーム外のことでも、困っていること、体調、家庭の事情など、オープンに話せる雰囲気を作れていました。
特に、体調の良し悪しは誰しもある(が、ちょっと言いづらい)ことなので、そういうことも話しやすくなっている状態は良いと思いました。
たとえばこのチームでは、強い偏頭痛持ちのメンバーがいて、台風や気圧変化がある時は毎回大変そうでした。
そういう人がいるんだと認識することも、お互いを尊重することにつながっていたと思います。
もちろん、すべてを話せているわけではなく、そうする必要もないと思います。
話したい時に話せる=「可能である」状態だったこと、またそれがみんなで認識できていたこと が快適だったのだと思います。
一方で、オープンさを強制・強要されるとちょっと不快になるのでは、とも思います。
(たとえば「朝の3分間スピーチで何かプライベートなことを話させられる」などは私は嫌なほうです)
なのでバランスが難しいところではありますが、このチームではそれがちょうどよい感じにできていました。
間違いや誤りを受け入れる
私は、以前に話していたことをよく忘れていたりします。
ほかのメンバーより知識がないことも多いです。
また、みんなが議論している内容が正しく理解できず、自分だけ間違った認識を持っていることもあります。
こういった、 覚えていないこと・知らないこと・認識間違いがあることなどを素直に言える チームでした。
もちろんこれは私の記憶力の悪さや不勉強な部分でもあるとは思いますが、ほかのメンバーも同じように忘れていることは意外とあるし、専門分野や興味によって知識の偏りは誰にでもあることが、だんだんとわかってきました。
であれば、変に「常識」を作らずに、わからないことを正直に言える状態のほうが心地よいのではないかと思います。
このようなことをお互いに言える状態になっていたことで、 誰かが間違っていても責めたり否定したりせずに、受け入れたうえで議論を進める ことができていたと感じています。
士気やオープンさを妨げる態度や言動をしない
- 否定的な言葉、暴力的な言い回し
- 怒る・不機嫌・横柄・偉そう など、周囲を威圧する態度
- 強制力のある言葉:「絶対に」「〜べき」など
このチームでは、このような態度や言動がありませんでした。
できているチームでは当たり前のことですが、私が見聞きする限りでは、これらが横行するケースもよくあるように思います。
これらが横行するチームでは、 怒られないために発言すること自体をやめる などの行動につながります。
そうすると、オープンさや充分に説明されている状態が損なわれ、お互いを疑ったり見えないところで文句を言い合うような関係になってしまうのではないかと思います。
邪推しなくてよい
これもオープンさの話につながりますが、言外の意図をよく感じるような関係の中では、 「言わないけど実はこう思っているのでは」 と思ってしまうこともよくありました。
今回のチームでは、必要なことは説明されている認識を持てていたので、このような邪推をする必要がありませんでした。
「チーム vs 課題」の形にできている
チーム内で対立するのではなく、 「チーム vs 課題」 になっていました。
スクラムなどの文脈でこうすべきとはよく言われていますが、それが意識できているチームでした。
個人ではなくチームでの取り組みを改めるアプローチができる
何か問題が起こった時に、悪い人(≒犯人)を特定するのではなく、 チームのプロセスとして改善できることは何かを議論できる ようなチームでした。
これもできているチームでは当然なのですが、周囲では「犯人探し」が横行するケースも聞いたことがありました。
集まって話す機会を頻繁に持てる
デイリースクラムやスプリントレビューなど、 集まる場を持つことの重要性が全員に理解されている ように感じました。
そのため、これらの場に参加する優先度が下がったり、いつもいない人がいたりはしませんでした。
よくあるのが、プロダクトオーナーが忙しすぎて毎回欠席するケースなどです。
このように参加できない人やタイミングが増えていくと、集まる場自体が形骸化してしまい、その場での本来の目的を達成できなくなってしまいます。
自分たちでドライブしている感がある
いちメンバーの立場としても、 自分たちで決めて自分たちで動かしている感覚を持てる チームでした。
プロダクトオーナーやリーダー的な誰かが引っ張っている・コントロールしているのではなく、自分たちで動かしている感覚を持てることで、メンバーそれぞれが主体性・自律性を持って動けるようになっていたのではないかと思います。
おわりに
ふりかえってみてあらためて感じたのは、チーム運営をよくするために 「誰かが」動くだけでは、このようにはならない ということです。
何か変えようと提案する人 / それをやってみる人、しっかり説明しようとする人 / ちゃんと聞こうとする人 など、 双方・全員の意識 がないと成り立ちません。
また、それぞれの特徴や取り組みは、互いに関連しそうなものも多かったです。
たとえば、しっかり説明することによってお互いを尊重する関係になる、言動に気をつけることでオープンさを維持できる、などです。
私は今回のチームを「よいチーム」だと感じましたが、「よいチーム」の定義は人によって異なるかもしれません。
チームメンバーがこのような「よい」雰囲気を作ってくれたのも、 チーム運営における価値観が近いメンバーが揃っていた からこそだったのかな、とも思います。
今後のチームにおいて、全員が近い価値観を持っていて、全員が協力的になってくれるとは限らないので、今回と同じようなことができるかどうかはわかりません。
しかし、ここに挙げた要素を1つずつでも取り入れていけるように、働きかけができたらよいなと思います。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
ほかのチームの方にもご参考になれば幸いです。