###2体問題 一般論
質点1と質点2にお互いにはたらく力がある場合,
m_1 a_1 = F_1 + F_{12}
\\
m_2 a_2 = F_2 + F_{21}
ここで$F_{12}$と$F_{21}$は,お互いにはたらく力で
$$ F_{12} = -F_{21}$$
がを満たす(作用反作用の法則)。この$F_{12}$と$F_{21}$を内力,あるいは相互作用とよぶ。一方で内力以外の力,$F_1$,$F_2$を外力とよぶ。
重心
作用反作用の法則を考慮すると
$$m_1 a_1 + m_2 a_2 = F_1 + F_2$$
が成立する。この方程式は内力がない。
ここで$M:= m_1 + m_2$を定義し,さらに次の座標を定義する。
$$ x_G = \frac{m_1 x_1 + m_2 x_2}{m_1 + m_2} $$
これを重心または,質量中心とよぶが,理由は次のためである。
重心の座標$x_G$を微分することで,加速度を得ることができる。
$$
a_G := \ddot x_G = \frac{1}{M} (m_1 \ddot x_1 + m_2 \ddot x_2)= \frac{1}{M} (m_1 a_1 + m_2 a_2)
$$
すると外力だけの方程式は
$$M a_G = F_1 + F_2$$
となる。
これは,質量中心に質量$M$の物体が1つあり,力$F_1 + F_2$を受けているときの運動方程式に他ならない。さらに言えば,2物体がどのような内力をおよぼし合っていても,2物体が相対的にどのような位置にあっても,重心の運動は$F_1+F_2$のみで決定されることがわかる。
相対位置
重心の運動を求めることができても,1つ1つの質点の運動は決定できない。そこで,重心と質点の座標の差を求めると,
$$ x_1 - x_G = x_1 - \frac{m_1 x_1 + m_2 x_2}{m_1 + m_2} = \frac{m_2 (x_1 - x_2)}{m_1 + m_2} $$
同様に,
$$ x_2 - x_G = x_2 - \frac{m_1 x_1 + m_2 x_2}{m_1 + m_2} = \frac{m_1 (x_2 - x_1)}{m_1 + m_2} $$
という関係を得る。双方に対して,相対座標$x:=x_1 - x_2$の運動を得ることができれば,2質点の運動は完全に求められたことになる。
もとの運動方程式について,差をとると
$$ a : = a_1 - a_2 = \frac{F_1}{m_1} - \frac{F_2}{m_2} + \left( \frac{1}{m_1} + \frac{1}{m_2} \right)F_{12} $$
ここで,$1/\mu := 1/m_1 + 1/m_2$を定義すると,
$$ \mu a = \frac{\mu}{m_1}F_1 - \frac{\mu}{m_2}F_2 + F_{12} $$
という運動方程式を得る。
結局,重心・相対座標ともに,1体問題として取り扱うことができる。2つの1体問題を解くことで2体問題が解決できる。もとの2質点の座標との関係は
$$ x_1 = x_G + \frac{\mu}{m_1}x$$
$$ x_2 = x_G - \frac{\mu}{m_2}x$$
である。
2体問題において,外力がはたかない場合の運動方程式は
$$M a_G = 0$$
$$\mu a = F_{12}$$
となる。重心については,等速直線運動となり,初めに重心が静止している座標系では,重心は静止し続ける。一方相対座標$x$は,内力についての運動だけを解くことになる。
他
$F_1 = -F_2$を満たす場合も,重心は等速直線運動になる。
$\frac{F_1}{m_1} = \frac{F_2}{m_2}$を満たす場合,重心は複雑な運動をする可能性があるが,相対座標は内力のみで決定される。$\frac{F_i}{m_i}$は,外力による加速度を表している。一様重力場がこれに相当する。球対称な重力場の場合は,加速度が位置に依存してしまう。$\frac{F_1}{m_1} = \frac{F_2}{m_2}$となる2質点の位置が非常に特殊な場合を考えることはできるかもしれない。
###重力の2体問題
運動方程式は,慣性系のものということに注意しておく。
議論を簡単にするために,2物体の重心を原点にとる座標系を考える。つまり,
$$ x_1 = \frac{\mu}{m_1}x$$
$$ x_2 = - \frac{\mu}{m_2}x$$
となる。中心力がはたらく1体問題の場合,円や楕円軌道になることがある。相対運動が円軌道の場合を考えることにする。例えば,地球から観測した月の運動が円軌道ならば,逆に月から観察した地球の運動も同じ半径の円軌道になる。この式をみると,各質点の運動は相対運動の定数倍になっているから,重心を中心とした,半径が小さな円軌道になる。このとき,2質点とも同じ周期で運動する。
重心が原点にあるので,
m_1 x_1 + m_2 x_2 = 0
という関係式を得る。当然の帰結になるが,原点が2質点の位置を$m_2:m_1$に内分している。さらに
m_1 \dot x_1 = -m_2 \dot x_2
となり,速度ベクトルが互いに反対方向を向く。速度ベクトルの大きさの比は,$1/m_1 : 1/m_2$となる。
初期位置と初速度をこのようにセッティングすると,原点まわりの楕円運動が実現できる。