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TCE で OSS を始めよう!

Last updated at Posted at 2021-11-30

こんにちわ!TUNA-JP の運営をしております、佐藤寛貴と申します。

TUNA-JP を改めて簡単に紹介すると、VMware Tanzu と呼ばれる Kubernetes のプラットフォームと、そこで使われる OSS 郡を活用するための、日本のユーザーのためのコミュニティ として、この度立ち上げました。

VMwareと聞くと、「エンタープライズ向け製品の会社でしょ?興味ないなぁ・・」と思った方もいるかもしれません。でも本日ご紹介する Tanzu Community Edition (以下、TCE) は、なんと無料で使えちゃうんです!そして、そこで利用可能になる OSS エコシステムの機能は、vSphere ユーザ以外の方でも、魅力的な選択肢となるのではないかなと、思っております。

そう、今、TCE で Kubernetes がとても熱いんです!

TL;DR (この記事の要約)

  • TCE のことをざっくり学ぶ
  • tanzu package コマンドが凄い!

速習!TCEの予備知識

いきなりTCEの話を始めても「???」となってしまうかと思うので、まずは、いくつかの予備知識をインプットさせていただきます。(既に知っている人は読み飛ばして下さい)

質問1. そもそも Tanzu って何?

答え: Tanzu とは、日本語の タンス(コンテナを表現)と、スワヒリ語の (可能性の分岐を表現)をかけ合わせた造語です。それ以上に深い意味は無いはずなので、とりあえずは、VMware が提供している、 Kubernetes に関するエンタープライズ向けのなんか凄そうな製品群 と思えておいて下さい。

質問2. Tanzu のコミュニティ版 (TCE)って、どういうこと?

答え: まず前提として、Tanzuの製品群の中核にあたる、Tanzu Kubernetes Grid (以下、TKG) と呼ばれる マネージドKubernetesを実現するための製品 があるのですが、その TKG のコミュニティ版(無償利用可)として、TCE が最近発表 されました。

TKG と TCE の主な違いは、Redhat Enterprise Linux (=TKG) と Fedora (=TCE) の関係に似ています。つまり、どんどん TCE で新しい試みが行われ、TKG に安定版としてフィードバックされる予定です。また、TKG のみが VMware からサポートを受けられる形となります。

(ただし今のところ、フォークされたばかりなので、主要な機能は全て使えちゃいます!つまり、使うなら今がチャンス!w)

質問3. どうやったらTCEが使えるの?

答え: 基本的には、Getting Started の指示に沿って進めるだけで、割と簡単に導入出来ちゃいます。

  • 最低限、TCE を操作するためのクライアントマシンが必要 : Windows/Mac/LinuxいずれもOK。
  • Kubernetesを入れるためのインフラも必要 : 現バージョンでは、vSphere/AWS/Azure に加え、クライアントの Docker に直接インストールする方法もサポートされており、かなり幅が広いです。

質問4. TCEのことをもっと知りたい!

答え: そんなあなたに朗報です!つい先日、TUNA-JP のオープニングイベントを開催した際の録画を公開いたします。そこで、TCE に関する説明とデモ(21分40秒〜)を行いましたので、参考になるかと思います。

TUNA-JP では、上記のようなイベントや、他にも様々なイベントを定期的に企画したいと思いますので、良ければみんなでワイワイやりましょう!
(参加方法: https://tuna-jp.tech から、Slack に Join して下さい!)

TCE の OSS 周りの機能を少し紹介!

さてお待たせしました、本題です。
TCE(TKG) は、AKS/EKS/GKE といった各クラウドのマネージド K8s に比べ、最後発ということもあり、あまり知られていないと思うのですが、実は OSS との統合周りがかなり凄いんです!本日は、そんな TCE の特徴を少しだけ紹介させていただきます。

※ 以下、「TCEは〜」 という主語になっているところは、TKG でも同等の機能を有しております

Tanzu の Kubernetes クラスタには、最低限必要な OSS が予め組み込まれている!

まずは、導入した Tanzu Kubernetes Cluster (以下、TKC) に、以下のコマンドを叩いてみましょう。

# 現在クラスタにインストールされている OSS パッケージの一覧を表示
% tanzu package installed list -A
/ Retrieving installed packages...
  NAME            PACKAGE-NAME                     PACKAGE-VERSION  STATUS               NAMESPACE
  antrea          antrea.tanzu.vmware.com                           Reconcile succeeded  tkg-system
  metrics-server  metrics-server.tanzu.vmware.com                   Reconcile succeeded  tkg-system

# 利用可能な OSS パッケージの一覧を表示
% tanzu package available list -A
(以下省略)

※ 上記コマンドの対象となる Kubernetes クラスタは、現在のコンテキストが対象。よって、別クラスタを確認したい場合、kubectl config use-context (コンテキスト名) で切り替えることで、確認可能。

なお上記の結果は、Docker環境で作ったTKCのため、本当に最小限しか入っていません。それでも最初から Antrea という CNI と metrics-server (kubectl top が使える) が入ってくるのが、通常の Kubernetes にはない、便利ポイントです。
以下は、Core パッケージと呼ばれる、導入時に Kubernetes に統合されるパッケージの一覧です。

OSS パッケージ名 説明
tanzu-addons-manager Managementクラスタにインストールされ、各 TKC インストール時に必要なアドオンを管理
ako-operator NSX Advanced Load Balancer (以下、ALB)を利用する設定を行った場合、こちらがインストールされて連携される
antrea CNI (TKC デフォルト)。VMware が中心となって開発し、Open vSwitch のKubernetes実装を実現。
calico CNI。世界で最も実績のある CNI の一つ。TKCインストール時にこちらを選択することも可能。
kapp-controller K8s内で"app"という単位で複数のリソース状態をまとめて管理してくれる便利ツール。kubectl get app で参照可能。(最初から入っているように見えるので、tanzu package installed に何故か入ってないのが謎。誰か教えて・・・)
load-balancer-and-ingress-service ALBのコンポーネント。vSphere環境にL4+L7ロードバランシング提供。
metrics-server kubectl top で Pod のCPU/Mem 利用状況を把握可能に!地味に便利。
pinniped 導入時に設定を行うと、K8sで認証機能が利用可能になる。OIDCとLDAPに対応。
vsphere-cpi vSphereインフラと統合するためのCloud Provider Interface
vsphere-csi vSphereのストレージと統合するためのCloud Storage Interface

TCEは、使える OSS パッケージをどんどん増やせちゃう!

実は Core パッケージだけじゃありません。必要に応じて、TCE が独自に用意したパッケージ郡を追加することができちゃうんです。

# 現在利用可能なリポジトリの一覧を表示
% tanzu package repository list -A
/ Retrieving repositories...
  NAME        REPOSITORY                                                                  STATUS               DETAILS  NAMESPACE
  tanzu-core  projects.registry.vmware.com/tkg/packages/core/repo:v1.21.2_vmware.1-tkg.1  Reconcile succeeded           tkg-system

# Tanzu Community Edition package repository を追加
% tanzu package repository add tce-repo --url projects.registry.vmware.com/tce/main:0.9.1
/ Adding package repository 'tce-repo'...
 Added package repository 'tce-repo'

# 上記のリポジトリが追加されているのが分かる
% tanzu package repository list -A
/ Retrieving repositories...
  NAME        REPOSITORY                                                                  STATUS               DETAILS  NAMESPACE
  tce-repo    projects.registry.vmware.com/tce/main:0.9.1                                 Reconciling                   default
  tanzu-core  projects.registry.vmware.com/tkg/packages/core/repo:v1.21.2_vmware.1-tkg.1  Reconcile succeeded           tkg-system

※ 最後のコマンド実行時の、Reconciling という表示は、パッケージがインストール中である状態を示します。数分待つと、Reconcile succeeded に変わり、パッケージが利用可能な状態に変わります。

これで準備が完了です。新たなレポジトリが追加されたため、tanzu package available listを叩くと、インストール可能なパッケージが増えていることが分かるはずです。以下は、TCEが用意したパッケージの一覧です。

OSS パッケージ名 Advent Calendar 説明
cert-manager 9 日目 @hondy444 様々な発行元からの TLS 証明書の管理と発行を、自動化するためのKubernetesアドオン
Contour 2 日目 @hichtakk EnvoyベースのIngressコントローラ。通常のIngressの他に、より高度なルーティングを実現するHTTPProxyリソースが利用可能。
external-dns 7 日目 @vkbaba DNSサーバと連携して、K8s の Service/Ingress リソースにDNSレコードを動的に提供できる
fluent-bit 8 日目 @yama-s K8s のログやメトリクスを収集し、K8s 外部のサービスに配信
gatekeeper 12 日目 @hirosat OPA (Open Policy Agent) の K8s CRD 実装。ポリシー制御に用いる
grafana -- メトリクスを可視化し、ダッシュボードを提供。Prometheus とセットで用いられることが多い。
Harbor カレンダー2 10日目 @making プライベート用コンテナレジストリ
knative-serving 5 日目 @ipppppei K8s を用いたサーバーレス・コンテナのデプロイを提供
local-path-storage -- ローカルストレージ(hostPath)を利用して、Persistent Volume 機能を提供
multus-cni 16 日目 @tarowork64 CNI。K8s Pod に複数のネットワーク・インターフェースを提供
prometheus -- K8s で利用可能なモニタリングツールとして、最も有名
velero -- K8s リソースのバックアップツール

※ 上記の Advent Calendar 列は、12/12 時点にエントリしてくれた人の情報を反映しています。後日、該当する記事が増え、更新が可能であれば、アップデートしておきます。

個人的な感想としては、K8s を運用していく上で便利なツールが良く選定されていて、いいラインナップなんじゃないかなと、思います。
さらにこの機能が意味するところは、お作法に沿ったレポジトリを用意して、お作法に沿ったパッケージをそこに置けば、あなたのパッケージを追加することができちゃいます!上級者な方は、是非独自パッケージの公開にチャレンジしてみては如何でしょうか?!

TCE なら、OSS の追加も、コマンド一発でお手軽導入!

さて、導入可能なパッケージが増えたところで、実際に Contour のインストール例を見てみましょう。

# 事前準備として、設定ファイルを用意。(設定ファイル自体は任意だが、今回のDocker環境では、ClusterIPの指定が必須)
cat <<EOF >contour-values.yaml
envoy:
  service:
    type: ClusterIP
EOF

# 利用可能なパッケージ一覧を表示して、パッケージ名を探す
% tanzu package available list
/ Retrieving available packages...
  NAME                                           DISPLAY-NAME        SHORT-DESCRIPTION
  cert-manager.community.tanzu.vmware.com        cert-manager        Certificate management
  contour.community.tanzu.vmware.com             Contour             An ingress controller
(以下、省略)

# 次に、そのパッケージ名を指定すると、利用可能なバージョンの情報が出てくる。
% tanzu package available list contour.community.tanzu.vmware.com
/ Retrieving package versions for contour.community.tanzu.vmware.com...
  NAME                                VERSION  RELEASED-AT
  contour.community.tanzu.vmware.com  1.17.1   2021-07-23T18:00:00Z
  contour.community.tanzu.vmware.com  1.17.2   2021-07-23T18:00:00Z
  contour.community.tanzu.vmware.com  1.18.1   2021-07-23T18:00:00Z

# 上記の情報を用いてインストール。("my-contour" の箇所は、任意の名前で良い)
% tanzu package install my-contour --package-name contour.community.tanzu.vmware.com --version 1.18.1 --values-file contour-values.yaml
/ Installing package 'contour.community.tanzu.vmware.com'
| Getting namespace 'default'
| Getting package metadata for 'contour.community.tanzu.vmware.com'
| Creating service account 'my-contour-default-sa'
| Creating cluster admin role 'my-contour-default-cluster-role'
| Creating cluster role binding 'my-contour-default-cluster-rolebinding'
| Creating secret 'my-contour-default-values'
/ Creating package resource
| Package install status: Reconciling

 Added installed package 'my-contour' in namespace 'default'

# 対象のクラスタに、Contourがインストールされたことを確認
% tanzu package installed list
- Retrieving installed packages...
  NAME        PACKAGE-NAME                        PACKAGE-VERSION  STATUS
  my-contour  contour.community.tanzu.vmware.com  1.18.1           Reconcile succeeded

このように、簡単にインストールが出来てしまいます!
似たような仕組みとして、helm も上記のような流れでインストールできますが、helm はクライアント側に情報がキャッシュされるため、複数のクライアントで情報を共有するのが難しかったりします。
これに対し、 tanzu package は、自身のクラスタ内のリソースとして、インストールされている情報を管理 します。これは、どのクラスタに何がインストールされているかについて、非常に直感的に扱えることが、大きなメリットとなります。

まとめ

今まで Kubernetes や OSS を躊躇していた人にとって、TCE はきっと敷居を下げるものとなってくれるはずです。また、OSS を今までバリバリやってきた人にとっても、TCE は有力なKubernetesプラットフォームの一つとなることでしょう。

そんな訳で、TCE を使って、みんなで Kubernetes と OSS の世界を楽しみましょう!

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