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フィクションなどから拾う情報処理用語 その24 確率 (必殺仕置人)

Last updated at Posted at 2023-02-16

必殺仕置人 第26話「お江戸華町未練なし」(脚本:梅林喜久生、監督:工藤栄一 (C) 松竹)より

この話は面白かった。演出しているのが工藤栄一だからだろう。東映京都撮影所で監督になった人だが京都映画制作の必殺シリーズでも辣腕を振るっている。そして千葉真一主演の「服部半蔵 影の軍団」も演出している。

さてバッサリ切って、終盤である。念仏の鉄、棺桶の錠、鉄砲玉のおきん、おひろめの半次は仕置を終え、江戸を去るために集まっていた。そこへ後からやって来たのは、なんと中村主水である。

物音がしたので鉄達は散ったのだが

念仏の鉄「八丁堀(中村主水のあだ名)、お前は来ちゃ行けねえんだよ。けえれ。」

だが主水の決意は堅かった。

中村主水「何を言うんだい。俺もおめえ達と一緒に行くでい。」
念仏の鉄「バカなことを言うんじゃねえ。旅ごしらえなんかしやがって、勝手に着いてきてもらっちゃ困るなあ。」

奉行所に捕まったが何とか救われた半次が続いてこう言った。

半次「そうだよ。あんたにはおカミさん(りつ)もおふくろさん(せん)も列記としたお勤め先(この時は北町奉行所)もあるんだから。」
棺桶の錠「俺たちに義理を立てることはねえ。」
おきん「そうだよ。お前さん、何を疑われてないんだから江戸を去ることはないよ。」

皆、中村主水が旅立つ事には反対だったのだ。
だが

中村主水「しかし、おめえ達と別れるのはなあ。」

未練が深そうだ。そう。中村主水が最終回でこういう行動を取ったのは実は「必殺仕置人」の時だけなのだ。それだけ、シンパシーを感じていたのだろう。ここで鉄が思いがけない話をし出した。ここから話は思いがけない方向へ進むのだ。

念仏の鉄「別れるのはおめえだけじゃねえ。みんな、ここで別れるんだ。」

思わずおきんは目をむいた。

半次「え!?」
おきん「私たちも?」
鉄「ああ。」

鉄は言った。

鉄「人相書きまで回されちまった俺達が一緒にいたんじゃ、また御用風に吹かれら。もうこの辺で別れて、それぞれ新しい道を探した方が。」

だが異論噴出。

半次「俺はやだ。皆4人とも俺の命の恩人だよ。こんな連れ合い、二度とありゃしねえ。」
半次は打首寸前のところを鉄達に救われたのだ。
おきん「その通りだよ。あたしだって一人ぼっちになるのはやだよ。」

だが鉄は明確に反論した。

鉄「一人ぼっちの方が足が洗いやすいよ。」

それを聞き

棺桶の錠「念仏、足洗うつもりか?」
鉄「洗うかもしれねえ。洗わないかもしれねえ。だがよ、いつまでも続けるほどありがてえ商売でもねえだろう。」

それでも

半次「鉄さんらしくねえぜ。俺は着いていくよ。」
おきん「あたしも。」

各々の性格が現れた発言だ。

鉄「しつこい奴だなあ。よし、じゃあこれで決めよう。」

鉄が懐から出したのは銭1枚である。

鉄「表が出たら一生道中だ。裏が出たら別れる。どうだ、錠。」
棺桶の錠に聞くのがポイントだと思うのだが、錠はこう答えた。
錠「わかった。」

鉄は主水に銭1枚を見せつけながらこう言った。

鉄「後から文句は聞かねえぞ。」

主水は頷いた。そして鉄が銭を投げると出たのは

鉄「裏だ。決まった。別れるぜ。」

即座に(これ重要)鉄は投げた銭を拾い上げて立ち去ろうとしたのだが

おきん「鉄さん。」

おきんは鉄を止めたのだが鉄はいつも通り、にやけてこう言った。

念仏の鉄「またいつか5人会えるよ。」
おきん「会えるってどこで?」
念仏の鉄「どうせ極楽へは行けねえ俺たちだ。会えば地獄だろうぜ。」

鉄は笑い、続けてこう言った。

念仏の鉄「盛者必滅、会者定離。あばよ。」

鉄は皆を置いて立ち去ってしまった。そういえば鉄は元僧侶だった。
なお中村主水は立って無言のままである。おきんは追いかけたが鉄は立ち止まらなかった。そして

おきん「錠!」
おきん「半公…」

の順に立ち去り、おきんは何も言わずに半次の後を追いかけたのであった。
なお中村主水は立って無言のまま身動きしなかった、いや、できなかったのだろう。その後、黙って見送った。

さて念仏の鉄が投げた銭には細工がしてあった。実は2枚貼り合わせて裏しか出ないようにしていたのである。つまりハナから裏の出る確率は100%だったのだ。鉄はその銭2枚を剥がして2枚ずつにしながら、こう言った。

念仏の鉄「世の中裏目ばっかりよ。」

にやけて言うのが鉄らしいところである。鉄は銭2枚を空へ投げ上げて立ち去った。でまあおきんと半次(流れ橋に座っていた)、棺桶の錠(船に乗っている)、そして北町奉行所に普段の同心姿で戻る中村主水が映って、「必殺仕置人」は終わったのであった。

なお彼らのその後はなんと全員、別の話で語られるのであった。

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