1. AtCoder とは?
AtCoder とは同時接続数が数千以上を誇る日本最大級のネットゲームであり、なんと無料で遊べます。課金要素は今の所PASTと呼ばれる特殊なアイテムを入手するぐらいで、ガチャ等の廃課金要素はなくピークタイムも土日午後9時~11時という極めて健全なゲームです。
プレイヤーは大学生を中心として幅広い層に楽しまれており、たまに上位ランカーに賞金まで出たり就職にも有利になったりするサイトです。
(※上記はジョークです。正確な説明はAtCoderのサイトで御覧ください)
1-1. なぜそんな良ゲーが無料なのか
それは主に企業がリクルートや宣伝を目的としてスポンサーになっているためです。つまり自分が今いる会社でもAtCoderコンテストを開催できる可能性があるわけです!!!
2. うちの会社でもコンテストを開催したい!
はい、この記事はそういった人向けの情報です。特に日本企業にお勤めの方向けの情報です。
日本企業コンテストが増えてきてとても嬉しい。わーい。
— chokudai(高橋 直大)🌸🍆🍡 (@chokudai) February 14, 2020
今回、AtCoder面白いよ!!って社内でいいまくったり、学生のリクルートに絶大な効果があるということを説明するなどして見事日本企業において上記の通り開催に至りました。そこでどうやればコンテストを開催するまでに至るのかをノウハウとして残しておこうと思います。
※AtCoder常連のR社やF社も日本企業ではあるんですが、そう、いわゆる日本企業のことですね。
3. 具体的なステップ
3-1. まずは周りへの認知度を上げる
これは非常に重要です。AtCoderはIT系のトレンドに敏感な会社を除くと、まだまだ認知度が低い会社も結構あります。そこでまずは自分がコンテストに出て面白い面白い周りに言いまくりましょう。すると「なんかコンテスト?とかで趣味が充実してる人だなぁ」ぐらいのイメージを持たれると思います。
またたまには「昨日は実家DPだったのにセグ木バグってて1ケースTLEしたわ…鬱なんで会議欠席で」といって凹んだりして「お、おう…(言ってることはよくわからないけど)」と周りにインパクトを与えることも重要です。このフェーズにおいてはまずは何よりも認知度を上げてみましょう。
具体的な数値ですが、大企業であればだいたい周囲100~200人程度の人とは関わりある人も多いと思います。そういった人たちの間で共通認識ができればおっけーな感じです。
3-2. 偉い人の認知度を上げる
次に偉い人の認知度を上げるということが必要です。コンテスト開催には「個人から見れば多額、でも会社という法人から見ればごくごく一般的な額」なコンテスト開催料金がかかります。具体的な額が気になる場合はAtCoder資料請求ページから資料が入手できますので取り寄せましょう。
日本企業にお勤めの場合、例えば大企業であってもコンテスト開催に必要な一般的な額は意外と役職の高い人の決裁が必要になるでしょう(例えば数百人を取りまとめるシニアディレクタークラス)。そのため、開催に向けて近づくためにはそういう人にAtCoderを認知させることが必要になります。
このぐらいのマネージャーだとただでさえ忙しいため、「単に面白い」等の理由だけでなく具体的な効果をプレゼンするぐらいの勢いが必要です。またプレゼンする機会を確保することも重要です。私は最近の企業ではよくある「幹部と現場との懇親会」的な場を利用してリクルートにおける効果などをプッシュしまくりました。
日本企業の偉い人、というとそういったことにちょっとおかたいのでは…?という不安はあるかもしれませんが、実は特にITを扱う企業の偉い人は「今のままではいかんけど、具体的に何したらいいんだろう」という漠然な不安を抱えていることが多く、AtCoderはそこに結構刺さるイメージです。更に元技術者であれば単に個人として興味を持って貰える場合もかなりありました。
3-3. 予算確保
偉い人に一言「いいんじゃないかな!」と言わせたら具体的に予算確保に走りましょう。AtCoderの企業コンテストの場合、大体の場合は広告費や採用費といった間接費という扱いになると思います。そのため損益計算がないただ消化するだけの予算ということで扱いは簡単でしょう。でも一方で、例えばあなたがITエンジニアだった場合、「そもそも広告費ってどうやって使うんだ…」という場合も多いと思います。
そういうときは間接部門(経理など)に積極的に問い合わせしてみましょう。「偉い人の一言で何かしらのイベントを開催して、コンテスト開催額と同等程度の予算消化」というのはある程度大きい企業では日常茶飯事であり、ITエンジニアから見ると「どうすんだ・・・」って感じでも経理部署などからすると「あーいつものね」ぐらいの温度差があります。そして意外にもさくっと決裁が降ります。
3-4. さあコンテスト開催をAtCoderに連絡だ
というわけで、AtCoderのお問い合わせ ページからコンテスト開催の依頼を出しましょう。最初なんて書くか困るかもしれませんが、私のところは「コンテスト開催に興味あるので、一度打ち合わせさせてください」ぐらいで送りました。するとAtCoderの偉い人が来てくれてコンテストの詳細を聞かせてくれます。そこで具体的な日程感や今後のやり取りなどを確認するとよいでしょう。ここでコンテスト開催の契約が完了し、いよいよコンテストが現実味を帯びてきます。具体的には「コンテスト開催」といった業務をAtCoder社に「発注」という手続きになります。
3-5. 調達の準備
社外に発注する部署はたいてい「調達」といった名前がついていると思います。具体的に「どういうものを、いくらで、どこに発注する」ということが決まった場合この調達部署にお伺いを立てる必要があります。ところで予算を確保した社員が直接発注するんではなくて、この「調達部署」を経由して発注は一体なんのためにあるのでしょうか。これはたいてい社外との不正な取引を防ぐためです。例えばその一環として、取引可能な企業のホワイトリストを持っていたりします。弊社においてはAtCoder社と初取引ということもあり、そのホワイトリスト登録作業というものが結構厄介でした。ちなみにそういうことをしなくても、調達部署が別の調達専門会社をホワイトリスト登録していて、その別会社経由で発注といった手段が取られることも多いですね。
3-6. コンテスト開催準備
いよいよそのへんの事務手続きが終わったらコンテスト開催準備です。これは主に下記2点の作業になります。
- コンテストトップページの宣伝内容を書く
- 賞金や採用イベントの準備
コンテストトップページの宣伝内容ですが、ここはぜひ競プロerにウケるような内容を書いたほうがよいです。例えば「社会の○○を良くするためにIT技術で世界を変える」みたいな内容は一般向けの広報としてはアリですが、コンテストのトップページとしてはむしろ「この前のシステム開発、大規模データの連結性判定があったんだけどUnion Findで優勝したわw」ぐらいのノリが良いかもしれません。(もちろん会社の広報的にOKかどうかというのはありますが…)
さて、2個目の賞金や採用イベントの準備です。これは企業から見るとかかる経費よりも、個人情報に該当するため意外とめんどくさいプロセスがあるということのほうが重要です。昨今では個人情報に対する保護が強化されていることもあり、社内プロセスも複雑になっているため予め確認しておくといいかもしれません。
#3-7. 準備完了!!
コンテストページが公開されたら次のボタンを押してTwitterで100回ぐらい宣伝しましょう。
4. 終わりに
AtCoderは今回のパナソニック、日立製作所のコンテストに加え、日経新聞、三井住友信託銀行など以前までは縁が遠そうに見えた企業でも徐々にコンテスト開催が浸透してきています。次はあなたの会社で開催してみましょう。