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Huaweiから学ぶ、AndroidのOS開発やライセンス

Last updated at Posted at 2019-09-27

はじめに

Androidはオープンソース」ということは、多くの皆様がご存知だと思います。
ですが、Androidの開発元がどこで、どのようなライセンスで、どのように皆様のスマートフォンに搭載されているか、説明できる方は少ないと思います。

また、少し前に、Huaweiがアメリカに経済制裁を受けた影響で、「Huaweiのスマートフォンは今後、Androidが販売できない」のような『噂』が流れました。
ですが、そのような噂には間違いがあります。

今回は、Androidの成り立ちや開発、ライセンスについて、少し深堀りしていきたいと思います。

※指摘や修正依頼、大歓迎です!

AndroidのOS開発の流れ

Androidは以下の画像のような流れで開発され、ソースコードが公開されています。

次期バージョンをGoogleがクローズドソースとして開発

Androidの次期バージョンは、オープンソースとなる前に、まずGoogleによって、クローズドソースとして開発されます。

AOSPに公開

その後Googleによって、Android Open Source Project (AOSP、Android オープンソースプロジェクト)に、ソースコードが公開されます。
こちらの記事は、2019/9/3に、Android10のソースコードがAOSPに公開されたニュースになります。
ソースコードやリリースノートはこちら

また、この時点でのAndroidは時折、「素のAndroid」と呼ばれます。
素のAndroidには、必要最低限の機能とアプリのみ搭載されています。

この「素のAndroid」に搭載されているアプリは、主に以下のようなものがあります。

  • アルバム
  • 電卓
  • カレンダー
  • カメラ
  • 時計
  • 電話帳
  • 電話
  • Eメール
  • ホーム
  • IM
  • メディアプレーヤー
  • フォトアルバム
  • SMS/MMS

そして、この「素のAndroid」のOSSライセンスは、「Apache 2.0」となっています。
参考:https://source.android.com/setup/start/licenses
Apache 2.0は非コピーレフトのライセンスなので、素のAndroidをカスタマイズしたとしても、カスタマイズ後のソースコードを公開する義務はありません。

Googleのアプリ追加

この「素のAndroid」について、気付いた方は気付いたかもしれませんが、この時点では、「Google Chrome」や「Google Map」「Google Play」など、Googleのアプリが追加されていません。
素のAndroidには、Googleのアプリが含まれないことになります。

では、Googleのアプリはどのように追加されるかというと、それはGoogle Mobile Services (GMS)という、Googleが提供するサービスによって追加されます。
これらのサービスは、Googleのライセンスによって提供されます。そしてGoogleの提供するアプリケーションは、オープンソースではありません。
※ちなみに、ここでいう「Google」は、Androidの開発版を開発していたGoogleとは分けて考えたほうが良さそうです。

GMSで含まれるアプリは、以下のようなものです。

  • Google検索
  • Google Chrome
  • YouTube
  • Google Play ストア
  • Google Drive
  • Gmail
  • Google Map
  • Google Photos

Googleは、「Google モバイルサービス(GMS)」を無料で、端末のメーカーにライセンス供与しています。
しかし、これは一定の基準が満たされた場合に限られます。
だいたいの端末は、これらのGMSによって、Googleのアプリケーションが追加されていますが、中にはそうではないスマートフォンもあります。
各メーカーが申請し、Googleが許可した場合のみ、Googleのアプリケーションが追加されるわけです。

自社の端末用にカスタマイズ

そして、「素のAndroid」をベースに、各スマートフォン開発会社は、自社の端末(スマートフォン)用に、Androidのカスタマイズやコードの追加を行います。

例えば私が愛用する、SamsungのGalaxy Note8は、「Sペン」という、付属ペンを使用してスマートフォンに文字や絵を描ける、という機能があります。
この機能は当然、他のメーカーのスマートフォンには搭載されていません。これはSamsungが、素のAndroidをカスタマイズし、機能追加を行ったということになります。
同じバージョンのAndroidだったとしても、メーカーやスマートフォンによって機能に差が生じるのはこのためです。

また、素のAndroidのライセンスはApache 2.0なので、このカスタマイズ内容をオープンソースとして公開する義務はありません。
(素のAndroidのライセンスを明示する必要はありますが)

各メーカーはこれらの作業を、行うことによって、Androidのスマートフォンのプリインストールを設定していきます。
みなさんが「Android」と思っていたものは、実は

  • Android AOSP
  • Google Mobile Services
  • 各メーカーが独自に追加した機能

の3つの組み合わせだったんですね。

流れをまとめると、こんな画像になるでしょうか。
Android2.png

(※GMS→独自機能と書いてますが、正確にはこの順番じゃないかもしれません。平行かもしれない。イメージとして考えてください)

Huaweiの新端末

2019/09/19、Huaweiは「Mate 30」という新スマホを発表しました。
前述の問題から、「HuaweiからAndroidの新スマホは出ないのではないか」とも言われてましたが、決してそんな事はありませんでしたね。
https://japanese.engadget.com/2019/09/20/mate-30-google-play/

ですが、ここで面白い事実があります。
それは、「このMate 30には、Android OSを搭載するスマートフォンにかかわらず、Google Play Storeを含む各種Googleサービスが非搭載」ということです。

これまでの話が無かったら、「なぜ???」と思う方もいるかもしれません。
ですが、ここまで話を読んでくださった方なら、きっとわかると思います。それはつまり、

  • Android AOSPはオープンソースだから、事情があってもHuaweiの新スマホに搭載できた
  • でもGoogleのアプリケーションはGoogleへの申請が必要だから、経済制裁によって許可が下りなかった
  • なので、Android搭載だけどGoogleのアプリケーションは非搭載になった ということなのです。

ちなみに時々、「今はHuaweiもAndroidを搭載できるけど、将来的にはGoogleが制約を掛けて、Androidの搭載も出来なくなるかもしれない」という記事を見ますが、それは99.99999%ないと考えます。
なぜなら、オープンソースの定義で「個人やグループに対する差別の禁止」というものがあるからです。
仮にそんな事はあったら、それはオープンソースの原理原則を捻じ曲げることになります。
なので絶対無いです。きっと。

ですが、「Google Playストアが利用できない」という状況は、今後も継続するかもしれません。
Google Playストアには本来、素晴らしいAndroidアプリがたくさんありますので、「それらのアプリが利用できないスマートフォン」というのは、Huaweiにとって非常に痛手であることには変わりません。
そのため、Huaweiは現在、独自のストアを用意する、ということは噂されていますね。どうなることやら。

まとめ

以上、Androidとオープンソース、Googleの関係、ならびにHuaweiについて語りました。
普段Androidをお使いの方は、「これはどのフェーズで作られたものなんだ!?」と妄想すると楽しいかもしれません。
また、オープンソースを勉強するにあたって、良い題材になるとも思います!

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